宇多丸が選ぶ 2022年映画ベスト10

宇多丸 野外フェス『波物語2021』問題を語る アフター6ジャンクション

(宇多丸)さあ、ということで、残すところトップ3に参ります。RHYMESTER宇多丸のシネマランキング2022。映えある1位は一体なんなのか? はあ、1位がどうとか、そういうことはね、もうもはや、発表しないのが花ということもあるかもしれません。「行け!」と指示が出てますね。いや、もう全部、無音という手もありますよ? あ、はい。行きまーす。残り3作品、行きますよ。

宇多丸 2022年シネマランキング 第3位~第1位

(宇多丸)第3位は……『THE FIRST SLAMDUNK』。
第2位、『トップガン マーヴェリック』。
第1位、『こちらあみ子』。

まあさんざん、この話は3作ともいろいろ出ているんで。あと映画評もありますんで、くどくどしく言うのはやめますが。ちょっとこの三つ、私の中では共通するテーマがありまして。要するに、本来矛盾する要素を同居させて、もっとより高い表現にというか。より映画表現みたいなものを先に進めようとしている3作という意味で、僕の中では共通しているというところがあります。まず『THE FIRST SLAMDUNK』。これはね、評の中でも言いましたけど。要するに井上雄彦さんの非常に精緻に書かれた、そして本来は2次元的な静止画、絵ですね。

それと、バスケットボールという非常に3D的というか、もうとにかく瞬間的にいろんなところに物が移動するし、その中でも要素が本当に多い3次元的な時空間表現。この本来は矛盾する二つを、その新しいアニメーション表現技術。そしてその使い方によって両立させている。それによって、全く新しい日本の……まあ、世界的にも今、目指してるところ。たとえば『スパイダーマン:スパイダーバース』とかが達成したような試みの日本漫画版の試みを成し遂げてみせたわけですよ。それが『THE FIRST SLAMDUNK』。本来矛盾する要素をより高いものに昇華させている。

宇多丸『THE FIRST SLAM DUNK』を語る!【映画評書き起こし 2022.12.23放送】 | TBSラジオ
TBSラジオ『アフター6ジャンクション』のコーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。宇多丸が毎週ランダムに決まった映画を自腹で鑑賞して生放送で評論します。宇多丸:さあ、ここからは私、宇多丸が、ランダムに決まった最新映画を自腹で鑑賞し評論...

(宇多丸)2位の『トップガン マーヴェリック』もそうです。『トップガン マーヴェリック』はあのパイロットの訓練なんかをして、実際にそのコクピットに座って撮るという、非常にドキュメンタリックなその要素。ドキュメンタリー的なその映像の要素と、皆さんご存知の通り、とにかく血湧き肉躍るエンターテイメント展開。つまり計算ですよね、それは。非常にエンターテイメント的に計算された展開。あとはもっと言えば、観客にとっての見やすさ。そのドキュメンタリック的な要素。つまり、そこにあった。撮れてしまったものと、そのフィクション的な段取りの計算って、そこは本当は矛盾している。

でも、それを非常に高いレベルで……だから編集がすごいうまいっていうのもあると思うんだけど。非常に高いレベルで。なぜ、それが見やすくなっているのか? ちゃんと整理されてるのかというのは評の中で言いましたんで。実に実に計算され尽くした、見事な、最新型エンターテイメントだし、よく言うトム・クルーズが本当に命をかけたようなスタントとかね、すごいもう度を越した訓練とかをします。それ、皆さん、ちょっと半笑い的なエピソードとして語るけど。全ては「その方が映画が面白くなるから。その方がみんなが没入するから。本当だと信じられるから」っていうことがトム・クルーズにはわかっている。

ふざけてやってるわけじゃないんですよ。伊達や酔狂じゃないんですよ。面白い映画のためなんですよ。それが、この映画でわかりましたし。そしてトム・クルーズが、やっぱりなんて言うかな? 自らのある意味、老いを受け入れてくる話。これ、初めてです。トム・クルーズ史上、初めて。それがトム・クルーズ史上、最大のヒットになったんですよ。最高です! 最高の男です!

宇多丸『トップガン マーヴェリック』を語る!【映画評書き起こし 2022.6.10放送】 | TBSラジオ
TBSラジオ『アフター6ジャンクション』の看板コーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。ライムスター宇多丸が毎週ランダムに決まった映画を自腹で鑑賞し、生放送で評論します。 オンエア音声はこちら↓宇多丸:宇多丸:さあ、ここからは私、宇多丸...

(宇多丸)そしてこちら。『こちらあみ子』も大沢一菜さんという、その存在をそのまま見せている。「こういう子が本当にいるんだ」っていうドキュメンタリックな見せ方をしている作品に見えて、でもずっと見てると「いや違う、違う。これはめちゃくちゃ周到に計算されなきゃできないショットだ」みたいなことに途中で気付く。だから、ドキュメンタリックな、そこにいたその人の輝きを撮ったというドキュメンタリー性と、計算され尽くした、たとえば長回しであるとか。あるいはちょっとフィクション的な飛躍。というものが非常に高度に合体して、なにかこの瞬間でしか起きないマジック。やっぱり大沢一菜さんという方の存在が大きい。

原作小説より、ちょっとやっぱりポジティブな印象が強い作品になってるのは、やっぱり大沢一菜さんの生命エネルギーですよね。生命そのものを肯定せざるをえない、そこに生きているこの輝き。それと、でも周到な計算と、みたいなものがまあ、めちゃくちゃ高度に融合され、なにか奇跡的な1本となったという『こちらあみ子』。さっき、伊賀大介さんおっしゃっていたけども。こんなものを最初に撮っちゃって、この後、大丈夫か?ってし勝手に心配になるぐらい、森井勇佑さんはすごい1作をいきなり出してきたと思います。という、私にとってはもう一番の驚きでしたね。『こちらあみ子』はね。

最初はそのTCエンタテインメントさんが「こういう映画をやる」っていうんで、橋Pにすすめられて。「でも、これすごい映画だと思うんですよ」っていうんで、見て。で、度肝を抜かれて。「いや、ちょっとこれは……すごいんじゃない?」みたいになりました。で、石川慶監督も週刊文春CINEMAで1位に挙げていらっしゃったので。我が意を得たりでございました。ああ、もう時間か。すいません。ベラベラと。申し訳ありませんでした。RHYMESTER宇多丸のシネマランキング2022、お送りしました。

宇多丸『こちらあみ子』を語る!【映画評書き起こし 2022.7.29放送】 | TBSラジオ
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<書き起こしおわり>

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