日比麻音子さんが2023年2月8日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で『鎌倉殿の13人』の長澤まさみさんナレーションについてトーク。アナウンサー的視点で気づいたナレーションの変化について話していました。
(宇多丸)で、さあ、皆さん、お待たせしました! 先週から……これはなにかと言うと、あくまでも仮説ですから。
(日比麻音子)私の完全なる仮説で。なんの根拠もありませんが。その『鎌倉殿の13人』になぜ、私がこれほどはまったかというと、ストーリーももちろん、出演者の皆さんの演技であったり、脚本ももちろんなんですが。何よりもやっぱり、長澤まさみ先輩のナレーション!
(宇多丸)これ、「長澤まさみ」先輩とおっしゃるのには、やっぱり『エルピス』というドラマにおいてアナウンサー役をやられていたということで。
(日比麻音子)はい。カンテレ、フジテレビ系列で放送していた10月末からのクールのドラマ『エルピス』。
(宇多丸)Netflixでも見れるようになって。本当に素晴らしいドラマでした。岡室さんも挙げていましたね。
(日比麻音子)はい。ますます『エルピス』の波が広がっているのがとても嬉しく思っているんですけれども。やっぱり長澤まさみさんのナレーションというのが、私にとってすごく、アナウンサーとしても大変に勉強になるナレーションでしたので。あれを毎話毎話聞くということがひとつのすごく楽しみでもあったし。私の勉強にもなっていたんですね。で、そんな長澤まさみ先輩の……「先輩」とか言って別に先輩ではないんですけども(笑)。
(宇多丸)大丈夫だと思います。長澤さんも、でもそれは本職のそのアナウンサーの方からそういう風に『エルピス』というドラマの役で思われたんなら、それは本当に嬉しいはずですよ。絶対に嬉しいですよ。
(日比麻音子)長澤さんのそのナレーションが、「あれ? ちょっと変わったな?」っていう風に素人耳なんですが、思った場面があったんですね。
(宇多丸)場面というか、時期というか。48回あって。
(日比麻音子)48回あって。で、私のメモ……「あっ!」って思ってその場で携帯でメモしたところ、「36」って書いてあったので。36話とか35、6、7、8ぐらいなんですよ。で、「あれ? 何か、変わった」って思ったんです。
(宇多丸)あのオープニングでね、ちょっとざっくりした状況みたいなのを言ったりしますけれども。その読み方が35、6、7、8ぐらいのあたりで、変わった?
(日比麻音子)変わったんですよ。で、「何が」と言いますと、私は長澤さんのすごく低い声が特に美しいなと思っていて。で、冒頭はそのストーリーに沿うような形で、いい意味でハスキーにというか、ウィスパー調に淡々と語るっていうナレーションのトーンが大好きで。本当にそこだけを何回も聞くぐらい、はまって聞いてたんですね。
(宇多丸)声が特徴的ですもんね。長澤さんは。
(日比麻音子)で、36話ぐらいから、文章の頭と終わりが大変に力強くなってくるんですよ。で、いろんな説があると思うんです。これは。もちろん内容によって、劇的な、より鎌倉が厳しい状況になっていくという。その演技という部分ももちろんあると思うんですけど。根本的に、声の発声が変わってるんじゃないかと。つまり、お腹の底から出して、滑舌をよりはっきりと読み上げていらっしゃる印象をすごく受けたんですね。で、これはつまり、この時期を換算しますと48話で1年間、1月から始まったとするならば、1月に4話ぐらいだとしましょう。4で割ると、ちょうど10月ぐらいなんですね。36、7話ぐらいが。
で、思い返せば『エルピス』は10月24日からスタート。ですから、『エルピス』の放送時期と『鎌倉殿』のその放送時期が全く同じ。ということは、『エルピス』に出演されるために、長澤まさみさんがアナウンサーという仕事を役作りのため、発声などを練習、訓練されたと聞きいておりますので。このあたりから、その訓練の成果みたいなものがより反映されているナレーションになってるんじゃないか?
(宇多丸)つまり、その『鎌倉殿の13人』のナレーションの中にアフター『エルピス』の長澤さんのあれが入っているのではないかと。
『エルピス』の影響が『鎌倉殿』のナレーションに
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— スポーツ報知 (@SportsHochi) October 16, 2022
(日比麻音子)ないかと、私は一ファンとして、素人耳として気がついたといいますか。で、その後の40話ちょっと前ぐらい。その頃にはまた、ちょっと戻ったんですよ。
(宇多丸)ああ、女優的な言い方というか?
(日比麻音子)冒頭の1話とか2話とかの、ドラマが始まった頃のお声にちょっとまた戻って。で、また『エルピス』風というか、アナウンサー風というか。そういったものにまた戻ってるんですね。
(宇多丸)ああ、ちょっとだから、行き来するように?
(日比麻音子)だからこれ、私の勝手な考えなんですけど。先に録っておいた分があって。後から何らかの修正が入って、そこだけ後録りしたんじゃないかと思ったんですよ。
(宇多丸)ほう、なるほど!
(日比麻音子)で、完全にもう40話後半とか。43話ぐらいからもう確実に『エルピス』の時の浅川恵那キャスターがニュースを読んでいらっしゃる時とかのお声の出し方と同じになってきていて。
(宇多丸)じゃあ、最終的にはそのアフター『エルピス』なところに落ち着いてきたから。
(日比麻音子)ではないのかと私は読んだんですね。
(宇多丸)なるほど!
(日比麻音子)これは完全に仮説です(笑)。
(宇多丸)仮説ね。もちろん、仮説。
(日比麻音子)こんな、5分ぐらい使ってしゃべってますけど。完全に仮説なんですが。
(宇多丸)めちゃくちゃ面白い! しかも、これは日比さんとかしか、日比さんの解像度でなければ少なくとも、仮説すら立てられない件ですから。面白いよ!
アナウンサーの解像度だから立てられた仮説
(日比麻音子)ですから逆にアナウンサーとして訓練をしてしまってるので。非アナウンサーというのもなんなんですが。もうナレーションとなると、我々はこういうしゃべり方しかできなくなっちゃってるんですね。こう、強く発音をしてしまう。1音1音、はっきりと言ってしまう。
(宇多丸)頭からお尻もちゃんとビシッと出して、ビシッと切る。声の立ち上げもちゃんとビシッと立ち上げて。
(日比麻音子)そうじゃないことがもう、できなくなってしまうので。その壁をもう一度、壊すっていうのがナレーションの仕事においては、ひとつの課題でもあるんですけど。長澤まさみさんのそのナレーションの変遷をなんとなく、私はそのように感じて。
(宇多丸)しかもあの物語上のナレーションの役割って、やっぱりちょっとその中のエモーションとは一歩、引いた方がいいじゃない? アナウンサー的でいいじゃないですか。
(日比麻音子)そうなんです。情報でもあるので。だから、そこは私はわかんないですけども……(笑)。
(宇多丸)これはね、あとは答え合わせは中の人。もしくはパイセン。恵那パイセンに聞くしか……日比仮説。裏付けができる中の人がいたら、こっそりメールをいただいても結構です。
(日比麻音子)違うなら違うで。ごめんなさい。
(宇多丸)「読まないでくれ」でも結構なんで。こっそり教えてください(笑)。
(日比麻音子)教えてください。
<書き起こしおわり>