町山智浩『スリー・ビルボード』を語る

町山智浩『スリー・ビルボード』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『スリー・ビルボード』を紹介していました。

スリー・ビルボード (字幕版)

(山里亮太)町山さん、私もついに『ゲット・アウト』を見てきまして。

(町山智浩)ああ、そうですか!

(海保知里)仲間が増えました。

(町山智浩)どうでした?

(山里亮太)すごい映画でしたよ。で、町山さん。あの映画を見る前の人に説明するって、むちゃくちゃ難しいことを町山さんはやっていたんだなって思いながら見ていました。

(町山智浩)そうなんですよ。説明すると面白くなくなっちゃうんですよ。

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(山里亮太)そう。あれはだからね、すっごいですね。それがいちばん関心というか。俺、これを人に説明する時、どうしよう?って思いながら見ていましたもん。

(町山智浩)本当に苦労しますよ(笑)。で、今日紹介する映画はもっと難しいんですよ。

(山里亮太)あらっ!

(海保知里)そうなんですか! そこをなんとか……。

(町山智浩)これね、いいところを言おうとするとネタを割っちゃう映画なんですよ。

(山里亮太)いろんな仕掛けというか、結果が……。

(町山智浩)そうなんですよ。すっごい難しいんですけど。これはおそらく、もう予想しちゃっていいと思うんですけども。今度のアカデミー賞で脚本賞をとると思います。

(海保知里)おおーっ! そうなんだ。

アカデミー脚本賞有力候補

(町山智浩)この映画は『スリー・ビルボード』という映画です。「3つのビルボード」っていうんですが、「ビルボード」っていうのはアメリカの道路沿いに、自動車で通りすぎる人のために立っている看板のことですね。

(海保知里)うんうん。

(町山智浩)「3つの道路脇の立て看板」っていうタイトルなんですけども。これはミズーリというアメリカのド田舎の田舎道に3つの立て看板が道路沿いに作られるんですね。それの1枚目には「うちの娘はレイプされて焼き殺された」って書いてあるんですよ。で、その次には「でも犯人は全く捕まっていない」。3つ目のビルボードには「ここの警察署長はいったい何をしているの?」って書いてあるんですね。で、その広告を出したのは、殺された娘さんのお母さん。で、ミルドレッドという役名のフランシス・マクドーマンドっていう女優さんが演じています。

(海保知里)はい。

(町山智浩)この人は『ファーゴ』の主演女優ですね。

(海保知里)ああ、どこかで見たことがあると思ったら……。

(町山智浩)はい。『ファーゴ』でサウスダコタの田舎の女性保安官を演じてアカデミー主演女優賞をとった人です。また田舎のお母さんの役なんですけども。この人は『ファーゴ』の監督のジョエル・コーエンの奥さんなんですよ。で、この人がまた田舎の事件を解決しに行くのかなと思わせるんですが……この映画、もう最初に言っておくと、思ったことが、「こういう話になるのかな?」って思うと1分後には覆されて。またその1分後には覆されて……っていう感じで。わけの分からない方向にどんどん転がっていく映画なんですよ。

(海保知里)へー!

(町山智浩)だからすっごく説明が難しいんですけど、すごく苦労して説明の仕方を組み立てましたので(笑)。今回。で、これね、監督はマーティン・マクドナーっていう人で。この人はアイルランド系のイギリス人ですね。で、この人がこの前に撮った映画は『セブン・サイコパス』っていうタイトルの映画なんですよ。

(海保知里)はい。

(町山智浩)で、それは「7人のサイコパス」だから、こう……放送できないんですが(笑)。

(海保知里)ああ、まあそうですね。言っちゃいけませんね。

(町山智浩)「おかしな人たち」ですね。笑える方の「おかしい」じゃなくて、壊れている方の人たちが7人集まって。でも、これはね、ハリウッドの脚本家が主人公で。「『七人の侍』とか『荒野の七人』とかがあるから、じゃあ『七人のサイコパス』っていう話があってもいいじゃないか」っていうことで、タイトルだけ考えるんですよ。

(山里亮太)えっ? ああ、そこから?

(町山智浩)そうなんです。ただね、アイデアが全く無い脚本家で、どうしたらいいのかわからない。で、困っていると、非常に怪しげな男が来まして。それはサム・ロックウェルっていう俳優さんが演じているんですけども。「アイデアがないんだったら、じゃあ新聞で広告を出せばいいじゃないか」って。「サイコパスのみなさん、身の回りにあった、あなたが体験した面白いことを教えてください」って新聞広告を出しちゃうんですよ。

(海保知里)おおっ、すごい。

(町山智浩)で、その脚本家のところに次々とサイコパスの人が来て大変なことになるっていう話なんですよ。

(海保知里)アハハハッ!

(山里亮太)うわー、面白そう!

(町山智浩)面白そうでしょう? で、タイトル通り「七人の○○」っつったら7人集まった人が正義のために戦う話じゃないですか。でも、集まったのがサイコパスなんでさあ、どうなる?っていう話なんですよ(笑)。

(山里亮太)うわー、想像もつかない!

(町山智浩)すごいでしょう? でね、この監督はこういう非常に暴力的ですごく怖いんだけど、これコメディーじゃないですか。どこからそれを学んだか?っていうと、北野武さんの映画から学んだんですって。

(海保知里)そうなんですか。

(町山智浩)たけしさんの映画って、そうじゃないですか。『アウトレイジ』なんかものすごく怖いんだけど、あれ、笑うでしょう? 特に西田敏行さんとか。ピエール瀧とか。

(山里亮太)瀧さんもね、今回の『最終章』ですごかったですからね。

(町山智浩)すごかったでしょう? 笑かそうとするじゃないですか。怖い暴力的なヤクザの話なのに。バイオレントなのに笑うしかないじゃないですか。あの感覚をこのマーティン・マクドナー監督はたけしさんから学んでいて。オマージュで、その『セブン・サイコパス』の中ではたけしさんの『その男、凶暴につき』を映画館の中で流したりしているんですよ。

(海保知里)そこまで……。

(町山智浩)そこまでなんですよ。

(山里亮太)見るシーンみたいなのを?

(町山智浩)そうなんです。だからね、そういう感じの映画なんですよ。で、最初にその娘を殺されたお母さんが復讐のためにいろいろと捜査をしたりする話なのかな? と思っていると、このお母さんがだんだん……まあ言えないんですけど、思ったようにいいお母さんじゃないことがわかってくるんですよ。

(海保知里)「思ったようないいお母さんじゃない」と。

(町山智浩)まあとにかく、娘の復讐のためだったらなんでもする、マッドママなんですよ。で、ちょっとこのお母さんのテーマ曲があるんで、聞いてもらえますか?

(町山智浩)これ、なんの音楽だと思います?

(山里亮太)すごくかっこいい音楽……西部劇とか?

(海保知里)西部劇っぽいですよね。

(町山智浩)その通り! 西部劇の音楽なんですよ。これ、クリント・イーストウッドとかが主演したマカロニ・ウェスタンの音楽じゃないですか。

(海保知里)ああーっ!

(山里亮太)でも「お母さんのテーマ」って言われると、なんか違和感を感じますよね。

(海保知里)マッドママなんですよね?

(町山智浩)そう。このお母さんね、だからクリント・イーストウッドが女になったみたいな人なんですよ。

(海保知里)ああーっ!

女クリント・イーストウッド

(町山智浩)だからこの音楽でいつも登場して、決して笑わないし。で、自分の邪魔をするやつはあらゆる暴力で徹底的に叩き潰していくんですよ。

(海保知里)へー! 強いんだ。

(町山智浩)だから最初、このお母さんが娘を殺されたんだから同情しているんですけど、だんだん同情する気持ちが失せていくんですよ。見ていると。

(海保知里)そこまで……。

(町山智浩)すごすぎるんで。で、ところがこの「何もしないじゃないか」って言われている警察署長が出てくるんですね。で、この警察署長を演じるのはウディ・ハレルソンっていう俳優なんですけども。『ハンガー・ゲーム』とかに出ている人ですね。で、この人が最初、ウィロビーっていう警察署長なんですけども。怠慢でお役所仕事でダメな警察署長なのかな?って思うんですけど……ところが、この人のテーマソングをかけてもらえますか?

(町山智浩)この歌は神様のことを歌っているんです。賛美歌的なものなんですね。ミズーリという非常に田舎の素朴なフォークミュージックで神を歌っているんですけど、この警察署長はすごくいい人で。まあ、神様を信じて。実はすごいいい人だということがわかって。怠慢じゃなかったんですね。その事件の捜査をできていないことが。実は、どうしても言えない理由があるんです。それどころじゃない、大変なことが実は彼には起こっているんですよ。

(海保知里)ええっ?

(町山智浩)で、この歌がヒントになるんですけど、それは映画を見てのお楽しみなんですが。だから、「この人はダメなんだ」とか思うとそうじゃなくて。「この人はいい人だ」って思うと、そうじゃなくてって、次々とひっくり返していくんですね。この映画は。だからね、クリント・イーストウッドがアカデミー賞をとった映画で『許されざる者』という映画があるんですよ。それはウエスタンなんですけども、最初に悪いやつだと思っていた人がいい人で、いい人だと思っていた人が悪い人でって、どんどんひっくり返していくんですよ。観客のキャラクターに対する先入観を。

(海保知里)はい。

(町山智浩)それに近い映画なんで。だから説明しにくいんですよ(笑)。

(山里亮太)それは難しいですね!

舞台のミズーリという土地

(町山智浩)ものすごい説明しにくいんですよ。はい。ただね、全体を支配しているのはこのミズーリという田舎の風土なんですね。ここはね、映画では『ウィンターズ・ボーン』っていう映画がここを舞台にしているんですけども。

(海保知里)うん、見ました。

(町山智浩)見ました? あれ、とんでもない話でしょう?

(海保知里)とんでもないお話でしたし、ものすごい田舎でしたね。

(町山智浩)そう。すっごい田舎で、貧乏でリスとか食べているんですけど。リスを食べているシーン、あったじゃないですか。

(海保知里)ありました、ありました。

(町山智浩)それだけじゃなくて、復讐が支配している世界なんですね。現代なのに、要するに身内の人がなんかされたとか、掟を破られたっていうと、銃を持っていきなり殺しに行ったりするわけですよ。

(海保知里)ごめんなさい。「絶対にここには住みたくない」っていうところでした。

(町山智浩)いや、でもいいところもあるんですけど。人は素朴で。で、みんな神様を信じて、信心深くて。それで地元の人たちのつながりは密接で、いい人たちなんですけど……突然、暴力的で。いきなり「ぶっ殺す!」みたいな世界でもあるんですね。

(海保知里)うんうん。

(町山智浩)これはたぶん、いまちょうど公開している『全員死刑』っていう日本の映画が……(笑)。

(山里亮太)見ましたよ!

(町山智浩)あ、見ました?

(山里亮太)見ました。町山さんがおっしゃったように、怖いけど、見て笑っちゃうっていう。

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(町山智浩)笑っちゃうでしょう? でも、なんか素朴なんですよね。

(山里亮太)はい。そうです。

(海保知里)素朴なんだー。

(山里亮太)ちょっとなまりがあってね。

(町山智浩)そうそう。田舎ののんびりした感じと、ものすごい突発的な暴力が同居していて笑っちゃう世界なんですよ。

(海保知里)ふーん!

(山里亮太)あれ、すごかったなー!

(町山智浩)怖いんですけどね。それに非常に近い映画ですね。この『スリー・ビルボード』っていう映画は。でね、ただミズーリっていうところはものすごく差別的なところなんですよ。いま、いちばんアメリカで問題になっている武器とかを持っていない、なにもしていない黒人の人を白人警官がいきなり射殺する事件がアメリカでは次々と起こっているんですけども。それがまず始まったのは、ミズーリからなんですよ。

(海保知里)ああー、そうかー。

(町山智浩)まあ、ミズーリのセントルイスという街の近くでそういうことが起こって。そこから全体に広がっているんですけども。ミズーリっていうのはそういうところでもあるんですね。で、これでこの警察署長の下にいる警察官が出てくるんですよ。この『スリー・ビルボード』で3人目のキャラクターなんですけども。それがディクソンという名前の、さっき言ったサム・ロックウェルが演じているんですけども。警察官がいて、この警察官がものすごい暴力的なんですよ。

(海保知里)そうなんですか。

(町山智浩)で、もうとにかく自分が気に食わないやつとか、警察をバカにしたやつとか、警察署長をバカにしたやつを片っ端から警棒でボコボコに殴る暴力警官なんですね。

(海保知里)まあ、なんという……。

(町山智浩)で、差別的なだけじゃなくて、もうすごく頭が悪くて。たとえば、「この男たちは軍隊に行っていたんだけども、どこに行っていたかは国家機密だから言えない」ってある人から言われるんですね。「ただ、砂がいっぱいあるところだよ」って言われるんですよ。「わかるだろ?」って言われて、「わからない」って言っちゃうんですよ。このディクソンっていう人は。それ、イラクに決まっているんですけど(笑)。いまアメリカ軍が行っているところは。

(海保知里)うんうん。

(町山智浩)でも、バカだからなにもわからないんですね。で、この警官がビルボードに警察署長を侮辱する広告を出されたんで、徹底的にこのミルドレッドっていうお母さんに邪魔をしていくんですよ。で、そのビルボードを出した広告代理店に殴り込みに行って、その広告代理店のお兄ちゃんをボコボコに殴ったりするんですね。半殺しにしたりするんですよ。

(海保知里)ええっ……。

(町山智浩)で、ものすごい凶悪な差別的な警官なんですけども……この人のテーマソングを聞いてもらえますか?

(山里亮太)いや、おかしいでしょ(笑)。合っていないでしょう、ボコボコにする人と……。

(海保知里)あれっ?

(山里亮太)荒々しさ、1個もないじゃない。

(町山智浩)はい。これはアバっていう昔流行ったスウェーデンのグループの『Chiquitita』ですね。これ、この差別的な暴力警官の大好きな歌なんです。

(海保知里)ええーっ?

(山里亮太)暴力とはかけ離れた歌だけど……。

(町山智浩)想像がつかないでしょう? これね、彼はこっそりヘッドホンで聞いているんですよ。聞かれたら困るんですよ。これを聞いていることを。それが、この人の秘密なんですよ。この警官の秘密なんです。それしか言えないんですけども。

(山里亮太)なんですか、それ!?

(町山智浩)で、とにかくこいつが悪いやつで、本当にもう暴力を振るって、権力を無茶苦茶に使ってこの捜査を邪魔してっていう風にやっていくんですけど……っていう話なんですね。ところがね、この映画は最初はこのお母さんが主人公かと思うと、話がどんどん警察署長の話になっていくんですよ。で、警察署長の話かなと思っていくと、このサム・ロックウェル扮するディクソンっていうバカ警官の話になっていくんですよ。誰が主人公かが変わっていくんですよ。

(海保知里)へー! 目線が変わるんだ。

(町山智浩)だから『スリー・ビルボード』っていう「3つの看板」っていうのにそれが象徴されているんですよ。

(海保知里)ふーん!

3つの看板が象徴するもの

(町山智浩)で、この3つの看板がそれぞれこの3人のキャラクターだとすると、看板は最初、わかるんですよ。こういう人だっていうことは。だから「いいお母さん」だったり、「不真面目な警察署長」と「暴力的なバカ警官」っていうのは看板の表側なんですね。ただ、看板の裏側ってみんな見ないでしょう? 看板の裏側があっと驚くものなんですよ。みんな。

(海保知里)ええーっ! なんて書いてあるんだろう? なにがあるんだろう?

(町山智浩)そうなんです。これはだから本当によくできた話でね。だから、アカデミー脚本賞をとるだろうと僕、思うんですよ。人は見た目とか言動だけじゃ判断できないんだよっていうことなんですね。暴力的な警官が『Chiquitita』を聞いてるんですよ。

(海保知里)フフフ、ピンと来ない(笑)。

(町山智浩)そう。でね、ヒントがひとつあって。これ、このウィロビーっていう警察署長がいつも読んでいる本があるんですね。それがね、フラナリー・オコナーっていう南部の作家の『善人はなかなかいない』っていう本を読んでいるんですよ。これね、フラナリー・オコナーっていう人はジョージア(州)なんですけども。やっぱり南部の人たちの生活を描いてきた人なんですね。

(海保知里)ふーん。

(町山智浩)で、もうひとつ、『善人はなかなかいない』という短編集の中に『田舎の善人』っていうタイトルの小説も入っているんですよ。まったくその通り、アメリカの南部の田舎の善人たちの生活を描いてきた作家なんです。フラナリー・オコナーっていう人は。1964年ぐらいに39才で亡くなった女性なんですけども。

(海保知里)ええ。

(町山智浩)田舎の善人の生活を描きながら、かならずものすごい暴力が入っているんですよ。突然、突拍子もない暴力が入ってくるんですよ。この人の小説は。でも、ほのぼのとしているんですよ。で、おかしいんですよ。

(山里亮太)ええっ? 共存できるのかな……。

(町山智浩)そこはかとなくね、この人の小説はおかしいんですよ。だからたとえば、『善人はなかなかいない』というのは、あるおばあちゃんが旅をしている最中に脱走犯の3人に拉致されちゃう話なんですよ。家族と一緒に車で旅をしていると、誘拐されちゃうんですよ。で、3人の凶悪犯が1人1人を森の中で殺していくんですね。おばあちゃんの家族たちを。それでもおばあちゃんは「まあこの人たちも悪い人じゃないんだから」みたいな感じなんですよ。ずっと。

(海保知里)よくわからない……。

(町山智浩)おかしいんですよ。ちょっと。

(海保知里)ええーっ! その感覚がわからない。

(町山智浩)非常にそこはかとないおかしさと暴力が同居しているというのを書いていた人がフラナリー・オコナーで。その人の本をこの署長は読んでいるんですね。この映画って、その感じなんですよ。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)でね、これは日本でも本がみんな絶版になっちゃっていて、フラナリー・オコナーってなかなか読めないんですけども。『田舎の善人』っていう話とかも本当にずーっと読んでいくと、最後の1ページでド暴力が突然爆発するっていう、とんでもないですよ。

(海保知里)へー!

(町山智浩)それでいてね、そこの部分はやっていて、「善人はなかなかいないね」っていう話なんですけど、「でも善人はいるよ」っていう話でもあるんです。この『スリー・ビルボード』っていう映画は。で、そのなかなかいない善人を発見した時に、「えっ、そこにいたのか!」って感じなんですよ。

(海保知里)うわー、もう、見たくなる!

(町山智浩)すごいですよ、これ。で、おそらく今年の映画の中でもっとも心あたたまる瞬間がこの映画の中にあるんですよ。

(海保知里)あったまる瞬間が?

(町山智浩)すごいあったまるね、オレンジジュースのシーンっていうのがありましてね。オレンジジュースでここまで泣かせるか!っていうシーンがあるんですけど。

(海保知里)ねえ。冷たいのにね。

(町山智浩)冷たいね(笑)。でね、これすごいですよ。だから笑いあり、暴力あり、あっと驚く展開あり、ほのぼの泣かせるところありというね。これちょっとすごい映画になっていますね。で、最後はいまアメリカ全体を支配している、ものすごいはっきり言って女性に対する暴力、レイプ。そういったことに対するものすごい静かな怒りみたいなものが、アメリカ、世界全体に対して向けられていって終わるんですよ。

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(海保知里)ふーん!

(町山智浩)ちょっとすごいですよ、これ。これ、日本公開は2月1日かな?

(山里亮太)あ、よかった。やってくれるんだ。

(海保知里)やるんですね。来年。

(町山智浩)アカデミー脚本賞は絶対に行くだろうなと思いますね。いまのところ。

(海保知里)もう見たくて見たくてしょうがない。暴力爆笑系っていうのがすごいですね。

(町山智浩)暴力爆笑ほのぼの心あたたまるハートウォーミング系ですよ。

(海保知里)フフフ(笑)。

(山里亮太)いや、共存しないんだよな。どう考えても……。

(町山智浩)それが共存するんですよ! いま、そういう時代なんです。もう(笑)。

(海保知里)時代なんですか(笑)。

(町山智浩)「全部入れろ!」っていうね(笑)。

(山里亮太)全部乗せで。

(町山智浩)はい。全部乗せの世界ですから。いま。

(海保知里)贅沢な感じで。今日は『スリー・ビルボード』を紹介していただきました。町山さん、どうもありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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