宇多丸さんと宇垣美里さんが2025年7月16日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション2』でジェームズ・ガン監督による2025年版『スーパーマン』について話していました。
(宇多丸)ちょっとこの場ではぜひ、宇垣さんがこちらの映画を見てきたという話を僕は伺いたいと思います。何を見てきたんですか?
(宇垣美里)『スーパーマン』! もう素晴らしかったです。私はもともと監督のジェームズ・ガンのことがこの番組をきっかけに大好きになったんですが。なんか見た後に「私があなたのこと、好きでよかったって思わせてくれてありがとう」って、なんか感謝みたいなものが芽生えた。そのぐらい素晴らしい作品だったなと思いました。
(宇多丸)ジェームズ・ガンのジェームズ・ガンたるところというか。「そういうところが好きなんだよな!」っていうところが期待を裏切らずというか。なんなら期待を上回る覚悟のもとに……。
(宇垣美里)本当です。気合いが違う。
(宇多丸)古川さんとね、しみじみ言っていたのは「ジェームズ・ガンって真面目な人だよな」って。
(宇垣美里)真面目だし、ある種それこそがパンクなんだっていう。
(宇多丸)もちろん。そういう話でもあるし。あと僕、見終わった瞬間に「はい、宇垣さんに早く話をしなきゃ! ワンちゃんですよ!」っていう。
(宇垣美里)そう!
(宇多丸)近年、これほどワンちゃんをフィーチャーしている作品もなかなかないんじゃないですか?
(宇垣美里)ジェームズ・ガンって犬、好きですよね。コスモがね、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』にも出てきましたけど。やっぱり犬が犬らしいところの……ただな、ちょっと犬NGっていうか。犬が嫌な思いをするのが嫌いだから。ちょっとそのシーンが若干あって。だからそこはみんな、ちょっと気をつけてほしい。普通にブチギレてた。私は。「ふざけんなよ!」って。あと「ちゃんとしつけはしろ」とか、いろいろあったけど。
(宇多丸)そうね。体当たりがちょっとね。あれ、でも飼い主が最後、あの人だから。
(宇垣美里)あの飼い主も超魅力的でしたね!
(宇多丸)「飼い主に似るんだな」なんて言ってましたけどね。
(宇垣美里)それも含めてすごく犬が犬らしくって。それがある種、なんていうのかな? キモにもなってくるっていう。
(宇多丸)スーパーマンがね、ワンちゃんを飼ってるというか、預かっている。
(宇垣美里)スーパードッグなんでしょうか? 素晴らしかったです。
犬映画としても素晴らしい
(宇多丸)予告でも出てて。あれがもう、ほとんど冒頭でしたね。まんまね。だから「今回のスーパーマンはこう行くよ」っていう角度の提示ですよね。予告で出てるからいいと思うけど、もうこてんぱんにやられて、動けなくなっているところをワンちゃんに引っ張っていってもらうっていうね。
(宇垣美里)生まれてからではなく、もうこういう感じですからっていうのからスタートっていう。「みんな、知ってるよね?」っていうスタートではあったんですけど。
(宇多丸)最初、字幕でポンポンポンと説明していくっていう、あの字幕の出し方もなかなか粋で。
(宇垣美里)素敵でした。いやー、そしてもう本当に素晴らしかった! もう本当に、なんだろう? でも、ジェームズ・ガンの映画なんですよ。つまり彼の私が好きな、すごくなんて言うんですか? もはや気持ち整うぐらいの戦闘シーン。あのカメラがグリングリングリーン!って回る……。
(宇多丸)ああ、ワンカットとか、グリッてね。ちょっと魚眼チェックなっていうかさ。そういうカメラを使ってすごいグイーンと空間をダイナミックに捉えながら動いていくみたいなね。
(宇垣美里)そこがもう「うわっ、来た!」って思いましたし。あと、やっぱりその群像劇がすごいお得意な方だから。めちゃくちゃキャラクターが出てくるし、それに対してさして説明はないんだけど。でも全員、好きになっちゃう。っていうところがやっぱさすがだなって思いましたし。
(宇多丸)最初、感じ悪く登場した人とかも結局、好きになってるもんね。
(宇垣美里)そう!
(宇多丸)なんかね。「なんだ、その髪形?」とか思っていたんだけども、結局その髪形も含めて好きになっちゃってるもんね。
(宇垣美里)「くぅーっ!」っていう感じでしたよね。本当にみんなのそのドラマとか、見せてもらっていい? みたいな気持ちになったりとか。あと、やっぱり女性の描き方も私は今回、すごく好きで。彼女は彼女の戦い方があるっていう。
(宇多丸)スーパーマンの恋人でね、ロイス・レインっていうのがいつもいますけども。まあ、もともと新聞記者で、もともとすごい強いキャラクターというか。どの作品でもすごい活躍するし、あれなんだけど今回は特にね。
(宇垣美里)特に、なんかある種その対になるというか。彼女は彼女の考え方、非常に正しい。おそらく。まあ、一般的に「えっ、それ、大丈夫?」って思っちゃう思想を持っていて。そこがある種、ぶつかるじゃないですか。でも、だからこそそこがなんていうのかな? 「でもさ……」っとなる瞬間の気持ちよさがすごくあって。
(宇多丸)つまり、ジャーナリストとしてちゃんと活躍して。
(宇垣美里)そう。仕事をする女性なんですよね。
(宇多丸)そのジャーナリストの仕事をするんですよね。
(宇垣美里)はい。そこが私はすごくいいなって。まあ、それもやっぱり「信じてるんだ、彼は」って思いました。ジェームズ・ガンは。
(宇多丸)たしかにね。だって言っちゃえばだってあの最後の反撃なんか、『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』のラストじゃないけどさ。そういうことですよね。
(宇垣美里)たしかに! そうですね。だかなんか、嫌いになってもおかしくないのにジェームズ・ガンは人のこともジャーナリズムのことも善意のことも全部、この人は信じてるんだっていう。
(宇多丸)あともちろんさ、今回の悪役レックス・ルーサー……これ、僕の大好きなニコラス・ホルトがやっていますけども。
(宇垣美里)最高! ニュークス!
(宇多丸)まあとにかく、でも歴代のレックス・ルーサーの中でもかなり憎々しいやつっていうか。「悪っ!」っていう感じで。
(宇垣美里)「いや、言ってお前、小物じゃね?」っていう。その心の部分がね。でも、そこがすごく人間味があって。
(宇多丸)そうなんです。僕が言おうとしたのは、そこなんですよ。だから最終的には彼も今までのレックス・ルーサーにはないリアクションをするじゃないですか。
(宇垣美里)あそこ、たまんねー!(笑)。
(宇多丸)これ、ぜひ皆さん見てください。「あっ、そう? そのリアクション? ああ、そう来る?」みたいな。やっぱり、面白いよね。だからおっしゃる通り、人間の捉え方っていうかさ。だからまあ、全員ちゃんと人として捉えている。敵でさえっていうことかもしれないですね。
(宇垣美里)だから本当に気合が違うわって思いながら見てましたね。
(宇多丸)あとやっぱりもちろん、そこも重要な要素だと思うけど。やっぱり今、ヒーローやるなら……特に『スーパーマン』をやるならって言うんで。正直、「こんなことをやっていていいのか?」みたいな時にやっぱりちゃんとこの作品を作る意義みたいなことを……。
(宇垣美里)エンタメができることっていうのをすごい信じていらっしゃると思いましたよね。
今、スーパーマンが描くべきテーマ
(宇多丸)まあぜひ皆さん、これはね、ご覧になっていただきたいけど。本当に現在進行形の……人道が目の前で、我々の世界の目の前で踏みにじられている時に。でもそれでさ、またほら、スーパーマンももちろん大事だけど。みんなできることがあるっていう話であって。
(宇垣美里)そう。スーパーマン自身ある種、悩みながら間違えながら、でも自分にできることをする。それはあなたもそうですよねっていうメッセージを私は感じましたね。うん。
(宇多丸)そこなんですよね。ぜひ皆さん、このクライマックス、スーパーマンのとある名ゼリフというかね。そこも本当に「そうだ!」っていう感じだし。この今、排外的な……まあ、どこの国もそういう匂いがある中で、やっぱり堂々と……もちろんアメリカでもね、そこがすごく議論を巻き起こしているけど。そんなのもたぶん上等で作ってるんでしょうし。うん。
(宇垣美里)すごい。本当に勇気を持って作られた作品だと思います。だし、私はこれを応援する形で賛同を表明したい。そういう気持ち。
(宇多丸)それでいてでもさ、めちゃくちゃ笑えて。要するに、映画としてめっちゃ面白いというか。本当に。
(宇垣美里)あと私は……これ、ネタバレじゃないかな? スーパーマンがとあるハッシュタグに対してめちゃくちゃ怒ってるっていうシーンで。「スーパーマンだって怒るんやで? 私も怒ってもよくない?」みたいな(笑)。そう思いました。
(宇多丸)ちなみにね、ネットに悪意をもって流される誤情報っていうのはね、どういう風に流されているのか? こう流されているのか! みたいな。でもさ、その手先となっている彼らでさえ、ジェームズ・ガンは優しくて。
(宇垣美里)そう! そうなの!
(宇多丸)なんでしょう、これ? だから真面目で優しい人だし。でも面白い人で。とにかくふざけてるし。
(宇垣美里)あと、なんか最初に「絶対こいつ、嫌いだ」って思ってた人が最後、めちゃくちゃ好きになるっていう。そこもとてもなんていうか、ある種私たちが勝手に思い込んだ「この人ってこういう人でしょう?」って思ってるところを変える。たとえば、こういう写真を撮る女性って、どうせこういう人でしょう?っていうのをある種、すごい裏切ってくる。そこがすごく好きでした。
(宇多丸)たしかに、たしかに。これもぜひ皆さん……。
(宇垣美里)うん! あの女、いいよ!(笑)。
(宇多丸)いやいやいやいや、どうどうどう。どうどうどう。ちょっとね、そこはね。
(宇垣美里)全部のキャラ、そうですよね。こんなに好きになるとは思わなかった。全員に対して。
(宇多丸)今回のジミー・オルセンもいいよ! いまだかつてないジミー・オルセンでしたね。
(宇垣美里)大好きな彼が出てきた!っていう(笑)。
(宇多丸)まあ、クラーク・ケントの弟分というのかな? デイリー・プラネットで一緒に働いていて。今までも出てきたキャラクターなんだけど。今までにない角度。あれですよね。『ブックスマート』の……。
(宇垣美里)あのお金持ちの男の子。
(宇多丸)お金持ちだけど孤独だったっていうかね。彼がまた、いいですよね。
(宇垣美里)私もやっぱり「あっ、『ブックスマート』の子だ!」と思ってすごいテンションが上がっちゃって。
(宇多丸)彼の笑顔が……すごいむちゃくちゃな役なんだけど。彼の笑顔がなんか説得力があるっていうか。要はその、「こんなモテるの?」って(笑)。
(宇垣美里)でもね、私はなんか説得力あると思いました。
(宇多丸)だからさ、「こういう人がモテる世の中であってほしい」っていうのもあるんじゃない? 要するに優しくて。ちゃんと気も使えるし。
(宇垣美里)実は……っていう。
(宇多丸)でもすごい困ってましたけどね(笑)。
(宇垣美里)それも含めてかわいい感じがしましたね。
(宇多丸)ちゃんとね。あと、なんか最後の最後もさ、そういう重たいテーマも扱っている分、ちゃんとオフビートな笑いでさ。
(宇垣美里)そう。全然笑える。めちゃくちゃ面白いし、アクションもかっこいいし。
(宇多丸)あとは、そうだ。これは……ダメだ! さっき宇垣さんも言っていたけどやっぱりジェームズ・ガンのテーマ。その、要は「生まれじゃないよ。君の行動が君を形づくるんだよ」っていう。まあ、当たり前っちゃ当たり前のことなんだけど。ねえ。
(宇垣美里)ずっと言っていたことを今回も改めて、たぶん伝えていて。「だから私、あなたのことがすごく好き」って思いながら見ていましたね。
(宇多丸)もちろん、過去の『スーパーマン』……特にクリストファー・リーヴの『スーパーマン』みたいなのにリスペクトとマージュを捧げながらも見てると「ああ、でもたしかにあの話って今だったらそこはどうなのかね?っていうところもあるな」っていうのをちゃんと今の話にアップデートしていて。僕はだからもう、文句なしでした。正直。
(宇垣美里)いや、本当に。殿堂入りです。
(宇多丸)まあムービーウォッチメン、やるんでね。宇垣さん、この辺で勘弁してください。
(宇垣美里)いやー、早う聞きてえ! 回す時、私、お金を払おうかね?
(宇多丸)「聞きてえ」もクソももう今、話しとるやんけ、これ(笑)。
(宇垣美里)「どうせみんな、好きじゃん?」みたいな。
(宇多丸)勘弁してくださいよ。やりづらいんだから。
(宇垣美里)もう本当にマジでみんなに見てほしい。ワンワンかわいい!
(宇多丸)ぜひ皆さんね、来週からまたね、ドドンとスクリーンが埋まってしまいますけども。これは全編IMAX作品なんで。
(宇垣美里)IMAXで見てほしい!
(宇多丸)「ちょっとそこ、どいてくれますか?」ってね、IMAXのスクリーンでね、見たいもんですね。これ、よろしくお願いします。ひとつね。そちらも結構。大いに結構!(笑)。
今回の『スーパーマン』、見た人は全員絶賛していますね。町山智浩さんの紹介も激アツだったし、早くIMAXで見に行かなくちゃ!って思っています。
