早稲田大学・演劇博物館館長の岡室美奈子さんが2022年12月14日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で2022年の日本ドラマベストを紹介。『鎌倉殿の13人』を選出し、話していました。
(日比麻音子)本当に。いやー、まず1本目には『エルピス』。今、配信でもご覧いただけますし。8話まで放送して今も放送が続いているというドラマです。では、2本目をお願いします。
(岡室美奈子)『鎌倉殿の13人』です。
(日比麻音子)もう、これは宇多丸さん始め……。
(高橋芳朗)毎曜日でなんか話題になってるような。
(日比麻音子)そうなんですよ。簡単にあらすじのご紹介です。鎌倉幕府将軍、鎌倉殿・源頼朝を支えた13人の家臣団が頼朝の死後、繰り広げる激しい内部抗争。権力の座を巡る駆け引きを描きます。脚本は大河ドラマ『新選組!』や『真田丸』を手がけた三谷幸喜さんです。NHKで現在放送中で、いよいよ今週、最終回となります。ここまで47話まで放送済み。NHKオンデマンドでも見逃し配信中です。
(高橋芳朗)では岡室さんのおすすめポイントをよろしくお願いします。
(岡室美奈子)はい。これもね、最終回を前にして語りにくいんですけど。これも間違いなく、この2022年を代表するドラマのひとつですよね。やっぱり三谷幸喜さん、すごいっていうことに尽きる……それだけじゃないですけどね。『鎌倉殿の13人』っていうタイトルを最初に聞いた時に、その鎌倉殿である将軍を13人の御家人が守って活躍する話だと思うじゃないですか。でも、全然違うんですよ。これ、何の話か?っていうと、13人がどんな風に死ぬかっていうドラマなんですよね。13人の死に様を描くドラマなんですよ。
13人の死に様を描くドラマ
(岡室美奈子)だから13人揃うって、本当に一瞬で。とにかくどんどん死んでいくんだけれども。ところが、その死に方がいちいち素晴らしいんですよ。三谷さんってね、そもそもその大河を書く時に主人公の立身出世とか天下取りとか派手な合戦シーンとか、そういうのにスポットを当てる大河とは一線を画したものを書くじゃないですか。で、割とその群像劇がお得意だし、歴史ドラマでもなんか英雄たちの活躍を華やかに描くっていうんじゃなくて、もう本当に歴史の片隅にかろうじて名前を残してるような人にも等しく光を当てていくんですよね。
特にこの『鎌倉殿』はもう本当にね、登場人物の退場シーンですね。死ぬシーンっていうか。それをいかに心に残るシーンとして描くかっていうところから逆算して、人物造形をしてるんじゃないかっていうぐらいその退場シーンが秀逸なんです。たとえば、その佐藤浩市さんの上総介とか、菅田将暉さんの義経とか、中川大志さんの畠山重忠とかね。なんか、もうとにかくその死ぬ瞬間を直接描かなくても、その俳優さんたちが本当にみんな一世一代とも言えるような名演技をして退場していくんですね。だから、誰もがね、これが代表作になっていくんじゃないかと思うぐらいで。
あと、やっぱり三谷さんなので陰惨な殺戮の物語なのに、ものすごく笑わせるんですよ。で、ふとドラマを見て笑っている自分が怖くなったりもするんですね。あとね、やっぱり小栗旬がすごいと思うんですよ。これね、こんなに活躍しない主人公ってあんまりいなくて。なんか前半って、本当にただの中間管理職みたいな感じで。ひたすら困ってるんですよね。で、それが後半になるとどんどん闇落ちしていくんですよ。だから今日、久しぶりに初回を見たんですけど、もう顔が全然違うんですよね。
で、もうどんどん闇落ちしていって。大河史上、こんなダークな主人公っていなかったんじゃないかっていうような人になっていくじゃないですか。でも、その変化がね、本当すごいと思います。
大河史上に残るダークな主人公
(日比麻音子)これは本当に、この話題は1話放送されるたびに宇多丸さんをはじめとした、もちろんアトロク周りだけではなくて、多くの人たちがしゃべってたにも関わらず……白状しますと私、まだ見られてなくてですね。芳朗さんも?
(高橋芳朗)見られてないんです……。
(日比麻音子)これはオンデマンドで見ることができるということで。
(岡室美奈子)これはね、見ないと損しますよ。
(日比麻音子)そうですよね。年内に、つまり48話になるということですね。今週の最終回を迎えるということで。
(岡室美奈子)なんかね、本当に「ああ、今日は誰も死ななかった!」みたいな気持ちになったりするんですよ。
(日比麻音子)ちょっと1年、それを追いつけなかった自分を悔いながら……。
(高橋芳朗)皆さんのハマり具合がすごいですもんね。
(岡室美奈子)源実朝が鶴岡八幡宮で殺されるいうのって、割とみんな知ってるんだけど。で、その回に殺されるんだと思っていたら、その回では殺されず。で、引っ張られたんだけど、そこにすごいドラマが仕込まれていたりするんですね。
(高橋芳朗)はー! 「そうなんですよ」って一緒に言いたい!(笑)。そうですか。わかりました。では、次に参りますかね。本当、後悔してる。反省しかない。では、3作目をお願いします。
(岡室美奈子)はい。『初恋の悪魔』です。
<書き起こしおわり>