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町山智浩『ハンディキャップ・キャンプ: 障がい者運動の夜明け』を語る

町山智浩『ハンディキャップ・キャンプ: 障がい者運動の夜明け』を語る たまむすび
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町山智浩さんが2021年3月9日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でNetflixで配信中のドキュメンタリー『ハンディキャップ・キャンプ: 障がい者運動の夜明け』について話していました。

(町山智浩)ということで、今日も映画紹介なんですが。引き続きですね、アカデミー賞にノミネートされるだろうと思われる作品を紹介していきます。今回はですね、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされそうな映画で、既にこれもNetflixで日本でも見れるですけれども。『ハンディキャップ・キャンプ: 障がい者運動の夜明け』というドキュメンタリーなんですね。これね、プロデューサー、制作がですね、オバマさん夫妻ですよ。

(赤江珠緒)えっ? オバマ元大統領?

(町山智浩)オバマ元大統領夫妻がやっている映画会社でハイヤー・グラウンドっていうのがありまして。そこがお金を出した映画なんですけども。実は、もうすでにオバマさんは前回のアカデミー賞でやっぱりドキュメンタリーを制作していまして。長編ドキュメンタリー賞を取っています。

(赤江珠緒)えっ、そうなんですか?

(町山智浩)そうなんです。オバマ夫妻は実は家にオスカーがあるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)で、前作もNetflixで見れるんですけど。『アメリカン・ファクトリー』という映画で。これは、アメリカの自動車工場が潰れてしまって。そこを再建するのに中国の企業が入って、工場経営をするんですね。で、地元の人たちが「これでやっと雇用が戻ってきた」って言って働き始めると、中国の企業だから全然労働条件とかを考えてないんですよ。で、組合とかの弾圧をして、めちゃくちゃになっていくっていうですね、非常にその『アメリカン・ファクトリー』……「アメリカの工場」というタイトルが皮肉な、グローバリゼーションと中国とアメリカの労働に関する考え方のギャップみたいなものが暴かれている映画をオバマさんが制作して、アカデミー賞を取ったという。それが『アメリカン・ファクトリー』という作品なんですけども。

(町山智浩)で、今回の『ハンディキャップ・キャンプ』というのは、50年も前の1971年にあった障害を持つティーンエイジャー、10代……まあ高校生ですね。その夏休みキャンプの記録なんですね。一体、なんでそんな50年前のキャンプのことが映画になったのかっていうのは後々、映画を見ていると明らかになるんですが。最初は「なんでだろう?」って思うんですけどもね。で、これは主人公はジム・レブレクトという少年で。当時、50年前に少年だった人で。この子は二分脊椎症という病気で、お母さんの胎内で脊椎が未発達で下半身が付随になっちゃった男の子なんですね。

で、彼はすごく元気で陽気だったんですけど、その当時、1960年代というのはアメリカでも車椅子を受け入れる場所がほとんどなかったんですね。で、公共の施設には入れない。要するに当時は階段しかないんですよ。で、トイレとかもそういう人たちのためのトイレは当時、なかったんですね。だから、そういう施設がないからということで、学校も入れてくれない場合が多くて。で、もちろん雇用差別なんかもあったんですね。就職とか。それも、別にそれが違法じゃなかったんで、障害を持つ人たちは社会に参加できない状態だったんですよ。

(赤江珠緒)1960年ぐらいは。

(町山智浩)で、バスにも電車にも乗れなかった。地下鉄の駅にも電車の駅にも上がれなかった。階段しかなかったから。で、その中でジムくんはちっちゃくなって生きていたんですね。

(赤江珠緒)ちょっとね、今からしたら考えられない事態ですね。

(町山智浩)考えられないんですよ。で、とにかくもう社会の片隅で「申し訳ないです」って感じで生きていかなきゃなんなかったんですけれども。それを変えてくれたのはそのキャンプなんですね。で、それはジェネドキャンプっていうキャンプなんですけれども。それはね、運営をしてたのがその当時のいわゆるヒッピーとかですね、反体制学生と言われてる人たちとか。あと、公民権運動という黒人の人権運動を戦っていた黒人の若者たちとか。そういった、まあ反体制の人たちが集まって運営していたキャンプなんですよ。

それはいわゆる「カウンターカルチャー」というものは1960年代にあったんですけど。「カウンター」ってのはボクシングのカウンターパンチの意味で。それまでの大人の社会とか既成の価値観に対してとにかく徹底的に抵抗する運動っていうのが1960年代にあったんですね。まあ、それはビートルズが出てきて、みんながロックンロールに触れたことから、日本も含めて世界中の若者たちが反戦運動をしたり。

(赤江珠緒)そうですね。ベトナム戦争に対してとかね。

(町山智浩)そうです。あとは黒人の人権運動をしたりする中で、そこから女性解放運動とか、ゲイの人たちの解放運動も生まれてきたんですけども。

(赤江珠緒)「自由を求めて」っていう感じになりましたもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。それが1960年代なんですね。で、1971年にそのキャンプをやっていたのもそういう人たちだったので、そのキャンプがすごかったのは、全く生活を……たとえば、ご飯を作ったりとか、掃除したりとか、そういうところですけども。それを、子供たちにやらせたんですよ。高校生の子たちに。それで献立も作らせて、買い物にも行かせて、料理も作らせるという。「自分たちで全部やれ」っていう世界だったんですね。

(赤江珠緒)その障害のある高校生たちに。

(町山智浩)障害あるその……まあ脳性まひの人とか、もうしゃべれないし。何もできないと思っていた人たちに「全部、自分たちでやって」っていうことでやらせるんですよ。で、これがすごい彼らにとって、解放になったんですね。これ、前に紹介した日本の映画で『37 Seconds』っていう映画がありましたよね。

町山智浩『37 Seconds』を語る
町山智浩さんが2020年5月26日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『37 Seconds』を紹介していました。 (町山智浩)ということで、またNetflixを話を今回もさせていただきたいんですが。 (山里亮太)今、映画...

(赤江珠緒)はいはい。見ました。

(町山智浩)あれも障害を持った若い女性が、成人しても親から子供扱いされ続けるじゃないですか。

(赤江珠緒)そうでしたね。うん。

(町山智浩)で、親は大抵、子供に障害があると「申し訳ない」って気持ちで甘やかしちゃうんですよね。なにをやっても「危ない」って。

(赤江珠緒)本人は自立をしたいのに。

(町山智浩)そうそう。子供が「私はもう1人で生きたいんだけど」って言っても、「危ないから、危ないから」って言って。で、「申し訳ないから」って、なんか子供扱いをし続けるんで、縛られちゃうわけですけど。このキャンプではもう、「なんでも勝手にやって!」っていう感じなんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

「なんでも勝手にやって!」というキャンプ

(町山智浩)あと、「危ないことをするな」って言われるんですよね。「ケガをするから」って。でも、そうじゃなくて。野球とかサッカーとか、もう何でもやらせるんですよ。

(赤江珠緒)すごい。それはこの時代だったら、なおさら画期的だったでしょうね。

(町山智浩)画期的なんですよ。で、それまではそういうことがあると、見てるだけだったような子たちがそこで、「何をやってもいい」って言われたら、ものすごくはしゃいで。なんでもするんですね。ダンスから何から。ダンスなんかもさせてもらえなかったし、一番彼らが悩んでたのは、「恋」ですよ。ラブ。それも、そこでは自由にしていいんですよ。で、ここでね、すごい脳性まひの重い女性が、その時の思い出を語るシーンが出てくるんですけど。これね、当時のフィルムとその現代の彼らが歳を取って。その50年後の映像を行ったり来たりしながら進めているドキュメンタリーなんですけど。

そこで、その50年前のことを思い出しながらその重い脳性まひの女性が「私はこのままだと処女で死んでしまうと思った」って言うんですよ。で、そういう風にもう一生、そういうことはできないのかと思ってた子たちが、そこで自由に恋をしたりできるので。まあ、デートをしたり、キスをしたりね。あとは……いわゆる、何て言うんですかね? ペッティングとか……自分で言っていて照れますけどね(笑)。あと、いろんなエッチとかをすることも野放しなんですよ。

(赤江珠緒)まあ、普通に青春を謳歌しろと。

(町山智浩)これ、すごいですよ。キャンプだったら普通、取り締まるでしょう?

(赤江珠緒)ああ、たしかに。日本とかでもね、うん。そうか。その年代だったら。

(町山智浩)「ダメ。ゼッタイ。」とか言うじゃないですか。

(赤江珠緒)それはまたちょっと違う用語な気もするけども(笑)。

(町山智浩)でも、これはヒッピーたちだから。ヒッピーたちはほら、「フリーラブ」っていう考えを持っていたから、もういいんですよ。「やりたい時にやっちゃいな」っていう世界。「やりたくなったらやっちゃいな」っていう歌が日本でもありましたけども(笑)。そういう世界だったので、彼らはそこですごく解放されるんですけど。ところが、それはこの『ハンディキャップ・キャンプ』というドキュメンタリーの前半に過ぎないんですよ。後半はそのキャンプが終わって、みんなそれぞれの……アメリカ中から来ていた子たちが自分たちの生活に帰るんですけど。もう、彼らは解放された個人になってるんで、そこから日常生活の中で彼らが戦い始めるんですよ。

(山里亮太)なるほど!

(町山智浩)今まで引っ込んでた子たちが。で、まず一番困るのは、駅とかレストランとか、そういうとこに入れないということですよね。「なぜ障害者用の入り口がないの? 車椅子が乗れるようなスロープであったり、エレベーターがないのか?」ということで、彼らはデモを始めるんです。で、車椅子で路上を占拠して、ニューヨークの交通を止めるということをやっちゃうんですよ。で、そこからバリアフリーに向けての、このキャンプ参加者たちの全米での戦いが始まっていくというドキュメンタリーなんですね。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)で、その法案を……要するに「障害物を拒否してはいけない」っていう法律を作るまで、それを実施させるまでの戦いが延々とここから続くんです。それがね、長い長い戦いなんですよ。なかなか、やっぱりね、彼らは少数者だから。人数が少ないから、それを政治家は相手にしないんです。

(赤江珠緒)ああ、そうか。票田にはならないですもんね。うん。

(町山智浩)そう。別に彼らを無視したところで、選挙に負けないから。で、企業とか政府も、別に彼らのことを無視したって何の影響もないからっていうことで、なかなかやらないから。だからこの戦いがもう長く続くんですよ。だからよく、「サイレント・マジョリティ」に対して、「ノイジー・マイノリティ」っていう言葉があるんですね。それは「うるさい少数者」ということなんですが。少数者はだって選挙に影響を与えられないんだから、うるさく言うしかないんですよ。そうしなければ、彼らの人権は守られないんですよ。でね、結局最終的にですね、1977年に彼らは連邦政府ビルを占拠するんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!

(山里亮太)すごい行動力だな。

(町山智浩)で、そこでずっと籠城をして、ハンガーストライキをするんですね。で、そこで戦っていると、黒人解放団体のブラックパンサーとか、LGBTの人たちがそこに支援をして。そういう少数者たちの連帯の中で戦っていって。結局、最終的に勝つんですけれども。今、皆さん、当たり前じゃないですか。障害者用のエレベーターとかが地下鉄にあるのは当たり前でしょう?

(赤江珠緒)バリアフリーとか、当たり前ですもんね。

バリアフリーは「当たり前」ではない

(町山智浩)バリアフリーが当たり前だと思っているでしょう? で、アメリカだと、どこのレストランでも絶対、障害者向けに入れるところがあって。そういうエレベーターとか、あとはトイレとかがちゃんとあるわけですよ。義務付けられてるんですよ。日本では、まだ全部とは言わないですけど、少しずつ進んでいるじゃないですか。でも、それってその彼らが戦って勝ち取ったものなんだっていうことを思い出させてくれるんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうか!

(町山智浩)何もしなかったわけじゃないんですよ。「福祉に甘えてる」とか勘違いしてる人たちがいっぱいいるんですけど、そうじゃなくて。彼らは戦って勝ち取ったんですよ、それを。で、日本でも同じ77年にアメリカの戦いと連動する形で、バスに対する運動があって。バスは今、停車すると片側が下がって、車椅子の人が乗れるようになっているじゃないですか。でも、あれも日本の障害者の人たちが自分たちで戦ったんですよ。誰にも頼らないで。

(赤江珠緒)そうか。ちゃんとこうやって声をあげて、動いて戦ってっていうのがあるから変わっていってるんですね。

(町山智浩)そう。だからみんなね、当たり前のように思ってるけど、実は彼ら自身が戦ったんだっていうことを思い出させてくれるのがこの『ハンディキャップ・キャンプ』という映画なので。アカデミー賞にもノミネートはされるだろうと思いますけども。Netflixで見れますので、ぜひご覧なっていただきたいと思います。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)ただね、やっぱりキャンプではね、みんなエッチをしすぎて、毛ジラミが流行って大変なことになったそうですね(笑)。

(山里亮太)えっ、そんなことまで描かれているんですか?

(町山智浩)はい。毛ジラミが流行って。若者たちね、やっぱりちょっといろいろやり過ぎたんですね。まあ、毛ジラミが流行るとあそこの毛をツルツルにしなきゃならなかったので。ここに映っている人たちはみんなツルツルだと思いながら見ていただきければと思います。

(赤江珠緒)そういう意味でもドキュメンタリーですね(笑)。『ハンディキャップ・キャンプ: 障がい者運動の夜明け』はNetflix配信中でございます。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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