町山智浩『gifted/ギフテッド』『The Florida Project』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でフロリダを舞台にした映画『gifted/ギフテッド』と『The Florida Project』を紹介していました。

(町山智浩)今日はフロリダを舞台にした子役が素晴らしい映画2本を紹介します。1本はもうすぐ公開。11月23日から公開の『gifted/ギフテッド』っていう映画です。

Watch the official trailer for #GiftedMovie via the link in bio! | In select theaters April 12, 2017

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(海保知里)いま、劇場でも予告が流れていて。あのシーンだけでも泣けてしまうという。

(町山智浩)ああ、もうすごい女の子がかわいいんですよね。この『ギフテッド』っていうのは「ギフトされたもの」。だから、「生まれつきある才能を持って生まれた、与えられて生まれた人」っていう意味なんですね。で、これは主人公は7才のメアリーちゃんという女の子なんですけども。その子が公立学校に来るんですけど、とにかくどんな問題も簡単に一瞬で答えちゃうんですよ。

(海保知里)賢い。

(町山智浩)賢いっていうか、もうそれでつまらなそうにしているんですね。で、ボニー先生っていう女の先生が「この子、ちょっとおかしい」と思って調べ始めるんですよ。そうすると、そのメアリーちゃんのお父さんは実のお父さんではなくて、お姉さんの子を引き取っているということがわかって。そのお父さん代わりをしている人が、なんとクリス・エヴァンスですよ。

(海保知里)あっ、あらららら……。

(山里亮太)キャプテン・アメリカ!

(町山智浩)キャプテン・アメリカ。Twitterでネトウヨと徹底的にバトッている人ですね。

(山里亮太)ああ、いま暴れているんですか?

(町山智浩)この人、もうずーっとやっていますよ。トランプが大統領になってからずーっとネトウヨと激しい戦いを繰り返しているのがキャプテン・アメリカのクリス・エヴァンスなんですけども。

(海保知里)じゃあ、常に戦っているんだ(笑)。

(町山智浩)常に戦っているんですよ。とにかく戦っているんですけど。で、まあ本当にキャプテン・アメリカそのまんまなんですが。ここでは、キャプテン・アメリカではなくて、昼間はヨットの修理をして。フロリダなんで、海があるんでね。夜はバーテンとして暮らしながら、男手ひとつで自分の姪っ子メアリーちゃんを育てているお父さんの役ですね。

クリス・エヴァンスが父親代わり

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(海保知里)ふんふん。

(町山智浩)で、その先生がいろいろと調べていくと、実はそのお姉さんがメアリーちゃんを生んだ後に亡くなっていて。そのお姉さんは実は非常に有名な数学の天才だったことがわかってくるんですよ。

(海保知里)へー。

(町山智浩)ところが、メアリーちゃんを生んだ後に自殺をしているらしいんですね。で、今度はそこにおばあちゃんが来るんですよ。で、「こんな貧乏な暮らしをさせられて、おかしいじゃないの! この子は天才なんだから、私が引き取って天才として育てるべきなんだ!」と。で、このメアリーちゃんをめぐる争いになっていくんですね。

(山里亮太)取り合いだ。

(町山智浩)取り合いになっていくんです。なぜそういうことを言うか?っていうと、ここで彼女に、おばあちゃんが解かせたい問題というのが出てくるんですね。

(海保知里)解かせたい問題?

(町山智浩)それはね、「ナビエ-ストークス方程式」というものなんですよ。

(海保知里)な、なんですか、それは?

(町山智浩)これはね、流体力学上の公式なんですけども。たとえば飛行機の周囲の空気の流れとか、たとえば血管の中の血液の流れというものを、これがわかると計算して出すことができるらしいんですね。

(海保知里)はー、すごいな。

(町山智浩)数学、全然ダメなんで全然わからないんですけど(笑)。ただ、これについて僕が知っているのは2000年に「これを解いたら100万ドル」っていう懸賞が設けられているんですよ。

(海保知里)すごい額。(100万ドル=約1億1000万円)。

(町山智浩)すごい額で。だからこれを1問解くだけで、それだけ人類が幸せになるんですね。だって血管の中の血液の流れがわかれば、動脈瘤の問題とかが解決できるかもしれないんです。だから、このメアリーちゃんのものすごい才能を使って人類がものすごく幸せになれるんだったら、この子を天才として育てるべきだっていうことが突きつけられていくという話なんですよ。

(山里亮太)でも……そっちだと思っちゃうな。

(海保知里)ねえ。

(町山智浩)これは日本だとあまりないんですけど、アメリカでは天才児の特殊教育っていうのが行われるんですね。

(海保知里)小学校とかからもうクラスが分かれていたり、ねえ。

(町山智浩)そうなんですよ。で、実は僕の娘が行っていた……僕の娘は全然普通なんですけども。サンフランシスコの日本語補習校にもいたんですよ。

(海保知里)ああ、私、そこ通ってました。

(町山智浩)ああ、そうですか(笑)。

(海保知里)サンフランシスコの日本語補習校。きっと同じところじゃないですか?

(町山智浩)子供の頃?

(海保知里)はい。小学1年生から6年生まで通いました。

(町山智浩)ああ、そうですか! あの海辺の方でやっているんですけど。そこに1人ね、名前は出せないんですけど、ものすごい天才の子がいたんですよ。男の子で。クラスメイトだったんですけど。で、やっぱり周りから「「天才の学校に行かせるべきだ」と。要するに、「小学校や中学校なんかぶっ飛ばしていきなり大学ぐらいに行かせないとダメだ」と言われていたんですけど、その子は実はすっごく茶目っ気のある子で、みんなと一緒に遊ぶのが大好きだったんですよ。

(海保知里)うん、うん。

(町山智浩)で、天才学校には行きたくなかったんですよ。で、結構長い間引っ張っていたんですけど。「僕はみんなと一緒に遊びたい」って。だって、大学に行ったらみんなと一緒にワイワイ楽しく遊べないじゃないですか。

(海保知里)そうですね。

(町山智浩)自分だけ子供なのに大学に行ってね。小学生なのに。そういうことはすごくあるんですけど。それでこのクリス・エヴァンスはメアリーちゃんをどうしても普通の子として育てたいんですね。

(山里亮太)子供らしく。

(町山智浩)子供らしく。それには大きな理由があってですね、ここから先はちょっと言えないんですけど。いわゆる「毒親」問題が出てくるんですよ。

(海保知里)おおう……毒親ねえ。

(町山智浩)っていう話なんですけど、あんまり言えないんですが。どんどん、全然違う話に転がっていくんですけど。この『gifted/ギフテッド』っていう映画は。ただね、このメアリーちゃんを演じるマッケンナ・グレイスちゃんっていう子役の子がすごいんですよ! 演技が。

(海保知里)写真がありますけども。演技がすごいんですか。

Wishing @McKennaGraceful a very, very Happy Birthday! ?? #GiftedMovie

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(町山智浩)すごいんです。これね、この子は10才なんですけども。とにかく「天才の心と天才の頭脳を持った7才の女の子」っていう役を見事に演じて。天才にしか見えないんですよ。で、すごいのはクリス・エヴァンスのところに来たボニー先生が、その実情を知っていくうちにクリス・エヴァンスと恋に落ちちゃうんですね。まあ、キャプテン・アメリカですから。

(海保知里)フフフ、そうですよね(笑)。

(町山智浩)で、まあ抱かれちゃうんですけど……朝起きたら、このメアリーちゃんが気がついたらベットに2人が寝ているわけですよ。そうすると、このメアリーちゃんが7才なんですけど、「おはようございます、ボニー先生!」ってすごく上から目線で見下した感じで言うんですよ。「あんたもタダの女ね」みたいな言い方なんですよ。

(山里亮太)7才で?(笑)。

(町山智浩)その演技、どうやって解釈してどうやってね、演技しているんだ?っていうね。本当に天才っているんだなと思いましたね。まあでも、クリス・エヴァンスに抗える女も男もいませんから!

(海保知里)あれだけ強くてね、かっこよくてね。

(町山智浩)これ、監督はマーク・ウェブっていう人で、この人は『(500)日のサマー』の監督ですよ。

(海保知里)ああーっ、いい映画でしたからね。

(町山智浩)で、まあ『アメイジング・スパイダーマン』で大作をやっていたんですけど、また元のところに戻ってきて。非常にいい映画を撮りましたね。いろんなことを考えさせる映画がこの『gifted/ギフテッド』なんですけども。

映画『gifted/ギフテッド』予告



で、いまかかっている音楽が親子で楽しく遊んでいるシーンでかかる曲でね。キャット・スティーヴンスの『The Wind』っていう歌なんですが。



(海保知里)はい。

(町山智浩)そのマッケンナ・グレイスちゃんを超える子役が出てきたんですよ。それが、もう1本の紹介する映画で『The Florida Project』っていう映画なんですけど。これ、日本では5月公開予定です。そっちの子はね、ブルックリン・プリンスちゃんっていう7才の女の子なんですけども。

Find your kingdom. #TheFloridaProject opens this October.

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(海保知里)はい。

(町山智浩)すごいんですよ。演技が。これね、まずこの『The Florida Project』っていう映画の「プロジェクト」っていう言葉の意味は、海保さんはご存知だと思うんですけど、低所得者向けの公共住宅のことですね。

(海保知里)「あそこはプロジェクトだ」って絶対に会話の中で出てきますね。言いますよね。

(町山智浩)はい。すると、「近づかないようにしろ」っていう意味ですよね。

プロジェクト=低所得者向け公共住宅

(海保知里)そう。ニューヨークの場合は。あと、それか「プロジェクトがあったところなんだよ」って言うことによって、いろいろとそこの歴史を感じさせるというか。

(町山智浩)まあ、「危険だ」って言われているんですよね。ものすごい貧困層が暮らしているんで。で、僕はアメリカに住み始めた頃に、そういうところによく行っていたんですよ。

(海保知里)ああ、そうなんですか?

(町山智浩)どうしてか?っていうとね、お金がなかったんでね、そこに行くと毎日のようにフードドライブの車が来るんですよ。スーパーとかいろんなところで賞味期限が切れた食べ物を配ってくれるんですね。で、僕は全く金がない状態でアメリカに来たんで、そこによく行っていろんなものをもらっていましたね(笑)。

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(海保知里)へー! そんな歴史が町山さんにあったんですね。

(町山智浩)本当になかったんですよ。全然、貯金とか。で、そういうところに行っていたんで、僕はすごく親しいんですけども。それでこの『The Florida Project』っていうのは本当のプロジェクトではなくて、舞台はモーテルなんですね。フロリダにはディズニーワールドがあるじゃないですか。その周りにいっぱい観光客向けの、ディズニーランドに来る客向けのモーテルがあるんですよ。

(海保知里)たくさんありますよね。あそこってね。

(町山智浩)あります。そのうちの一軒のマジックキングダム・モーテルっていうところに暮らしているお母さんと女の子の話なんですね。

(海保知里)ふーん。

(町山智浩)で、実はですね、アメリカってそのプロジェクトに入ることもできない人たちがいるんですよ。

(海保知里)そんなことがあるんですか?

(町山智浩)あるんです。まず逮捕歴があったりする場合ですね。事件を起こしていると、なかなか入れないんですよ。あと、普通のアパートにも貧しい人たちはアメリカ、なかなか入れないんですよ。

(海保知里)へー!

(町山智浩)勤務証明とか雇用証明をしなきゃならないんですよ。

(海保知里)ああ、そうかそうか。

(町山智浩)で、そういう人たちがモーテルに1週間分のお金を払うことで1週間ずつ暮らしているんですね。貧困層のまた下の方の人たちなんですよ。で、この主人公の7才の女の子、ムーニーちゃんのお母さんはね、ハタチぐらいなんですよ。

(海保知里)若い!

(町山智浩)で、シングルマザーで、本当にもうお金がなくてギリギリで生活をしているんですね。でも、このムーニーちゃんは自分が置かれている境遇がわからないんですよ。

(山里亮太)そうか、7才だから、まだ。

(町山智浩)そう。だからね、フードドライブでパンとかジャムをもらったりするわけですね。それもまた楽しいんですよ。なにが来るかわからないから。

(海保知里)ああー、子供からしたらね。そうか。

(町山智浩)子供からしたらね。で、お母さんは安く買った化粧品を高級ホテルに行って高級ホテルのロビーとかで金持ちの人とかに売って、そのわずかな利ざやで暮らしたりしているんですね。でも、それも楽しいわけですよ。ゲームみたいで。「今日はいくら儲かるかな?」とかって言って。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)で、アイスクリームを食べるお小遣いももらえないから、アイスクリーム屋さんの前にウロウロして、小銭をいっぱい集めて、貧しい子たちみんなでアイスクリームを1個買って、それをみんなで回し舐めするんですね。でもそれも、1人でお金を持って好きなだけアイスクリームを食べるよりも、みんなで集めたお金で1個を回し舐めした方が楽しいでしょう?

(山里亮太)なんか楽しいと思う。子供のね。

(町山智浩)そう。子供の目からカメラがずっと撮っていて。このムーニーちゃんの7才の視点からカメラはずっと撮っているので、カメラの位置が異常に低いんですが。これね、カメラマンは腰をめちゃくちゃ悪くしたと思いますけども。

(海保知里)アハハハハッ! ローアングルで。

A vivid and unforgettable portrait of childhood, and one of the year's best films. #TheFloridaProject ??

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(町山智浩)そう(笑)。ただね、ずっと子供の目から撮っているから、本当に怖い、この子たちが非常に危険な状態にいることが時々、カメラをグッと引くことで、ロングから撮った時にはじめてわかるんですよ。なにが起こっているのか。

(山里亮太)なるほど。

(町山智浩)たとえば、貧しい子たちがみんなで遊んでいるところは非常に危険な場所だったり。車がブンブン通っているところだったり。変態が近づいてきたりとか、わからないんですよ。

(海保知里)うわーっ。

(町山智浩)で、時々カメラがグッと引くと、「うわっ、怖い!」って思うんですよ。その視点はモーテルの管理人をやっているおじいちゃんがいて。ウィリアム・デフォーという人が演じていますけども。般若みたいな顔をしたおじいちゃんですけども。

(海保知里)顔がね、強いというか(笑)。

(町山智浩)はい。ただ、この映画の中ではすごく心優しい管理人さんなんですよ。で、遠くから子供たちを見ていて、なんとか救ってあげたいと思って、なにかをしたいんですけど、なにもする権利は彼にはないんですよね。親でもなんでもないし、ソーシャルワーカーでもないから。

子供を見守るウィリアム・デフォー

Achingly beautiful and profoundly affecting. Experience the magic of #TheFloridaProject ? Now Playing in Select Cities??

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(海保知里)うん。

(町山智浩)ただ、本当に危ない時だけ、パッと助けに行くんですよ。僕はこのウィリアム・デフォーを見ていて、『The Catcher in the Rye(ライ麦畑でつかまえて)』を思い出したんですね。サリンジャーの小説ですけども。あれは子供たちが遊んでいるところにいて、子供たちが崖から落ちそうになったらその時に助けに行くんだと思って生きている男の話なんですよね。それに非常に近いんですよ。ただ、見ているとね、すごく……この監督はショーン・ベイカーっていう人で、この前に撮った映画が『タンジェリン』っていう映画なんですけども。製作費はわずか1000万円で撮った映画なんですよ。

(海保知里)へー! 低予算で。

(町山智浩)低予算で。どうやって撮ったか?っていうと、スマホだけで撮ったんですよ。

(海保知里)ええっ!?

(町山智浩)スマホのみで撮影して、1本の映画を完成させたんですよ。で、その『タンジェリン』っていう映画は、ロサンゼルスで暮らす、いわゆるトランスジェンダー。だから男性として生まれたんだけど、女性として生きている人の生活を撮った映画だったんですね。で、それはショーン・ベイカーという監督は「自分にとって全く知らない人たちだから撮ったんだ」と言っているんですよ。

(海保知里)ふーん。

(町山智浩)で、「今回のフロリダで暮らすすごく貧しい貧困層の人たちのことも、全く知らなかった。聞いてはじめて、そんな人たちがいるんだと思って、調べて撮り始めた」と言っていますね。だからよく、映画に限らず小説でもなんでもそうなんですけど、「そんな人たちは全然知らないから興味ない」っていうような意見があったりするんですよ。

(海保知里)うん。

(町山智浩)この間の芥川賞で難民、移民の問題を書いた小説に関して、審査員の1人が「そんなものは知らないから興味ない」って言ったんですけど……これは逆で、知らないからこそ興味を持つべきだし、そのための道具が小説であり、映画なんですけどね。知らない人のことを知ることができるのが物語なんですけど。まさにこの『The Florida Project』っていうのはそういうものになっているんですけど。やっぱりね、ちょっと怖いところとかがあって。このムーニーちゃんが夜になるとお風呂でいつも遊んでいるんですよ。

(海保知里)はい。

(町山智浩)ずっとお風呂でお人形とかでお風呂遊びをしているんですね。なんでしているのか、全く説明がないんですよ。これは、子供を夜はお風呂に閉じ込めて、お母さんは売春をしているんですね。

(海保知里)ああー……。

(町山智浩)ただ、それはこのムーニーちゃんにカメラが密着しているから、はっきりとはわからないんですよ。そことかね、やっぱりすごいなと思いましたね。

(海保知里)いや、なんか子供がいる者としては、話を聞いているとグッときちゃって。泣きそうです、いま。なんかいろんな話を……。

(町山智浩)これはもう、どっちの映画もボロ泣きなんですけど。娘がいる人間にとっては。でもこのウィリアム・デフォーはこの子たちをなんとかしたいと思うんですよ。でも、なにもできないんですよね。特にこのお母さんはたしかにダメなお母さんなんですよ。生活能力もないし、ブチ切れたりしているんですけどね。ただこの娘、ムーニーちゃんにとってはすごくいいお母さんなんですよ。

(海保知里)ああ、そうなんだー。それは救いですね。

(町山智浩)いつも楽しくしているんですよ。たとえば売春用に自分の写真を撮るんですね。それを撮る時も、2人でもって「水着コンテストよー!」とか言いながら、遊びながら写真を撮ったりするんですね。で、お金がどんなになくても、娘にだけは絶対に暴力を振るったりとかしないし。だから逆に、ウィリアム・デフォーも見ていて、お母さんが一生懸命やっているのがわかるから、あんまり口を出せないんですよ。

(山里亮太)ああ、なるほど。

(町山智浩)で、本当にね、毎日がピクニックみたいで、貧乏なんだけど、すぐ近くにはディズニーワールドがあるわけですよ。すぐ横に。すると、ディズニーワールドに花火が毎日上がるじゃないですか。それをすぐ近くまで行って、外から見るんですよ。お弁当を食べながら。でも、「なぜ入れないの?」とか、わからないんですよ。この子は。普通の生活を知らないから。それが当たり前だと思っているから。で、なによりもお母さんが自分をものすごくかわいがってくれるから。

(海保知里)うん。

(町山智浩)貧乏でもなんでも、これだけかわいがってくれたら文句はないわけですよ。でも、その後に現実とぶつかっていくだろうとは思わせるんですけどね。ディズニーワールドの横に住みながら、この子はディズニーワールドに入ったことがないんですよ。もうこれはね、ちょっとすごくて。ただ、その演技がすごくて。このブルックリン・プリンスちゃんという子の演技がすっごいんですよ! めちゃくちゃ面白くて。これ、こう言うと悲惨な話のように聞こえるじゃないですか。でも、ものすごく楽しくて面白いんですよ。この映画。

(海保知里)へー!

(町山智浩)たとえば、モーテルに配電盤とか配管とか、いろんな機械がつまっている部屋があるじゃないですか。そこに行って、「ここは入っちゃいけないんだよ」って友達に言うんですよ。「ここは絶対に入っちゃいけないから……入ろう!」って言って入るんですよ(笑)。

(山里亮太)ああー、かわいい。純真な感じ。

(町山智浩)子供にとっては全てが冒険で、全てが探検だから。貧乏なのも探検や冒険に満ちたマジックキングダムなんですよ。子供から見ると。

(海保知里)マジックキングダム。うん。

(町山智浩)そう。そういうところがね、すごく楽しいんですよ。悲惨な映画で感動系の……っていう、そんなんじゃないんです。子供がわいわい楽しく、ずっと遊んでいる映画なんですよ。で、いまかかっている曲がこの映画の中でちょっとだけかかる曲なんですけど。台湾のバンドの曲なんですね。『Everything』っていう曲なんですけど。この台湾のバンドのバンド名がまたね、よくできていて。「Men Envy Children」っていうんですよ。

Men Envy Children『Everything』



(海保知里)ん? Envy……妬む?

(町山智浩)Men Envy Children。「子供たちに憧れる大人たち」っていうバンド名ですね。

(海保知里)へー!

(町山智浩)そういうね、曲の選び方もすごいなと思いましたけども。でね、この『gifted/ギフテッド』も『The Florida Project』も製作費がめちゃくちゃ安いんですよ。

(海保知里)ああ、これもそうなんだ。さっきの『タンジェリン』も安いって言ってましたけども。

(町山智浩)そう。どっちもね、7億円ぐらいずつしかかかっていないんですよね。でね、まあそれでもできるアメリカ映画ってあんまり最近はなかったんですけども、すごくいい映画なんでぜひ見ていただきたいと。ちなみにクリス・エヴァンスはその映画の中でボニー先生とデキちゃう役でしたけど、映画の撮影中に実際にデキちゃいました。

(海保知里)ええっ!?

(町山智浩)はい。そこんところ、リアルだから!っていう内容ですね(笑)。

(海保知里)えっ、クリス・エヴァンスって独身だったんですね。

(町山智浩)この人ね、結構すごいんですよ。彼女が次々変わるんで。

(山里亮太)さすがキャプテン・アメリカ。

(町山智浩)キャプテン・アメリカだからしょうがないですね。

(海保知里)女性を魅了するんだなー。ということで、町山さん、今日ご紹介いただいた『gifted/ギフテッド』は11月23日(木)に日本公開。そして『The Florida Project』は日本での公開はまだ決まってないんですか?

(町山智浩)5月だということです。

(海保知里)あ、5月ですか。一応予定では5月ということで。

(町山智浩)ウィリアム・デフォーはイケメンじゃないけど、本当にいい感じでしたよ!

(海保知里)アハハハハッ!

(山里亮太)ちょっと怖い顔してるんですよね(笑)。

(町山智浩)そう。あの顔の怖さがいいんです。

(海保知里)ということで、『gifted/ギフテッド』と『The Florida Project』を紹介していただきました。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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