宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の映画評論コーナー ムービーウォッチメンで2014年に扱った映画48本の中からランキングを作成。ベスト10とワースト1を発表していました。
宇多丸が選ぶ 2014年映画ランキング 6位-10位
(宇多丸)TBSラジオ ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル パーソナリティーの宇多丸です。今夜はライムスター宇多丸のシネマランキング2014をお届けしております。ここまでは私が勝手に考えた部門別賞、そして放送作家高橋洋二さん、NEWS 加藤シゲアキさんのベスト映画を伺ってまいりましたが、こっからは私、宇多丸の第10位から第6位まで。今年、この番組で扱った48本の作品のうちの第10位から第6位まで。私のランキングを発表していきましょう。ベスト5予想に応募された方はこっから発表されるランキング、お聞き逃しなく!こっから下に入ったら、『ああ、これは外れていた』ってわかっちゃいますからね。さあ、行ってみましょう。ライムスター宇多丸のシネマランキング、2014年度。第10位から6位まで、発表です!
では第10位 『WOOD JOB! 神去なあなあ日常』!
第9位 『イコライザー』!
第8位 『LEGO ムービー』!
第7位 『6才のボクが、大人になるまで。』!
そして第6位 『her/世界でひとつの彼女』!
さあ、ということで、もういってしまいました。あの、なんていうの?量子力学的には、確定されてしまいましたね。というのは、私、毎年そうなんですけど。ずーっとギリギリまで、実はね、ちょっとCMかかっていたりね、そういう間も『あー!こうか?こうか?』とか言って、入れ替えとかをずーっと延々繰り返して。実は先ほどもギリギリで『こうか?こうか?』って。それをさんざんやった結果。特にね、10位-6位って意外と上位よりもこう、ね。迷うんですよね。もうどちらも、上と甲乙つけがたいみたいなところがありますんでね。はい。そういう風になってしまうということなんですね。
ちなみにその、10位の下に次点というのもあるんですけど、これはむしろ後で言った方がいいのかな?ベスト5。ね、発表してから後の方がいいかもしれないですね。はい。『あの作品が入ってないじゃないか!』みたいなのは、上に入っている可能性もございますからね。楽しみにしていただきたいと思います。じゃあ、1作ずつちょっと話していこうかな?
まず、10位。『WOOD JOB! 神去なあなあ日常』。
矢口史靖監督作品でございます。ええと、これはですね・・・いや、日本映画でコメディーで、今年扱った中でっていうのもあるし。まあ矢口史靖作品葉ですね、いい時と悪い時と、私の場合非常に差がございまして。前作がまあ、非常に私的にはちょっとね。『ロボジー』があれ?っという感じがありました。その前の『ハッピーフライト』は非常に大好きで。いまにして思えば、矢口さんの最高傑作ぐらいに思っているんですが。
WOOD JOB!はですね、矢口さんのいままでのあれの中で、いちばん本当にバランスもいいし。青春映画として非常に王道の部分もありつつですね、なんて言うんですかね?日本人というのの、モンド映画的に日本人を見ると・・・みたいなね。土着的なというかですね。ライムスターも、最近発表された曲で『SOMINSAI(蘇民祭)』なんて曲がございますけど。ある意味、ちょっとこっからもインスパイアされているかもしれないですね。そういう意味ではね。日本人のちょっと土着的なというかですね、モンド映画的な側面というかですね。
はい。あらゆる意味で非常によくできてたと思います。まあ、それも含めてですね、あれですね。この作品のBlu-rayにですね、僕、別に作品作っている側じゃないのに、解説で呼ばれて。で、矢口さんにですね、『けなしてくれ』っていう風に。解説で、『とにかく宇多丸さん、ビシビシけなしてくれ』なんてことを言われたんですけど。『いや、これに関してはそんな、そこまでけなすところは・・・まあ、あえて言えば、クライマックス手前のミスリードがちょっと強引って感じですかね?』とか偉そうなことを言っちゃったんですが。
はい。まあ、そんな欠点はどうでもよくなるぐらいですね、何度も思い出してますし。あと、やっぱりですね、伊藤英明史上最高の英明ですね。英明史上最高の英明。英明による英明のための英明の映画という。そういう側面も含めまして、本当に素晴らしかったと。役者陣もそれぞれ素晴らしいですし。日本のコメディー映画、ここまでできる!というね。あと、なんて言うのかな?あの、日本でしか作られないというかね。ような部分も含め、いいんじゃないでしょうか。はい。
9位。『イコライザー』。
ちょっと入れさせていただきました。あのー、ですね。好きなんですわ、としか言いようがないですね。やっぱりロバート・マッコールさんというキャラクター造形。もともとのテレビシリーズとはまったく違うキャラクター造形ですけど。デンゼル・ワシントンがまず素晴らしいですね。やっぱりね。ちょっとこのサイコ感があるキャラクター造形、全部デンゼルが持ってきたものらしいですし。
特にね、やっぱりさっきあの、(高橋)洋二さんともね、合間の会話で盛り上がってたんですけど。やっぱりあの、『SORRY』っていうかね。さっきの『ベストオブ 人を殺して捨て台詞』の『ごめん(SORRY)』っていうのは、奥さんにおそらく言ってるんだろうと思われるけど。ただ、殺しちゃった相手に言ってるとも取りかねないぐらいのちょっとしたサイコ感。その部屋にいるやつらを全員皆殺しにする場面なんですけど。そこが始まる前ですよね。ドアをバタン、バタン、バタン!あそこですよ。もう最高ですね!なにを言ってるかわからないと思いますけど。見てない方は(笑)。
はい。あと、やっぱり評の中でも言いましたけど、その前の30分ほどのですね、非常に静かな描写。彼が自分の中のサイコ性を押さえつけるように静かに暮らしている描写なんかも、まあ泣けてくるしですね。でも、同僚には優しくしてて。思い出すだに最高の男、ロバート・マッコールが描かれたイコライザー。これ、もう100作作っていただきたい!というね、思いを込めて。あと、アントワン・フークアの、押さえるところ。丁寧なところとケレンが効いているところの、さっきね、『中村主水ばりに』っていうのがありましたけど。まさにその通りで。『いよーっ!』っていう感じでね、よろしかったんじゃないでしょうか。イコライザー。これはもう本当にジャンル映画でも、やっぱり好きなものは好きなんだというね、あたりじゃないでしょうかね。
『LEGOムービー』。
8位にさせていただきましたがね。はっきり言って、6・7・8はもう本当に、どれが上でも構わないし。なんなら、どれもベスト1でもいいぐらいの作品だと思います。その、先ほどの洋二さんのね、ありましたけど。なにをどう語るか?という戦略の部分。たとえば今回のLEGOムービーで言うならば、LEGOで長編映画を作るのならば、こういう考え方で、こう見せるしかないだろうというのに従って作った結果、誰も見たことがないタイプの映画になってしまったというね。まあ、子ども向け映画と侮るなかれというかですね。
この作品が見据えている射程がとんでもなく遠いところまでありますよというね、あたり。本当に素晴らしい作品じゃないでしょうか。もちろん、ね。フィル・ロードとクリストファー・ミラーのコンビですから。ギャグのしょうもなさも含めて素晴らしい。『22 JUMP STREET』も早く見たい!といったところでございます。
『6才のボクが、大人になるまで。』。
ねえ、7位にさせていただきましたが。暫定的にはね。まあ、リチャード・リンクレイターでも、リチャード・リンクレイター最高傑作的な言い方してもいいぐらいですよね。本当に。だと思います。ちなみにだから、『ビフォア・ミッドナイト』も素晴らしかったですけど、ここに、横にぼんやりといる感じだと思ってください。ビフォア・ミッドナイトもいるという感じだと思います。
でもやっぱり、ケタ違いっていうか。こんな映画、2度とね、見れるかわかんないっていうタイプの映画ですし。どんなタイプの映画かは、ぜひ私の評をもう1回、聞き直していただいたりなんか。まだ聞けると思いますんでね。6才のボクが、大人になるまで。素晴らしかったと思います。あ、その後ですね、ちなみにこれに関しては思い出じゃないですけど。個人的なあれで言うと、母親からですね、手紙・・・まあ、ちょいちょい手紙が来るんですよ。なんか見たらしくて。『6才のボクが、見ていきました。いい映画でしたね。出てくる人たちが全員ちゃんと生きていましたね・・・士郎ちゃん』っていうね(笑)。来ておりました。
6位。『her/世界でひとつの彼女』。
先ほども言いましたけど、やっぱりその、まず端的にその映画としてのルックというかですね、全てを計算しつくした。さりげない場面も含めて全てを見事に計算しつくしたそのルックの見事さである、その一方で、ダイアログ劇というか、会話劇でもあるわけですから。全部これを会話で通すという。そこも非常に大胆なところだと思いますし。で、まあさらにこれもそうですね。その先に浮かび上がる射程がとてつもないというかですね。
あの、まあもちろん、SF的な面白さもあるわけですね。最終的にスカーレット・ヨハンソンが声を演じるOS。人工知能的なOSが最終的にどこに行くのか?スカーレット・ヨハンソンはちなみにそういう役が今年、多かったね。『LUCY/ルーシー』といいね。『アンダー・ザ・スキン』といいね。ルーシーなんか最終的にとんでもない存在になっちゃう。まあそういう、似てはいるんだけど、この映画の場合そういうSF的な面白さもあるんだけど。もう一方で、もうちょっと普遍的に、他者と付き合うということみたいな。もう、我々全員が常に直面する問題であり、それのいいところであり、怖いところであり、というようなところまで見据えたですね。なんか、思い出すたびに、いろいろ考えさせられるような作品でございまして。
her/世界でひとつの彼女。この、LEGOムービー、6才のボク、herの順番で迷ったんですけど、うーん・・・まあ、どれでもいいっす!(笑)。ええ、本当に素晴らしかった。ベスト衣装賞とかもherに与えたい感じだと思いますね。ファッションっていうか、服でなんとなくいまの現実とは違うSF感を出すみたいなのも本当に見事でしたしね、という感じですかね。ちなみに、あれですね。6才のボクとher、両方に共通してるのはARCADE FIREの曲ですね。両方ともね、使っているということですね。ARCADE FIREがきてるという感じなんでしょうかね?
はい。といったあたりで10位が『WOOD JOB!』、9位が『イコライザー』、8位LEGOムービー、7位『6才のボクが、大人になるまで。』、6位『her/世界でひとつの彼女』。ここまで発表させていただきました。
(中略)
宇多丸が選ぶ 2014年映画ランキング 5位-1位
(宇多丸)さて、ここからはライムスター宇多丸のシネマランキング。いよいよワースト1とベスト5の発表とさせていただきます。ということでまずはですね、今年はワースト1の方から発表していきますかね?今年、このムービーウォッチメンで扱った48本の中。不名誉にもっていうかね、まああくまで私のチョイスですからね。私がちょっと、人格的にちょっと歪んでいるというね。そういうことを。この偏差を考慮して。ヘイトスピーチです!ね。そういうもんだと思っていただければね、間違いないと思います。それではね、48本のうち、ワースト1。選ばせていただいた作品はこちらでございます。
『サンブンノイチ』!
はい。ということでね、品川さんのね、監督作品でございます。まあ、いままでも割とこう、低評価めね。続けてきてまいりましたが。まあ、サンブンノイチ。ちなみに、サンブンノイチ、実際に評を聞かれた方はわかると思いますけど。褒めているところも褒めているんですよ。たとえば、原作からの脚色の時にですね、ちゃんと一工夫。映画的な一工夫をちゃんとされている。さすが映画好きと言うだけのことはあるなと日ですね。
出演者では田中聖さん。元KAT-TUNの田中聖さん。アクションスキル。非常に格闘スキルがびっくりするぐらいあって。含めて、役者さんとしての存在、たたずまい含めて非常によかったし、もっと田中聖さん主演ものを見たいな!なんて思いましたし。あと、ラストの改変。原作とは変えてるんですけど、非常に突き放した終わり方させていて。これも非常に好ましいなとかですね。自分的に思い返してみると、結構褒めてるんですよ。なんだけど、これがまあワーストに来る・・・他にね、今年そんなに酷いのがなかったっていう。結局、いろいろ当たらなかったんですね。
これ、よくね、『宇多丸が逃げた』とかなんとか言われるんだけど、本当にカプセルを回してやってるんで。それは、あれとか、あれとか、あれとか。それは・・・『ルパン三世』とかやりたかったですけど。ぜんぜんね。『(ルパンのモノマネで)こいつは俺がけなすぜぇ!』って感じでね(笑)。ええ。やりたかったですけど。当たらなかったんだからしょうがないじゃん!っていうことだからね。はい。まあ実際にね、わかりませんけどね。わかりませんよ?わかってますけど。
で、まあサンブンノイチ。これを選ばせていただいたのは、他にそれほど酷いのもなかったっていうのもあるんですけど。やっぱりあの、中盤で出てくる名台詞ですね。あの余計な一言が私にね、本当に・・・私の言葉でいうと、『薄い、浅い、間違いない』。これね、品川映画のね、特徴が全て詰まったね、あれではないかということでございます。今年はワースト1、サンブンノイチとさせていただきました。ちなみに品川さん、いまね、なんかゾンビ映画。もう完成されたのかな?ゾンビ映画なんですからね。これは期待できるんでしょうね。これはもう必ずね、必ず扱わせてね、名誉を回復するようなことになるとね、いいですね。ということでございます。はい。
あと、まあ最近あれですね。大物で、ひっでーのみたいなのがだんだんなくなってきたんですよね。その傾向はあると思いますね。最後、『ガッチャマン』ぐらいかな?本当ね。あ、んなことないか?(小声で)ルパン三世ね・・・はい。ということでございます。さあ、じゃあベスト5。気を取り直してですね、ベスト5の方を発表させていただきます。えー、今年週刊映画時評ムービーウォッチメンで扱った映画48本のうち、栄えある第1位に輝く映画はいったい何なのか?発表いたします!
第5位 『そこのみにて光輝く』!
第4位 『アクト・オブ・キリング』!
第3位 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』!
第2位 『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』!
ということは、第1位は!?
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』!
はい。ということでございます。さあ、みなさん。ベスト5。順位予想、送っていただいた方、正解者はいるんですかね?さっきまで、1人もいなかったということですけどね。あの、作品。そこのみにて光輝く、アクト・オブ・キリング、ウルフ・オブ・ウォール・ストリート、ネブラスカ、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー。5つ作品を当てている方は結構いらっしゃったようですが。さあ、果たして順位まで当っている方はいらっしゃるのかどうか?ということなんですが。順を追って紹介させていただきますかね。はい。
まず、第5位。そこのみにて光輝く。
今年、48本扱った日本映画の中で言うと、私的にはダントツで非常に感銘を受けたというか。素晴らしい作品だったと思います。実際その後ね、モントリオール映画祭でね、最優秀作品的なのに選ばれた。まあ、モントリオール映画祭のチョイスに関しては、僕、前からね、ちょっといろいろ言ってたけど。そこのみにては、たぶんそういう、なにか疑惑を抱くようなパワーバランス的な作品ではないと思うので。たぶん割と、出品したら本当によかったっていう、そういうことじゃないかと私的には思っている。
あと、アカデミーなんだっけ?外国賞の日本映画として、一応エントリーとかされるかどうかか?まだわかんないのか?といったあたりですかね?はい。で、なにが素晴らしいって、呉美保さんという女性監督ですが。あの、まずその、メインの3人のですね、池脇千鶴さんとね、綾野剛さんと、あと菅田(将暉)さんですよね。ダブルのフィリップですよね。なんだけど、その3人のたたずまいというかですね。特に日本の貧困層の描写みたいなのがすごい容赦がない、非常に容赦がない底辺描写と、なんだけどその底辺の中で、お互い頼り合うように、たぐり寄せるように、ふたつの、それこそ他者同士がたぐり寄せるようになるところ。
それとさっきの素晴らしい音楽と、近藤龍人さんの素晴らしい撮影と。函館が舞台で。あと、あれですね。高橋和也さんの中島というですね、どの地方都市にも1人はいるであろう、小権力者というか、小悪党というのか・・・小悪党というか、なんか小さな悪というかね。小さな不正というのの積み重ねのような描写。その中島っていう曲自体もあるんですけど。各キャラクターの曲もすごくいいんですよね。田中拓人さんの曲が。なんていうあたりでございます。はい。ということで、そこのみにて光輝く。日本映画として一応トップクラスに選ばせていただきました。
そして、第4位。アクト・オブ・キリング。
選ばせていただきました。あの、インドネシアでかつて起こった大虐殺の、やった人たちがぜんぜんその国の中で断罪されるどころか、英雄として扱われているという。彼らのかつての悪行を演じさせてみたら、そのうちの1人にちょっと心理的な変化が現れて・・・というあたり。これも評の中で言い尽くしておりますが。まずその、なんて言うんですかね?語られる現実の超現実感というか。あまりにもそれが悲惨な現実すぎて、超現実感があるというのと。それが演じられる、本人たちが嬉々として演じる姿のあまりの間抜けさ。
根本敬さん的というんですかね?根本さんのマンガ的なそういう、現実というものをあまりの残酷さ、残酷さを突き抜けたあたり。そしてその先にある、地獄の底でようやく、かすかに出てくる人間性への希望というにはあまりにもね、ちょっと恐ろしいものですけど。かすかな人間の尊厳っていうかね。特にその、それこそベストエンディング賞でもいいんですけど。『俺はいままで地獄にいた』ということに気づいてしまった男の、まあ絞りだすような、耳を塞ぎたくなる、あの声がかろうじて人間っていうものはちょっと希望を持てるのかな?というようなね、あたりであるというか。とにかく、これももう、2度こういう作品が見れるか?というと、なかなかないんじゃないかというようなね、強烈なドキュメンタリー作品でしたけどね、入れさせていただきました。
そしてまあ、3位。ウルフ・オブ・ウォールストリート。
まず、私の生涯ベスト作品のね、ラインナップの中に必ず入ってくるのがマーティン・スコセッシの『グッドフェローズ』という作品がございまして。先ほど、高橋洋二さんもおっしゃってましたが、スコセッシが久々に、まあ、しまお(まほ)さんの1位が『ヒューゴの不思議な発明』っというね。まさにそのヒューゴの不思議な発明から久々に・・・(笑)。待ってました!というところに帰ってきてくれたというね。要するに、グッドフェローズとか、カジノのタッチに帰ってきてくれた。
しかもそれが、そっちはモロにギャング映画ですけど。ギャングじゃなくて、ある意味経済ギャングの話になったというね、タッチで描く。ウルフ・オブ・ウォールストリート。もう待ってました!というところで、まずは上位に行くのは間違いないあたりなんですが。これはなんですかね?単純にそのグッドフェローズみたいでイエーイ!ってところを越えて、まずそのディカプリオがね、アカデミー賞は逃してしまいましたけど。もう、最高ですね。ディカプリオがランボルギーニにね、よたりながら乗るところ。ディカプリオが、ディカプリオが渾身で演じるミスター・ビーンですよ?(笑)。的なことですけどね。
でも、もちろん起っていることは超不謹慎でもあるとかですね。まあ、そういう忘れがたい名シーンの数々。名シーンと言えば当然ね、マシュー・マコノヒー。そりゃ、『ダラス・バイヤーズクラブ』もいい。『MUD』もいい。『インターステラー』もいい。でも!やっぱりいちばん俺たちの心に残っているのは、『ンーンッ♪』ですよね。『ンーンッ♪』ですよ。『ンーンッ♪』、これ、見てない人にはなんだかわかんないと思いますけど。ぜひね、これ見て頂きたい。
もう5分以内ぐらいしか出てないけれど、もう全体を持っていくというね。ラストのエンディングでも流れますしね。あれがサントラに入ってないということで、ウルフ・オブ・ウォールストリートはベストサントラ賞を逃してしまいましたね。ベスト主題歌賞でもありますけどね。ウルフ・オブ・ウォールストリートね。っていう感じではないでしょうかね。はい。素晴らしい。最っ高に面白い作品を3時間。体感あっという間でございました。
そしてですね、ここがたぶんね、2位にくるのがみんな外しているのかもしれないね。ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅。
アレクサンダー・ペインでございます。まず、ちゃんと僕がいつもですね、いろんなところで言っている、この評の中で言っていることを聞けばですね、僕がアレクサンダー・ペインがどれだけ好きか。どれだけ評価しているかということはもうわかっていると思うんだよね。で、この番組で初めてアレクサンダー・ペインを扱うわけですよ。しかも、それがアレクサンダー・ペイン、やはりこう、最高傑作と言うにふさわしいですね。現状の最高傑作と言うにふさわしい傑作で。
ポイントとしてはですね、やっぱり僕がね、評をしながらね、正直ちょっと泣いてるんですよ。で、鼻をすすってる。その時点でわかれよ!と(笑)。思い出して泣いてるぐらいなんだよっていうね、ことでございます。と言って、でも、先ほどの洋二さんにもありましたけど。決して、偉そうな作品でもなんでもない。本当にもう、しょーもないやつらしか、もう(笑)。『ええっ!?お前、あそこからそんなかかったの!?バカじゃねーの!?』みたいな。しょーもない、あの兄弟。双子のクズ(笑)。あいつらとかですね、もう忘れがたいし。
まあ、いかにアレクサンダー・ペインがですね、もう狙いすました演出をしてるかというあたり、もう1回その評をですね・・・あっ、もう消えちゃってるけどね。まあ、取っておいてくださいよ。だから毎週ちゃんと聞いてくださいよ。聞いていただければと思います。あの、たぶん見てない方もまだ多いと思いますんでね。ぜひちょっと見ていただきたいと思います。普通に楽しい映画でございます。はい。ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅。名作でございました。
そして、正直ですね、僕ね、ネブラスカが1位だと思ってたんです。ずっと。まあ、ウルフ・オブを見た時はウルフ・オブだと。で、ネブラスカ見たら、ああ、ネブラスカだと。思ってたんですけど。で、なんだけど、やっぱり私の、今年途中からのいろんな時間の使い方とかお金の使い方みたいなので、やっぱり嘘はつけないという意味で、やっぱりガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのことしか考えていない時期っていうのがですね。
あと、関連グッズ等に使ったお金とかですね。あと、繰り返し見た回数とかですね・・・(曲が流れてくる)
フォーッ!すいません(笑)。びっくりしたと思いますけども(笑)。あの、オープニングで流れる寝、レッドボーンのね、曲なんですけども。『Come and get Your Love』か。そうなんです。これもね、僕の行きつけのね、よく行く飲み屋さんにガーディアンズのサントラをかけてもらって。もう、これかかる度に『フォーッ!フォーッ!(拍手)』。見た気になる。で、あとはなんだ。僕、これだけは頑なにかけないようにしてますけど。ラストで『I want you back』の前にかかる曲ですね。もう、あれですよ。ええ。ちなみに僕の奥さんに、『とにかく歌詞を覚えて、夫婦でこれをデュエットできるようになっておこう』って言ってるんですけど。『なんかの機会に歌えるようにしておこう』みたいなことは言っているぐらいですね。
とにかくその、なんて言うんですかね?あの、映画を見る喜びみたいな。それこそ、僕がスターウォーズ。ね。1978年に日本公開された時に見て。9才の時ですか。本当に映画の面白さに心底目覚めたあの瞬間のときめきを、スターウォーズオマージュ的なことがあるからとかじゃなくて、その、本当にその時に戻ったような気持ちにさせられた、久しぶりの体験でした。もう、『ああ、楽しいー!』っていうね。はい。ということでございます。
ガーディアンズ、じゃあ送っていただいた方。東京都のコウヘイさん。(メールを読む)『宇多丸さんがムービーウォッチメンで「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの尺121分。上映時間はスターウォーズ1作目と同じ!」と力説されていたので、東京国際映画祭のために来日したジェームズ・ガンに会って直接聞いてきました。すると、「それは単なる偶然だよ!考えたこともなかった!」と爆笑されましたが、逆に偶然の産物であることに感動いたしました』。ジェームズ・ガン、考えてなかったって(笑)。
『映画は有無を言わさず満点です。彼がヒーローとして立ち上がる理由が、野放しにすると大勢の人が死ぬぐらいの悪を放っておけないというシンプルなもので、ヒーローになる時はシンプルでいいんだと感銘を受けました』。コウヘイさんはあれですかね?ジェームズ・ガンに直接アタックしてきたってことなんですかね?コウヘイくんのアタック癖っていうのがですね(笑)。大丈夫なのか?と思う時、ありますけどもね。あのコウヘイくんだよね?たぶんね。このアタック癖はたぶんそうだと思いますけど。はい。121分は偶然!ということなんで(笑)。まあその偶然の一致も含めて、素晴らしい歴史的作品と言えるんじゃないでしょうか。私の1位はもちろん、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとさせていただきました!ということで、シネマランキング2014。ベスト10とワースト1の発表をさせていただきました。
(本放送終了後 放課後ポッドキャストより)
(宇多丸)あっ、放送中に言うの忘れた!次点として『グランド・ブタペスト・ホテル』で。で、本来これ順位に入っていたんだけど、グランド・ブタペスト・ホテルはみんな褒めるだろうし、普通の映画雑誌とかでも相当上位に入るのは間違いないから。だったら俺が応援しなくちゃいけない『イコライザー』を入れるんだ!っていう。
<2014/12/28 追記>
シネマランキング発表後にムービーウォッチメン対象作品になった『ゴーンガール』がランキング入りしました。
(宇多丸)では、さっそく行ってみましょう。ステップ1。僕の『ゴーンガール』というこの作品評価。結論部分だけを先に言います。結論から言えば、これしかないでしょう。もう。ストーリー、脚本、演出、演技。あるいは美術であるとか。撮影、編集、そして音楽に至るまで、全てが、現行世界トップレベル。圧倒的な大人向けエンターテイメントの最高峰だと思います。現状。はい。という風に、もう最高レベルの評価をしていると思います。
大事なのはこれ、誰が見てもちゃんと無類に面白い映画になってるんですね。誰が見ても無類に面白いはず。それでいて、最後に突きつけてくるものの鋭さ、そして重さ。見終わった後も、思考を促され続ける。要するに安心はできない。ずーっと考え続けざるを得ない。登場人物と内容に。そして、やっぱり誰かと話し合いたくなるんじゃないでしょうかね。どういう風に思ったのかというようなことを。ということで、エンターテイメントとして非常に間口が広いんですけども、非常に奥も深いし、重たいというね。射程がすごく遠いというようなところじゃないですかね。
個人的にはですね、デビッド・フィンチャー。個人的にはですよ。ベスト作品は、『ファイトクラブ』はちょっと別格とさせてください。あれはちょっとすごすぎるんで。ファイトクラブは別格として、『ソーシャルネットワーク』が僕、個人的にはいままでいちばんベストだったんですね。2011年シネマランキング3位に選ばせてもらいましたけど。この番組では。それをも凌駕する勢いですごい作品がきちゃったな。だからデビッド・フィンチャー最高傑作っていうのもわかる気がします。
えー、先々週発表した2014年シネマランキングベスト10に、じゃあこれが入るのか?入らないのか?どこまで来るのか?来ないのか?といえば!ドドーン!と、第三位!にもう、ぶっこませてもらいます。ええ。はい。ということでございます。ということで、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』がちょっとね、三位から落ちてしまう。絶対にウルフ・オブ・ウォールストリートの三位は動かなかったんですけどね。あんなね、あんな性差別のブタのね、主役のね(笑)。あんな奴を上に置くわけにはいかない!怖いから!っていうね。そういうことでございます。
ということでね、特にもしお聞きのみなさんがね、いま30代以上の大人なら、一定以上のパートナーとの関係。まあ、結婚してもいなくてもですね、30代以上で酸いも甘いもわかっている大人であれば、この正月、シネコンでかかっているような中では間違いなく、断言しますけど。もっとも見るべき作品なのは間違いない。これなのでね、ぜひ、行っていただきたいと思います。おすすめです!ということですね。ただしですね、観客を安心した気分で、『ああ、よかった』なんつって帰らせてくれるような、いわゆるファミリームービーとは対極にある作品です。
見る相手によっては、一緒に行く相手によっては、気まずくなる可能性も大でございます。真の劇薬。まさにこれこそ劇薬エンターテイメントというんじゃないですか。そこは注意してくださいね。付き合いたてのカップルとか、付き合う前のカップルとかはちょっと考えものだと思います。若いカップルとかは。はい。
<書き起こしおわり>