町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で1967年のデトロイト暴動の際に起きた警官による黒人青年たちの虐殺事件を描いたキャサリン・ビグロー監督の映画『デトロイト』を紹介していました。
(町山智浩)今日はですね、今年見た映画の中で結構ベスト級の強烈な映画を見ましたんで。それを紹介します。『デトロイト』という映画です。音楽をどうぞ!
(町山智浩)はい。デトロイトという街は海保さんとか、行かれたことはありますか?
(海保知里)私、行ったことはないんですけど。ただ、なんとなく危ないところっていうイメージがあるんですよね。
(町山智浩)はい。デトロイトに行く日本人の観光客というのはほとんどいないと思います。
(海保知里)やっぱりそうなんですか。へー。
(町山智浩)まあ、ゼネラル・モーターズとかフォードがあって、アメリカの自動車産業の中心部なんですけども、デトロイトの市の中心部はもうほとんど廃墟。ものすごく自動車産業が大きくなった時に街全体が広がったんですけども、それがほとんど無人地帯になっていて。前も話したんですが、『ドント・ブリーズ』という映画の中にも出てくるんですね。
(山里亮太)はいはい。
(町山智浩)『ドント・ブリーズ』はデトロイトで一人暮らしの老人の家に強盗をしようとする若者たちの話だったんですが。あれは要するに、警察が来るまで1時間かかるんですよ。巨大な無人地帯になっているんで。そこにポツポツと人が住んでいるという。ただ、この『デトロイト』という映画はそうなる前の話なんですよ。
(山里亮太)賑わっていた頃の?
(町山智浩)賑わっていた頃。1967年のまだ自動車産業が興隆していた、ピークにあった頃の話です。で、これはそのデトロイトで起こった実話なんですけども。これ、1967年に大変な大暴動がデトロイトで起こりまして。それでほとんど街が壊滅するぐらいまで焼き尽くされて。そこからデトロイトの崩壊が始まっていくんですよ。
(山里亮太)はい。
デトロイトが荒廃したきっかけの大暴動
(町山智浩)そのすごい大暴動があったこと自体の映画じゃなくて、その大暴動と同時に起こった黒人少年3人が殺された虐殺事件がありまして。それが1967年に起こったので、それの50年目に作られたのがこの『デトロイト』という映画なんですね。で、いまかかっている音楽はいわゆるデトロイトで作られた音楽……「モータウン」というレコード会社ができまして。で、すごく流行ったんですけども。デトロイトは最初、自動車産業がものすごく儲かっていた時に独特の文化を生み出すんですね。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)モータウン・レコードに代表されるような文化で、それはデトロイトに入ってきた労働者は大きく2種類に分かれていまして。ひとつは南部の方で奴隷だった人たちが綿花の農家をやっていたんですけども。それが、インドの綿花に負けて産業が崩壊しまして。で、仕事がなくなっちゃった黒人たちが大量にデトロイトに移動してきたんですよ。その人たちが自動車を作る仕事に入ったんですね。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)それと、自動車産業ができたからヨーロッパの貧しい人たちが移民として入ってきたんですよ。それはいままでのイギリス系とかアイルランド系とちょっと違って、もうちょっとカトリックとかロシア正教の人たちで。たとえば、イタリア、ギリシャ、ポーランド、ハンガリー、チェコといったところから来た人たちが自動車産業に労働者として入ったんですね。で、この南部から来た黒人とヨーロッパのロシアの方から来た白人っていうのは全く水と油なわけですよ。全く関係がないわけですよ。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)それが一緒に働いていたことで、またひとつ特殊な文化が出てきたんですけども。最初は仲良く働いていて。ところが、だんだん貧富の差が出てきてしまったんですね。それで、街の中心部には貧しい黒人だけが残って、白人たちは外の、遠い郊外に一軒家を買って。で、そのデトロイトの中心部(の人口)が半分は黒人になってしまったんですね。非常に人種的に偏った形になってしまったんですよ。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)で、そのデトロイト中心部の治安を守っている警察官はなんと、98%が白人だったんですよ。
(山里亮太)ああー。
(町山智浩)で、彼らはそこには住んでいないんですね。郊外から来ている白人たちなんですよ。だから、自分たちの街ではないし、完全に差別的な意識でもってデトロイトの黒人市民たちをもう殴る蹴る、別件逮捕とか……道を歩いているだけで片っ端から捕まえたりとか。もうずっと、ひどい虐待をしていたんですね。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)で、それが1967年にとうとう噴出しまして。黒人の住民たちが大暴動を起こして。警察官に石を投げたりですね、火をつけたり。で、白人の商店を襲うという事態が起こったんですよ。で、その時にどの商店が白人の経営でどの商店が黒人の経営だか、わからないですよね?
(海保知里)そうですよね。
(町山智浩)だからその時に、白人も黒人もその商店を破壊されないように、窓に「Soul Brother」って書いたんですよ。
Soul Brother
Black business owners in Detroit in 1967 used to write "Soul Brother" on their businesses to let looters know it was black owned. pic.twitter.com/d5vC4fDuzv
— Branden Hunter (@JustCallmeBHunt) 2017年8月6日
(町山智浩)ペンキで。「Soul Brother」って書いてあると、黒人の仲間なんだと。たとえ白人であっても、「あなたたちを応援します」っていう意味になるんですね。「Soul」っていうのは「魂」だから。「魂でつながっているんだよ」っていう意味なんですよ。そこから「Soul」っていう言葉は流行っていったんですよ。
(山里亮太)へー!
(海保知里)そうなんだ!
(町山智浩)そうなんですよ。「俺たちは魂でつながっている黒人の味方だぜ」っていう意味なんですよ。それを書いていると、ガラスを割れれたり、略奪されないですんだんですよ。だからJ Soul Brothersは大丈夫ですよ! 1967年のデトロイトに行っても!(笑)。
(山里・海保)(笑)
(山里亮太)もう三代目まで行ってますけども(笑)。全員大丈夫で。仲間だ!って。
(町山智浩)大丈夫ですよ、はい(笑)。それでですね、ただこのデトロイトの暴動っていうのはものすごくて。死者が43人で逮捕者が7000人。負傷者は1000人を超えるという、まあ戦争みたいな状態になっちゃったんですよ。で、死者のほとんどが警官に殺された黒人たちなんですね。射殺されまして。
(山里亮太)うーん……。
(町山智浩)で、そういうもう大戦争状態になっているところに、たまたまそのコンサートにやってきた人が主人公なんですよ。
(海保知里)コンサート?
(町山智浩)コンサート会場があって。いまも残っているフォックスシアターっていうところに、ザ・ドラマティックスという黒人のボーカルグループがコンサートしに来たんですね。彼らが主人公です。
(町山智浩)ところが、暴動がひどくなっちゃったんで、もうコンサートが中止になっちゃったんですよ。で、その近くのモーテルにそのザ・ドラマティックスのメンバーが泊まるんですけども。そしたら、そのモーテルに他に泊まっている黒人の10代の若者たちが5、6人いて。それと、18才の田舎から来た白人少女が2人いたんですね。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)その頃、ちょっとデトロイトというのはおしゃれなものの最先端だったところがあるんですよ。モータウン・レコードがあったりしたんで。で、「黒人がかっこいい」っていうことがだんだん出てきた頃なんですね。その頃っていうのは。
(山里亮太)ふーん。なるほど!
(町山智浩)で、白人の女の子がそこにいて。で、18才ぐらいの男の子たちとイチャイチャしていたわけですね。そのモーテルで。そしたら、暴動が起こっていてそこら中に軍隊が出て、治安維持のために戦車まで出ている状態なんですね。そしたら、1人の若い、18才のカール・クーパーっていう男の子が、面白がってその窓からかけっこのスタートのピストルってあるじゃないですか。「よーい、ドン!」の。「パーン!」っていうやつ。
(山里亮太)はい。音だけ鳴るやつ。
(町山智浩)そう。あれで周りにいる警官とか軍隊に向けて、そのスタートピストルを撃っちゃったんですよ。
(山里亮太)うわー……。
(町山智浩)まあ、ガキだから。面白がって。そしたらそのモーテルにドワーン! とその白人警官が殴り込みをかけてきたんですね。まあ、その頃は警官は白人しかいないわけですよ。ほとんど、98%ですから。で、「いま銃を撃ったやつは誰だ!? 俺たちを狙っているスナイパー(狙撃手)だろ! 銃を出せ!」って言って。で、まずそのクーパーくんをドーンといきなり射殺。
(山里亮太)えっ!
(町山智浩)いきなり射殺。問答無益で。で、そこにいた黒人と白人のそのティーンエージャーたち……ドラマティックスっていうグループのメンバーも10代なんですよ。
(山里亮太)はいはい。
(町山智浩)全員10代の黒人と白人の10人ぐらいの子たちをその白人警官が拷問し始めるんですよ。
(山里亮太)ええっ!
白人警官たちによる拷問
(町山智浩)で、最初はその、「なんだ! 俺たちを撃ったのか!?」って入ったんですけど、そこで黒人の男の子と白人の女の子がイチャイチャしているのを白人警官が見ちゃったんですね。「もう許せん!」ってなっちゃうんですよ。
(山里亮太)えっ、なんでですか?
(町山智浩)その頃は白人と黒人がデートして歩いているだけで射殺されていた時代なんですよ。
(山里亮太)ええっ!
(町山智浩)そんな時代があったんですよ。「許せない!」っつって。
(山里亮太)言ってもそんなめちゃくちゃ昔っていうわけでもないですよね?
(町山智浩)だからまあ、そういう時代だったんですね。で、「お前はなんだ? 白人なのに黒人と付き合っているのか!」っていうことで、女の子をもう裸に剥いちゃって。で、ライフルのストック、台尻のところでバーン!って顔をぶん殴るとか。
(山里亮太)ええっ!
(町山智浩)もう、それでその黒人の男の子たちの足元にナイフを投げるんですね。ちっちゃい折りたたみナイフをその白人警官が。で、その白人警官はいつもナイフをたくさんポケットに入れているんですよ。で、「なにをするんだろう?」って思ったら、「そのナイフ、拾えよ」って言うんですよ。「そのナイフ、拾え!」ってガンガン殴りながら、「拾え! 拾え!」って言うんですよ。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)拾ったら、すぐに正当防衛で射殺できるからなんですよ。
(山里亮太)ああーっ!
(海保知里)恐ろしい……。
(町山智浩)それがずーっと続いて。で、どんどんテンションが高くなっていくんですけど、そこにたまたま、近くのショッピングセンターで警備をやっていた黒人のガードマンの男の子が来るんですね。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)「なんだろう?」っていうことで。で、もうこれは大変な拷問が始まっている。虐殺が始まる!っていうことがわかるんですけど。それは実在の人物なんですが、ディスミュークスっていう人なんですが。この人を演じているのは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で主人公の1人のジョン・ボイエガくんが演じているんですけど。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)彼もだから、最初は悪い側の、帝国側のストーム・トルーパーだったのに、虐殺を見て改心してね、正義の側に回る役だったですけど(笑)。虐殺を目撃してばっかりの人ですけど(笑)。ただね、彼1人しかその現場に、黒人で銃を持っている人はいないんで、止められないんですよ。
(山里亮太)そうか。止めに入ったら、自分も殺されてしまう。
(町山智浩)そう。しかも、その拷問をしているのは全員警官だから、それがいちばん怖いのは、「おまわりさーん!」って頼る人がいないわけですよ。
(山里亮太)そっか!
(海保知里)なんという……地獄!
(町山智浩)地獄なんですよ。これね、ものすごく怖い映画で。この拷問シーンがこの映画2時間ちょっとあるんですけど、全体で50分ぐらいあるんですよ。拷問だけで。
(山里亮太)ええっ!
(海保知里)ちょっと分量が多いですね。
(町山智浩)だからものすごい強烈だったですね。僕、見ていてね、とにかく思い出したのはね、最近亡くなった映画監督でトビー・フーパーっていう人がいるんですね。その人が撮った映画で『悪魔のいけにえ』という映画があるんですよ。それは田舎に遊びに行った若者たちがその地元に住んでいる食人家族。人を食う家族たちの家に拉致監禁されて、彼らのディナーパーティーに招待されるという映画なんですよ。
(海保知里)ええ。
(町山智浩)で、その若者たちが一人ひとり殺されていっているわけですよ。で、最後に残った女の子がそのテーブルに無理やり縛られてさあ、ディナーが始まるっていう映画があるんですね。それを思い出したんですよ。
(山里亮太)えっ、そんな……じゃあもう、ホラーっていうことですか?
(町山智浩)もうほとんどホラーでしたね。だから絶体絶命で、逃げ場ゼロですよ。全員警官だし。で、どんなに逆らっても言いくるめられて、まあ正当防衛とかに偽装して、殺されるんですよ。
(山里亮太)しかも、町山さん。これ、事実なんですよね? ドキュメンタリーっていうことですかね?
(町山智浩)これ、事実なんですよ。ドキュメンタリータッチで撮っていますね。これ、監督はキャサリン・ビグローっていう女性監督で、『ハート・ロッカー』っていう映画で2008年にアカデミー賞をとっている人なんですけども。今回はもうほとんどドキュメンタリーに見えるような撮り方をしていて、すごいんですよ。強烈で。
(山里亮太)ええーっ!
(町山智浩)で、あとね、似ているのは『コンプライアンス(服従の心理)』っていう映画がちょっと昔にあって。それはマクドナルドで働いている女の子が警官と称する人から電話が店長にかかってきて。「その女の子が店の金を盗んでいるから、裸に剥いて身体検査をしろ」って言われて、監禁される話があったんですね。それも実話ですけども。あれはだから、権力とか「やっていいよ」っていう風に警察とかから言われた人間はどれだけ残酷なことができるか?っていう映画が『コンプライアンス』っていう映画だったんですね。
(山里亮太)うん。
(町山智浩)これ、実際の話なんですよ。あれにも近いんですよ。逃げ場がないんですよ。
(海保知里)いやー……。
(町山智浩)これ、すっごい。もう強烈でね。で、やっぱり一人ひとりと殺されていくんですよ。順番に。これ、すごいですね。これね、ここでネタバレになっちゃうんですけど。女の子が1人、生き残っています。生き残った子がいま、この映画でアドバイザーとして、顧問としてついて、このシーンは彼女の立ち会いのもとで全部再現しているんですよ。
(山里亮太)ええっ! じゃあ、完全再現なんだ!
(町山智浩)完全再現なんです。これは強烈でね。ホラー映画としても今年いちばん怖かったですよね。
(山里亮太)これが事実だっていう……。
(町山智浩)全然信用できない警官に囲まれてしまった場合、もう逃げ場ゼロですから。で、これをなぜ、キャサリン・ビグロー監督が50年目に作ろうとしたか? というと、実はアメリカですごくいま問題になっているのは、白人警官による黒人の射殺とかの事件なんですね。すごい量なんですよ。で、そのニュースを見ていてキャサリン・ビグロー監督は「ああ、そういえば私が若い頃にそういう事件があったわ」と思い出して、この映画を作ることにしたんですね。
(山里亮太)ああ、なるほど。
(海保知里)そうだったんだ。
現在も続く警官による黒人殺害事件
(町山智浩)で、いまね、どれぐらいひどくなっているか?っていうと、たとえば去年、2016年だけで白人の警官――まあ、白人とは限らないですけど。ほとんど白人なんですが――アメリカ全土で300人以上の黒人が警官に殺されているんですよ。
(海保知里)そんなに……。
(町山智浩)で、今年。2017年に入ってから、すでに189人も黒人が殺されているんですよ。で、これはそのうち、銃とかナイフを持っていた黒人はたった30%なんですよ。
(山里亮太)じゃあ、あと7割は何で殺されているんですか?
(町山智浩)あと7割近くは武器を持っていないで殺されているんですよ。で、しかも、2015年、2016年でそうやって黒人を殺した警官のうち、99%は全く刑を受けていないんです。
(山里亮太)ええっ!
(海保知里)そうなんですか!?
(町山智浩)そうなんです。だから、いまアメリカで「Black Lives Matter(黒人の命だって大切にしてくれ)」と言って運動が起こっているんですよ。で、どうしてそうなるか?っていうと、まずひとつはこのデトロイトの事件は陪審員が全員白人だったんですね。
(山里亮太)ええっ!
(町山智浩)だから裁判では、もう白人が黒人を殺しても無罪になっちゃう。で、最近起こっているのは、起訴すらされないっていう事態なんですよ。
(海保知里)ええーっ!
(町山智浩)それは、大陪審という人たちが協議して起訴するかどうかを決定するんですけど、これは警察によるむやみな起訴を防ぐためのシステムだったのに、現在は警察官が起訴されないシステムとして動いちゃっているんですよ。大陪審(のメンバー)は黒人がものすごく少ないから。これは当たり前なんですよ。ある一定の地域で、黒人ばっかりが住んでいるところだけで大陪審を選ぶわけじゃないですから、ある程度の広さで大陪審を選ぶと、黒人っていうのはアメリカ全体の人口の12%しかいませんから。白人が圧倒的に多くなっちゃうんですよ。
(海保知里)そうなんだ。
(町山智浩)そうするとなかなか起訴されないっていう事態になっちゃうんですよね。で、現在はアジア人とかメキシコ系の人も入れると、白人は全体の6割まで落ちてはいるんですけど、多数決だとやっぱり白人が勝っちゃうんですよ。だから起訴されないっていう事態があって。あと、もうひとつの問題はさっきも言ったんですが、警官のほとんどが白人なんですね。で、地元の人たちではなくて、遠くから働きに来ている白人なんで、地元に対する愛情とか、地元の住民としての仲間意識が全くないんで、射殺を簡単にしてしまうんですよ。
(海保知里)そうなんだ……。
(町山智浩)という事態が起こっているんで、キャサリン・ビグロー監督はすでに決着はついていて、もう事実関係が全て明らかになっているその50年前の話を映画にしようと。で、「50年間、なにも変わっていない」っていうことなんですね。で、最近すごく問題になっているのは、みんなスマホを持っているから、現場の録画が残っているから、インチキなことがバレてきているんですよ。全く武器を持っていない人を殺したりしていても、さっき言ったナイフを持たせたりとか銃を持たせたりして、偽装をしているんですよ。多くの場合。
(山里亮太)うんうん。
(町山智浩)ところが、スマホでビデオを撮られちゃっているんで、そういう偽装ができなくなったんで、最近問題になってきているんですよ。っていう話でね、これがすごくわかるのは、普段弾圧をしていると……黒人を弾圧していたり、いろんな少数民族を世界中の人が弾圧しているんですけど、かならず弾圧されている方が虐殺をされるんですよね。
(山里亮太)うん、そうですよね。
(町山智浩)それは普段弾圧しているもんだから、「こいつら、いつか俺たちに復讐する」と思い込んでいるんですよ。(弾圧を)している側は。だから、たとえば関東大震災みたいなことがあると、「朝鮮人が復讐しに来るんじゃないか?」っていうことで勝手に思い込んで朝鮮人を殺すっていう事態になるんですよね。
https://miyearnzzlabo.com/archives/17934
https://miyearnzzlabo.com/archives/44795
(山里亮太)はー……。
(町山智浩)だからこれはすごく世界に共通する虐殺のシステムなんですよ。ユダヤ人虐殺もそうでしたからね。「あいつらが俺たちの国を乗っ取ろうとして企んでいるんだ」っていう風に勝手に思い込むんですよ。普段、差別をしているから、「絶対に彼らは恨んでいるはずだ」って思っちゃうんですよ。だからまあ、これはすごい映画でね。で、ちょっと聞いていただきたい曲があって。これはドラマティックスのメンバーの1人のラリー・リードが生き残ったんですね。で、生き残ったんですけど、彼は「もう二度とラブソングとかは楽しく歌えない。あんな事態を目撃したから」と言って、彼は神の道に入って。その後に牧師さんになって、牧師として人々を救って癒やすための歌をデトロイトで歌い続けているんですよ。
(海保知里)ああ、そうなんだ……。
(町山智浩)で、その人がこの映画の中では若い俳優のアルジー・スミスくんがラリー・リードを演じていますけども。そのアルジー・スミスくんは歌手なんですけど、ラリー・リードさんが作った歌をこの映画の主題歌として2人でデュエットしています。それが、いまかかっている曲です。
(町山智浩)これは、「人はすべて生まれながらに平等なはずなのに、それはいつになったら実現されるんだ?」っていう歌なんですよ。
(海保知里)そうなんですね。ということで、町山さん……時間がなくなってしまいまして。
(町山智浩)はい。これはもうすぐ公開です。
(海保知里)はい。ありがとうございました。
<書き起こしおわり>