星野源 タモリとのオールナイトニッポン55周年特番の反響を語る

タモリと星野源 歌詞が埋没してしまうミキシング問題を語る 星野源のオールナイトニッポン

星野源さんが2023年2月21日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中でタモリさんとのオールナイトニッポン55周年記念特番について振り返り。収録時の模様や反響などを話していました。

(星野源)オールナイトニッポン55周年記念55時間特番、無事に終わったそうで。本当にお疲れ様でした。プロデューサーのね、トミーがさっき、挨拶しに来てくれたんだけども。2泊3日でニッポン放送に泊まったって言ってましたね。いや、だから本当に大変だったと思います(笑)。いやー、トミーさんはすごいいい仕事をしたよね。すごいなと思う。

で、とんでもなく数字が良かったというお話をしてましたね。で、僕がゲストで出させていただいたタモリさんのオールナイトニッポンもとんでもない数字だったらしいですね。いや、だからなんかよかったなと思いました。で、タモリさんのオールナイトニッポンを聞いてくださった方がもうめちゃめちゃいまして。感想のメールをいただいたんで、ちょっと読んでいこうと思います。

東京都の方。「オールナイトニッポン55時間特番、タモリのオールナイトニッポン、聞きました。タモさんの膨大な知識を土台にしているのに、軽やかなまま進んでいくトーク。その軽やかさをなくすことなく受け入れ、打ち返していく源さんの聞く力。2人の言葉のやり取りはまるでジャズのインタープレイのようで、聞いていて楽しく心地よくワクワクしました。タモリさんから見た源さんの『恋』の歌詞談義もとても面白かったです」。そうなんですよ。

いや、本当になんかね、歌詞の話をタモリさんがしてくれた時って、なかったんじゃないかな? Mステでご一緒したりした時も、やっぱり話すことって基本的にないんですよ。たまにリハーサルとかでタモリさんが参加してのテクリハっていうか。リハーサルの時に、ちょっと待ち時間でちょっとお話するみたいなことはあったんですけど。それこそ音楽の話をするみたいな機会はあんまりなかったし。

前も言ったようにタモリ倶楽部も本当にタモリさんが入った瞬間から始まるみたいな感じだったんで。あんまりお話できる機会がなかったんですけど。こういう風にラジオで、特にほぼ2時間ね、タモリさんとじっくりお話するっていう機会。しかも音楽の話をっていうのはなんか、周りからは言われましたけど。なかなかないことですよね。だからできて本当によかったし、嬉しかったですね。あと『恋』の歌詞を褒めてくださって。「1人を超えてゆけっていう歌詞は、すごいね」っていうようなことを言ってくださって。

結構やっぱり、その本編でもあったけど。歌詞に厳しい方じゃないですか(笑)。歌詞というか、言葉に厳しい方だから。それをすごく褒めてもらえたっていうのは、めちゃくちゃ嬉しかったですね。なんか本当は、あの時に……「嬉しい」とか言ってたけど。本当はもっと絶叫したいぐらい嬉しかったんですよ。「やったー!」みたいな(笑)。それぐらい嬉しかったんですけどね。ちょっと、なるべく漏れ出さないように……って思ったんだけど。全然、聞き直したら漏れてましたね。

愛知県の方。「タモリさんのオールナイトニッポン、拝聴しました。アジフライのお話ではタモリさんのかわいい一面が知れて、翌日のTwitterのタイムラインにはお口がアジフライになったリスナーさんたちがいろいろなお店や自宅でアジフライを味わう写真がたくさんアップされていました。私も仕事帰りのスーパーで迷わず購入し、少し粗めのパン粉のアジフライを口の中を気にしながら食べました」。そうそう。口の中、血だらけになっちゃうからね。

「タモリさんの昔の記憶をスルスルと引き出す源さん。貴重で面白いお話がたくさん聞けて、まさに生で(星野源の連載)『音楽の話をしよう』を聞いてるようで、とても贅沢な時間でした」という。ありがとうございます。面白かったね。アジフライのくだり。面白かったなー! なんていうか、もちろんマイルス・デイヴィスとのお話とか、MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)の話とか、タモリさんでしかありえないような……Run-D.M.C.もそうですけども。そういうお話もあったし。

アジフライの話はタモリさんの真骨頂

(星野源)プラス、アジフライの話とかはもう、タモリさんの真骨頂っていう感じがしますよね。まあ、全部ですけど。本当にあんなに面白いアジフライの話は聞いたことがない(笑)。なんで本当、まだ聞けますからね。タイムフリー。エリアフリーもありますし。ぜひタモリさんのオールナイトニッポン、聞いてください。めちゃめちゃ面白いです。

群馬県の方。「タモリさんのオールナイトニッポンを拝聴しました。番組の中で『オープンリール』という言葉が出てきて、とても懐かしかったです。数年前に亡くなった私の父がオープンリールを持っていました。父もジャズ(ハービー・ハンコック)や海外の曲(源さんが番組の中でおっしゃっていたジャニス・ジョプリンやアース・ウィンド・アンド・ファイアーなど)が好きで、私は小さな頃からそれらを聞かされて育ちました」。

ああ、なんか僕の家庭みたいですね。「その思い出がオープンリールという言葉で一気に蘇り、とても懐かしい気持ちになったのでお礼を伝えたくてメールしました。ありがとうございました」。こちらこそ。オープンリールね。結構、あれですよ。だからカセットテープっていうのは今、また流行ってるし。みんなね、形も含めて知ってる人が多いと思うんですけど。

オープンリールはもしかしたら、「なんだろう?」と思う人いるかもしれないですね。で、カセットテープってあれは磁気テープじゃないですか。で、アナログテープなんですけど。あれの元々はもっとでっかくて太い磁気テープの機械があったんですよ。で、それをコンパクトにして、持ち出しやすくしたり、気軽に聞けるようにしたのがカセットテープっていうもので。オープンリールっていうのは今でも……だからカセットテープっていうのは左右でLR、ステレオ2チャンネルで片面。で、B面でまたそのステレオが2ch。合計4トラックが磁気テープに流れているんですよ。

で、4トラックあるわけです。それを利用して作ったのが4トラックレコーダーっていうやつで。B面のリバースはないんだけど、4トラック同時に別々の音が録れますよっていう。それで4トラックレコーダーっつって。たとえばギターを1チャンネル目に入れて。2チャンネル目にはドラム入れたりとかして、音を調整するみたいな、そういう簡易的なレコーダーみたいなものを僕らは中学生とかの時に買って。それで自分の音楽を作っていたの。

今は、たとえばアプリでそういうものがもう売ってるから、めっちゃ気軽にできるんだけど。もう当時はその……だからカセットテープっていうのは片面をステレオで聞いて、裏面もステレオで聞くっていう風に元々は作られているんだけど。それを利用して……っていう。でも、その前にはステレオ2chのオープンリールがあったりとか。で、そのもっと前にはレコーディング用の8チャンネルレコーダーとか、いろいろあって。8チャンネルレコーダーとか、16チャンネルレコーダーとかはいまだに使っている人もギリギリいて。

僕も、たとえば『MUDA』っていうSAKEROCKのアルバムとか……SAKEROCKは基本的にアナログでほぼ録っていたんですけど。オープンリールを使って。なので、それを聞く専用として使っている人たちもいっぱいいたんですよ。で、うちの家庭も親父がそうで。すごく音が良かったんだと思うんですよね。カセットテープよりは断然いいし。その頃、たとえば今みたいにハードディスクに録音するみたいなのもないわけですから。レコードか、オープンリールみたいな。

で、レコードの音をオープンリールに……レコードって、あれは針で盤をガリガリ削っていることになっちゃうので。何回も聞いてると、音が変わってきちゃうんですよね。で、その音が変わらないように、もう最初のレコード買った瞬間に録音して、そのテープを何回も聞くとか。そういうので工夫して、音質をなるべく保つみたいなことをやったりとか。なんか、いろいろ工夫されてたんですよね。

で、うちの親父もオーディオが好きで。アンプを作ったりしてたから。だからなんかそういう話をタモリさんとできたのも非常に嬉しかったんですよね。タモリさんもそのオーディオを作るところから始めたっていうようなお話もしてたし。だから自分の日常ですごいしゃべれたっていうか。僕のね。だからそういうのも含めて、非常に楽しかったです。

ぜひ聞いていただきたいんですけど。あと、あれですね。思いの外、オマリーが話題になりましたね。『六甲おろし』が。あれね、なんて言うか……『六甲おろし』をかけたんですけど。元々は「思想のない音楽会」っていうコーナーをタモリさんがオールナイトニッポンでやっていて。曲の中にメッセージが多すぎて。だからメッセージのない曲を取り上げるっていうようなコーナーだったんですけど。

その中の曲をかけるみたいなくだりになった時に、「『オマリーの六甲おろし』って知ってます?」って聞いたら、「いや、知らない」って言うから。なんか結構、素敵な反応してくださったんですよね。「じゃあ、ちょっと聞いてみますか?」なんていう感じで。もちろん台本に……そもそも台本も、台本通りじゃ全然なかったんですよ。なんていうか、本当に、もう全くフリーでしゃべってる状態だったんですけど。

あとはアース・ウィンド・アンド・ファイアーの『Fantasy』ももちろん、かける予定じゃなかったし。で、『オマリーの六甲おろし』もそうで。でもなんていうか、スタッフさんが探しに行ってくれて、曲がかかったんですよ。それで「かけますね」ってかけている時に、なんて言うんだろうな? もう『オマリーの六甲おろし』ってラジオクラシックなんで。いろんなラジオ番組で、もう面白い曲としてかけまくられていて。

で、僕もラジオ番組の中でかけたりしたし。でもなんか、意外にもタモリさんが知らなかったので、聞いてもらってる時になんか、「責任感」みたいなものが湧いてきて。「これでタモリさんが笑わなかったら、どうしよう?」っていう。だから俺、曲中でずっと「オマリー、頑張れ!」って心の中で唱えながら。それで、1番で笑ってくださったんですよ。「うわっ、ヘタだな(笑)」って。で、放送の中ではその声は生きてないんだけど、すごい楽しく笑ってくださっていて。

で、その1番終わるくらいに「いや、2番が英語なんですよ。1番はやっぱり日本語だからヘタなんですかね」なんていうような振りをして。で、2番に突入したら「英語の方がヘタじゃねえか!」って突っ込んでくださったんですよ。それで「嬉しい! よかった!」みたいな。なんか『六甲おろし』に自分が責任を感じるっていうのをちょっと初めて体験して。なんか不思議な気持ちになりましたね。

『オマリーの六甲おろし』に責任感を感じる

(星野源)で、さっき言ってたような、台本のない感じだったんで。収録ではあったんですけど、すごい長くしゃべっていたんですよ。実際、2時間半でしゃべってたんですよね(笑)。2時間半ですよ? で、スタッフの人も止めないんですよ(笑)。全然止めないから、すごい俺も楽しかったし。で、時間を忘れたので。もうとにかくずっと「楽しいな」と思いながらしゃべらせてもらっていて。「結構、時間が経ってるんじゃないかな」なんて思ってるうちに終わって。

だから実はね、使ってないところも結構あるんですよね。だから僕、こっそりフルをもらおうかと思っているんですけど(笑)。そうなんですよ。あと、そうそう。『オールナイトニッポンブルース』が結構話題みたいですね。タモリさんがすごく昔にね、そのオールナイトニッポンの放送をやっていた時に即興で歌ったブルース。オールナイトニッポンとか、ニッポン放送について歌ったブルースソングがあるんですけど。それを僕は知っていたので。で、それをかけることは決まっていたんですよ。

なんで、全然誰にも言わずに、「とりあえず弾けるようにしておこう」と思って。聞いたらスリーコードすごいシンプルなブルースだったんで。これはそのまま、たぶん弾けるなと思って。で、一応ギターだけは持っていって。でも「持っていく」っていうことはとりあえず言わずに。もし、そういう流れになったらとりあえず弾けるようにしておこうっていうだけなんですけど。

でも、そしたらタモリさんがご自身の『オールナイトニッポンブルース』を自分で聞いた後、戻ってきて開口一番、「バカじゃないの?」って言っていて(笑)。「ああ、俺が普段、言ってることだ!」と思って。なんか妙に嬉しくなりつつ、「ああ、たぶんないな。『オールナイトニッポンブルース』をもう1回、やるみたいな流れはさすがにないな」と思って。それはそれでよかったですよね。

だから本当に、どこに行くかわかんないっていうような放送をご一緒できたことはすごく嬉しかったです。なので、ぜひ皆さん、タモリのオールナイトニッポン、まだ聞けますから。プラス、もう今度の土曜日で聞けなくなっちゃいますからね。そうなんですよ。だから、あれですよ。俺のSpotifyの方に入れてくんないかな?(笑)。僕のSpotifyの方に星野源のオールナイトニッポンのアーカイブがあるんですよ。毎週追加されてくるんで、そこに入らないかな?(笑)。でも、それはなかなかないと思うんで。ぜひRadikoタイムフリー、エリアフリーで聞いてください。

(中略)

(星野源)早速ですが、今夜のメールテーマを発表しましょう。今日は「みんなには言ってないけど実は好きなこと」を募集します。タモリさんのオールナイトニッポンでタモリさんがジャズと出会った時のお話をしてくださったんですけど。僕もすごくわかるというか。「他に誰もジャズを聞いてる人がいなくて。1人で聞くしかなかった。共有する人がなかなかいなかった」という話をされていて。

僕も自分の好きな音楽っていうものを共有できる人が全然いなかったんですよね。なんとなく、その流行りとか、みんなが同世代が聞いているものと違うものをどうしても……それは、自分で選択したわけじゃないんだよ? そういう人生にたまたまなっちゃったっていうだけなんですけど。そうなっちゃった時に、「でもこれ、好きだな。周りには誰もいねえな」みたいなことを思っている時に、その当時は……当時は細野晴臣。今は細野晴臣さんも様々な世代でめちゃめちゃ聞かれてますけど。

僕が高校生の時はなかなかいなかったんですよ。高校生で聞いてる人は。ああ、まあ厳密に言うと、僕の学校にはあんまりいなかったですよ。だから、自分だけで聞く。で、その中で自分の中でどんどんどんどん「好き」という気持ちが培養というか、発酵して。それで暗闇の中で聞いてると自分が発酵したような気持ちになるというような、そういうお話でひとくだりちょっと盛り上がったというか。そういうお話でなんかタモリさんと繋がることができたんですよね。

なので、みんなにもちょっと聞いてみたいと思います。みんなに言ってないけど、実は好きなことを。で、言ってるけどなかなか共有できなかったなということでもいいんですけど、それを募集します。

<書き起こしおわり>

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