吉田豪さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。宇多丸さんと亡くなった内田裕也さん、萩原健一さんについて話していました。
(宇多丸)今回はどんなお話かというと、裕也さんと萩原健一さん。ちょうどだから樹木希林さんが亡くなられて。それで樹木希林さん、内田裕也さん伝説といいましょうか。そんなお話をうかがいましたけども。ついに今度はね……。
(吉田豪)そうですね。裕也さんが17日に亡くなられてショーケンさんが3月26日に亡くなられて。裕也さんはお別れの会にも行ってきましたけども。
(宇多丸)ああ、そうですか。ということでぜひ、吉田さんの視点からお二人を振り返っていきたいということです。
(吉田豪)裕也さんは1回取材をして、それで気に入られたという面もあって。完全に顔を覚えられて、イベントに行くだけでもいじられる関係になっていて。「おう、吉田! 来てんじゃねえかよ!」とかって言われて(笑)。隠れて見ていた時に。
(宇多丸)おお、すげえ! やっぱり『人間コク宝』?
(吉田豪)そうですね。『人間コク宝』で。ちなみに隠れて見ていたというのはあの六本木のTSUTAYA。テレ朝の隣の。あそこで裕也さんが近田春夫さんとモブ・ノリオさんの本が出た時にイベントをやったんですけど、これが最高で。
(宇多丸)うんうん。
(吉田豪)僕、イベントがあってちょっと遅れていったんですけど、そしたらまだ裕也さんが出ていなくて。2人でなんかつないでいて。スタッフの人が知り合いだったので聞いたんですよ。「これ、どうしたんですか?」って聞いたら、裕也さんが突然、「俺が急に出るのは面白くない。お前ら2人がつなげ!」って言い出して、なにも聞かされてない近田さんたちが困り果ててつないでるんですよ。
(宇多丸)ええ、ええ。
(吉田豪)で、どうするのかな?って思っていたら、突然『Johnny B. Goode』が流れて。六本木のTSUTAYAって入り口に巨大なエスカレーターがありますよね? あそこの上を見たら、裕也さんが杖を掲げてポーズ決めてるんですよ(笑)。
(宇多丸)アハハハハハハッ!
(吉田豪)で、ツイストしながら下りてきて。「あっ、やっと裕也さん来た!」って思って近田さんが安心していたんですよ。そしたら近田さんにうながすんですよ。「お前らも歌え!」って始まって。近田さん、たぶん人生ではじめてぐらいの『Johnny B. Goode』を歌わされるハメになって(笑)。
(宇多丸)吉田さんも?
(吉田豪)僕はだから隠れて笑っていたんですよ。「うわあ、大変な目にあっているな!」って思っていたら、「吉田もいるじゃねえかよ!」がそこで入ったんですよ。「ヤバッ!」っていう(笑)。そういう人ですね。僕、最近だから裕也さん伝説を聞くようにしていて。若手から聞いていたんですよ。ちょうど桑名正博さんの息子さんの美勇士さんとか、今月の号だとRISING SUNのHIROさん。
(宇多丸)ああ、ニューイヤーロックフェスのメンツと言いましょうか。
(吉田豪)ニューイヤーロックの若手ですね。ジュニア世代の。
(宇多丸)ニューイヤーロックも毎年、ねえ。
(吉田豪)大好きな、あれがないと新年が来た気がしないっていう。
(宇多丸)ねえ。録画してね。楽しみだったんですけどね。
(吉田豪)やっぱりジュニアとかから聞く話も最高で。美勇士さんが言っていた裕也さんのエピソードが裕也さんをすごい象徴していると思っていて。裕也さんって僕のイメージだと「厄介だけどかわいげはある」っていう。
(宇多丸)ああ、そうね。もちろんね!
(吉田豪)ショーケンさんも共通すると思うんですよ。ケンカっ早いけど、ケンカは強くないっていう。そことかも含めて。
(宇多丸)ああ、それもかわいげか。なるほど。
厄介だけどかわいげはある
(吉田豪)で、それをすごい感じたのが美勇士さんが話していた話で。夜中の1時か2時ぐらいに六本木の交差点で裕也さんにばったり会ったことがあるそうで。「おう、美勇士、腹減ってるか?」って言われて、別に空いてはいなかったんですけど、「あ、ちょっと減ってます」って言ったら、「そうか。じゃあ、おごってやる!」って言った後、全力疾走で裕也さんが青山の方に走っていくらしいんですよ。
(宇多丸)ええっ、走っちゃう?
(吉田豪)結構なスピードで走っていって、「なんで?」って思いながらついていったら、叙々苑の游玄亭ってあるじゃないですか。あそこに、もう閉まっているから扉をガンガン叩いて。「おい! 内田裕也だ! 開けろ!」って騒いで開けさせておごったっていう話なんですけども。
(宇多丸)開けてくれるんだ(笑)。
(吉田豪)ただ、電話1本入れて行くとかじゃないんですよ。「ヤバい、閉まっちゃう!」って思って急いで行くなんですよ。発想が(笑)。
(熊崎風斗)タクシーとかに乗らずに(笑)。
(吉田豪)厄介だけど、そこのかわいげはあるっていう(笑)。
(宇多丸)なるほど(笑)。
(吉田豪)で、あとちょっと怖い話がニューイヤーロックフェスってリハが大変らしいんですよ。美勇士さん曰く。PAとかがハウリングを起こすだけで大変なことになるって言っていて。
(宇多丸)怒られちゃうっていうこと?
(吉田豪)怒られるどころの騒ぎじゃないらしくて。「なにハウリング起こしてるんだ!」って言って、ひきずりおろしてちょっとバイオレントなことをするっていう。
(宇多丸)マジで!?
(吉田豪)で、それから一切ハウリングが起こらなくなったみたいな伝説を聞いて。
(宇多丸)ハウリングってそういう問題では起こらないでしょう?
(吉田豪)しかもリハっていうのはね、それを直すためのものですよ(笑)。
(宇多丸)なんのために?っていう(笑)。
(吉田豪)ということを言ったら、HIROさんは「いや、それはない。裕也さんは基本、人が見ている前ではパフォーマンス的に怒るだけで、それはないんだけども。ただ裕也さんはエンターテイナーだから、俺が衝撃を受けたのは……」って話してくれた話も大好きで。やっぱりリハみたいなのをやっている時になんか文句を言いだしたらしいんですよ。テレビの時かな? フットモニターってあるじゃないですか。足元に、音の返しのための。
(宇多丸)うんうん。
(吉田豪)「俺たちは全身を映してもらいたいんだ。こんなもんがあると足までちゃんと入らねえだろ! どかせ!」って言い出して、どかしたらしいんですよ。それで実際に始まったら、「おい、音が聞こえねえぞ!」って言い出すっていう(笑)。
(宇多丸)フフフ、そりゃそうですよね(笑)。
(吉田豪)たぶんわかっていてやっているはずじゃないですか。当然、フットモニターのシステムを知らないわけもないし。突っ込み待ちでボケてるはずなんですよ。
(宇多丸)ああ、ボケてんの? マジで?
(吉田豪)たぶん。壮大な(笑)。
(宇多丸)ちょっとそのどこまでが本気でどこまでがジョークでどこまでがロックンロールなのかっていうのがわからないですよね。
(吉田豪)それこそ僕らと仲のいいコンバットREC夫人のOka‐Changがナンパされた伝説ってあるじゃないですか。
(宇多丸)まあ、彼女もモデル美女ですから、目立つけども。
(吉田豪)突然車で「ちょっと彼女、乗っていかない?」って言われて。それで見てみたら裕也さんで。「ええっ?」って思ったらしかもそれがタクシーなんですよね(笑)。
(宇多丸)フハハハハハハッ!
(熊崎風斗)自分の車じゃない(笑)。
(吉田豪)ただの相乗りなんですよ(笑)。
(宇多丸)アハハハハハハッ! でも、そのチャンスは逃さずに美女に声をかけるというあたり。
(吉田豪)愛嬌ですよね。圧倒的な。ちなみにその裕也さんのラストシングルとなったのが指原莉乃さんとの『シェキナベイベー』っていうコラボ曲だったんですけど、これになった経緯も結構面白くて。近田春夫さんとこの前にイベントやった時に近田さんが言っていたんですけども。
内田裕也feat.指原莉乃『シェキナベイベー』
(宇多丸)ええ。
(吉田豪)本当は近田さんと組んで最後のアルバムをちゃんと作る予定だったらしいんですよ。「近田に任せる」って。で、スタッフも全部揃えて、作曲も誰にしようとか全部やって、「さあ、いけるぞ!」ってなったところで突然、裕也さんが「気が変わった!」って言って。「おう、近田! お前、秋元康とつながっているよな?」っていうことで。「指原に興味あるからさ、デュエットを出す!」って言い出して(笑)。
(宇多丸)ああ、裕也さん指名なんだ!
(吉田豪)そうなんですよ。で、どっちも死ぬほどスケジュールが忙しい人たちなのに、「それじゃあしょうがない」っていうことで空けて、実現して……っていう話なんですけども。でも、これは結果オーライだったと思っていて。裕也さんってアンダーグラウンドの人じゃなくて、絶対に芸能界の中でロックをやろうとしている人じゃないですか。最後にちゃんと芸能界でそれができたっていう意味ではよかったと思っていて。
(宇多丸)たしかにそうですね。そこの橋渡しっていうか、派手なところでやってこそっていうね。
(吉田豪)そうなんですよ。
(宇多丸)あと、予定調和を嫌うというか。さっきの「2人でつないどけ!」とかさ。それは予定調和っていうか……(笑)。
(吉田豪)モブ・ノリオさんなんて本当に困っていましたよ(笑)。「なんで俺が?」っていう(笑)。
(宇多丸)ただの事故だろう?っていう。面白いなー!
(吉田豪)で、そんな裕也さんとショーケンさんの接点として僕の好きな話が、これは安岡力也さんの取材の時に僕が聞いた話で、力也さん曰く――これはショーケンさんも本に書いていることなんですけども――昔、松田優作さんって基本、いろんな俳優さんのモノマネをして、その人の演技のやり方をパクって。それを自分のものにしては捨てていくみたいなタイプだったっていう。
(宇多丸)ああ、まあショーケンさんの影響も当然あるし、原田芳雄さんのも……。
(吉田豪)そうなんですよ。最初が原田芳雄のコピーをして。そうしていたはずなのに突然、原田芳雄の悪口を言い始めて。で、ショーケンさんのコピーをし始めて。それで2人がモメたことがあったんですよ。正月にガチ揉めして。で、しかもいしだあゆみさんと結婚をしている時期、自宅でモメて。
(宇多丸)えっ、いしださんもいるところで?
(吉田豪)そう。いしだあゆみ宅でその2人がモメて、いしだあゆみが困って「助けて!」って言ったのが安岡力也で。それで力也さんと内田裕也さんの2人がニューイヤーロックフェス終わりで駆けつけて、その2人が止めたっていう話があって(笑)。
(宇多丸)すげえな(笑)。怪獣総進撃だな!
(吉田豪)普通にカメラを回して映画にしてください!っていうレベルの。
(宇多丸)でも腕っぷしだったら優作さんの方が強そうだけどね(笑)。
(吉田豪)圧倒的にそうですよ。優作さんはちゃんと極真をやってきた人なんで。
(宇多丸)いやー、そうかそうか。そんな事件があって。で、それでその後、その仲はどうなったんですか?
(吉田豪)まあだから「2人が行くとケンカが止まって。それでちょっと離れていしだあゆみと飲んでいるとまたケンカが始まるので行ってケンカを止めて……っていうのを何度も繰り返してな」って楽しそうに話していたんですよね。
(宇多丸)でもケンカする距離には常にいるっていうことですよね。だからやっぱりそういう意味ではケンカ友達じゃないけども。そういうぐらいだったっていうことなんですかね。ショーケンさんはどんな方なんですか?