宇多丸が選ぶ 2017年映画ベスト10

宇多丸が選ぶ 2017年映画ベスト10 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の中で番組の映画評コーナーで2017年に扱った49本の映画の中からベスト10本を選び、ランキングを発表していました。

(宇多丸)今夜は年末恒例の特別企画、ライムスター宇多丸のシネマランキング2017をお届けしています。ということでね、リスナーのみなさまからのランキング、そして高橋洋二さんからのランキングをうかがって、いよいよ僭越ながら私の今年、このムービーウォッチメンで扱いました49本の中から上位10位を発表するというね……するのか、しないのか? 私はもう映画に順位をつけるという、こういう行為そのものに異を唱えたい。なんなら、もういいとか悪いとか、そういうことは言いたくない。そういう気持ちでいっぱいです。そういう、断腸の思いで(笑)。「うるせーよ!」っていうね。

でもまあ、今年はぶっちゃけめちゃめちゃ良かったです。どれもこれも。私の評を聞いていただければわかりますが、どれもこれもすごく大変に楽しみました。なので、選ぶのは非常に難航しつつも、いろいろと何週間も考えましたが、「まあ、これでいいだろう」という……順位、いいのか? いいのか? いい……のか? よし、行きましょうかね。それでは行きます。10位から6位までの発表です!

10位:『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』
9位:『沈黙 サイレンス』
8位:『SING/シング』
7位:『パターソン』
6位:『ハクソー・リッジ』

すいませんね。直前まで「ああでもない、こうでもない」ってやっていて、僕の手元の方と順位を変えたのを忘れていました。(※発表の際に9位と8位を入れ替えて発表していました)。ということで、10位『KUBO』、9位『沈黙 サイレンス』、8位『SING』、7位『パターソン』、6位『ハクソー・リッジ』という順番になっております。さあ、ということは残るはベスト5ですよね。とりあえず、まずその順位の話をさせていただきましょう。

10位:『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』

TBSラジオ ときめくときを。
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まず『KUBO』。「ベスト級がまた来ちゃった」なんてことをついこの間、評したばっかりですよね。ライカという素晴らしいスタジオによる文句なしの……あの、みなさんに言っておきますよ。今年はね、15位から上は全部1位です! だからもうここは1位なんです。とっくに。あとで15位までの次点も言いますけども、特にもう10位から上は1位です! だから、1位『KUBO』! ということでございます(笑)。もちろんだからこれをトップに挙げる方がいても僕は大賛成という素晴らしい作品でした。それこそ、物語を語ることの意義を……『最後のジェダイ』とかにもそういう話は出てきましたけど。それの最上の例というか。それを見させていただいたんじゃないでしょうか。

ちなみに、高橋洋二さんと同じく今年は日本映画ね、上位に入ってくるか?っていうのはあるんですけども。『KUBO』と『沈黙』は日本映画です。特に『沈黙』は日本人俳優があれだけ出ていて大活躍しているんですから。これはもう単に監督がアメリカ人というだけの日本映画です。それでいいです。ということでございます。『KUBO』、素晴らしかったですね。

9位:『沈黙 サイレンス』

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『沈黙』はね、今年の最初の方に扱った作品なので、最初の方の作品って不利だったりするじゃないですか。なんだけど、やっぱりいろいろと思い返す中で、言いましたけどもスコセッシの宗教物路線の中で僕は頭ひとつ抜けた……スコセッシのフィルモグラフィー全体の中でも、僕は結構上の方に来る作品じゃないかなと思っていて。だから、これが9位でいいのかな?っていうぐらいの感じなんですけども。

それこそ、アンドリュー・ガーフィールド、そしてアダム・ドライバー。2人とも見事な演技を見せているし、それ以上に日本人チームが本当に素晴らしい演技の数々。浅野忠信さん、そして何より窪塚洋介くんが素晴らしかった。なにしろ映画としての、それこそ1個1個のクオリティーの高さ。やっぱり、ねえ。「これが映画だ!」っていうものを見せていただいている感じがしますね。みなさん、いかがでしょうか? 心が洗われるようでございますって、そんな爽やかな映画じゃないですけどね。厳しい映画ですけどね。

8位:『SING/シング』

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第8位、『SING』。これこそ、まさに当時『コクソン』『お嬢さん』『アシュラ』ってね、素晴らしい韓国映画が……たしかに『コクソン』『お嬢さん』、ここで扱っていればベストテン入りしてくるような本当に素晴らしい作品でしたが、『SING』はめちゃめちゃ見てよかったですし。これ、たぶん後世に残っていく作品になるだろうなと僕は思っています。いろんな人にも勧めています。Mummy-D親子が見に行って、子供たちが終わりの方で「あっ、お父さん、泣いてる~」って。ズーズコ、ズーズコいっちゃったみたいですけどね。はい。

万人が見て楽しめるエンターテイメントでありながら、評の中でも言った通り場面場面で描かれる笑いの感情が単色じゃない感じというか。常に泣き笑いだったりする感じとか、とても大人な作品だという風に思います。大切な一本になりました。見れてよかったです。『SING』でございます。

7位:『パターソン』

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そして7位、『パターソン』。先ほど、洋二さんもおっしゃってましたけども、まあ1位ですね。いわゆるね、これは1位です。さっきの(リスナーの)メールでもハッとさせられましたね。「俺の黄金コース映画じゃないか」と。ターンと来て、ターンと来て、ターン、ターン、ドーン!って。ある時はそのターン、ターン、ドーン! を崩さざるをえないような日常になってしまう。だから、ねえ、せのちん(妹尾匡夫)さん。ターン、ターン、ドーン! も繰り返しじゃないんですよ。

なに、首を横に振っているんですか? やだなあ、もう。『パターソン』を見直してくださいよね。ジム・ジャームッシュのフィルモグラフィーの中でもとても重要性の高い素晴らしい作品となったんじゃないでしょうか。あと、私自身が詩作を生業としているという、これも非常に大きなポイントだったかもしれません。ただ、もうちょっと上でも本当によかったぐらいの作品ですね。

6位:『ハクソー・リッジ』

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6位、『ハクソー・リッジ』。これもね、1位です! 全然1位です。メル・ギブソンはね、私が最も映画監督として敬愛する作家ですし、その10年ぶりの作品。もう堂々たる作品じゃないでしょうか。これも評の中で言った通りなんですけど、主人公が敬虔なクリスチャンであるというか、非常に変わった宗派のクリスチャンであるということで、メル・ギブ自身の信仰のことと重ねてすごく壁を勝手に感じちゃっている人もいるかもしれないけど。言っておかなくちゃいけないのは、メル・ギブとこの主人公の信じている宗派は全然違いますからね。だからその時点ですでに、ある凝り固まった視点の話ではなくてもっとユニバーサルな話をしているんだというのが明らかだと思うんですけど。

まあ、詳しくは私の評を、みやーんさんによる公式書き起こし。渾身のやつが上がっておりますので、こちらを読んでいただければ。ただ、ここにですよ。ここにメル・ギブが来てしまったことで、私もたしかに悩みました。これ、5位とずーっと入れ替えたりしていたんで。それもあって、上位5位を当てるのはなかなか難しいんじゃないかなと。『ハクソー・リッジ』が6位に来てしまったことで、「ほぼほぼ上位5位を当てるのは不可能」と私が断言したのもね。そうなってきてしまったんじゃないかなと思いますけどね。

さあ、といったあたりでベスト5。こちらを発表してしましょうか。(予想で)9万円を当てた人はいるんでしょうか? 昨年は作品は当てた人がいるんですけどね。まあ、ちょっと今年は昨年より数倍難しくなってきていると思いますが、果たして当たっている人はいるのかどうか。私のですよ、私、宇多丸が選んだ2017年度のシネマランキング、上位5位。ベスト5、発表いたします!

5位:『ありがとう、トニ・エルドマン』
4位:『エル ELLE』
3位:『アトミック・ブロンド』
2位:『ムーンライト』
1位:『ドリーム』

5位:『ありがとう、トニ・エルドマン』

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よいしょ~! でもねえ、すいませんね。今年は僕、本当に悩みました。『ハクソー・リッジ』と『ありがとう、トニ・エルドマン』、非常に悩んだんですが……かろうじて『トニ・エルドマン』の方を上にしようかなと思ったのは、やっぱり今年はどちらかと言うとミニシアター的なところで見たものに深い感動を得るということが多かったというのと、これはドイツ映画ですもんね。普段、これまでは扱っていないようなところでも、「ああ、こんなレベルが高いものがあるのか」っていうのでね、勉強させていただきましたというところもありますし。やっぱり、『ありがとう、トニ・エルドマン』は単色じゃないというところですかね。描かれているものがものすごく……しかも、同じシーンの中でも醸し出される情感みたいなものがどんどんどんどん変わっていったりとか。

単純にひとつの言葉では表現できないような感情みたいなものを……なんだけれども同時に、誰が見ても笑っちゃったりとか。この映画を見れば誰でも、何段階か。「あっ! あっ! あっ!」って驚く場面が何回もあって。非常に愉快な、エンターテイメントな作品としても成立させていていて、しかもそこに現在のヨーロッパの社会情勢とか、その中で女性が働いているということとか。しかも、外国で働いている女性とか。あと、ドイツにおける世代間の問題とか。すごくいろんなものが浮き上がったりしてきて、とにかく面白いのにめっちゃ豊かだなというか。とても豊かな映画的土壌のようなものを見て、大変に感銘を受けました。

特に、この映画の評をするので、自分なりにずっと考えていってどんどん価値が上がってきたというか。ただ受動的に見ているだけだったらピンと来なかったところもあるかもしれないんだけど、ちゃんと考えたりしていくうちに、「やっぱりこれはすげーな!」っていう風に思った作品です。

4位:『エル ELLE』

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4位、『エル ELLE』。まあね、ポール・バーホーベンがついに牙をむいた……牙、むきすぎでしょ?っていうね。ほぼほぼ全方位的に牙をむいているというか。まあ、攻めてますよね。どう攻めているかは評の中を見てくださいよ。ただこれも、やっぱり言っていることは超過激なメッセージですよね。本当に、いろんな人から非難を浴びることも覚悟な上の過激なメッセージをしながらも、同時に誰が見ても面白いじゃないですか。誰が見ても面白いサスペンスであり、メロドラマにもなっているしというか。で、シレッと終わる。「普通の映画みたいな顔をして終わってるんじゃねえよ!」みたいな(笑)。「なんなら、さわやかな感じで終わってるんじゃねえよ! 怖えんだよ、ジジイ!」みたいな。

たとえばほら、劇中でいちばんタチが悪いかもしれないある人物のサラリとした流し方みたいな。「いや、流してんじゃねえよ!」みたいなさのとかも含めて、見た目以上に毒が強いんですよね。気がつくと全身に毒が回っているというような、本当にすさまじい作品でございました。ポール・バーホーベンの映画はもう年一で見たい。全ての映画をポール・バーホーベンが撮ればいいのにっていうね。そうなったら大変困ります……ということでございました。

3位:『アトミック・ブロンド』

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はい。ここ、3位。ここをみなさんね、例によって「ああーっ」って思っている方がいるかもしれませんね。『アトミック・ブロンド』。これ、何年か前、2015年ですか? 『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』を(ランキング2位に)した時の、なかなか『ミッション:インポッシブル』を僕の予想に入れてくる人がいなかったんですけど……いやいや、俺がどんだけ『ローグ・ネイション』を好きだと思ってんの?っていう。それと同じで、俺がどんだけ『アトミック・ブロンド』を好きだと思ってんの?っていう。まあ、「知らねえわ!」ってことだと思うんですけど。

でもね、ちょいちょい……もう評論終わっているのに、オープニングトークで俺のツアーのことを話している時に「『アトミック・ブロンド』のサントラを聞きながら出かけました」とか。

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宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の中でRHYMESTERの熊本、鹿児島、那覇ツアーで起きた事件と、鹿児島、那覇で編み出した黄金コースについて話していました。 (宇多丸)あとはですね、今週というか、いま私はずっと本業のヒップホップグループ...

あとね、これもみなさん、加味してください。「『ジョン・ウィック チャプター2』が入ってないじゃないか?」って思ったでしょう? これはもう、吸収合併したんです。(スタントアクション会社)87Elevenの見事な仕事として吸収合併されているから。だから合体しているから、もう3位なんですよね(笑)。フハハハッ! もう合体しているから3位なんですよ。だからそこに、シークレットに『ジョン・ウィック チャプター2』があるというね。

ただその、軽快なというかド派手なアクション映画というのも間違いないんだけど、同時にその中に時代背景であるとか、決して単色ではない人物の感情であるとか。実はそこに織り込まれているものっていうものはものすごく重層的で味わい深いし。あと、この音楽のチョイスとかも含めて、映画全体のデザインっていうのかな? 僕はやっぱりアクションのすごさも含めて、全部含めてもうアート的な領域に達しているというか。この映画、だから終わった瞬間に「なんて見事なパッケージングなんだろう」っていう感じで本当に舌を巻いて。僕はもう結構、すごく思い返しては「あれは本当に良かった」って思うぐらい。

いろんな場面を……たとえば、あいつの独白。「ベルリン、最高!」っていうさ。『池袋ウエストゲートパーク』のラストみたいな叫びを残したあいつの心情とかを考えたりとか、いろいろと思い返すことが多いですね。大好きな作品でございますね。はい。合体しての3位(笑)。

2位:『ムーンライト』

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そしてですね、実際に2位と1位がずーっとウジウジしていたんですけども。2位『ムーンライト』、1位『ドリーム』にさせていただきましたが。あのね、『ムーンライト』は最高です。本当に素晴らしかったですし、個人的になんて言うのかな? やっぱり心の奥に……決してLGBT的な意味ではなくですけど、やっぱりなんか疎外感とか孤独とかを感じながら、でもその人生に希望を見出そうとした瞬間がある人であれば、誰でもこれは刺さるというか、ということじゃないかなという。それで結構いい歳まで来ちゃいました、みたいな人だと。だから僕自身がヒップホップ、ラップ業界。強面業界で、それなりの強面に振る舞う瞬間もあるけども……みたいな。

あと、その評の中でも言ったけど、僕がすごく愛でてきたアメリカの強面のラッパーたちっていうのの向こうにある痛みみたいなものを見た気がして、すごく……「とても大切な一本」みたいなのがふさわしいんですね。もう思い出すだけで涙ぐんでしまうぐらいなんだけども。ただですね、『ムーンライト』に関しては作品そのものの価値とは何の関係もない、とあるネックがありまして。アカデミー作品賞……(笑)。「アカデミー作品賞を1位のするランキングって、バカっぽくね?」みたいな、余計なことを考えだしちゃったっていうのがひとつと、あとやっぱり僕が1位にしたということでいろんな人が「ああ、宇多丸の1位なんだって」って、よくわからないで見る人が増えるじゃないですか。で、そういうところにこの繊細な作品を晒したくない。

要するに、結構見る人を選ぶ映画だし、すごいこれこそ、作りがザ・インディー映画だからさ。言ってみれば不親切なというか、そういう作りだし。なので、「宇多丸の1位だから」っていうので、なおかつ「アカデミー作品賞だから」みたいな感じでバレたくない(笑)、みたいな。「この子はそっとしておいてくれ」みたいな。「この子のことは、ちょっと放っておいてくれないか? 見つける人が見つけてくれないか?」みたいな、そんな感じもあって、やっぱり2位かなと。

1位:『ドリーム』

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で、それに対して1位の『ドリーム』。これはね、もうどこに出しても恥ずかしくないというか。まあ、これはある意味ズルいのよ。これを1位にするっていうのは。つまり、どこからも文句が出ない1位っていうか。よもやみなさんね、いくら『最後のジェダイ』が好きだからって、これはだってこれよりも上っていうことはないじゃないですか。それは。ねえ。まさか『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2』、これより……いや、いい映画ですよ。でも『ドリーム』より上っていうことはないんじゃないでしょうかね?

おかしいかな? 俺、言っていること?……おかしいかもね(笑)。ここはやっぱり『最後のジェダイ』のベニチオ・デル・トロみたいに「お前は間違っている!」みたいに言われて、「そうかもな」って去っていったじゃないですか。それです。その感じです。まあでも、『ドリーム』は文句なしに今年僕が見た49本の中ではいちばん感動もしましたし、質も高いなと思いましたし。そして、やっぱり2017年の今年――映画としては2016年の作品ですけど――いま、作られるべき映画という意義深さも含めて、まあもう本当に隅から隅まで文句のつけようもないほどこの作品、好きです。ということで、1位で私自身も納得でございます。

なので、もし見ていない方というのがいたら、これはもう本当に……メンバーとかもしつこく言ってもね、嫌ですねー。見ませんねー。見ないやつっていうのはいつまでたっても見ない。しょうがない。俺は……なんだろう? 今日の俺のこの感じはね?(笑)。不思議に思われる方、いるかもしれませんけどもね、やりきった感というのでしょうかね?

次点作品

ちなみに、残りの時間で大慌てで、10位『KUBO』から下なんですけども。ちょっと、僕としてはベストテン圏内。全然これはベストテン圏内で、気持ちとしてはベストテンに入れたいという作品。次点みたいな感じで、ちょっと順不同というつもりで挙げさせてください。まず、これは他の人はあまり挙げていないんですけど、日本映画で『サバイバルファミリー』。矢口史靖さん。

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これは、日本映画でできるパニック物というか巨大な状況物として、すごく日本的なパニックのあり方というか、そういうものも描いていて。要は、矢口さんのいままでのコメディーというか、あれの中でも……まあ、コメディーはコメディーなんだけど、非常に怖いというか。本当に不穏な空気が全編に漂っている作品で。

あと、クライマックスの1個の映画的飛躍。「ああ、これが映画だ!」っていう飛躍が1個あって、僕はすっごい『サバイバルファミリー』は好きだなと思います。なので、これは全然ベストテン圏内の気分です。あと、『夜は短し歩けよ乙女』。

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湯浅政明監督久々の劇場作品ということもあって、湯浅節全開というのもあるし。全く、日本的アニメの文脈というのとも違うし、もちろん他の僕がベストテンに入れた「質が高い」と言っているようなものとは文法から、根本から違うような感じなんだけど。だから「湯浅政明作品」としか言いようがない何かなんだけど。

やっぱり、でもそれと同時に、めっちゃアートなのに……そう、めっちゃアートなのにめちゃくちゃエンターテイメント。笑えるし、くっだらねえし。でも、最終的に与えられるものの射程の長さというか。やっぱりさ、世界が変わって見えるというか。すごく、この映画を見た後だと自分の暮らしがちょっとだけ豊かになるというか、人生がちょっとだけ豊かになった気がするというか。人生にちゃんとフィードバックしてくれる作品という意味で、とても最高だと思います。これもベストです。

あと、次点。『ナイスガイズ!』『ザ・コンサルタント』。

https://www.tbsradio.jp/126362
https://www.tbsradio.jp/119698

すいません。偶然にもこれはリスナー投票の10位、9位でもありますし。こちらも全然私、愛してやまない作品でございます。といったあたりで、長々とお送りしてまいりましたが、ライムスター宇多丸のシネマランキング2017、全て発表が終わりました。お知らせの後は、予想ウォーZの結果発表と、今年はワーストがあるのか? ないのか? を含めた発表でございます。

(中略)

シネマランキング、いかがだったでしょうか? すいませんね、いつも以上にある意味グダグダなところがある放送で申し訳ありませんでした。ということで、ライムスター宇多丸のシネマランキング2017、今年のワースト1位。昨年は該当作なしでしたが、今年は……『最後のジェダイ』とは言いません。今年も該当作なしです。すいません。そんなにひどいのには当たらなかったです。今日の『最後のジェダイ』の私の剣幕は大変な勢いだったですけど、愛情ゆえだということはわかっていただけるのではないかと。あと、やっぱりさっきも言ったけど、カイロ・レンのシーンとかはめちゃめちゃいいところもいっぱいあったので。全然、そんなワーストとか言うほどじゃあないんで。

すいません。私、要はガチャが下手なんです。全然それ級のやつも入っていたはずなんだけど、ガチャが下手で申し訳ありませんでした。そしてシネマランキング予想ウォーZ、私のシネマランキング上位ベスト5をピタリと当てた人はいたのか? 発表いたします。予想ウォーZ、今年の正解者は……でしょうね。無し! ということでございましたー。すいませんね。本当にすいません。あとね、『トニ・エルドマン』とかは見ていない人も結構……『ドリーム』とかだってなんか、(感想)メールが少なかったりしたじゃない? だから意外と見ていない人も多かったというのもあるかもしれませんね。ぜひみなさんも、ユニバース物もいいけども、そういうのもひとつお願いします。

<書き起こしおわり>

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