町山智浩『それでも映画は「格差」を描く』を語る

町山智浩『それでも映画は「格差」を描く』を語る たまむすび

町山智浩さんが2021年10月5日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で著書『それでも映画は「格差」を描く』を紹介していました。

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(町山智浩)『それでも映画は「格差」を描く』という本を今週はプレゼントします。集英社インターナショナルから出るんですけれども。10月7日発売ですね。それをお聞きの5名様にプレゼントします。

(赤江珠緒)はい。「『天気の子』はなぜ雨を止めないのか? 『ジョーカー』はなぜチャップリンを見るのか?」っていう。

(町山智浩)そう。『ジョーカー』っていう映画がありましたけども。あのジョーカーはチャップリンの映画を見るじゃないですか。あれはどうしてか?っていうと、チャップリンの映画っていうのは仕事がない人が一生懸命、仕事を求めていろんなことをやるんだけど、うまくいかないっていう映画ばっかりなんですよ。「モダン・タイムス』とか『街の灯』とか『キッド』とか。みんな、そういう話なんですよ。

(赤江珠緒)そうか。だからジョーカーがそれを見ているということはちゃんと意味があるんだ。

(町山智浩)ジョーカーも仕事がうまくいかなくて、貧乏のどん底にいるじゃないですか。でもチャップリンの映画はみんな、笑いながら見るけどジョーカーの映画はもう、ものすごい悲惨で強烈な映画として見るじゃないですか。でもチャップリンの映画作られたのは1920年代ぐらいなんですよ。それからほとんど100年近くたっているんですけど、実はこの2つはほとんど同じ映画なんですよ。チャップリンの映画とジョーカーの映画っていうのは。だって今、状況同じなんだもん。

チャップリンとジョーカーはほとんど同じ映画

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(町山智浩)ということを本にしたのが『それでも映画は「格差」を描く』というタイトルの今度の本なんですが。『パラサイト』もそういう映画でしたよね。

(山里亮太)はいはいはい。

(町山智浩)貧しい家族がどうしても暮らしが大変なんで、金持ちの家族に寄生するという話でね。是枝裕和監督の『万引き家族』も貧乏な家族がちょこちょこと万引きしながら何とか暮らしていこうとする話で。これ、みんなカンヌ映画祭でグランプリを取っているんですよ。どの映画も。

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(町山智浩)あと『わたしは、ダニエル・ブレイク』っていう映画はイギリスの貧しい貧しい人たちが、どうしてもいろんな形の福祉を受けられなくて。福祉制度はあるんだけれども、それに申請しても申請しても蹴られてしまって。で、そのうちに死んでいくまでの話なんですけど。その中でその貧しい人たちが家族を作って、何とか生き延びよとする話なんですね。それが『わたしは、ダニエル・ブレイク』っていうイギリス映画なんですけども。これもカンヌ映画祭でグランプリを取っているんですよ。で、ここ何年かずっとカンヌ映画祭のグランプリはそういう映画ばっかりなんです。で、これは一体どういうことなのか? それは韓国の映画であり、日本の映画であり、イギリスの映画であり……国は違うんですけど、テーマがほとんど同じで、内容もそっくりなんですよ。

(赤江珠緒)世界的にね。

(町山智浩)これ、どういうことか?っていうと……アメリカの映画もそうで。『アス』っていう映画を前に紹介したんですが。アメリカの黒人の家族が自分たちにそっくりな貧乏な家族たちに家を乗っ取られようとする話で。ポン・ジュノ監督と話したら「なんかめちゃくちゃ『パラサイト』と似ててびっくりした」って言ってたんですね。

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(町山智浩)これはアメリカ映画なんですけど、どういうことか?って言うとこの非常に広がった格差というものは、自然現象ではないんですよ。日本、韓国、イギリス、アメリカで1980年代からずっと、この4か国の政府が行なっている経済政策の結果でそうなったんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)具体的には福祉を削って、金持ちとか大企業への税金を削って、消費税を上げて、非正規の労働者を増やしていくってことをやったから、こうなってしまっただけで。この4か国でそっくりな映画が出てきたっていうのは偶然でも何でもなくて。それはこの4か国がそういう経済政策を取ってきたからなんですよ。

(赤江珠緒)全にそういう同じ現象が起きてしまってるんですね。

(町山智浩)同じ現象が起きているから、同じような映画が出てきてるんですよ。で、それを分析していきながら、その根底にあるチャップリンとか、そういったものを見出していくっていうことをやった本なんですね。で、『天気の子』においては、その貧しさというものと地球温暖化が重ねられて描かれているんですよ。新海誠監督は。これ、実は地球温暖化っていうのも自然現象じゃないんですよ。それは人間が作り出したものですよね? 格差と同じなんですよ。だから結び付いてるですよ。『天気の子』では。一体、なぜ『天気の子』なのか?っていうと、この格差社会や環境破壊というものは親たちがやっちゃったことですよね? それによって子供たちがものすごい責任を負わされちゃってるんですよ。これからの世の中。だって親たちは先に死んでいくんだもん。

(山里亮太)たしかに。

町山智浩『天気の子』を語る
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(町山智浩)ねえ。実は全部、同じ話なんですよ。チャップリンの頃からずっと続いている。で、それを撮影の仕方であるとか、技法であるとか、そういったことのルーツを探っていくことで全てを結び付けていこうとする本なんですよ。僕が今回、考えたのは。だからこの間、紹介した『東京自転車節』っていう映画がありましたね?

(赤江珠緒)はいはい。ウーバーイーツのね。

(町山智浩)そう。それで、ウーバーイーツではなくて、イギリスの宅配の個人事業主が……個人事業主として雇われることで最低賃金以下の仕事をさせられてるっていう話を映画にしたのが『家族を想うとき』っていうイギリスの映画で。それもテーマは全部、同じなんですよ。

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(町山智浩)日米英韓でやってきた労働者の搾取と非正規雇用の拡大と金持ちへの減税、消費税の増税とか、そういったことの全てが実はこの映画とこの政治とこの歴史が全部絡み合ってるんだっていうことをまとめた本がその『それでも映画は「格差」を描く』っていう本なんですね。

無料で冒頭80ページ、お試し読み可能

(町山智浩)それでもう本当、今そのまえがきをね、集英社インターナショナルの公式サイトでオープンにしてますんで。それと最初の2本、『ジョーカー』のあたりの原稿は全部、今無料で読める状態になってますから。ぜひ読んでいただいて、「これは」と思ったらお買い上げいただきたいんですが。それをいつも『たまむすび』を聞いてる5人の方にもプレゼントします。

<書き起こしおわり>

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