安住紳一郎 みうらじゅんから受けた影響を語る

安住紳一郎 みうらじゅんから受けた影響を語る 安住紳一郎の日曜天国

安住紳一郎さんが2021年6月20日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中でゲストのみうらじゅんさんから受けた影響についてトーク。「得体の知れないものが一番怖い」「アウトドア般若心経」「Since発見」などについて話していました。

(安住紳一郎)いま、インフルエンサーという言葉がよく使われていますけども。みうらさんのやってきたことって本当に……。

(みうらじゅん)僕は「なんくるないさー」の方でしたからね。基本は。

(安住・中澤)フハハハハハハハハッ!

(みうらじゅん)いつも気持ちは「なんくるないさー」って思っていました。僕は。

(安住紳一郎)いろいろとだってこれまでも……私が影響を受けたの、いくつかあるんですよ。私は一番みうらさんに影響を受けているのは「得体の知れないものが一番怖い、強いんだ」ったという。みうらさんが事務所を構えた時に、隣の暴力団が逃げたっていう話が私のサラリーマンとしての指標になっています。ちょっとその話、もう一度、お願いできますか?

(みうらじゅん)あの、親分さんとエレベーターで一緒になって。そこの方もいつも……まあ、出入りが激しいんでしょうね。ドアを半開きにされていて。うちもその頃、編集者とかいっぱい来てましたので。半開きにしてたんですよね。隣り合わせの部屋でね。また、やっぱり半開きにしてるとうちの部屋の中も見えるし、その方の部屋の中も見えてたんですけど。その方の子分さんみたいな人がちょろちょろと半開きのところからうちの部屋を見ていて。靴が置いてあるところの台の上にやっぱりいろいろ仏像とか、いろんな……このスクラップのような、もうむちゃくちゃなものが並んでいたもんで。

「あそこはヤバい」っていう話になっていたらしくて。エレベーターの中で、その偉い方と会った時に「お前にちょっと聞きたいんだけど。お前んところ、何してるんだ?って……うちのやつがちょっと怖がってるんだけど」って言われた時に「いやー、すいません。そんな怖がるようなことは……」って説明したんですよね。「ああ、怖がっていらっしゃるんだ」ってその時に思って。

(安住紳一郎)普通、逆ですよね(笑)。

暴力団の人から怖がられる

(みうらじゅん)うちも怖がっていたんですけどね。それは怖がっていたんですけど、あっちも怖がっていたとは……両方、怖がっていたんですね。

(安住紳一郎)そんなことがあるんですよ。ねえ。

(中澤有美子)安住さんは結構、これを生きる指標の大事な部分にしていらっしゃいますよね?

(安住紳一郎)そう。うん。「得体の知れないのが一番強い」っていう(笑)。

(みうらじゅん)本当、そうですね。

(安住紳一郎)あとは結構私、みうらさんの浄土真宗の話とかが好きで。「アウトドア般若心経」。これは、もうちょっと注目されてもいいはずなんですけどね。

(みうらじゅん)そうですね。雨が降ってきてね。やっぱりね、つらいですよ。街を歩いていてね。どこにあるかわからない般若心経の一文字を……まあ、いい感じの天気の日だったらね、まだ探す気になるけど。ザーザー降りとかの時はつらかったですよね。

(安住紳一郎)写経するんじゃなくて、街角にある般若心経の文字を探して。

(みうらじゅん)看板文字ね。それを探していくと、やっぱり何か、繁華街に般若心経がたくさんあるということがわかりましたね。田舎にはそんな看板ないですからね。繁華街のところに意外と……ご本人はわかってないけども、般若心経の一文字を使った店名にしているとか。そういうね、お店もあったりしましたから。僕ね、その頃ね、子供がまだ小さかったもんで。乳母車を引きながら。子連れ般若心経でしたよ。

(安住・中澤)フハハハハハハハハッ!

(みうらじゅん)それはね、ちょっと人には説明がつかなかったですね。

(安住紳一郎)そうですね(笑)。職質されたら答えようはないですよね。

(みうらじゅん)その時はもうベビーカーをバーン!って前に出して相手を蹴散らして逃げるしかなかったですね。

(安住紳一郎)でも般若心経で使われてる漢字、街角の看板から全部見つけることができるですね?

(みうらじゅん)4、5年かかりましたよね。やっぱり。はじめは「意外と行けるんじゃないかな」と思ってたんですけど。「無」とかね、「無煙焼肉」とかありますから。もうすぐ浮かびますから。

(中澤有美子)「空」とかね。

(みうらじゅん)そうです。やっぱりね、「ぎゃーてーぎゃーてー(羯帝羯帝)」ですね。あそこはもう、かなりですね。「羯帝波羅僧羯諦」って……あそこはキツいですけども。それで、ネットでいろいろとできないもんで。調べてもらって。地方の岐阜県とか、北海道にその一文字があるとか。それでそこに行ったりして。そんなこともありました。

(安住紳一郎)すごいですよね!

(中澤有美子)偉業ですよね!

(安住紳一郎)そして、あれですよね。「空即是色」の「空」という仏教の境地に至るんですよね。

(みうらじゅん)仏教の境地はやっぱりその駐車場の「空有り」っていう。駐車場のところにいつも書いてある「空有り」。それから「空無し」っていうのもあるんですよね。あれは。

(安住紳一郎)「空きがある」っていうのと。

仏教の境地に至る

(みうらじゅん)僕、それもある人に教えてもらったんですけど。「みうらさん、あれは『あき』って読むんですよ」って言われてたんですけども。いや、バカじゃないから、それぐらいはわかっているんですけども。そこにこそ、仏教の真髄があるんじゃないかなと。「無いことがある」って書いてあるわけですから。なかなかの真髄ですよ、それは。だからよく、「空有り」って書いてあって、下に電話番号が書いてあったりするから俺、そこにかけてみようかなと思って。その駐車場のオーナーかなんかに。きっと仏教の真髄を教えてくれるんじゃないかなと思ったけども。

でもそれも般若心経の写真……般若心経の写真ではないけども。看板を撮った一文字一文字を400何枚、全部集めて床に並べてみると、般若心経に見えるんですよ。「羯帝羯帝波羅羯帝」とか。見えるんだけども、そもそもは違う意味で使われていた言葉なわけで。またばらけると意味がなくなってしまうっていうところに「これが空の真髄だ!」って僕は思って。今、たまたまそこにそういう文字が集まっているからそう見えるだけで。人間もね、いろいろと細胞とか環境とかがあって。そうやって今、いるからその人がその人であるという存在証明ができるけども。ちょっと違ったり、ばらけたりしたらわからなくなるんですからね。そんなことに対してものすごく悩んでいたりするんだと思って。うん。なんかビカッと来た時があったんですけどね。その時は。

(安住紳一郎)だから本当に……まあ、最初はね、ちょっとしたアイデアで始めて。意外に……。

(みうらじゅん)「ちょっとしたアイデア」っていうのはやめてくださいよ。

(中澤有美子)失礼な(笑)。

(安住紳一郎)壮大な発想のもと取り組んだ……それで意外にね、大乗仏教の深淵に近づいていっているっていう。

(みうらじゅん)そうですね。大乗仏教でしたね。それはもう、大乗仏教なんですよ。「大乗仏教である」っていうのはもうはっきりしていて。「舎利子」っていう言葉が出てくるんですよ。般若心経って世界で一番短い教典だけど「舎利子」って言葉が何回が出てくるんですよね。凝縮してあるのに……それ、お釈迦さんの弟子の名前で。シャーリープトラっていう人なんですけど。「わかるか、舎利子?」っていう感じで使われてるんですよ。だから一番はじめの……今、上座部仏教って呼んでいるのかな?

小乗仏教って呼ばれていた時の、「人は悟りの境地には修行をしないと行けない」というのではなくて、大乗仏教は「拝むと行ける」とか「信者も行ける」っていうようになったじゃないですか。でも、それすらないんだ。「そういう苦行すらもいらないだよ、舎利子」って言って大乗仏教では説いていたんですよね。だから、まああれは大乗仏教のキャッチコピーですよね。小乗じゃないんだ。小乗でもないんだっていうことを釈迦の弟子に言うためにちゃんと入れてあるっていうのが逆にすごいなと思って。

(安住紳一郎)そうですね。今の本当に電通が作るポスターみたいに。「そうだ。君も大丈夫」みたいな。

(みうらじゅん)そんな感じなんですよ。実は。ねえ。なんか、不思議だなと思ったし。でも舎利子の「舎」はクリーニング屋さんの看板で僕、よく撮ったんですよね。あと餃子とか。ここらへんでよく撮りました。

(安住紳一郎)あとは私がというか、この番組のスタッフも影響を受けていますけども。「Since発見」はもうかならずですね。

(みうらじゅん)番組のスタッフの人にも行ってもらえましたもんね。赤坂界隈ね。で、「四方がすごい」ってことになったんですよね。

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(安住紳一郎)酒屋さんですね。「Since1624」だっけな?

(みうらじゅん)江戸時代でしたよね。すごかった。あれはすごかった。

(中澤有美子)マップを作りましたね。

(みうらじゅん)あの年に四方さんがみうらじゅん賞を受賞したんですよ。「Sinceがすごい」っていうことで(笑)。

(安住紳一郎)そうですよね(笑)。ちょっと古め……この街の中で一番古いSinceを見ると、なんか言うんですよね?

(みうらじゅん)新しいやつですか? 新しいやつは「最Since」って呼ばれているやつで。もう今年のやつとかはもう出回ってる始末なんで。ここは僕がSinceを審査する「シンサー」としてチェックを入れてるっていう形ですかね。

(安住紳一郎)もう「Since2021」とか、あるんですか?

(みうらじゅん)出てます、出てます。はい。もう全然出ているし。たぶんSinceの概念がもう崩壊したんですよ。「ある程度、年数はためないとSinceは言ってはいけない」というような概念が昭和にはあったんですけど、なくなったですよね。「今日から始まりました」っていう、その「From」が「Since」になっちゃった。

(安住紳一郎)もう、あれなんですね。「いつから商売やってます」っていう、ただそのお知らせになっちゃったんですね。

(みうらじゅん)ええ、お知らせですね。あれはポイント制だったんですけどね。今まではね。「30年もたまったら、そろそろ言われたらいいじゃんないですか?」っていうところだったんですけどね。

(安住紳一郎)いやー、いろいろもう、10何回も出ていただいてるんで。「不安タスティック」とかね、「老いるショック」とかね。

(中澤有美子)「墓マイラー」とか。

(安住紳一郎)「墓マイラー」。「峨眉山でガビっちゃう」とかね。

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(みうらじゅん)ありましたね(笑)。

(安住紳一郎)自分で提唱してきて、振り返ると鼻で笑うってなんですか?

(みうらじゅん)ドント・ルックバックです。覚えていない。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

<書き起こしおわり>

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