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町山智浩『天気の子』を語る

町山智浩『天気の子』を語る たまむすび
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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で新海誠監督の映画『天気の子』について話していました。

(町山智浩)今日はなんの話かっていうとですね、日本映画って僕、あんまり紹介ができないんですよ。アメリカで見て紹介するっていう形なんで、日本映画を見るのって一番遅くなっちゃんですね。で、紹介しそこなったものが2つあって、その話をさせてほしいなと思うんですけども。1本はもう今年の見た全世界の映画の中でもうベストワン級だなと思ったのがね、この新海誠監督の『天気の子』なんですよね。

(赤江珠緒)ああ、そうですか!

(町山智浩)僕ね、全然こういう内容だと知らなくて見に行ったんですね。その前にあの『君の名は。』っていうアニメーションが全世界で大ヒットして。あれ、中国でものすごいヒットして、大変なことになってたんですけども。で、その延長線上でまたその恋物語なのかなと思って見に行ったらですね、まあたしかにそれでお客さんが来てるんですけども、その奥に隠されているメッセージはものすごいものだったんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)でね、これは監督自身も言ってるんですけど、テーマは気候変動、地球温暖化なんですよ。『天気の子』だから。話は。でも、まあそれを言ったらみんな来ないから、これ監督自身が言ってるのは「エンターテイメントとして見てもらって、その後にその気候変動の問題について考えてほしい」という言い方をしてて。まあ映画の娯楽っていうのはそういうもんですよね。本気で楽しませて、でもちょっと考えさせるっていうことなんですけど。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)ただね、日本映画で最初の1本じゃないですか?

(山里亮太)ああ、その気候変動についてっていうのは?

(赤江珠緒)そうか。あ、『ナウシカ』とかは?

(町山智浩)『ナウシカ』もそうですね。環境破壊とかね。

(赤江珠緒)あれも見た後に考えるっていうね。

(町山智浩)ただ、今現在起こってる強烈な雨であったり異常気象について真正面から取り組んだ映画としては初めてだと思うんですよ。

(赤江珠緒)今まさに、この時代ではね。そうか。

現在起きている気候変動・異常気象を真正面から描く

(町山智浩)で、これが公開された時にちょうど日本もものすごい異常な台風とかに襲われて、大変な被害が出るという時にまさに公開されたという。その時に起こってることをちゃんと映画にするっていう。テレビとかね、そういう芸術がやるべきことをやってる話なんですよ。でね、これ主人公は高校1年生の家出少年の帆高くんなんですけども。その彼が東京に来てですね、陽菜ちゃんという同じぐらいの歳の女の子と出会って暮らし始めるんですけど、これを見ると驚くのはその新宿の辺りのいかがわしいいかがわしい、そのセックスと食べ物だらけの文化のディテールのすさまじい細かさなんですよ。

(赤江珠緒)ああ、街並みとか風景が。

(町山智浩)そう。あらゆる食べ物があるじゃないですか。食べ物屋さんがそこら中にあって、看板が出ていて、コンビニに行くといろんな食べ物があって。ただ、みんな安いジャンクフードとかで。あと風俗の店がバーッと、ラブホテルからそのいろんな……「バーニラ、バニラ♪」とか(笑)。

(赤江珠緒)いろんな欲望が渦巻いているような街ですもんね。

(町山智浩)そうそう。ものすごい欲望の量と安っぽさが渦巻いてる、一種なんでもあるんだけど、豊かなものはなにもないっていうのを本当に商品の実名を全部出してブワーッと見せていくんですよ。このものすごい洪水……その安っぽい物の洪水。それとセックスと食欲が徹底的に満たされていて。要するに飢餓と逆の状態。ものすごく食べ物やセックスはあるだけども、貧乏な感じ。

(赤江珠緒)精神的な。

(町山智浩)精神的に貧乏な感じというものを一言もそういうことを説明しないで、画だけで見せるんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、しかも雨がずっと降り続いているんですよ。雨が全く止まない世界なんですけど、「雨が全く止まない世界」っていうのは『ブレードランナー』で描かれた現在の風景なんですよ。『ブレードランナー』っていうのは過去に作られた今現在を描いたSF映画だったんですね。1980年代に今の時代を描いた。その頃は環境破壊で雨が降り続いてるっていことを『ブレードランナー』が描いてたんですが、本当にそうなっちゃって。ねえ。ものすごい雨……豪雨がすごいじゃないですか。特に日本はね。アメリカも豪雨被害がすごいんですけど。まあ、全世界か。フランスとかもものすごい猛暑で人が死んでる状態で。ただ、それを見せてて画では明らかにもう地獄の風景なわけですよ。

(赤江珠緒)うん。

物はあふれているが、心は貧しい

(町山智浩)だから明るい地獄みたいな感じ。物が有り余ってるんだけども、誰も心が豊かじゃない地獄っていう風景の中で、この主人公のその2人はそれに対して全く怒っているようには見えないんですよ。それを楽しんで普通に暮らしてるように見えるんだけども、たとえば彼らがご馳走として食べるのがまあハンバーガーだったり即席ラーメンだったりするんですね。で、「美味しい、美味しい!」って食べてるんですよ。で、親がいないんですよ。親が子供を虐待したり放棄したりして、彼らがそのものすごい物にあふれた都会のどん底で貧しく生きてるんですけど、自分たちが「それが貧しいんだ」っていうことに気が付いてないの。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)全くわからない。それは豊かなものを見てないから、知らないから比べられないんですよ。

(赤江珠緒)それはそうですよね。生まれた時からそういう状況だったらね。

(町山智浩)そう。これがだから赤江さんとか山里さんはギリギリで日本が豊かだった頃を知ってるじゃないですか。でも、その後に90年代の後半以降に生まれた子たちは豊かだった日本っていうものを知らないんですよ。だから、比べられない。なのでそれを当たり前だと思っている。最低賃金でみんなが生きてて……っていう。仕事はたくさんあるんですよ。この子たちも働いてるんですよ。仕事はあるんだもん。それでもまあ、未成年だと雇ってもらえなかったりもするんだけど、ちょっと女の子が頑張れば働けちゃうんですよね。今の世の中って。「バーニラ、バニラ♪」の世界だから。

(赤江珠緒)ああ、そうか。うん。

(町山智浩)仕事はいくらでもある。今、失業率ってものすごい低いですよね。アメリカなんかもそうなんですけども。でもほとんど最低賃金なんだ。そこで働いても絶対豊かになれないし、車も買えないし、家も買えない。子供も育てられないし、結婚もできないし……っていう。仕事があっても何の意味もない。ただ生きるだけっていう家畜状態なわけですよ。でも、主人公たちは気が付かない。比べられないから知るわけがない。だから、彼らの怒りっていうのは自分の中にわからない形だからこの男の子は拳銃を拾うんですよ。で、その拳銃……彼自身が気が付いてない怒りを拾うんですよ。

(山里亮太)ああ、うんうん!

(町山智浩)「なんでこうなっちゃったのか?」って分からないから。で、そういうところが上手いんですよ。「こんな世の中、おかしい」とか、こんな……まあ、はっきり言って環境破壊されているのは自分たちの前の世代、1950年代、60年代、70年代からのずっと蓄積してきた世界の工業によっての破壊なわけじゃないですか。でも、それを彼は知らないわけですよ。知識としても全く知らないわけですよ。でも、「何でこんなになっちゃってるんだ?」っていう怒りだけはあるんだけど、それを言葉にできないんですよ。だから言葉しないんです。

(赤江珠緒)じゃあもう本能的に感じてるだけっていう?

(町山智浩)そうそう。それが拳銃によって象徴されるんですよね。で、もうひとつは『ライ麦畑でつかまえて』という小説を彼はいつも持ち歩いているという。それは大人に対する怒りの小説なんですよ。そういうところも上手くて、言葉で言わせないんですよ。だからこの若い子たちが「今の世の中、おかしいよ!」とか「なんで俺たち、貧乏なんだ?」とか「なんでこんなに環境が破壊されてしまったんだ!」って言ったら、おかしいじゃん?

(赤江珠緒)そうですね。もう最初がそうなんだから。それ以外の環境に身を落しないんですもんね。

グレタ・トゥーンベリさんとの違い

(町山智浩)ねえ。そんなこと言うわけないんですよ。だからグレタ・トゥーンベリさんが国連でスピーチをして言ったけども、あれは彼女がそういう教育を受けたから言ったわけだけど。彼女ってこの『天気の子』の主人公たちと同じぐらいの歳なんですよ。高校1年生で。ちゃんと知識やそういう情報を与えられたら、グレタさんみたいに言うかもしれないけど、与えられてない人でも「なんとなくおかしい」とは思ってる。それをすごく背伸びしない形でこの映画は見せているんですよ。

(赤江珠緒)ああ、うん!

(町山智浩)だからこれはね、監督自身がそういうことを言ってるんですけども。「僕ら(新海誠監督の世代)にとっては天気とか気象っていうのは美しいものだったのに、今、天気は人を殺すものになってしまっている。ものすごい災害で恐るべきものになってしまっている」という。で、特に新海誠さんは元々大学で国文学を習ってた人なんで。和歌とか俳句で日本が古来、その日本の自然を美しく愛でていて。それを表現するっていう文化を研究してきた人だから、こんなに地球環境おかしくなってしまったということは本当に彼にとってはものすごい悲しみなんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうか。もっと豊かなそれこそ日本があったっていうね。自然とかっていう意味で。

(町山智浩)そう。雨というものは楽しむものだったのに、今では雨は人を殺すものになっちゃってるんですよ。

(赤江珠緒)そうですね。「恵みの雨」なんて言わないですもんね。

(町山智浩)そうそう。毎年毎年すごいわけですよ。前に『パラサイト』の映画紹介の時にも話したんですけども。『パラサイト』もものすごい豪雨でもって、韓国のその半地下の家に住む人たちが死んでいくっていう現実を描いてるんですけど。

町山智浩『パラサイト 半地下の家族』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』を紹介していました。

(町山智浩)すごくよく似ています。『天気の子』と『パラサイト』はすごく似てて、半地下が出てくるんですよ。半地下と豪雨が出てくるので、すごく似ています。

(赤江珠緒)うわあ、今ならではの。

韓国映画『パラサイト』とも似ている

(町山智浩)そう。で、宮崎駿さんの話をしてて。宮崎駿さんはだいぶ前に『千と千尋の神隠し』で……あれもね、大人たちの飽食によって子供たちが風俗で働かなければならないっていうことを描いていたんですけども。それを更に押し進めた形になっているのが『天気の子』で。だからもうぜひ見ていただきたいと思うんですが。時間がないので、次に行きます!

<書き起こしおわり>

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