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町山智浩 ジョーダン・ピール監督作品『Us』を語る

町山智浩 ジョーダン・ピール監督作品『Us』を語る たまむすび
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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でジョーダン・ピール監督の最新作『Us』を紹介していました。

(町山智浩)今日はアメリカとすでに世界中で公開されて2億ドル以上の大ヒットになっている『Us』という映画を紹介します。

(赤江珠緒)なんだ、この曲……。

(町山智浩)はい。これはこの『Us』っていう映画のテーマソングなんですよ。これ、何語で歌っているのか全然わからないんですよ。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)だからなんかすごい怖いんですよ。

(赤江珠緒)なんかちょっと日本の童歌にも聞こえるような……。

(町山智浩)そうそうそう! これ、『攻殻機動隊』っていうアニメの歌にすごい似ているんですよね。で、マキシマムザホルモンっていうバンドが時々、何語でもない歌を歌っていたりしますけども。なんかすごく不気味な感じなんですが。この映画のタイトルの『Us』っていうのは英語で「私たち」という意味ですね。これは、いろんなホラーってかならず怪物、モンスターが出てくるじゃないですか。ゾンビだったり、たとえば殺人鬼だったりね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)まあ、いろんなお化けだとかが出てくるんですけども。この映画、ホラーなんですけども出てくる怪物は、「私たち」なんですよ。

(赤江珠緒)うん? 「私たち」?

(町山智浩)はい。どういう意味かはこれからご説明します。これ、主人公は30過ぎの女の人でアデレードという黒人女性です。彼女は幸せな結婚をして。というか、結構リッチな黒人家庭で、旦那さんもすごい優しい人で。子供も中学生の娘と小学生の息子がいて、リッチに幸せに暮らしているんですよ。そのアデレードさんの家に夜、突然家の前に誰かが立っているんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、「誰か4人ぐらい、家の前に立っているわ」って言うんですよ。それで「誰なの?」って覗き穴から見てみると……暗い中で家の前の街灯に照らされて立っているのを見て、「あれは私たちよ!」って言うんですよ。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)そのアデレードさん一家と全く同じ顔、姿をした4人家族が家の前に立っているんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ!

(山里亮太)ドッペルゲンガー的な?

(町山智浩)そう。ドッペルゲンガー。「自分に似ている人は世界に3人いる」とか言いますけども。全く似た4人家族がいて。で、ただ赤い服を着ているというところだけが違うんですけども。彼らが家に入ってこようとするんですよ。

(山里亮太)えっ、怖い!

(赤江珠緒)赤い服で?

(町山智浩)赤い服で。自分たちと全く同じ顔と姿形をしている4人の家族がね。で、抵抗をするんですけど、入ってこられちゃって。で、アデレードさんたちを縛り上げて。「このあなたたちの生活を私たちが乗っ取るから」って言われるんですよ。

(赤江珠緒)怖っ!

(町山智浩)で、血みどろの戦いになっていくというホラー映画なんですね。だから『Us』って言うんですけども。「私たち」というタイトルなんですが。これ、監督はジョーダン・ピールという人で、この前には『ゲット・アウト』という映画でアカデミー賞を取った人ですね。

(山里亮太)はいはい。怖かったもん。『ゲット・アウト』も!

町山智浩 大ヒットホラー映画『ゲット・アウト』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、現在アメリカで大ヒットしているホラー映画『Get Out』を紹介していました。

(町山智浩)あれでアカデミー脚本賞を取ったんですが。あれは黒人の青年が婚約者の白人女性の実家に行くと、なんかすごいチヤホヤされるんですよね。で、「なんでだろう?」って思っていたら、その白人の村というか街の人たちは黒人の男性の体を奪い取って……まあ、これはオチになっちゃうからあれなんですけども。大変なことをしているということがわかっていくというホラー映画だったんですけども。それで今回はもっと……『ゲット・アウト』は黒人にとってのホラーっていう感じだったんですが、今回は結構誰にでも怖いことを目指したっていう風にジョーダン・ピール監督は言っているんですね。

(赤江珠緒)うん。

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子供の時に見た『トワイライトゾーン』が原点

(町山智浩)で、この監督はまず、いちばん最初に怖かったのは子供の頃に見た『トワイライトゾーン』という……日本だと『ミステリーゾーン』というタイトルでやっていたテレビドラマシリーズがあるんですよ。それが発想の元になっているらしいんですけども。それは1960年代のモノクロ30分ドラマで、日本のタモリさんがやっていた『世にも奇妙な物語』とかの元になっているドラマなんですね。一話完結なんですが。

その中で、こういう話があったんです。これ、僕も子供の頃に見ているんですけども。働いている独身の女の人が、面接かなにかに行くので長距離バスに乗って旅をしなきゃいけないんですが。それで、なかなかバスが来ないのでバス乗り場の係員の人に「ねえ、バスはいつになったら来るの?」って聞くと、「なに言ってんだ? あんた、さっきもそれを聞いたじゃないか」って言われるんですよ。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)で、「ええっ?」って言って。それでトイレに行くと、トイレを掃除しているおばさんに「あなた、体の具合でも悪いの?」って言われるんですよ。「なんでそんなことを聞くの?」「さっきトイレに来たばっかりじゃないの」って言われるんですよ。

(赤江珠緒)あらららら? うん。

(町山智浩)で、「えっ?」って振り返ると、そのバスが来てしまっていて、そのバスには自分とそっくりの人が乗って行ってしまうんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、自分はバスに乗り遅れてしまって。彼女はそうやって自分の仕事先に行って、彼女の仕事を乗っ取ってしまうんですよ。もう1人の自分が。で、その時に彼女はこう言うんですよ。「世の中には似ている人がいるんだ。いつか、その人に突然、自分の持っているものを乗っ取られてしまうかのしれないのよ」って。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)仕事であったり、家族であったり、地位であったり。というような話なんですね。その『トワイライトゾーン』っていう話は。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、それがすごくこのジョーダン・ピール監督は子供の頃に怖くて。

(赤江珠緒)たしかにそれはじんわり怖くなる話ですね。

(町山智浩)そうなんです。それで彼はニューヨークに子供の頃に住んでいて。地下鉄で学校に通っていたらしいんですよ。結構いい家の子で。それでその時、地下鉄のホームの向こう側のホームに自分とそっくりの少年が立っていてニヤリと笑うとか、そういうことを想像して怖くなったらしいんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、知らない間に自分の家族が乗っ取られてしまったら……って。『トワイライトゾーン』が怖いのは、バスに乗って自分の仕事を乗っ取られてしまった後のその女性が、「私とそっくりの人に乗っ取られたのよ!」みたいなことを言うんですけど、彼女は精神病院に入れられてしまうんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)その頃、1960年代のアメリカでは、精神病院に入ったらもうなかなか社会に復帰ができないんですよね。だから本当に実際のそのそっくりさんに人生を乗っ取られてしまいましたっていう終わりなんですよ。

(赤江珠緒)その人の人生を奪われたという。

(町山智浩)で、それをいま、彼がホラー映画にしたんですけども。もうひとつ、彼がそれが怖かった理由というのは、彼は黒人なんですね。それで彼は豊かなんですよ。でも、ニューヨークとかそういうところでは、ホームレスの人がいるわけですね。特に彼が育った1990年代だとニューヨークの地下鉄ってものすごいホームレスがいたんですよ。「Mole People(モグラ人間)」っていう言葉でも呼ばれていたんですけども、地下鉄の中に家族とかが住んでいたんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)日本でも結構紹介をされたかもしれないんですけども。その地下鉄の中で本当に生活をしている人たちがいたぐらいひどかったんですよね。でも、そこに自分と同じような顔をした男の子もいたでしょうね。

(山里亮太)そうか。そういう人と、ひょっとして……。

(町山智浩)そう。自分がたまたま豊かで恵まれているのは、たまたまいい家に生まれたからだけど、もしかしたらものすごい貧しい人たちの家に生まれていたかもしれないんですよね。

(赤江珠緒)それはそうですね。うん。

(町山智浩)それは偶然でしかないんですよ。生まれっていうのは能力とは関係ないですからね。そしたら、僕が彼であって、彼が僕であるということは容易に逆転してしまうんだという恐怖があったと思うんですね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、これはジョーダン・ピール監督に僕が直接会って聞いたんですけども。「とにかくこの映画はPrivilege(特権)というものの怖さを描いているんだ」って言っているんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)「人はどんな家に生まれたかでアメリカではだいたい、その後に人生って決まってしまうじゃないか。貧しいところに生まれたら、勉強とかさせてもらえないし。そうすると、いい学校にも行けない。だから人生が貧しくなってしまうか、下手をすると犯罪者になってしまうかもしれない。自分がそうならなかったのは、たまたまなんだよ」って。

(赤江珠緒)そうですね。その流れで言うと。

(町山智浩)そういう怖さなんですよね。「そんな風に考え出すと、怖くてしょうがない」って。そしてもうひとつ、要素があって。この映画は1986年から話が始まるんですよ。で、1986年、ジョーダン・ピール監督がひとつのことを覚えていて。子供の頃に。で、大きなイベントがアメリカであったんですね。それは「Hands Across America」っていう慈善運動で。貧しい人たちを救う寄付を集めるためにハンド・イン・ハンドでアメリカ中の人たちが手をつないで西海岸から東海岸まで、ひとつの手をつないだ列を作りましょうっていう運動だったんですよ。

(赤江珠緒)えっ、西海岸から東海岸まで!?

(町山智浩)そうですよ。ものすごい距離です。日本の何倍もの距離。で、それを可能にすることで、その時にお金を集めて。それを貧困層の救済に使おうっていうキャンペーンだったんですよ。

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Hands Across America

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、その手つなぎ自体は実際にできたんですよ。ところが、寄付は目標額までは集まらなかったんですよ。

(赤江珠緒)なんで? 相当な人が来たでしょうに。

(町山智浩)そう。でも、目標額に達しなかったんですよ。それだけじゃなくて、「なんで1986年なんですか?」って僕が聞いたら、「そのぐらいから、ものすごく貧しい人がどんどん増えていった。あれが分岐点だったような気がする」っていう風にジョーダン・ピール監督は言うんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、この言っていることは数値的に正しいんですね。アメリカって彼が子供の頃、1980年代のはじめはアメリカのいちばん最高に金持ちの上位1%がアメリカ全体の経済の富の11%を持っていたんですけども。現在、彼らは富の20%以上を独占していて。

(赤江珠緒)1%の人が?

(町山智浩)たった1%の人が。それでアメリカの真ん中から下の半分。ちょうど中間から下の人。アメリカの人口の半分の人がその1980年代当時はアメリカ全体の富の20%ぐらいを所有していたんですが、現在その割合は13%以下に落ちているんですよ。

(赤江珠緒)はー! 下がりましたね。

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