町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で2017年に公開された映画の中からおすすめ映画10本をチョイスして紹介していました。
(町山智浩)今日はですね、毎年やっているベストテンっていうことなんですけど、僕は映画に順位や点数をつけるのは嫌いなんで。そんなことはする権利がないと思っていますんで。10本ぐらい適当によかった映画の話をするっていう(笑)。
(山里亮太)正月休みにみんな、見れるやつは見に行ったりできるから。
(海保知里)これを参考にして、ねえ。
(町山智浩)そうですね。やっぱり正月にふさわしいのは、『全員死刑』ですね!
(海保知里)アハハハハッ!
(山里亮太)違うよ!
『全員死刑』
(町山智浩)正月早々、『全員死刑』。家族映画ですよ! ホームドラマ、ホームコメディですから!
(海保知里)ガンガン死んでいくんですよね?
(町山智浩)ガンガン死んでいきますよ。一家4人が一家4人を皆殺しにするっていう。それで死刑になって、計8人が全員死んだっていうすごい話ですけど。だけどこれ、ものすごくおかしいですよ。
(山里亮太)はい。私も見させていただきましたけど、まあぶっ飛んでいる。
(町山智浩)笑っちゃいますよ。で、「不謹慎だ」って言って怒っている人もいるわけですよ。実際に人が死んだ事件なんで。ところが、裁判記録を見るとその通りなんですよ。
(海保知里)忠実なんですね。
(町山智浩)事実に忠実だから、おかしくてもこれは別に作っている側の責任じゃないんですよ。
(山里亮太)でも、あれが本当のことだって信じられないようなことばっかり起きてますよね。
(町山智浩)信じられないですよ。もう、公開からだいぶたっているから言っちゃってもいいと思うんですけど、もっとも信じられないシーンっていうのはいちばん最後で、拳銃でバキューン!っていうシーンがあるじゃないですか。「ええーっ? こんなバカなことが本当に起きるの? 作っているだろ?」って思ったら、原作の1ページ目にその話が出てくるんですよ。
(海保知里)ふーん!
(山里亮太)えっ? あれも本当なんですか?
(町山智浩)本当なんです。
(山里亮太)いや、最後かなり衝撃的なシーンで。六平さんですよね?
(町山智浩)笑っちゃう。漫画みたいでしょう? バキューン!って拳銃を撃つと、弾丸が……「ええっ?」っていう。「バカげてる。こんなバカなことがあるか!」って思うと……。
(山里亮太)あそこ、ちょっとふざけてやったんじゃないんですか?
(町山智浩)ふざけている感じ、するでしょう? だって笑っちゃうじゃない? そしたら、原作の1ページ目ですよ。
(山里亮太)っていうことは、ああいうことになったってことですか?
(町山智浩)実際にそうなったんですよ。
(山里亮太)ええーっ!
(海保知里)私は見ていないですけど、わからなかったです。なにがなんだか。だから、大丈夫ですよ。これから見ますけど、全然問題ない。
(町山智浩)大丈夫ですか? はい。だから、石頭の人は自殺もできないのか?っていうすごい話でしたね(笑)。
(山里亮太)ねえ! ああ、そうなんだ!
(町山智浩)だから、そういう風にギャグがいちいち本当なんで、とにかく驚愕の映画が『全員死刑』ですね。しかも、ポップなんですよね。映画の作りが。でね、次に今年すごかったのは、テレビドラマになるんですが……『ツイン・ピークス The Return』ですね。
(海保知里)うん!
『ツイン・ピークス The Return』
(町山智浩)これは、小堺一機さんと非常に盛り上がったんですが(笑)。あの時はまだ、シリーズ全部で18話あるうちの半分ぐらいしか僕、見ていなかったんですけど、後半はもうめっちゃくちゃになっていくんですよ。
(山里亮太)もともとめちゃくちゃな話なんですよね? 展開とか。
(町山智浩)もともとめちゃくちゃなんですけど。主人公はFBIの捜査官のクーパーっていう人なんですね。それをカイル・マクラクランが演じているんですけど、彼が闇の世界みたいなところで……もう言っていると変なんですけど。黒いクーパーと白いクーパーに分かれるんですよ。善のクーパーが白くて、黒のクーパーは悪なんですね。同じ人が演じています。で、悪の方はもう徹底的にワルの限りを尽くして、片っ端から人を殺しまくるんですよ。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)ところが、白いクーパーの方はすごくいい人で、無邪気で、イノセンスで、あらゆる人を幸せにしていくんですよ。
(海保知里)天使のような?
(町山智浩)天使のような。だから、こぶとりじいさんみたいな話ですね、はい。
(海保知里)フフフ(笑)。本当に!?
(山里亮太)今回、こぶとりじいさんみたいな話なんですか?
(町山智浩)こぶとりじいさんですよ。「あるところにいいおじいさんがいました。あるところに悪いおじいさんがいました」っていう話で、それが激突するまでの話なんですけども。その、いいおじいさんの方はとにかくみんなを幸せにするだけじゃなくて、絶倫なんですね。
(山里亮太)フハハハハッ!
(町山智浩)本当なんですよ、それが。こぶとりじいさん、絶倫なんですよ。で、その奥さんを本当に幸せにするんですよ。夜も。大変なんです。で、息子がそれを聞いていて、「うるせーな、お母ちゃん、なにやってるんだ」とか、そういうシーンが本当にあるんですよ。
(海保知里)アハハハハッ!
(町山智浩)どういうドラマなんだ、これは?って思っていたら、途中からもうすっごい核爆発は起こるわ、すっごい展開になっていって。で、宇宙的広がりを見せていくんですよ。『ツイン・ピークス The Return』っていうのは。
(海保知里)へー!
(町山智浩)で、なおかつデビッド・リンチ監督がずっといままで作っていた『イレイザーヘッド』であるとか『ブルーベルベット』とかずっと作ってきて、70いくつになって、それを集大成するようなものすごい泣けるシーンが突然ドーン! と出てくるんですよ。「うわーっ!」って涙が出てくるシーンなんですけど、そこを支えているのが裕木奈江さんなんですよ。
(山里亮太)ああ、出てらっしゃるんですよね。
(町山智浩)だからやっぱり『北の国から』が蘇ってるんですね。そういうね、いろんな田中邦衛的なすごいことが……。
(山里亮太)「田中邦衛的なこと」?
(町山智浩)田中邦衛がなんか映っているような気がしたんですよ、僕。最近、なんかお見かけしないんですけど、「あれ? 田中邦衛じゃないかな?」って思うんですよ。
(海保知里)フフフ(笑)。
(山里亮太)裕木奈江さんのあまりの演技の上手さで、そこにね。すごいボクサーはシャドーボクシングで相手が見える、みたいな感じで?
(町山智浩)そうそうそう(笑)。そうなんですよ。だからね、「真心ってなにかね?」とかいろんなことを考えさせられたのが……。
(海保知里)アハハハハッ!
(町山智浩)それ、言ってないかな? とかいろいろとあるんですけど、それが今回の『ツイン・ピークス』で。まさか泣けるとは思いませんでしたよ。でも、ほのぼのしたりとかもするんで。まあ、そのへんもだからすごい倉本聰タッチだなと。たぶんね、こっそりやっているんですよ。「Special Thanks To So Kuramoto」って書いてありましたから。
(山里亮太)本当ですか?
(町山智浩)いや、嘘ですよ。
(山里亮太)見えたんでしょうね。だから、もう。
(町山智浩)まあ、いろんなものが見えましたね。
(海保知里)アハハハハッ!
(山里亮太)ぶっ飛んでるから、それもありなのかなと(笑)。
(町山智浩)そうなんですよ(笑)。あとね、泣けたのだと『ブレードランナー2049』。
(海保知里)はい。
『ブレードランナー2049』
(町山智浩)あのね、『ブレードランナー2049』って前に「すごい泣けたシーンがある」って言ったけど、それを(具体的には)言わなかったんですけども、それは具体的にはショーン・ヤングっていう女優さんが出てくるシーンなんですね。で、ショーン・ヤングという女優さんは35年前の『ブレードランナー』の一作目のヒロインだった人なんですね。
(海保知里)はい。
(町山智浩)ところが、その後にハリウッドから抹殺されちゃったんですよ。ショーン・ヤングさんって。いわゆるプッツン女優と言われて、ちょっと真理子ってたんですね。ジェームズ・ウッズという俳優がいまして、その俳優に惚れてしまったんですけども。そしたら、捨てられたんですよ。で、ジェームズ・ウッズが別の人と結婚したんですね。ちなみにジェームズ・ウッズというのはその当時のハリウッドでの巨根ナンバーワンだったんですけども。
(海保知里)本当ですか?(笑)。
(山里亮太)補足のパンチ力!(笑)。
(町山智浩)で、彼に対してストーカーをかけて、プッツン女優と言われて。その時にすごい噂があって、ショーン・ヤングはそのジェームズ・ウッズのウッズを内股にアロンアルファで接着したと言われたんですよ。
(海保知里)ええーっ!
(町山智浩)本当かどうかはわからないんですけど、そういう噂が流れたんですよ。で、ジェームズ・ウッズ自身はテレビのバラエティーかなんかにだいぶたってから出て、「本当に内股にくっつけられたんですか?」って言われたら、「ああ、内股じゃなくて膝のあたりだよ」って言ったんですけど、どんだけデカいんだ?っていう(笑)。
(山里亮太)ナイスジョーク!(笑)。
(町山智浩)どんだけデカいんだ?って思うんですけど、ショーン・ヤングはそれで実際に裁判で負けちゃっているんですよ。ストーカー裁判にかけられて。
(海保知里)へー!
(町山智浩)それで、ハリウッドでは彼女には触らない方がいいっていうことで。
(海保知里)くっつけられちゃうし(笑)。
(町山智浩)そう。くっつけられちゃうしね。だから、大変なんですよ。「皮ごと切ればいい」とかいろいろ思うんですけども。
(山里亮太)フハハハハッ!
(町山智浩)それで彼女は本当にハリウッドから消えちゃったんですよ。あの名作の大ヒロインだったのに。で、本当にどこに行ったんだろう?って思っていたら今回の『ブレードランナー2049』で復活しているんですよね。これは本当にね、スタッフが『ブレードランナー』っていう作品をどれだけ愛しているんだということで、本当にウワーッと泣けたシーンなんですよ。
(山里亮太)いろんなタブーを超えて。
(町山智浩)だから一作目を見ていないと、そこではピンと来ないんで、それで「(一作目を)見てください」って僕は行ったんですね。
(山里亮太)じゃあ、劇場で分かれたんですね。これから(いきなり)見た人と、隣で泣いてる人がいたんだ。
(町山智浩)そうなんですよ。そういうところで非常に泣けたのが『ブレードランナー2049』でした。あと、『デトロイト』っていう映画がやっぱりすごかったですね。
(山里亮太)『デトロイト』。
『デトロイト』
(町山智浩)これは日本では来年すぐに公開ですけども。これは1967年のアメリカのデトロイトで起こった白人警官による黒人の少年少女たちを監禁・拷問・殺人した事件を40分間、その拷問シーンをリアルタイムで再現するというすごい映画なんですよ。で、見ていると本当に……本っ当に嫌な気持ちになるんですよ。で、それは白人の女の子も一緒に監禁されちゃっているんですけど、これはいつ巻き込まれるかわからないなと思ったですね。「黒人だから」っていうことではないんですよね。もう警官に拷問目的で監禁されたら、もう何を言っても……だって、全部偽装されちゃうから。
(海保知里)ああー……。
(町山智浩)殺されても、そこにナイフとかをポンって置かれて、「こいつはナイフを持っていたから殺した」とかやられちゃうんですよ。で、いまアメリカでものすごい数、警官による殺人事件が増えているというか、昔から数は変わらないんですけども。どれだけ偽装されてきたんだろう?ってゾッとする映画で。だからこれはね、キャサリン・ビグロー監督がものすごく勇気ある映画を作ったなと思いましたね。
(山里亮太)これ、見たいんだよなー。
(町山智浩)「みんな、見えてないだろうけど、こんなことが実際に起こっているんだよ」っていう映画ですね。だからこれは強烈でしたね。まあ、ホラー映画として強烈でしたね。
(海保知里)これは日本で公開が来年1月26日。
(町山智浩)これが『デトロイト』ですね。で、ホラー映画だと……一応ちゃんと流れを作ってますからね(笑)。ホラー映画でもうひとつすごかったのは『哭声/コクソン』でしたね。韓国映画ですけども。
(山里亮太)ああー、はいはいはい!
『哭声/コクソン』
(町山智浩)韓国の山奥のコクソン村に突然現れたふんどし姿の國村隼っていう。で、なぜか駐在さんの娘が悪魔に憑かれてしまって、「これは國村隼がやっているんじゃないか?」っていう、まあそこから……最初はお父さんと娘とのほのぼのコメディーみたいにして始まりながらも、國村隼のふんどしとお尻あたりからだんだん怖い怖い映画になっていくんですねー。
(海保知里)アハハハハッ!
(山里亮太)國村隼さん、怖いからなー!
(町山智浩)怖いんですよ。まあ、しゃべり方はおとなしいんです。非常にまあ、「ああ、そうですか」って言いながらしゃべるんですけども、ふんどし一丁ですからね。「服を着てから言えよ!」とか思いましたけども(笑)。「口の周りも血だらけだし……」みたいなね。
(海保知里)ええーっ!
(町山智浩)これが怖いんですよ。これはね、娘を持っている人だったりすると、本当にもう怖いですよ。
(山里亮太)ずっと見ているとね、なんかパニックになって。「あれ? 俺はいま何を見ているんだろう?」って。
(町山智浩)そうそうそう! これ、何が起こっているのか全然わからないんですよ。で、「Aだよ」って言われたかと思って、それで警官がAの行動をすると「実はBだよ」ってどんどんひっくり返していくんで、なにを信じていいかわからないという、観客の頭をグチャグチャにしていく映画が……。
(海保知里)すごいミスリードがいっぱいありながらの展開なんですか?
(町山智浩)その通りです。ものすごい迷路のような映画で。これはね、監督が言っていて、これも公開からだいぶたっているからヒントとして言うんですけど、「『神様というものは実際にいたら、たぶん人間にとっていいものではないだろう』っていうことを言いたかった」って監督は言うんですよ。
(海保知里)へー!
(町山智浩)これはちょっとすごい映画でしたね。ナ・ホンジン監督です。で、國村隼さんがとにかくすごいです。
(山里亮太)ふんどし姿の國村隼さん。めっちゃ速く追いかけてきます。
(町山智浩)そう。で、まさか神様についての話だとは思わなかったんですよ。『哭声/コクソン』は。で、やっぱり神様についての話だとね、『沈黙‐サイレンス‐』がやっぱりすごかったですね。
(海保知里)はいはい。
『沈黙‐サイレンス‐』
(町山智浩)これは長崎での江戸時代のキリシタン弾圧で転んで(棄教して)しまった実在の宣教師の話なんですね。イタリア人なんですけども。これ、みんな拷問で負けたんだと思い込んでいるじゃないですか。キリシタンの弾圧って。そうじゃない。これは拷問をしないんですよ。役人側は。「君のことは拷問しないから」とか言うんですよ。イッセー尾形さんと浅野忠信さんが。「そのかわり、君の周りの人を拷問して殺しちゃうからね」って言うんですよ。
(山里亮太)はー!
(町山智浩)で、次から次へと、小松菜奈さんとかアダム・ドライバーとかがバンバン殺されていくんですよ。で、絶対に主人公のアンドリュー・ガーフィールドくんには手を出さないんですよ。そのかわり、「あの人、死んでいくね」って浅野忠信が言うんですよ。「あの人、死んでいくね。君のために死んでいくんだよね。君が転ばないから、あの人は殺されるね。君は悪い人だねえ!」って言うんですよ。浅野忠信、人間のクズだと思いましたね!
(山里亮太)最低だな!
(町山智浩)これはすげー怖いと思いましたよ。一切手を出さないんですよ。これはね、非常に日本的な役人の怖さみたいなね。それで、言うんですよ。「僕はキリスト教とかどうでもいいと思うんだよ。君たちが何を信じようと自由なんだけどね。でも、役人としては非常に困るんだよね、これは」っていう。「私には責任がないんだけど。仕事ですから」っていう。これは怖いね!
(山里亮太)そういうことを言うことによって、残酷なことも平気でできちゃうという。
(町山智浩)できちゃうんですよ。浅野忠信とイッセー尾形ですよ! めちゃくちゃ嫌なヤツでしたよ!
(山里亮太)「役で」ですよ。
(町山智浩)役ですね(笑)。もう、いい人には思えないですね、これを見た後は。
(山里亮太)そう思えるぐらい、鬼気迫るものが中にあるんだ。
(町山智浩)そう。普通なのがすごく怖いんですよ。だからこれが、池井戸潤さん原作のTBSのドラマだと、こういうのをやる人は大抵ピエール瀧とか小藪さんとか、顔が悪いやつ。顔を見ただけでものすげー悪いやつなの(笑)。
(海保知里)『陸王』でね(笑)。
(町山智浩)で、これが「てめえら!」とか言いながら、「お前らなんか、潰してやる!」とか言いながらやるのが、池井戸潤原作ドラマですよ。もうピエール瀧が出てきただけで、「ああ、顔怖いな」って思うと怖い人。「心が腐ってるんじゃないかな?」って思うと本当に腐っているという。表向きと中身がなにも……。
(山里亮太)あれは演じているんじゃないですか?
(町山智浩)ええっ? そうなの? 演じていたのか? そうなのか(笑)。
(海保知里)アハハハハッ!
(町山智浩)でも、この『沈黙』はそうじゃなくて、浅野忠信さんはおとなしく礼儀正しく恐ろしいことをしていく。
(山里亮太)浅野さんが礼儀正しく怖いのって、昔『殺し屋1』っていう映画でも……あの感じですよね? 垣原。
(町山智浩)そう。もう日常感あふれる感じで怖いんですよ。だから『沈黙‐サイレンス‐』は怖いんですよ。だから、人は見た目通りじゃないっていう話だともう1本、『スリー・ビルボード』っていう映画がそうですね。
(海保知里)ねえ。ご紹介してくださいましたね。
『スリー・ビルボード』
(町山智浩)これはアメリカの田舎、ミズーリ州で娘を惨殺されてしまったお母さんがその犯人を探そうとする話で、それを潰そうとする非常に人種差別的な警察官がいて。それをサム・ロックウェルっていう俳優が演じているんですけども。まあ、徹底的に悪いやつで、捜査をしようとするお母さんを暴力で潰そうとするという話だと思って見ていると、どんどん違う話に展開していくんですよ。
(海保知里)これ、アカデミー賞でかなりいい線行くと言われてますよね?
(町山智浩)いま、かなり入っていますよね。これ、脚本賞は『ゲット・アウト』っていう映画と争うことになると思うんですけど。どちらかが取ると思うんですけど。これはとにかく、「人は第一印象通りではないんだ。見た目の行動とかやっていること、言っていること通りではないんだ」ということを……だから、ピエール瀧ももしかしたらいい人かもしれないっていう。
(山里亮太)フハハハハッ!
(町山智浩)あの顔でも、もしかしたら心根は優しいのかもしれない。娘にはメロメロかもしれない。娘をエリザベスとか呼んでチヤホヤしすぎかもしれないとか、いろいろと思うわけですけども。
(海保知里)アハハハハッ!
(山里亮太)いまの町山さんの「かもしれない」は全部正解ですから(笑)。知っているから(笑)。
(町山智浩)そう。だから人は見た目じゃないんだというね。ピエール瀧が歩いていたら、そりゃあ警察は職質しますよ。とりあえず、なんかしてるだろ?って思うでしょう。そういう風に人を見た目で判断しちゃいけないっていうのがこの『スリー・ビルボード』ってい映画でね。で、そういう話がもうひとつあって、『シェイプ・オブ・ウォーター』。
(海保知里)ああ、『シェイプ・オブ・ウォーター』! ねえ。気になっていますよね。
『シェイプ・オブ・ウォーター』
(町山智浩)そう。これもアカデミー賞の作品賞、監督賞に行きそうで。これはたぶんね、とらなくてもアカデミー史上最初の作品賞にノミネートされた怪獣映画だと思いますよ。
(海保知里)ああ、怪獣映画。
(町山智浩)怪獣映画でノミネートされたの、たぶん『シェイプ・オブ・ウォーター』がはじめてなんです。これは醜い半魚人が米軍の施設に囚われていて。その醜い半魚人とお掃除のおばさんの恋物語という、まあ監督(ギレルモ・デル・トロ)がアンチ・美女と野獣っていうことでね。「(結局は)美女とイケメンじゃねーか! 結局見た目が美しいのがいいのかよ? そうじゃねえだろ!」っていうことで、「見た目じゃないんだ。写真には写らない美しさがーあるからー♪」っていう。
(山里亮太)もう完全にいま『リンダリンダ』になっていましたね(笑)。
(町山智浩)そう(笑)。っていう映画が『シェイプ・オブ・ウォーター』で。だから、ピエール瀧も囚われて米軍の施設でいろいろと解剖されたりするかもしれないですよ。顔が怪物的だっていう理由だけでね。
(山里亮太)あの、瀧さんは「半魚人」じゃなくて、「人」です。
(町山智浩)ああ、そうか(笑)。一応人間だったっていう。はい。
(海保知里)ああ、だんだん時間がなくなってきました……。
(町山智浩)最後はですね、『RAW 少女のめざめ』っていう、これは少女が人食いに目覚める話なんですけども。
(海保知里)はい。
『RAW 少女のめざめ』
(町山智浩)これもそういうホラー映画かと思ってみると、実は「愛とは何か?」っていう話でしたね。これ、もうすぐ。2月に公開ですけども。だからまあ、表向きはホラー映画、人食い少女の映画として公開されると思うんですけど、実は本当に深い話を描いていますね。「愛とは何か? 家族とは何か?」っていう。
(山里亮太)すっごい刺激的な、衝撃的なシーンがあるという話もしていましたもんね。
(町山智浩)そうですね。笑っちゃいますけどね。そのシーンね。「ああ、ダメだ、ダメだ。食べちゃダメ、食べちゃダメ!」っていうシーンなんですけども。それが『RAW 少女のめざめ』でもうすぐ公開です。フランス映画ですけども。ということでね、人は見た目ではないんだという。
(海保知里)アハハハハッ!
(山里亮太)今日は瀧さんのね(笑)。
(町山智浩)ああ、そうだ。なんで瀧の話になったのか、よくわかんないですけども(笑)。あと、『最後のジェダイ』は傑作でしたね。
『最後のジェダイ』
(海保知里)ああーっ! 見てきました!
(町山智浩)どうでしたか?
(海保知里)面白かった!
(町山智浩)面白かったでしょう?
(海保知里)私、そんな『スター・ウォーズ』の大ファンではないんですけど、なんだかんだで毎回見ていて。実は近年の作品の方がどんどん好きになっていくっていう感じで。「あれ? 昔のよりも面白い、面白い」ってなってきて。でも、毎回私は忘れっぽいんで、すぐに忘れちゃうんですよ。良さを。で、今回も「どうかな?」と思って見に行ったら、「ヤベッ、面白い!」ってなって。
(町山智浩)面白いですよね。
(海保知里)知らなくても面白いと思います。
(山里亮太)なんか、ここ何作かを見て行けば大丈夫なんでしょう?
(町山智浩)そうですね。前の一作『フォースの覚醒』を見ておけば大丈夫だと思うんですけど。僕、うちの娘が赤ん坊の頃から『スター・ウォーズ』全作品を死ぬほど見せていて洗脳していたんですけど、全然いままでハマらなかったんですよ。そしたら今回の『最後のジェダイ』ではじめてハマって。それで「アダム・ドライバー、大好き! カイロ・レン様!」って言っていますけどね(笑)。
(山里亮太)へー!
(町山智浩)「美的感覚がおかしいよ、お前!」って言っているんですけど(笑)。
(海保知里)でもいま、売れっ子ですからね。アダム・ドライバーは。ハリウッドでね。
(町山智浩)まさかね、うちの娘がアダム・ドライバーを好きになるとは思いませんでしたよ! 顔の長さはピエール瀧と同じですよ、アダム・ドライバーは!
(海保知里)アハハハハッ!
(町山智浩)というオチでしたが……(笑)。
(海保知里)ということで、今日は町山さんに今年の映画ベストテンを発表していただきました。町山さん、ありがとうございました。
<書き起こしおわり>