渡辺志保とDJ YANATAKE Black Lives Matterと2020年のプロテストソングを語る

渡辺志保とDJ YANATAKE Black Lives Matterと2020年のプロテストソングを語る INSIDE OUT

渡辺志保さんとDJ YANATAKEさんが2020年6月8日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でジョージ・フロイドさんの死をきっかけに全世界に広がった人種差別への抗議運動「Black Lives Matter」について特集。2020年の最新プロテストソングを紹介していました。

(渡辺志保)今日はゲストの方は特にお迎えせず、我々……ヤナタケさんと私の2人で。先週もアトランタからAKI IKEJIRIさんをお招きしてお話ししたんですけれども。5月25日に起きたジョージ・フロイドさんの事件を発端にした、もう今や全世界に広がるデモについてとか。そもそもこのBlack Lives Matterって何だろうとか。そういったことも話しながら政治的抗議のメッセージを含む、プロテストソング。しかも今年発表されたヒップホップの楽曲を中心にお届けしていきたいなと思っています。

(DJ YANATAKE)なんか他のジャンルとかでももちろんね、出てるんですけどね。我々はちょっとヒップホップを。最新曲という意味で。

(渡辺志保)しかもやっぱりその5月25日の事件を経て。皆さんやっぱりここがすごく、やっぱりこういうところが活発になる。あのすぐに曲としてリリースされるっていうのがすごくヒップホップ、R&B。まるっとくくるとブラックミュージックの非常にダイナミックなところかなという風にも思いますので。こういった曲がありますよとか、あとはその昨今の動きについてなどを話しながらお送りしたいと思います。で、先週もこういう話をたっぷりお届けしたわけなんですけれども。

渡辺志保とAKI IKEJIRI アトランタの人種差別抗議デモの状況を語る
アトランタを拠点に活動されているフォトグラファー、ジャーナリストのAKI IKEJIRIさんが2020年6月1日放送のblock.fm『INSIDE OUT』block.fm『INSIDE OUT』に出演。渡辺志保さん、DJ YANATAK...

(渡辺志保)たとえば先週末、大阪でもかなり大きなBlack Lives Matterの、人権を守る大きなデモが開かれたっていうのと、後は東京でもハチ公前で集会が行われて。Awichさんがね、ステートメントというかマイクを握って言葉を発しているシーンがTwitterなんかでも回ってきましたし。

(渡辺志保)今やパリ、ベルリン、ロンドンなどなど。ミネソタ州ミネアポリス市で起こった事件が発端なんですけれども、本当に世界中で大きな大きな運動というか、うねりというか。本当に歴史的な瞬間がね、各地で生まれているということで。本当にすごい瞬間を見てるなっていう感じがしますよね。

(DJ YANATAKE)宇多田ヒカルさんもツイートされてたんですけど。まあひょっとしたらね、これは今後世界史の教科書に載るかもしれないような出来事が今、起きてるじゃないかっていうことでね。やっぱりすごい局面を迎えていると思いますので。我々も日々ね、いろんな情勢を見守ってるという感じでございますね。

(渡辺志保)で、東京でも今週、6月14日の日曜日にマーチが行なわれるっていうことなので。ちょっと私もですね、そのコロナのあれとか怖いけど、できる限り足を運びたいなという風にも思っているところです。で、ちょっと今日はそんな感じで、まずまここでオープニングがてら、最初に1曲紹介したいと思うんですけれども。今、ずっとね後ろで「Ooh LA LA……」のインストがかかっていてたまらない気持ちになりますけれども。

先週もAKIさんとの話の中に出たキラー・マイクというアトランタ出身のMCがおります。で、キラー・マイクさんは元々、アトランタを騒がせていたアウトキャストたちが一緒になって作ってるダンジョンファミリーっていう集団がありますけども。そのダンジョンファミリーの中のラッパーとしてキャリアをスタートして。今はエル・Pという本当にいいおじさんっていう感じの雰囲気の方と一緒にラン・ザ・ジュエルズというラップユニットを組んでいる。で、先週の水曜日かな? ラン・ザ・ジュエルズのアルバム『RTJ4』。「Run The Jewels」の頭文字を取って『RTJ4』というアルバムをリリースしたんですけど。

それも、毎週金曜日が新譜のリリース日としてワールドワイドに認知されてると思うんですけど。「そんなの、待ってられねえよ!」っていうことで6月4日にリリース日を前倒しした。しかも、フリーで音源を配りますっていうことにしまして。私もラン・ザ・ジュエルズのメーリングリストに入ってるんですけど。ダウンロードリンクが送られてきて。かつ、「フリーでもダウンロードできますけど、こうした団体にドネーションもできますのでは、もし良かったらよろしくお願いします」ということで、今回起きた事件なんかを保護する団体へのドネーションもしながら、曲をダウンロードできるという、そんなリリース形態でした。

で、さっきちょうどニュースになってたんですけど。ビルボードの今週の集計が終わったそうで。このラン・ザ・ジュエルズ『RTJ4』は集計期間がわずか2日間だけだったにも関わらず、総合アルバムチャートの第10位に食い込むことが決定しているそうで。これはラン・ザ・ジュエルズにとっても史上最高のセールスの伸びということでした。

(DJ YANATAKE)フリーってどうカウントされるんだろうね?

(渡辺志保)それでね、私もちょっとちゃんとめちゃめちゃ調べてはいなくて。記事をサッと読んだだけなんだけども。フリーはカウントされてないんですって。カウントされてるのは、そのバンドルだけということなので。

(DJ YANATAKE)「バンドル」っていうのはマーチャンダイズ(グッズ)とセットで売っているデジタル・ダウンロードっていうことだけども。じゃあ、ひょっとしたら本当にね、全部普通にリリースしてたらもっとガーンと行っていたかも?

(渡辺志保)そうそう。そういう可能性もあるという。

(DJ YANATAKE)それぐらい注目されているってことだね。

(渡辺志保)そうなのよ。で、その中で……今、このバックでかかってる『Ooh LA LA』っていう曲もリードシングルとしてすでに発表されてる曲なんですけど。これ、みんな好きだと思いますけどギャングスターの『DWYCK』という曲のグレッグ・ナイスのバースのある一部分を抜いてフックにしてるっていうすごい曲だなっていう。で、DJプレミアがこすりを入れている曲なんですけども。

このミュージックビデオが本当にすごくて。ミュージックについて、私は他のラジオ番組でも話したんですけど。舞台がニューヨークの街をみんなが路上に出てパーティーしてるっていう。その設定がお金とか、あとは旧態依然のシステムとかがなくなって。その階級とかお金の価値がなくなった世界でみんながめっちゃ嬉しくてパーティーしてるっていう設定なんですよ。でもその時ってコロナウイルスで自粛期間に入る前だったし。ましてや、こんな非常に大きなプロテストの抗議のムーブメントが始まる前だったにも関わらず、ちょっと近い未来を予想しているような感じのミュージックビデオになってるから、本当にちょっと鳥肌が立っちゃうっていう感じなので。ぜひぜひ、まだ見てないっていうことは見ていただきたいっていうのと。

Run The Jewels『Ooh LA LA feat. Greg Nice & DJ Premier』

で、ちょっと本当にいつもながら前置きが長くて申し訳ないですけど。この『RTJ4』から今日、かけたいのは『JU$T』っていう曲があるんですね。で、これはあのファレル・ウィリアムス。そしてザック・デ・ラ・ロッチャっていうラッパー2人が参加していて。まあファレル・ウィリアムスなんて説明不要の大スターですけども。彼が参加してる曲だと。この曲が今、『RTJ4』からたぶん一番再生回数が伸びてる曲になるんですけど。どういう内容の曲かと言いますと、「アメリカのドル札に書かれているのはみんな奴隷所有者(Slave Master)だ」っていうすごい内容のフックなんですよ。

で、ファレル・ウィリアムス。彼もやっぱり『Happy』とかのイメージとかがすごい強いと思うし、ダフト・パンクと一緒にやっていたりとか。そういったイメージが一般の人にとっては非常に強いと思うんですけれども。この『JU$T』の中ではそういう「Slave Masterだ」っていうことを歌っていたりとか。「(合衆国憲法修正)第13条のせいで俺たちは今、こんなに苦しんでいる」っていうね、そういったリリックもありまして。

それで、またここで話すと長くなっちゃうからちょっと今は割愛しますけど。エイヴァ・デュヴァーネイの『13th』というドキュメンタリーが今、YouTubeでも無料で公開されてるので、ぜひぜひ見ていただきたいんですが。

なので、いつもよりも踏み込んだことをファレルがラップしているんですよ。で、たぶんこれはファレルの今までのキャリアを振り返ってみても非常に珍しいことで。なので、ファレルにもそういうことをさせちゃうラン・ザ・ジュエルズはすごいなっていう風にも思いましたし。しかも、この時期に今の情勢を予言したかのようなこんな曲をぶつけてくるラン・ザ・ジュエルズってやっぱりすごいなって思った次第です。

(DJ YANATAKE)そうね。あと、このザックはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのボーカリストなんで。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンも元々ね、結構そういうことを歌っていた人たちなんで。

(渡辺志保)まあ、もうバンド名が……っていうことだからね。

(DJ YANATAKE)ジャケットからね、ファーストとか。それがここに起用されるのは結構胸アツだなという感じです。

(渡辺志保)以前もザックはRTJのアルバムに参加していて。かなり密な付き合いっていう感じなんですけど。あと、なんかこの特集じゃなければギャングスタ・ブーが参加した曲が1曲あるから、それをかけたい気持ちもあったんですけども。まあ、それは各自で聞いてくださいということで。なので、今日の1曲目をお届けしましょう。ラン・ザ・ジュエルズで『JU$T ft. Pharrell Williams and Zack de la Rocha』。

Run The Jewels『JU$T ft. Pharrell Williams and Zack de la Rocha』

(渡辺志保)今、お届けしましたのはラン・ザ・ジュエルズで『JU$T ft. Pharrell Williams and Zack de la Rocha』でした。これビートもね、ファレルが関わってるっていうことなんですけれども。ファレルのプロテストソングと言えば、何を隠そうケンドリック・ラマーの『Alright』もファレルがライティングとプロデュースをしているんですよね。なので、もしかしたらこの曲も今年のプロテストソングとして皆さんに愛されるというか、チャントっていうんですかね? シュプレヒコールみたいになるのかな?って思いました。

(DJ YANATAKE)でも、今日の特集をちょっとやろうかなと思った理由はいろんなところでね、今ヒップホップの番組もできたり、志保がTBSに行っていろいろかけてくれたりとか。結構歴史的に重要だった曲……ヒップホップの歴史を語る上でも。それはたくさん紹介される場面が日本でもね、結構あったんじゃないかなと。

DJ松永と渡辺志保 アメリカ・人種差別抗議デモとプロテストソングを語る
渡辺志保さんが2020年6月3日放送のTBSラジオ『ACTION』TBSラジオ『ACTION』に出演。DJ松永さんとジョージ・フロイドさんの死をきっかけに広がった人種差別抗議デモやプロテストソングとしてのブラックミュージックについて話してい...

(渡辺志保)高橋芳朗さんもね、紹介されていましたよね。

(DJ YANATAKE)パブリック・エナミーの『Fight The Power』とかさ、それこそケンドリック・ラマーの『Alright』とかも最近の曲ではあるけど。昔の曲とかいっぱいあったんだけど。やっぱり『INSIDE OUT』は最新ヒップホップ番組ですから。

(渡辺志保)新譜にこだわってお届けしたいということで。

(DJ YANATAKE)なので、事件以降、事件を経て出されたであろうヒップホップの曲、リストアップしただけでも20何曲とかあったよね。だから、それだけみんながねリリースしてるっていう状況もね、お伝えしたくて今日の特集にしてみました。

タイトルとURLをコピーしました