岡室美奈子と日比麻音子『エルピス』を語る

東野幸治『エルピス』第3話・眞栄田郷敦『PERFECT HUMAN』描写を語る アフター6ジャンクション

早稲田大学・演劇博物館館長の岡室美奈子さんが2022年12月14日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で2022年の日本ドラマベストを紹介。『エルピス —希望、あるいは災い—』を選出し、日比麻音子さんらと話していました。

(日比麻音子)今夜は引き続き、早稲田大学・演劇博物館館長の岡室美奈子さんに2022年ベスト日本のテレビドラマを伺っていきます。先ほどもチラリと伺いましたけれども、今年は豊作だったということで。では早速、1本目の発表をお願いいたします。

(岡室美奈子)まあ、なかなかそのベスト1、2、3っていうのが本当に難しいんですけど。一応、最初に私が言いたいのは『エルピス —希望、あるいは災い—』です。

(高橋芳朗)出ました。また昨日ね、大盛りあがりでしたよ。

(日比麻音子)宇垣さんとトミヤマ先生が爆発的盛り上がりを見せていて。私も個人的にすごく岡室さんがこれを選んでくださって嬉しい!っていう気持ちなんですけれども。あらすじを簡単にご紹介します。スキャンダルで落ち目となった、いわゆる女子アナとバラエティ番組の新人ディレクターが連続殺人事件で犯人とされ、死刑が確定した男の冤罪疑惑を追っていきます。実在する複数の事件から着想を得て、制作されたドラマです。まだただ現在、放送中なんですね。毎週月曜日夜10時からフジテレビ系列にて放送中。8話まで放送しました。TVer、FOD、U-NEXTでも見逃し配信中です。

(高橋芳朗)岡室さん的なおすすめポイントの解説をお願いしたいんですけれども。

(岡室美奈子)まだ最終回を迎えてないんで、なかなかしゃべりにくいってところはあるんですけれども。これ、とにかく脚本家の渡辺あやさん……『カーネーション』とかね、素晴らしいドラマの数々を書いてきた渡辺あやさんと、『カルテット』とか『大豆田とわ子と三人の元夫』を送り出してきたプロデューサーの佐野亜裕美さんが6年ぐらい温めてきたというドラマなんですよね。で、なんかいろいろね、他の局で却下されたりとか、いろんなことがあって。それで今回、ようやく放送にこぎつけたってことなんですけど。

もうとにかくね、こんなにも作り手の決意や覚悟っていうものを感じたドラマってないんですよ。とにかくその点だけでもすごいと思うんですね。で、これはさっきご紹介あったように、冤罪事件を扱ってるんですけど。冤罪事件ってね、たとえば現実にいろいろあるわけですよね。有名なので言えば飯塚事件っていうのが92年に起こっていて。この犯人とされた人はもう、死刑も執行されてるんだけど。でも当時のDNA型鑑定が大丈夫だったのかとか、有力な目撃証言があるじゃないか、みたいなことでご遺族が再審請求をしていて。今でもこれ、審議中なんですよね。

で、今年、その飯塚事件を巡る素晴らしいドキュメンタリーも二つぐらい、ちょうど放送されたので非常にタイムリーでもあったんですけど。これ、冤罪事件ってやっぱりある種、国家権力に対する挑戦みたいなところがあるわけですよね。なので、このドラマの中でも、テレビ局が舞台なんですけども、その冤罪事件を追求している人たちにいろんな圧力がかかったりとかするわけですね。

だけどこれ、いいところはその長澤まさみ演じる浅川恵那さんと眞栄田郷敦さん演じる情報番組のディレクターさんである岸本という人が主役なんだけれども。その人たちが決して一方的に正義の側に立ってるわけじゃないんですね。そうじゃなくて、恵那は自分がニュース番組で真実を伝えてこなかったっていう負い目があるし。岸本の方は学生時代に同級生が自殺したのを止められなかったみたいな悔いがあるんですよね。そういう心に傷とか痛みとか闇を抱えた人たちが、その真実に向かっていくっていうところにグッとくるというか。

なんか一方的に正義を振りかざすみたいなことじゃないんですよね。なので、そういう心に傷や痛みを持った人だからこそ、どこか到達してほしいっていう風に思ってしまう。あと、もうとにかく長澤まさみ、眞栄田郷敦が素晴らしいんですよ。本当に。

(日比麻音子)本当にそうですね!

(岡室美奈子)ねえ。なんか演技が上手いとかっていうことを超えた何かをやってますよね。

(日比麻音子)眞栄田郷敦さんの眼差しと、長澤まさみさんの泣き方に、もう私は毎回、心がえぐられてます。

(岡室美奈子)ですよね。えぐられますよね。あとね、鈴木亮平がこんなにエロかったのか!っていう。

(高橋芳朗)ああ、やっぱりキーワード「エロい」は入りますか?

エロい鈴木亮平

(日比麻音子)すいませんん。鈴木亮平の話を始めると、岡室さんを帰さなくなっちゃう!(笑)。本当に、すごいですよね!(笑)。

(岡室美奈子)すごいですよね。なんか鈴木亮平って、まあ変態仮面だったりしたわけじゃないですか。もう誰も覚えてないかもしれないけど(笑)。でも、なんかそのしたたかさとか、エロさとか、そういうものを本当に体現していて。「いや、すごいわ」って思うんですよね。

(日比麻音子)あのツヤと説得力は誰も敵わないですね。

(高橋芳朗)皆さん、本当に口を揃えて「エロい、エロい」って。ねえ。

(日比麻音子)エロいんだけど、怖いんですよね。ちゃんと。

(岡室美奈子)そうそうそう。ねえ。なんか長澤さんに「なんでベッド、買ったの?」とか。あれ、すごいセリフでしたよね。

(日比麻音子)あそこ、ごめんなさい。私、5回ぐらい見ました(笑)。

(高橋芳朗)アハハハハハハハハッ!

(日比麻音子)あと、レストランでお食事をしているシーンがあって。「好きな女とうまいもん食いたい」みたいな。あそこも私、20回ぐらい見ました。

(岡室美奈子)そう。なんかだからその冤罪事件を追っていくっていうのもあるんだけど。なんかそういう細部のリアリティーがすごいですよね。あと、なんか一瞬しか出てこないのにめちゃくちゃ不気味な瑛太とかね。

(日比麻音子)ああ、そうなんです! 本当に夢に出てきます。アンビエントな曲を聞いても眠れないぐらいに。

(岡室美奈子)そうそう(笑)。うなされますよね。だからまあ、とにかくね、本当になんていうのかな? ドラマとしてもすごいし。役者さんの演技も本当にすごいですよね。だからちょっともうなんか、他が吹っ飛んじゃうぐらいの破壊力を持ってるような気がします。

(日比麻音子)私も恵那さんと同じ、いわゆる女子アナをリアルに生きている身としてはすごく、いわゆる女子アナを描くドラマって今までいろいろたくさんあったと思うんですけど。なんかその葛藤する姿っていうのをちゃんと描いてるっていうのは今までになかったのかなと思って。すごく私もこれに関して、なにか感想を述べるのにはとても言葉を選ばなきゃいけないんだろうなと思いながらも。でも、『エルピス』というものを一視聴者として見ていて、やっぱり共感と自覚しかないっていうのはすごく、教科書のようにひとつひとつのセリフを受け取っています。リアルに、本当に細部まで描かれていますよね。

(岡室美奈子)ですよね。だから今日ね、日比さんの感想はちょっと楽しみにしてたんですよ(笑)。

(日比麻音子)ああ、本当ですか? 私、あのエンディングの映像。恵那さんがお料理をしているっていうシーン。私はすごくあれが大好きで。

(岡室美奈子)あれ、すごいですよね。

長澤まさみのエンディング映像

(日比麻音子)いわゆる「女子アナ」っていうイメージを真っ向から表現してくれている気がして。笑顔、元気、お料理。ニコニコ楽しそうに踊ったり、歌ったり……っていう。あれをあえて、あそこのエンディングに持ってくるっていうところが、うーん。ちょっと救われた感じがしたんですよね。

(岡室美奈子)なんかね、でも一方でやっぱりどんどん壊れていく長澤まさみみたいな感じもあってね。やっぱり演出が大根仁さんですからね。只者じゃないですよね。

(日比麻音子)本当に。いやー、まず1本目には『エルピス』。今、配信でもご覧いただけますし。8話まで放送して今も放送が続いているというドラマです。では、2本目をお願いします。

(岡室美奈子)『鎌倉殿の13人』です。

<書き起こしおわり>

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