町山智浩 フランス映画の見方を語る

町山智浩 フランス映画の見方を語る たまむすび

町山智浩さんが2022年9月20日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でフランス映画があまり得意でないという山里亮太さんにフランス映画の見方や楽しみ方を紹介していました。

(山里亮太)町山さん、僕、この前、映画のお仕事で甲斐よしひろさんに会ったんですよ。

(町山智浩)ああ、はいはいはい。

(山里亮太)あの、めちゃくちゃ町山さんのことをお好きという話を聞いて。

(町山智浩)ああっ! というか、僕がね、昔すごくファンだったんですよ。

(赤江珠緒)すごいですね!

(山里亮太)相思相愛なんですよ。

(町山智浩)僕が中学ぐらいの時にね、すごい好きで、甲斐バンドを追っかけてたんですよ。それでね、1回お会いしてね。下北のレディジェーンでちょっとご一緒してですね。どれだけ甲斐さんがやっていたラジオをね、記憶するほど聞いてたかっていうことで。覚えてることを全部、言ったんですよ(笑)。

(山里亮太)それで甲斐さんも映画、すごくお好きなんですよね。

(町山智浩)そうなんですよ。甲斐さんは歌が映画にすごくインスパイアされたものが多くて。その話もいっぱいしましたよ。「あれはあの映画が元なんですか?」とかね、いろいろと言ったんですよ。

(山里亮太)で、せっかく楽しく飲んでた時に町山さん、その次の日に結構大事な用事が……原稿を書かなきゃいけないとか、いろいろあったらしいんですけど。甲斐さんが楽しくなりすぎて、全然帰らせなくて。それをすごい心配してたんですよ(笑)。

(町山智浩)それで大変なことになりましたけど(笑)。

(山里亮太)「またお会いしたいとお伝えください」というお言葉を預かってきました。

(町山智浩)ああ、もうぜひね。いくらでも話すことがあったんで。すごい楽しかったですよ。

町山智浩×甲斐よしひろ

(山里亮太)めちゃくちゃ映画が……本当にお詳しいんですよね。

(町山智浩)甲斐さんね。だって、最初の頃のヒット曲がいきなり、歌い出しが映画の話なんですよ。『ポップコーンをほおばって』っていう歌で。これは映画館のポップコーンですよね。でね、いきなり歌い出しがね、「映画を見るなら フランス映画さ」っていう。そんな歌い出しで。ガーンと来るんですけどね。

(山里亮太)僕も甲斐さんと話していて。「山ちゃんはフランス映画とか、苦手だろう?」とかって言われて(笑)。

(町山智浩)ああ、言われた?(笑)。

(山里亮太)「はい。よくお気づきで」って(笑)。

(赤江珠緒)わかるよね(笑)。

(山里亮太)「僕、わかりやすい敵がいて、爆発がないとダメなんです」って(笑)。

(町山智浩)いや、だんだんよくなってくるんですよ。僕もね、ちょっと苦手だったりしたんですよ。結構、若い頃は。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)そう。みんなが見てるから、義務で見ているようなところもあって。でも、だんだんよくなってきますよ。

(山里亮太)そうですか。見方がわかるんですか?

(赤江珠緒)歳を重ねることでわかる味わい深さみたいなのも、あるってことですか?

(町山智浩)それもあるし。この間、ジャン=リュック・ゴダールっていう監督が亡くなったんですが。とにかく「ゴダール映画は難しい」ってずっと言われてたんですよ。でもね、彼は全部自分のことを映画にしてるんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)だから彼がその時、どういう人と結婚してて。どういう奥さんがいて。どういう状況にあったのかっていうのを知ってから見ると、「ああ、そういうことなのね」ってすごくわかりやすい映画なんですね。

(山里亮太)見方があるんだ。

(町山智浩)そう。あのね、アンナ・カリーナっていう奥さんと一緒にいたんだけども、すごく夫婦仲が悪くて。で、ゴダールは途中で捨てられるんですけど、捨てられた後もそのアンナ・カリーナさんを主演にして映画を撮り続けるんですよ。で、その映画の中で主人公の男はそのアンナ・カリーナさんに向かって「俺を愛してくれ! 愛してると言ってみろ!」とか言ったりするんですけど。それは自分では言えなかったことを、俳優に言わせているんです。

(山里亮太)へー!

(赤江珠緒)その仕事を受けたアンナ・カリーナさんもすごいね。

(町山智浩)アンナ・カリーナさん、よく受けたと思いますよ。だって『気狂いピエロ』っていう映画がありまして。それはそのアンナ・カリーナさんに捨てられたこと自体をモロに映画にしてるんですけども。で、最後に主人公がアンナ・カリーナさんを射殺するだもん。「俺を騙しやがったな! 他に男がいたなんて!」って。

(山里亮太)すごいな……。

(町山智浩)それをそれ夫婦でやってるんですよ? そういうことがわかって見ると、「ああ、これは切実な映画なんだ」ってことがわかってくるんですよ。

(赤江珠緒)バックグランドを知るとね、また見えてくるものが違うんですね。

フランス映画は監督のバックグラウンドが反映されやすい

(町山智浩)そう。フランス映画ってね、結構その監督の実際の育った環境とか、そういったものが影響してるのが特に多いんですよ。ハリウッド映画とかよりも。プロデューサー主導じゃないんでね。監督主導なんで。だからその私的な部分をちゃんと知って見ると、すごく面白くなると思います。

(山里亮太)なるほどな!

(町山智浩)フランソワ・トリュフォーっていう監督がいるんですけど。彼は大抵、女優さんとすぐに恋に落ちちゃうんですけど。それが全部、映画に反映されてるんですよね。

(山里亮太)フハハハハハハハハッ!

(赤江珠緒)わかりやすいな(笑)。

(町山智浩)わかりやすい。あと、お母さんが結構変な人で。お母さんの思い出とかも映画の中にどんどん入ってきて。だからそういうのをわからないで見ると……まあ、「わからない状態で見ろ」って言う人もいるんですよ。「余計な情報を入れるな」って。でもそれはね、本当に料理なんか食べて「ああ、美味しかった」っていう時。でも、何が入ってるのかわからないっていうままの状態なんでね。やっぱり目の前で板さんが料理しているのを見てから食べると、美味しさが10倍増しじゃないですか。そういうものだと思いますよ。

(山里亮太)なるほど。

(町山智浩)魚とか、なんにも言わないで出されたって、なんだかわからないじゃないですか。どこから取ってきたものなのかとか。

(赤江珠緒)たしかにね。「これは伊豆の沖で取れました」とか言われたら「おおっ?」ってなるけど。

(町山智浩)なんだかわからない魚……メルルーサかもしれないわけじゃないですか。メルルーサ、めちゃくちゃ顔が怖いから、メルルーサの写真を見た後ではメルルーサ、食べられないんですよ。怖くて。だからやっぱりね、いろいろある程度知ってから見た方が面白い映画もいっぱいありますよ。

(山里亮太)ありがとうございます。

(町山智浩)いえいえ。なんか、「あれは何だったの?」とかいうのがあったら、どんどん聞いてください。

(山里亮太)本当、見てから聞こう。

(町山智浩)ぜひ。

<書き起こしおわり>

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