宇多丸 小林賢太郎・東京五輪開会式演出担当解任問題を語る

宇多丸 小林賢太郎・東京五輪開会式演出担当解任問題を語る アフター6ジャンクション

宇多丸さんが2021年7月22日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で東京五輪の開会式の演出担当だった小林賢太郎さんが過去のコントでのネタや発言が問題視され、解任された件について話していました。

(宇多丸)宇内さんはお元気でございましょうか?

(宇内梨沙)いやー、この1週間、なんかすごかったですね。私、結構木曜日が起点になってるんですよ。アトロクが週イチであって。

(宇多丸)ああ、自分の中の1週間の。ありがたいことですね。

(宇内梨沙)何が起きてるか?って思った時に、この1週間ってもう世間も含めて、なんか怒涛すぎて。「あっ、まだ1週間なんだ?」っていうか。

(宇多丸)そうだね。まあ、言っちゃえば明日ね、ついに開会式を迎える……もうすでに競技は始まっておりますが。1年遅れの東京オリンピックというのがね。まあ……そうなんですよ。小山田圭吾さんの降板っていうのがあって。当然、あの過去のね。

(宇内梨沙)だってあの開会式のチームのメンバーが発表されたの、先週の木曜日ですよ?

(宇多丸)ああ、そうか。先週木曜日に発表され……。

(宇内梨沙)で、その翌日から小山田さんの問題が。

(宇多丸)そうか。先週の金曜日にMASSAN × BASHIRYがライブで出た時にMASSANに「そういえばナカムラヒロシさん。君の別のユニットの、knowoneの相方のナカムラさんが参加しているじゃないか」っつって。「そうなんですよ」なんて話をしていて。で、週末ぐらいかな? 小山田さんの話になって。その件についてはこの番組のオープニングでも意見を言いましたよね。月曜日? もうわかんなくなっちゃった。

宇多丸 小山田圭吾問題を語る
宇多丸さんが2021年7月19日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で東京五輪の開会式の音楽制作担当である小山田圭吾さんの過去のインタビュー記事が問題視されている件について話していました。

(宇多丸)で、火曜日に、これは放送上じゃなくて、宇垣さんと普通に合間合間で話している時に「いやー、あと何日かだけどこの感じだとまだカードを切られるんじゃないか? そこでもまだ、なんかあったりして……」なんて話をしていたら、皆さんもご存知の通り。開会式のプロデューサーっていうことでいいんですかね? 小林賢太郎さん。もちろん私、面識もありますし。直接会って作った曲というわけじゃないけども、KREVAの曲で『それとこれとは話がべつ!』っていうのでフィーチャリングが宇多丸と小林賢太郎って名前が並んでいたりしますから。という件で、それに関して私も意見も後ほど、ちゃんと言いますけども。メールもいただいています。

「働く方のモモ」さん。「今回の小林賢太郎さんの解任の件。驚くと同時に全クリエイター、それも私レベルのネタ投稿するリスナーですら、きちんと考えなければならない問題だとも感じました。私が面白いメールを考える時、誰かを傷つけるとわかっている表現はもはや誰にとっても面白くないので避けます。これは当たり前ですし、小林賢太郎さんも当然そうしていたと思います。しかし、何が誰を傷つけるかを常に考え続けることは決して簡単ではない。折り重なった人型の紙が大虐殺を連想させる。

私はかつて、このシチュエーションと同じ種類の笑いのメールを書いて、ラジオに採用されたことがあります。その時は直接的な表現を避けつつ、不謹慎さだけを抽出できたので面白さに着地できたと私は自負しています。しかしあのメールは誰かを傷つける意欲を内包していたとも思うのです。今回の件、当時の小林賢太郎さんの言葉の選択は擁護できるはずもなく、即時解任は当然だと思います。しかし、私自身は自戒の念に駆られますし、おこがましいことですが、自分と同じ危険をおかす人として小林賢太郎さんの今後の仕事を追っていこうとも思うのです」ということで。

なるほどね。あの、どんな表現物っていうか、特にコメディ的なものっていうのは、ある意味なんというか、世の中のそのタブーの一線の際みたいなところと勝負するものなので。当然、時代によってその基準が変わっていったりとか。あるいは、その表現になにか人を傷つけかねないものが内包されてるっていうのは、これはある意味避けえない部分でもある。ただ僕ね、この件はその一般化しちゃいけない部分もあると思って。やっぱりその、いわゆる「ホロコースト」。「ショア」とか言われてますけども。ナチスドイツによる計画的なユダヤ人の……まあ、ナチスドイツだけじゃないんですけどね。実は。ヨーロッパ全体で行われたことなんだけども。ユダヤ人の大虐殺というものがあって。

もちろん、これは当然のことながら「二度と繰り返さない」なんてことは当たり前というか。人類史上の巨大な暗黒というか。人類全体がそれに向き合わなければいけない巨大な何かであって。で、それを扱う手つきに関してもですね、結構いわゆる、シリアスに真面目に扱っているものであっても……たとえばスピルバーグの『シンドラーのリスト』っていう映画、あるじゃないですか。もちろんホロコースト、ショアに対してすごく真摯に向き合った作品だし、名作ですけども。あれに関しても「こういうエンタメ化した形であの事象を扱ってはいけないんじゃないか?」という批判も全然あったりするわけですね。

なので、たとえば『シンドラーのリスト』がたしか、あれは1993年の作品でしたっけ? で、その後に、日本では1995年。元々は1985年のドキュメンタリー映画ですけど。『SHOAH ショア』っていう、要するにそういう劇映画的な演出をしない、このショアという大量虐殺の事象を描いた映画が日本でも95年に公開されて。要はあの1998年の時点ではやっぱりこのホロコーストの件というものは扱いは要注意だというか。いわゆる真面目に扱ってるものでさえ、こういう議論が起こるわけだからというのは割と僕は、たとえばその『SHOAH ショア』とかは見てなくても、ある種の意識を持って見ている人だったらそれは共有されている感じがあったから。

だから98年でこれはね、ちょっとはっきり言って割と結構軽率だと思う。僕もそのコントの部分を見ましたけど。ただ、同時にちょっと小山田さんの降板の件ってあったじゃないですか。それとはちょっと本質的に違う部分もあるだろうとも思っていて。突然、急遽「解任」っていう形でしたけどね。それ自体に対してもどうなのかな?って思うところもあるので。それは番組を始めてから話したいと思います。

(宇内梨沙)では、続きはこの後で。

(宇多丸)アフター!

(宇内梨沙)シックス!

(宇多丸・宇内)ジャンクション!

(中略)

(宇多丸)はい。宇内さんの面白ニュースとかもいっぱいあるのに、ちょっとすいませんね。この話ね。

(宇内梨沙)いえいえ。この話はしっかりと宇多丸さんの意見も聞いてみたいです。

(宇多丸)ということで、もちろんその98年の時点においても軽率なのは間違いない。ただ、やっぱりその小山田さんの降板からの流れで、なんか……まず、これをごっちゃにしている人、いませんか?っていう。僕は全然次元が違う落ち度の話だと思うし。もっと言えば、小林賢太郎さんはたとえばこれで、海外への伝えられ方によってはあたかも小林さんがなんというか、ホロコーストとか、たとえばナチスの悪行の支持者であるような印象とかをもしかしたら持たれてしまったら、それは全然そういうことじゃない。

小山田圭吾とは別次元の落ち度の話

(宇多丸)もちろん、非常に軽率なコントの作り方はしていると思うけど。ベースには……僕、あのコントを見ましたけど。ベースにあるのは要するに「ナチスによるユダヤ人大量虐殺というのはとんでもないものである。許されないことである」という件をベースにした……その扱い方が非常に軽率ではあったし、よくないと思うけど。なんていうのかな? ベースには、そのある種の良識が共有された上での。

(宇内梨沙)「このやってネタにしてはいけないことなんだ」っていう理解はあった上でのコントではありましたよね。

(宇多丸)そう。「言っちゃいけないことだからネタになる」という姿勢なので。その、あたかも小林さんがそういうホロコーストとかに対して全く理解がなかったり、なんならナチスドイツの信奉者であるとか、そういうこととは全く違うのであって。なので僕はね、突然ガンッ!って降板だけしちゃうと、そういう形で非を認めた風に見えてしまう。

(宇内梨沙)「そういう思想を持ってる人なんだ」っていう風に見えかねない?

(宇多丸)そう。見えかねないと思うんですね。もちろん小林さん自身はすごく真摯な謝罪文を出されています。それは嘘はないと思いますけど。あの文章には。僕はだから、やっぱりその過去の軽率な表現みたいなものに関しては、たとえば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のジェームズ・ガン監督。彼が過去のSNSでの発言がまさにこういう感じ。露悪的なジョーク発言みたいなものが問題となり、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』の監督を解任されちゃったじゃないですか。もちろん、それはよくないんだけども。

僕はただ、そういうのは、過去のいろんなことっていうのは……しかも、この件っていうのが小山田さんのいじめ問題と違うのは、あまり知られてなかったというか。僕、小林さんの件はこれではじめて知ったし。小山田さんのいじめ問題はすごく知られた件だったから。「こんな知られていることを知らずにこんな起用をするの?」っていうのはわかるけども。橋本聖子さんが「把握をしてなくて責任を感じる」って言っていたけども。まあ正直、全部の彼のこれまでの表現をチェックはできない。たぶん本人でさえ、ちゃんと覚えていなかったぐらいかもしれない。

で、僕の考える「こうすべきだったんじゃないか」という僕の意見は、まずやっぱりきちんと、当然謝罪はする。その上で、「今は考えは完全に違うし、このコントに関して、訂正とか謝罪をちゃんとしてこなかった点も良くなかったと思う。その意味で、今後は……」ということで。たとえばそういうショア、ホロコーストの遺族の財団とか、きっとあると思うから。そういう財団に寄付をするだとか、あるいはそういう……日本ってさ、そういう意味ではホロコースト、ショア、ユダヤ人大虐殺。そういうのの教育はちゃんとされてるとは思うけど。

それがどれだけの重みを持っているのか?っていうことは、まだヨーロッパほどは深刻に捉えてないところがあるかもしれないから。その啓蒙活動もしていきます、みたいな。要するに今の謝罪。そして今後のアクションみたいなところで誠意を見せていく。「そして今回の開会式の演出は今、まさに自分がそういう風な考えの人間ではないことをその演出の中身で証明します」じゃないけど。ということをユダヤ人の団体とかに言って。「こういう形で贖わせていただくから、やらせてください」っていうことをするのでよかったんじゃないかって思うんだけどな。これに関してはね。

やっぱり小山田さんのあれはさ、要するに直接的ないじめの話であって。当然、直接の被害者がいる上に、もっと言えばさっき言った邪悪な意図を持ってやっていることだから、全然話が違う。あと、もちろんすごく広く知られた件でもあったってことで、全然今回の小林さんのこととは次元が違うと思うので。なので、ねえ。まあ、なんかさ、いろんな人がさ、「イギリスのロンドンオリンピックの時に『モンティ・パイソン』のジョン・クリーズが出てたじゃないか。『モンティ・パイソン』なんてそんな不謹慎ネタばかりじゃないか」って言っているけども。

まあ、ジョン・クリーズは出演者として出てただけなので。全体の演出者の責任とはまた全然違うと思うし。やっぱり『モンティ・パイソン』はそこはちゃんとバランスはやっぱり取ってますよ。僕、見たけどその問題のコントはやっぱりちょっと、うん。バランスとしてちょっと配慮がない感じがすごくありましたし。あと、時代が全然違いますからね。またね。というあたりでね、僕は小林さんに関してはそういう意見かな。なので、だから突如解任。で、本人としては自分の落ち度の話だから。「居座る」なんてことは言えないわけだから。でも、なんていうの? 要は「明日だから」っていう。なんでこんな急にやるのか?っていう理由は「明日だから」っていうさ。「明日までにしっぽ切りをしておきたかったから」みたいな感じに見えてしまいますよね。

だから……「なんだかな」って。もうこれ、「なんだかな」っていうのは何回目? オリンピックに関して。あれですよ。『花束みたいな恋をした』のセリフになぞらえるなら「ポイントカードなら、とっくに全部たまっているよ」っていう。ねえ。

(宇内梨沙)本当ですね。

(宇多丸)しかもね、俺はもうひとつ、それでこんななって。ぶっちゃけですよ、普通に開いていたら、そこそこの関心度だった東京オリンピックがですね、明日が開会式で。正直みんな、いろんな意味で興味津々になっちゃったじゃないですか。

(宇内梨沙)そうですよ。もう、とにかく注目度は高いですよ。

(宇多丸)ある意味、最高潮じゃん?

(宇内梨沙)はい。最初の4分間、まずどうなるのか?っていうところから。

(宇多丸)俺、その裏で番組をやってる身にもなれっていうことですわ。MXテレビで『バラいろダンディ』に出ているんで。

(宇内梨沙)気になって仕方ないんじゃないですか?(笑)。

(宇多丸)いや、もうだから玉袋筋太郎さんと、オリンピック応援企画ですよ。応援企画ですわ。なんなら、一種の、広い意味でのオリンピック中継ですわ。裏でやってやろうかなって。どうせ、誰も見てねえし(笑)。みたいな感じですよね。まあ、とにかく……僕はこんな意見でございます。伝わったかな? この感じですね。小山田さんはやっぱり、なんかここに来てこうなったのは本当に不幸なことだったけども。まあ、ここまで禊をしていなかったんじゃ、もう……っていう感じがするけど。小林さんに関したちょっとな、なんかもうちょっとやりようはなかったのかな?

(宇内梨沙)まあ、あと1日っていうのがもう、どうしようもない……。

(宇多丸)あと「中身はそんなに変わりません」って橋本さん、言っているじゃない? 当然、変えようはないよね。今、相当リハをやっていて。リハの音が外に丸聞こえで。だいたいネタが割れているらしいっていうこともあったりするからさ。まあ、どうなるんだろうね。宇内さんも当然、それに関連して報道っていうか、やる機会も増えて。もちろんさ、アスリートそれぞれの試合とかはね、そこはもちろん頑張ってくださいっていうことだし。もう、ガワがひどすぎるんだよな。

(宇内梨沙)ここまで、まさに「カオス」って言葉がぴったりな世の中になっちゃってるというか。選手たちはもう競技にひたむきに頑張っていただきたいし、応援したいし。一方で、感染者はとにかく増えていて。8月には東京の1日の感染者数が3000人とか4000人とか行ってしまったら、結局どうするのか?っていうのは本当に思いますし。組織委員会のそういった周りの開会式・閉会式とかのすったもんだも含めて。なんかもう……ねえっていう感じですよね。

(宇多丸)それでさ、俺は思うんだけども。初期にはしゃいでいた人たち。全員、顔を見せないのな。

(宇内梨沙)ああ、招致が決まった時にですか?

(宇多丸)そうそう。あの時にはしゃいでいたやつら、ひと通り顔を見せねえのなって思っていて。みんないないなって思っていて。

招致の時にはしゃいでいた人たち

(宇内梨沙)もちろん、当時からオリンピック招致に反対だった方もいると思うんですけど。やっぱり、楽しみにしていたというか。そっち側だった方もたくさんいるとは思いますから。

(宇多丸)いや、それはいいのよ。だから、ほら。じゃあ、最後まで応援していこうよ! ということじゃん? でも「最後まで応援していこうよ!」ってなったら「あれ? いねえな、あいつら?」みたいなことになっているから。

(宇内梨沙)たしかに。一番前に立っていた人たちがね。

(宇多丸)それこそ、安倍さんですよ。ねえ。リオでマリオの格好をしてはしゃいでいたわけじゃない? それに対する是非はあるけども。俺の考えもあるけども、でもやったわけじゃない? 盛り上げて。あと「復興五輪」とかね、「人類が感染症に打ち勝った証しとしてのオリンピック」だとかね。そんなことを言ったのも全部安倍さんだしさ。「1年後に延期」っていうのも安倍さんだしさ。そしたらさ、「開会式に出ません」って言っているわけでしょう? 「えっ? いやいや、ちょっと待ってよ」っていう。漏れ聞こえるものによると、なんかゲーム音楽っぽいものが聞こえるらしいぜっていう。風の噂では。

(宇内梨沙)まあ、世界に誇れる日本の文化となると……。

(宇多丸)そしたら、あのリオの格好でそのまま走り回ってくださいよっていう。

(宇内梨沙)土管から繋がっているっていうね。ブラジルと日本って真裏ですからね。

(宇多丸)死んだ目をしたルイージもいるからさ。で、その2人がいろいろひどい目にあうっていう『風雲!たけし城』的な。たけし城も世界に誇るコンテンツだからね。

(宇内梨沙)『SASUKE』とかもね。たしかに、そういう……。

(宇多丸)そういう手だってあるのに、「出ません」なんて言うからさ。どうなっているのかな?って思ったりね。本当に、困ったもんですよ。でも、注目度は満点っていう。

(宇内梨沙)とはいえ、どうなるのか見届けたいですね。

(宇多丸)そうだよ。俺も録画予約しちゃったもん(笑)。そりゃあするでしょう? 俺、だって見れねえんだもん。裏で裏リンピックやっているんだもん。こっちは盛り上がると思うよ?

(宇内梨沙)みんな、明日はアトロクを聞いて『バラダン』を見るっていう。

(宇多丸)アトロクはしかもムービーウォッチメンならぬ、イートウォッチメンってね。山本さんが大奮闘ですから。やりたい放題ですよ。

(宇内梨沙)開会式は8時からですよね?

(宇多丸)ああ、振り返りだ。明日はどなただっけ? 三宅隆太さんか。三宅さんの話の方がいいんじゃないの? まあ最悪、ラジオを聞きながらは見れますから。うん。そういうことですよ。でも私はその頃、半蔵門まで行かなきゃいけませんから。

(宇内梨沙)そうか。移動中だ。だから、リアルタイムで意外とチェックできるんじゃないですか?

(宇多丸)まあね。そりゃそうだけどさ。やっぱり移動が大変ですから。都内移動。

(宇内梨沙)そうですよね! 本当に交通規制が……。

(宇多丸)僕、今日もちょっと荷物があったんでね。白井京子さんとかから教わったいろんな情報をもとに、ものすごいトリッキーなやり方で事務所にたどり着きましたよ。本当に。

(宇内梨沙)本当にね、大通りを使おうとすると。特に東側の方は。

(宇多丸)そう。油断ならないですね。だし、そのたとえば封鎖になってるところの外側の思わぬところが渋滞になっていたりするから。

(宇内梨沙)ああ、みんなそっちに迂回したりして。なるほど。

(宇多丸)だから今日も運転手さんと相談をしながら。「ああ、それはマズいですね。じゃあ、そこを……」みたいな。

(宇内梨沙)運転手さんも腕の見せどころだな。

(宇多丸)そう。だから俺もいろんな裏道を知っていてよかったわって思いましたね。

(宇内梨沙)さすがシティボーイですね。宇多丸さん。

(宇多丸)「シティボーイ」(笑)。シティボーイという言葉に弱い、ということです(笑)。

(中略)

(宇多丸)はい。ちょっと先ほどの小林賢太郎さん解任の件について、私の意見を言いましたけど。ちょっと補足でね。僕ね、とはいえたとえば今、テレビとかを見て。お笑いとかも大好きだから見ていますけど。やっぱり今のテレビ見ていてさえ、「ええっ? 今時、これを言うの?」とか。「えっ? 今時、これを笑いにするの?」っていう場面は全然、多々あるんですよ。で、僕はさっきも言った通り、お笑いっていうか、コメディ的なものっていうのは一番、その時の良識のラインっていうのをむしろ厳密に把握している人こそがやるべきっていうか。だからこそ「際どい」と言われることができるわけ。もしくは、その時に突くべき何かが突けるわけで。だからこそ、おかしいわけだから。

その時の良識のラインを厳密に把握してこそ「際どい」笑いができる

(宇多丸)だからなんというか、たとえばもうちょっと、今のポリティカリー・コレクトネスに対して「うるせえな」みたいなことを言う人ばかりが多いけども。そうじゃなくて、なぜその議論というものが起こったのかをちゃんと理解した上でやるべきだし。たとえばLGBTQの件とか、わかっているのかな?って。本当にわかっているのかな、勉強しているのかな?って思う場面は結構……楽しく見てはいるけども。時々、「あっ!」って思うことが本当に多くて。もちろん、僕自身もきっと不注意な瞬間は全然あるし。だとは思います。

なので、先ほどの働く方のモモさんが「投稿する側もそうだ」って言っていたけども。まあ、全員の問題という点は間違いないし。特に今回の件に関しては、「じゃあ、それだけ問題になるホロコースト、ショアってどういうことなのか?」っていうのを改めて、たとえばお子様と話したりとか。学校で話すとか。そういう機会につなげていくというのが……。

(宇内梨沙)本当に自分ごとで考えるべきですね。

(宇多丸)そうです、そうです。今、だいぶ研究も進んでいてね。そのナチスドイツだけが悪かったのか?っていうと……もちろん、ナチスドイツが悪いんだけど。でも、結構ヨーロッパ全土で。

(宇内梨沙)そうですね。元々、ユダヤ人の迫害っていうのはホロコースト前からずっと起きていたことですもんね。

(宇多丸)そして結構ヨーロッパ全土で。別にアウシュビッツだけで起きてたことじゃなかったというのもわかってきていたりするので。そのあたりも含めてね。

<書き起こしおわり>

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