(CM明け)
(宇垣美里)昨年12月19日、星野源さんの最新アルバム『POP VIRUS』が発売されました。オリコン、そしてビルボードチャートでは4週連続1位と商業的にも大成功と言っていい数字を残しています。
(星野源)ありがとうございます。
(宇垣美里)では、前のアルバム『YELLOW DANCER』からテーマに掲げている「ブラックミュージックとJ-POPの融合」という点についてはいったいどのような手応えを得たのでしょうか? 毎回、アルバムを聞いては「星野めー!」と嫉妬を隠さない宇多丸さん、星野源さんに真正面からうかがっていきます。
(宇多丸)よろしくお願いしまーす(笑)。なんという迎え方なんでしょうか。はい。もういまね、後ろで『Pop Virus』が後ろでかかっているんですけども。後ほどももちろん、曲の細かい話もうかがいたいんですけど。
(星野源)はい。
(宇多丸)まず……(曲に反応して)あ、かっこいい!
(星野源)フハハハハハハッ! ありがとうございます(笑)。
(宇多丸)もう、気が散る!(笑)。音の一音一音とか言葉のひとつひとつが気が散るんじゃあ!
(星野源)フハハハハハハッ!
(宇垣美里)本当に素敵なんだよなー。
(宇多丸)全部込もっているから。いろいろ意味が入っているから、気が散るんだよ。あの、ちょっと世間話的なところから行こうと思うんですけども。最近、なに聞いてるの?
星野源が最近聞いている音楽
(星野源)ああ、最近? あの、最近竹内まりやさんがちょっと海外でまた流行っているなんて話も聞いて。
(宇多丸)ああ、はいはい。この番組でもちょろっと特集しました。
(星野源)それを聞いたりとか。あとは今回のアルバムの中で山下達郎さんとご一緒させていただいて。コーラスとコーラスアレンジをしていただいた曲が1曲、『Dead Leaf』っていうのがあるんですけども。その関係もちょっとありまして、達郎さんの曲をまた改めて聞き直したりとか。
(宇多丸)おおーっ!
(星野源)本当にやっぱり時代を超えて、多分いつまででも聞けるような曲が山ほどあるなっていうのをあの歳からやっていたんだなって。そういうのを感じていますね。
(宇多丸)ある意味、その達郎さんってまさに『YELLOW DANCER』以降の星野くんの挑戦っていうか、音楽……特に欧米圏とかメインストリームで世界的なモードみたいなものを一旦完全に咀嚼した上で、でも完全にアウトプットは日本語のポップスとしてアウトプットするみたいなのもの、まさにそれをずーっと先駆としてやられている人ですもんね。でも、達郎さんの音楽ってすごく不思議だと思うんですよ。もちろん、どれを、もちろんなにかリファレンス、これをしているっていうのはわかるんだけど、でも聞いた時にたとえばあの達郎さんの歌とかって、じゃあこれは何がリファレンスなの?って言われると、なんかちょっと……ねえ。なんでこうなるの?っていう。
(星野源)そうですね。やっぱりご自身のなにかなんだろうなって。
(宇多丸)そうそう。結局出てくるものがすごくオリジナルになっているところが本当にすごいなと思って。それのね、最新型があなたなんですよ。
(星野源)ありがとうございます(笑)。
(宇垣美里)フフフ、目をそらしながら(笑)。
(星野源)目をそらしながら、目を伏せながら褒めてくれるという(笑)。ありがとうございます。
(宇多丸)いわゆる洋楽というか、非日本語圏だと何を聞いてますか?
(星野源)なにを聞いているかな? あ、携帯を持ってくればよかった(笑)。なんだろう? フランシス・アンド・ザ・ライツとかは……。
(宇多丸)ふんふん。よく挙げてますね。フランシス・アンド・ザ・ライツ。
(星野源)そうですね。あとは、なんだろう? ヴルフペックとか……。
(宇多丸)ああ、やっぱりヴルフペックだ。いいねえ! 蓑和田くん、ヴルフペックだってよ!
(星野源)ああ、ごめんなさい。ありがとう。(携帯を)持ってきてもらった。ありがとうございます。
(宇多丸)いいねえ。やっぱりサブスクでいっぱいポンポンポンって聞いていく感じですか?
(星野源)はい。あとはアナログの……オーディオセットを今年のはじめの方に全部組んだんですよ。なので、アナログで買えるものは基本的にアナログで買って。
(宇多丸)おっと。それは古いものですか?
(星野源)ええと、でも新しいものの方が音がいいって思うことが多くて。
(宇多丸)ああ、いまの音楽でもアナログで聞いた方がいいと。いま、7インチでね、出したりするもんね。
(星野源)そうですね。トム・ミッシュの新譜というか。あれのアナログの音が本当にハンパなくよくて。
(宇多丸)トム・ミッシュとか合うもんね。えっ、それを言ったらさ、『POP VIRUS』のアナログ予定はないんですか?
(星野源)ちょっといま、考えています。
(宇多丸)絶対に合うと思いますけども。『YELLOW DANCER』と『POP VIRUS』は絶対にアナログが合うと思いますけども。
(星野源)そうですね。『YELLOW DANCER』はアナログを出してたんですけども。でも、1枚に全部詰め込んだんで、音があんまりよくなかったんですね。
(宇多丸)ああ、そのパターンか。
(星野源)なので、次出すんだったら2枚組とか。なんかそういう感じで出したいなって。
(宇多丸)それか、オールドーナツ盤のボックスセットとかそういうやつで……。
(星野源)いいですよね。いいですよねえ!
(宇多丸)で、それが出たら出たで「星野めー! かわいいじゃねえか、パッケージも。この野郎!」みたいな。
(星野源)10インチの4枚組とか5枚組とかも好きなんすよ。
(宇多丸)ああ、いいね、いいねえ!
(星野源)10インチ、いいっすねえ。
(宇多丸)だからそういう、もちろん音もそうだしさ、物としてのフェティッシュみたいなところもね、ありますけども。で、ですね、じゃあその問題の『YELLOW DANCER』。
(星野源)「問題の」(笑)。
(宇多丸)問題作。いや、要は、あちこちでもう取材とかプロモーション的なお話は散々されていると思うので、重複するところもあると思うけど。これ、僕が聞いた僕の考えで言うと、『YELLOW DANCER』はもちろん素晴らしかったですよ。ブラックミュージック的な、ダンスミュージックというか。まあブラックミュージックだな。ソウルミュージックも含めた。それと、日本人的ないわゆるJ-POP的な完成の非常に高度なフュージョンというか。それをすごく、うん。楽しいアルバムに。誰が聞いても楽しいアルバムに仕上げていて、本当に素晴らしかった。まあ名盤だと思うんだけど。
(星野源)ありがとうございます。
(宇多丸)思うんだけど……『POP VIRUS』を聞いたら、「『YELLOW DANCER』は秀作だった」ぐらいに思えてしまうぐらい。
(星野源)ああ、そうですか。
(宇多丸)うん。というのは、もちろん音像とかいろんなものの進化っていうのもあるんですけど、やっぱり今回歌詞が、全体でほとんどコンセプトアルバムっていうか、アルバム丸ごとでひとつ大きなテーマを歌っていると思うんですけど。その歌詞で歌おうとしていることと星野くんが音楽的にやろうとしていることの内容と形式が一致しているっていうかな。なんていうか……。
(星野源)音と言葉と。
(宇多丸)音と言葉とか、なぜ……要はね、ブラックミュージックと日本的なJ-POP的な感覚、もしくは歌謡的な感覚の融合はすごく気持ちよくて『YELLOW DANCER』で上手くいったんだけど、今回はなぜそれなのか? なぜこれがいいのか? なぜそれを自分がやっているのか?っていう意味の問いかけまで突き詰めたような風に私は読みました。
(星野源)なるほど。
(宇多丸)どうですか? ご自分的に。
(星野源)そうですね。だいたいいっつもそうなんですけど、アルバムってやっぱりいちばん最初にコンセプトを決めて作るというよりかは、だんだん浮かび上がってくるみたいなものってあるじゃないですか。で、曲を作りながら、「ああ、いま自分はこういうことをしたいんだな」っていうのがだんだんと見えてくるっていう感覚だったので。何かを決めて作ったっていうことはないんですけども。
(宇多丸)アルバムの制作期に入って、「あっ、これがキーになる!」みたいな時、あるじゃないですか。
(星野源)ありますね。
(宇多丸)まさにそれですかね。今回で言うと、どれだったんですか?
(星野源)ええと、やっぱり『Pop Virus』という曲を……でも、いちばん最初に思いついた曲ではあったんですけど。僕が曲を作る時はいつも、頭の中に映像が最初に出てくるんですよ。
(宇多丸)ほう。
(星野源)映像とか景色とか雰囲気とかが頭の中にあって。でも、それが言葉にできないし、自分の中の感覚でしかないんですね。
(宇多丸)それはその、なんというか言葉的なテーマじゃなくて、映像とも違う?
(星野源)なんか自分の中では映像っていう感じではあるんですよ。あとはまあ、一枚絵の時もあるんですけど。そのビジョンみたいなものを音にするんだったらどうするんだろう?って思ってまず音に……弾き語りで自分で1人でまず作るんですけど。で、いまは808とか。Teenage Engineeringのポケットのちっちゃいビートマシンがあるんですけど。それを鳴らしながら曲を作るんですけども。
(宇多丸)ビートを流しながらメロを乗せていくみたいな感じ?
(星野源)で、ギターを鳴らしながら作るんですけども。
(宇多丸)あの、『Pop Virus』の時の映像は何だったの?
(星野源)でもそれが、もうあの曲に出ている映像なんですよ。だからでもそれって言葉にいえないもので。自分の中では。なので、言葉にできないからまず音にする。で、その中で音にすると明確な輪郭ができるじゃないですか。その中で、いちばん最初のビジョンとその音の中にある映像、雰囲気っていうものを照らし合わせて、その後から言葉を書いていくので。音と言葉がリンクしているっていうのは本当にその通りっていうか。そうするように作っているっていう感じですね。
(宇多丸)なんとなくなんですけど、その『POP VIRUS』っていう言葉もそうですし、アルバム全体で伝えようとしている、ある意味ポップとか音楽とか、わかんない。なんかそういうアートっていうミームっていうんですかね? それが時を越えてつながっていく。しかも、その時を越えるのが意外とその、こうだと思っているルートじゃないところを通っていったり、自分っていうフィルターを通して……だからブラックミュージックが日本人という自分のフィルターを通して出ていったりとかっていう。
(星野源)うんうん。
(宇多丸)だからなんかたぶん僕がさっき言ったのは、ブラックミュージックとかがその「いい」と感じる自分。でも、これってなんで「いい」と感じるのかなとか。あとはブラックミュージックが歌う性愛的な部分。さっきもね、『Snow Men』の解説で前にしていただいた。あれは、ブラックミュージックの性愛表現みたいなもののすごく星野くん流の解釈というか日本的な置き換えだったと思うんだけど。それが……たとえば今回『肌』っていう曲とかだと、なぜそのセクシャルっていうか、そういうあれがいいというか素敵なのかっていうと、それって要するに究極のコミュニケーションっていうことじゃないの? とかさ。
(星野源)うん。
(宇多丸)コミュニケーション論なんじゃないのか?っていうところまで。なぜ、ブラックミュージックのこれをいいと日本人の私も思うのか?っていうあたりまで突き詰めたからこそのこのコンセプトなのかな?って思ったんですけども。
(星野源)ああー、そうですね。そこに関しては正直、そこまで考えていなくて。作りながら気持ちいい言葉とか自分に嘘がないこととか。そういういろんな、自分の中でのハードルっていうんですかね? 「ここをクリアしたい、ここをクリアしたい」って。なんかそういうものをいろいろとクリアしたものがこれで。やっぱりなにかを、こういう表現をしたくてこういう風に伝えたい。だからこういう風に考えてこう作ったんだっていうのは正直、このアルバムはあんまりないです。
(宇多丸)ああ、そう?
(星野源)でも、作りながら「なぜこんなに自分はラブソングを書いているんだろう?」とか、「なんでこういう歌詞が多くなっていくのか?」「なんでこんなにものすごく、人間が始まった頃のことばっかりを考えているのか?」とかっていうのがだんだんと輪郭として見えてきて。他の曲で書いていた歌詞もちょっと変わったりとか。なんかそういう風にして作っていくので。自分でもアルバムが出来た瞬間は把握できていないっていう感じなんですね。なのでいま、そういう風に語っていて「ああ、なるほど」っていう、そういう感じの方が強いですね。
(宇多丸)むしろその、最初にその『POP VIRUS』っていうビジョンが浮かんだのが「『YELLOW DANCER』の次でこの順番ならばこれ」っていう風に、星野くんは言葉的なロジックじゃなくて、星野くんの頭の中でそれが動いていて。それの正解が最初に浮かんでいて、それをすごく正確に取り出して、その方向に正確に作り上げたから俺から見ると「えっ、最初からこれ、考えていたんでしょ?」っていう風なコンセプトアルバムに見えるっていう。起承転結もものすごいちゃんとしているようにも思えるし。
(星野源)そうですね。でも、曲順を考えたのは全部曲が録り終わってからなので。これは最初からもちろん想定をしていたわけではなく。でも、死ぬほど曲順は考えましたけども。
(宇多丸)いや、だってほら、最後のさ、『Hello Song』。あれとかはさ、これはもう絶対にエンディング以外にありえないっていうかさ。
(星野源)そうですね。でも、このアルバムの中ではたぶんいちばん古い曲です。
(宇多丸)ああ、そうなんだ。
(星野源)作曲自体は。歌詞はいちばん最後なんですけども。
(宇多丸)ああ、だからパーツは別個にあったりするけども……っていうことなんですね。いやー。
(星野源)でも1個だけ、『YELLOW DANCER』でやりきれなかった感覚はすごくあって。それを深めたいなっていう。
(宇多丸)それは?
『YELLOW DANCER』でやりきれなかった感覚
(星野源)その、さっき言っていただいたブラックミュージックというものをなぜ自分がやるのか?っていうのも含め、やりきれなかったなと思うのは、その一般の方々に『YELLOW DANCER』というコンセプト、そして自分がやってきたことっていうのを……『湯気』っていう2011年の時に出したシングルのカップリング曲から自分の中でソウルミュージックのアプローチって始まっているんですけど。やっぱりそういうソウルミュージックのアプローチって僕が本当に大好きでそれを自分のフィルターを通してやるんだ!っていうことが伝わっていないっていうことが『YELLOW DANCER』をリリースした後の活動ですごく感じたことなんですよ。
(宇多丸)うんうん。
(星野源)「この人はポップスがただやりたい人なんだ」っていう風にしか、どこに行っても見てもらえてないっていうことに対して、次のアルバムではそれをちゃんとアルバム全体で……で、あの『YELLOW DANCER』はまだそうじゃない曲もあったんで。やっぱりどうしても。バラエティーだったり楽しいアルバムにしたいっていう気持ちがあったんで。でも、そうじゃなくて今回のアルバムはそういう、いま自分がやりたいこと、僕が『YELLOW DANCER』の時、もっと前から目指していたことっていうもののもっと深い、さらなる到達点を作るんだっていうのはありました。
(宇多丸)そこででもあたし……あたしね。
(星野源)「あたし」(笑)。
(宇多丸)あたしね、あなたが面白いと思うのは……。
(星野源)フフフ(笑)。
(宇多丸)まあめちゃめちゃ、たとえば『アイデア』っていう曲。めちゃめちゃ攻めた曲を作ったじゃないですか。しかもその攻めた曲をやる場所が、NHKの朝ドラの主題歌で。1番をつつがなくポップスとしてやり過ごし、2番でやおら凶暴なSTUTSのMPCの打ち込みが暴れだし、急に音像がやっぱり2018年の世界モードみたいなところにグッと引き寄せて。要は、という凶暴な実験をよりによって……要するにアルバムの中の1曲で実験をしていますとか、「アルバムのここのこういう曲で実験をしています。
で、シングルではこういうわかりやすい曲を入れています」っていうんじゃなくて、むしろ『Pop Virus』とか『アイデア』とか、アルバムのリードっぽい曲ほどなんかすごい無茶な踏み越えをやってみせて。なおかつそれを、逆にね、『YELLOW DANCER』の時の「あれはみんな、わかっていないんじゃないか?」っていうのを逆にみんなが知らないウィルスの如くですよ、知らないうちにみんなそれを摂取している状態っていうか。で、俺はすごい痛快だなっていうか。
(星野源)嬉しいです。
(宇多丸)痛快だし、「何をする、星野よ?」と。
(星野源)フハハハハハハッ!
(宇多丸)「何をしてくれる?」って。そのいちばん売れている人がいちばん売れている曲でいちばん攻めたことをやるなんていう、そういうアメリカの音楽シーンのいちばんかっこいいところみたいなことをやられると、母数が違う側は困るんだよ!っていう(笑)。
(星野源)フハハハハハハッ!
(宇垣美里)「母数が違うから」(笑)。
(星野源)褒められ、怒られ……(笑)。
(宇多丸)でもさ、その母数が違うところでの勝負っていうのはもちろん自覚は当然あるわけじゃん? そこで、「だからやるんだ!」みたいな。
(星野源)そうですね。いわゆる朝ドラの曲ではまず1番しかオープニングでは流れていなくて。でも、あの1番のところでもうすでに「ベースミュージックを生演奏でやったらどうなるだろう?」っていう発想から始まった曲なんですね。ドラムの刻み方とか。でも、朝ドラだしっていのもあって、朝ドラでアニソンのようなキャッチーさを持った早い曲をやりたいっていう気持ちもあったんですね。朝ドラってどうしても分数が決められていて、それが超厳密に決められているんですけども。その中にAメロ、Bメロ、サビ、イントロとかって入れると、だいたい同じテンポになるんですよ。
(宇多丸)うんうん。
(星野源)だからほとんどの曲のテンポがゆっくりめなんですよ。それを違う風にしたいから、イントロとアウトロをしっかり入れて、早い曲として作るっていうのをやった時、それにキャッチーさみたいなものも含めて自分のやりたい曲ができたと思ったんですけど、「ベースミュージックを生演奏でやったら」というものは全く伝わらないものになったなと。
(宇多丸)出来上がってみたら。
(星野源)出来上がってみたら。それで1番だけまず出来上がったんです。で、そこから2、3ヶ月たって、その間に『ドラえもん』のリリースが挟まるんですけども。で、その後に「よし、改めてフルを作ろう」ってなって改めて振り返って聞いた時に、なんだかつまらないなって思って。自分があそこでやろうと思っていた、詰め込みたかったものっていうのはここでは表現はできていないと思って。で、このままそれを広げるっていうのはできるんだけど、僕はいまやりたくない。どうしよう?っていうところからあの2番以降が始まって。
(宇多丸)ええ、ええ。
(星野源)で、その2番以降でいま自分がやりたいことっていうのをやるために、その前に1曲だけご一緒していたSTUTSくんにビートだけ……2人で一緒に作ったんですけども。ビートだけお願いしたいっていう。で、シンセのビャーッていう音とか、シンセは生で全部いつものバンドに弾きてもらってとか。僕自身もシンセベースとかを弾いてとか、そういう風に作っていって。でも、それだけだとただ2番で面白いことをちょっとしましたっていうだけになっちゃうから、そうじゃない方法ってなんだろう?って思った時に3番で僕の原点の弾き語りに帰るっていう。で、そこでそうなった時に僕の過去、現在、未来のアイデアが詰まった曲なんですっていう、そういう俺の曲にできるなと。そういう風にだんだんと自分の中で曲の展開がなっていって。それであれができた感じなんですよ。
(宇多丸)うんうん。
(星野源)なので、最初からこういうものを面白いと思う。これを朝ドラでやりたいっていう気持ちはあったんですけど、途中で「あれ? これ全然なんか攻めてない」っていうことに気づいて。で、さらに攻めるにはどうしたらいいのか?っていうのを改めて考えることができた時間があったっていうのがありますね。
(宇多丸)(BGMの『アイデア』を聞いて)いまの部分ね。これね。でね、だからそんぐらい、星野くんの歌と声もそうかな? キャラクターもそうかな? その、なんていうかこれは全然能力っていうかすごい才能なんだけど、ポップへの収拾力が強いんですよね。ちょっとやそっとのことをやってもポップに回収していける力があるというか。だからこそ、普通の人はちょっとやそっとのことだと気づかないっていうのはあるんだけど。でも、やっぱりこれで掴んだ感じがあるからこそ、その『POP VIRUS』とかのコンセプトとアレンジとか諸々が全部上手く回っているみたいな。
(星野源)『アイデア』の時に反響がすごくあったので、「このいまの気持ちは間違っていないんだ」って思えたのがすごく大きいです。