(朝井リョウ)で、もうちょっと爽快な話も。ちょっと今、悩ましいことだったから。スカッとする回です、これは。セイバー、書店回り中、池袋内の移動が滑らかな営業さんに感動する。わかります? 池袋で西口と東口の両側に書店があるんですけれども。雨の日がありまして。雨の日、やっぱり徒歩でたくさんの書店を回るって大変なんですよ。セイバーも疲れている。セイバー、頭の万年筆も濡れてるの。
(高橋みなみ)ちょっと待って(笑)。変身したまま回っているの? おかしくない?
(朝井リョウ)もう錆びちゃっているの。セイバーの万年筆が。で、これは私が実際に会った営業さんなんですけど。その次の書店まで結構距離がある段階で、雨が降っている。それで傘をさしながら歩くじゃん? そしたら、結構距離がある段階で「朝井さん、傘を閉じてください」と言われて。その場所は濡れない場所だったんですけども。「朝井さん、傘を閉じてください」って言われて。
「えっ、何だろう?」と思って閉じるじゃないですか。そしたら「次の書店まで、傘は1回も開きません」って言われたんですよ。「嘘でしょう? 結構距離あるよ? 駅の向こうもあるし……駅の構内だけでは行けない場所じゃない?」って思って。でもやっぱり、もう営業さんって知り尽くしてるから。そのエリアのことを。死ぬほど歩いているから。で、本当に1回も傘を開かないままたどり着くことができたんですね。で、「すごい!(拍手)」って。
(高橋みなみ)セイバー、戦え!(笑)。
(朝井リョウ)セイバー、感動の回。「ええーっ!」って。
(高橋みなみ)全然怪人とか出てこない!
(朝井リョウ)セイバーが最後まで傘を開かなかったっていうところで、エンディングテーマがドーン!
(高橋みなみ)それじゃあグッズも売れないよ! ベルトも出てこないし。
(朝井リョウ)セイバー大感動の回。という感じのことをいろいろと考えたんで。
(高橋みなみ)めちゃめちゃ考えてるじゃん。なんなの?
(朝井リョウ)いろいろとありますよ。
(高橋みなみ)まだあんの!?
(朝井リョウ)セイバー、映像化に関してうるさいことを言いたくないけど、原作にないよくわからない指示を出され悩む回。
(高橋みなみ)フハハハハハハハハッ!
映像化の際の原作改変
(朝井リョウ)これ、大変ですよ。これもうセイバー、悶々と……「ええっ? でも面倒くさい人とは思割れたくないんだけど……でも、言わなきゃいい作品にならないし」って。セイバーがすごい悩む回。
(高橋みなみ)どんな怪人が出てくるんですか?
(朝井リョウ)これは、一緒に話していた柚木麻子さんという方が考えてくれたんですけども。これは悪の一味、原作クラッシャーズというものが現れ、誘拐されます!
(高橋みなみ)フハハハハハハハハッ! ええっ、誘拐されるの?
(朝井リョウ)そう。原作クラッシャーズにもう原作が好きなようにされちゃうの。「えええーっ! ひどいよ!」って。セイバーは絶叫します。セイバーの抵抗は絶叫だけ。「やめてください!」って。それでなんとか、どうにか間を取っていったという回です、これは。「間を取れました!」でエンディングテーマが流れます。
(高橋みなみ)これ、仮にね、この思いが届いて。それで出演のオファーが来たらどうされますか?
(朝井リョウ)出演のオファー?
(高橋みなみ)たとえば、さっきだったらタピオカミルクティーを飲んでいる人とか。
(朝井リョウ)でもそれは大御所だから。それは五木寛之さんじゃないと、やっぱり。でもさ、マジで五木寛之さんとかが出てほしいよね。なんかパッと思いついたのが、たぶん又吉さんはどっかで出るだろうなっていうのは思って。それはなんか、正直想像がつくじゃん? 想像がつくから、それなら伊集院静、五木寛之、北方謙三レベルの人たちが、何かのシーンで。
(高橋みなみ)ふとした瞬間に出てくるみたいな?
(朝井リョウ)それでセイバーが動けなくなるみたいな(笑)。だからセイバーにすごい親近感を覚えるみたいな。「あいさつ、行った方がいいんじゃない? 赤川次郎さん、いるよ」みたいな。そういうのを一緒に悩むみたいなの、やりたい。
(高橋みなみ)めっちゃいい役じゃん(笑)。セイバーと悩むって。
(朝井リョウ)みたいなのだったら、やりたい人はいっぱいいると思います。
(高橋みなみ)これが、何月からですか?
(朝井リョウ)9月6日から始まります。皆さん、新仮面ライダーの仮面ライダーセイバー。
(高橋みなみ)絶対内容ちゃうけど!
(朝井リョウ)楽しみ! どれが出るかな、本当に?
(高橋みなみ)どれも出なそうだけど(笑)。
(朝井リョウ)楽しみだなー。
(CM明け)
(高橋みなみ)でも、そんなに書いていたってことは読んでないのもあるでしょう?
(朝井リョウ)そう。反応を見ながら「ああ、これは笑ってもらえないかもしれない」など思いつつ省いたものもいくつか……。
(高橋みなみ)ボツにされたものがあるということ?
(朝井リョウ)ありますね。セイバー、中央公論新社と読売新聞は同じビルの中にあるのにICカードが別だから入れる階と入れない階があり、意味わからない足止めにキレる回。
(高橋みなみ)フハハハハハハハハッ!
(朝井リョウ)ああ、これは笑うんだ。こっちの方が笑うのね。
(高橋みなみ)これ、いいね。これ、とってもいい(笑)。
(朝井リョウ)ああ、本当? 想像できる感じ?
(高橋みなみ)そうそう。「あるだろうな」っていう。
(朝井リョウ)大きいビルの中にあるの。読売新聞と中央公論新社っていうのは。で、1日の間にどっちも行き来する打ち合わせの日とかがあるんだけど。10何階以上は行けなかったりするの。持っているICカードだと。
(高橋みなみ)「このパスでは行けません」っていうね。
(朝井リョウ)そう。でも時間がぎりぎりになって。慌てて行かなきゃいけないみたいな時。「ピッ」とやっても開かない。足をドーン!ってなったりしてセイバーがイラッとしてキレる回ですね。
(高橋みなみ)なんなんだよ(笑)。もう敵が出てこねえんだよな!
(朝井リョウ)日常回よ。
(高橋みなみ)日常、多すぎよ! ほぼ日常なんだから! 敵が全然出てこないやん!
漫画をやっている出版社のリアル
(朝井リョウ)あとは小学館とか講談社とか集英社とかさ、漫画もすごくたくさんやっている出版社のリアリティーですね。セイバー、今の担当編集者が昔、読んでいた漫画を担当していた編集者だと知り、密かに興奮する回。これ、結構感動するんですよ。小説の仕事で会った人と、何の気なしに普通にしゃべっていて。「そういえば、前はどこの部署だったんですか?」みたいな話になった時に「入社して○年ぐらいは漫画雑誌のところにいて」って。「えっ、待って。その年代であの漫画雑誌っていうことはもしかして……あの漫画とかやってた頃ですか?」「ああ、それ私、担当してましたよ」と言われた時の衝撃。
(高橋みなみ)上がるね。
(朝井リョウ)セイバー、上がります。
(高橋みなみ)たしかに。私、『ONEPIECE』の歴代の編集の人を見た時に大興奮したもん。「うわっ!」って。そういうことね。
(朝井リョウ)そういう感じ。「そういう人と今、私は仕事を……」って。
(高橋みなみ)おおー、上がる、上がる。
(朝井リョウ)あっ、じゃああなたのセイバーですね。
(高橋みなみ)私もセイバー? ええっ? 敵は?(笑)。
(朝井リョウ)あなたはセイバー。だから日常回だって!
(高橋みなみ)共感するとセイバーになれて、敵も出てこない。もう(笑)。戦う回をくださいよ、戦う回を!
(朝井リョウ)戦う回?
(高橋みなみ)ないの?(笑)。
(朝井リョウ)でも、最終話で考えたのは、急に重いけども。悪の組織……今までいろいろ、原作クラッシャーズとか、いろいろと戦ってきたじゃん? それを超まとめていた大ボスが、自分の読者だったと知る回です。
(高橋みなみ)……
(朝井リョウ)重いでしょう?(笑)。
(高橋みなみ)突然、重い……。
(朝井リョウ)すごい重いのよ。自分がよかれと思って頑張って書いてきたことが全て、世の中を悪くする人のエネルギーとして実は、自分も加担していたということが最後、セイバーに……。
(高橋みなみ)重い!
(朝井リョウ)もうセイバー万年筆からインクもダダ漏れ。セイバー、それを言われた時。
(高橋みなみ)どうなってんの? 万年筆って(笑)。