宇多丸が選ぶ 2018年映画ベスト10

宇多丸が選ぶ 2018年映画ベスト10 ラジオ

宇多丸さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の映画評コーナーで2018年に扱った50本の映画の中からベスト10本を選び、そのランキングを発表していました。

(宇多丸)今夜は特別企画「ライムスター宇多丸のシネマランキング2018 12月28日バージョン」。12月28日の7時台バージョンを(笑)。

(山本匠晃)あくまでも現段階ということで。

(宇多丸)現段階ですよ、こんなもんは! シェフのおすすめ。メシ屋のメニューで「おすすめ」みたいな。花がついてたりするやつ、あるじゃん? それがあなたにとってはベストかどうかっていうのはまた別問題じゃないですか。そういうもんだと思ってくださいな。

(山本匠晃)人それぞれ。

(宇多丸)あとは今日は日替わりメニューもありますんでね(笑)。あと、上位は……一応先に言っておきます。これ、ベスト5は割と固かったんですよ。「これで行こう」って決めていたんですけど、そこから下はすっごい流動的です。どれだけ流動的か?っていうと、ゲルよりは液状です。

(山本匠晃)フフフ、ちょっととろみ?

(宇多丸)そうですね。広東麺ぐらいです(笑)。

(山本匠晃)あんかけのあんぐらいですか?

(宇多丸)そうです。だから、いくらでも変わりうる(笑)。

(山本匠晃)フフフ、このエクスキューズ(笑)。

(宇多丸)さあ、それでは行きますかね。

(山本匠晃)いよいよ宇多丸さんのシネマランキング2018、発表です。まずは第10位から第4位まで一気に発表、お願いします!

(宇多丸)第10位『ブラックパンサー』! ワカンダ・フォーエバー!
第9位『若おかみは小学生!』。おっこさんフォーエバー!
第8位『斬、』。杢之進フォーエバー!
第7位『スリー・ビルボード』!
第6位『愛しのアイリーン』! 岩男フォーエバー!
第5位『デトロイト』!
第4位『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』! イーサン・ハントフォーエバー!

(山本匠晃)でしょうねえ(笑)。

(宇多丸)ということで、ゲルよりも液状化が進んでいる10位から4位まで発表いたしました。さあ、ということで、いかがですか? 山本さん。もちろん山本さんのベストテンとは全然違うんでしょうけども。ということで、ちょっと10位から4位まで行ってみたいと思います。ただね、本当にここから先、部門別賞をやっていくとみなさん「ああ、そっちに入っていたのか」みたいなのもあると思いますので。まあ『ブラックパンサー』、これははっきり言ってだからここから先は全部1位なんですよ。全部1位なんですよね。

(山本匠晃)フフフ、そういうことですか(笑)。

第10位『ブラックパンサー』

TBSラジオ ときめくときを。
ラジオ放送局「TBSラジオ」のサイト。TBSラジオの周波数は。PCやスマートフォンではradiko(ラジコ)でもお聴きになれます。全国のラジオ34局ネットワークJRN(JapanRadioNetwork)のキーステーション。記事や番組内容、...

(宇多丸)あの、まあこれは説明するまでもないですけど、そういう黒人ヒーローが……みたいなところはちょっと置いておいても、僕にとってやっぱりあのライアン・クーグラーという監督はすごく思い入れが強い。やっぱり『クリード チャンプを継ぐ男』の監督で、その『クリード』におけるコンラン戦なんですよ、彼の『ブラックパンサー』っていうのは。要するにインディーで1本しか撮っていない監督が抜擢されて、まずあの中盤の試合に勝つっていうところが『クリード』という作品なんですよ。で、映画『クリード』内で最後、チャンピオン・コンラン戦がライアン・クーグラー監督にとっての『ブラックパンサー』。

だからちょっと自分の身の丈よりも上のところにいきなり勝負に行って。それで見事大健闘というか……まあ、『ブラックパンサー』は大勝利ですけども。それがこの作品でもあって。やっぱり「俺たちのライアン・クーグラー」っていうのは外せないあたりでした。ちょっとね、そのリスナーランキングで投票フォームのエラーとかあって残念なことになりましたが、10位に入れさせていただきました。そして第9位、『若おかみは小学生!』。

(山本匠晃)はい。

第9位『若おかみは小学生!』

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これは、まあ素晴らしい作品だっていうことは評の中でも言いましたけど、なんて言うか、やっぱりノーマークだった世界みたいなものですごいクオリティーのものを見た時の喜びっていうか。このコーナーをやってるならではの喜びっていうんですかね。自分で好きなものだけ選んでたら絶対に見ていない……たとえ高坂希太郎さんの作品とはいえ、やっぱり見るのは後回しになっていたに違いないけど、見たらやっぱりスーパークオリティーな上、やっぱり僕はこの作品、全体にベストテンの下の方の作品を選ぶ基準は僕なりにワンテーマあって。その世界が他者とか分断っていうものに対して、その暗黒面を描いた作品とポジティブ面。それをどう克服していくか?っていうのを描いてるっていうのがあって。

『ブラックパンサー』にももちろんそれがありますし、『若おかみ』もやっぱり結局おっこちゃんが自分の苦しみの根源を作ったその巨大な他者と対峙しなきゃいけないっていうところがクライマックスになっていますよね? で、そこから先にまた進んでいくっていう、これもやっぱりその他者とか分断とかっていうのに対するひとつの回答だっていうような見方もできるなという。要するに、いまの時代にふさわしい作品だっていうことだと思います。そして続きまして8位、塚本晋也監督の『斬、』。先週ムービーウォッチメンでやったばっかりですね。

第8位『斬、』

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(宇多丸)とにかく僕、『野火』以降の塚本晋也さんのキレッキレぶりにかなりやられているというか。そういうのがまずひとつ、大きいのと、僕がいま言ったそういう分断とか、他者との恐怖から来る憎悪の連鎖とか、そういう本当にやっぱりいま作られるべき作品だっていうのもあるし。という部分ですかね。まあ、詳しくは、もう先週やったばっかりなんでいいや(笑)。聞いてください。先週やったばっかりだからの順位っていうところもちょっとあります。

(山本匠晃)フフフ(笑)。

(宇多丸)つい先週まで付き合っていた女なんで。はい。第7位、『スリー・ビルボード』。

第7位『スリー・ビルボード』

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『スリー・ビルボード』はまあまあ、僕がここでいちいち言うまでもなく、昨年のアカデミー賞賞レースのね、結局『シェイプ・オブ・ウォーター』に持っていかれちゃいましたけど、僕的にはもう作品賞にふさわしい作品だという風にも思っております。そうそう。だから作品賞を取れなかったけど僕的にはこれかなっていうところで押しておくみたいな、そういう意味を込めてね、これは逆に評論したのがだいぶ前なので、言うことをだいぶ忘れています(笑)。でも、僕がいま言ったような今日的なテーマっていうものに対する最良の一作でもありますよね。そして第6位は『愛しのアイリーン』。

第6位『愛しのアイリーン』

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これもね、絶対に相容れなかった他者同士が最終的にバディ化とまでは行かないですけどね、お互いの通じる部分を見つけるというラストでもありますし。なんと言ってもこれはですね、ラブシーンですね。もうちょっと忘れられないな、あの中盤のキスシーンと後半のすごく暗黒のセックスシーンですけど。暗黒っていうか、ギリギリのどん底の中でもがいて、相手を捕まえるかのような……みたいな。ああいうの、弱いんですよね。あのキスシーンはちょっと……吉田恵輔さんがもともと好きだっていうのもありますけども。特に吉田恵輔さんのある意味、ちょっとキャリア上のひとつの区切りとなるような、集大成的な一作でもあるんじゃないでしょうか。

『愛しのアイリーン』に関しては、これがすごい嫌いだって言う人がいてもおかしくない映画だとも思います。でも、だからこそ僕はやっぱり自分のベストテンには入れるっていう。嫌いだっていう人はいると思いますけど、でも俺は大事なんですっていう感じの作品ですね。だから映画とその映画の評価って似ますね。『愛しのアイリーン』自体がその、すごい憎しみにもあふれているんだけど、でもここだけは分かってる何か、みたいなさ。そういう話じゃないですか。そして第5位、『デトロイト』。

第5位『デトロイト』

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これは実際見たのは去年。去年の暮れぐらいに文春エンタの去年の点数をつけるやつで見ていて。で、その時点よりもどんどんどんどんその後に自分の中で評価が上がっていった作品なんですけども。キャスリン・ビグローの中でも僕は最高傑作だという風に思うし。まあ、僕がいま言っていたような他者とか分断とかっていうことに対して非常に恐ろしい事態が起きてしまう話ですけど。これがすごくアカデミーの賞レースとかで全然無視されちゃったんだけど。あまりにもちょっとエグいっていうのもあったんでしょうけど。僕的にはそれも納得できないっていうのも含めて、「俺は『デトロイト』を支持します!」みたいな。まあ、俺のベストテンなんで。シェフが「おう、まずは一口目、『デトロイト』を食ってくだせえ! お客さん! まず一口目はこれでお願いします!」っていうね(笑)。

(山本匠晃)「俺は今日、これを出したい!」っていう(笑)。

(宇多丸)「サビ抜きとか、許さねえ! 食えねえガキは帰れ!」みたいな(笑)。そういう感じですね(笑)。第4位、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』。

第4位『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』

TBSラジオ ときめくときを。
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(宇多丸)まあ、言うまでもなく僕がいかに、特にクリストファー・マッカリー&トム・クルーズコンビというのを愛してるか?っていうはもうここ数年のランキングを聞いていただいている方ならお分かりだと思います。どれぐらいの評価をしてるか?っていうのはもう評を聞いていただきたいんですけど。だからね、たとえばこれに関してほら、撮影がトムに振り回されて。なんか「ストーリーが穴だらけだ」みたいなね、そういうことを言われると普通に俺、めちゃめちゃイラッとしてますから。

「はあ? 見せ場のためにストーリーを作るって、普通じゃね、そんなの? どんな映画だってそうじゃね? こんなもん、エンターテイメント映画なんて。じゃあ、あれですか? (『スター・ウォーズ』の)デス・スターのあのトレンチの中をくぐるの、あれはだってああいう見せ場を作りたいから作っているんじゃないんですか!?」みたいな(笑)。

(山本匠晃)フハハハハハハッ!

(宇多丸)「『007』の見せ場とか、全部そういうもんじゃないんですか!?」みたいな、そういう感じですよね。とにかく、もういまのトムに感謝しないやつはもうダメですね。全員もう死あるのみっていう(笑)。

(山本匠晃)殺されるんだ……(笑)。

(宇多丸)いつもの放送に比べるとだいぶ言葉のキメが粗くなっている(笑)。まあ、そんなお祭りの夜でございます。こんな感じで4位まで発表してまいりました。残すところはトップ3なんですけども……。

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