(PUNPEE)で、そんなそんな感じでファイルからPSGとかRAU DEFを出した後に2011年に独立というか、SUMMITを作るわけなんですけど。なんでファイルから抜けてようと思ったんですか?
(増田岳哉)なんかファイルレコード、もうめちゃくちゃ今も大好きで。当時もめちゃくちゃ楽しかったの。というか、ファイルレコードの中のディレクターとしていろんな自分が好きな音楽を出させてもらうことがものすごい自分も幸せで。嬉しかったけど何か当時、自分が……当時、ファイルレコードって8人ぐらいいたんですけど、当時一番年下やったんですよ。
(PUNPEE)ああ、そうなんですか?
SUMMIT設立のきっかけ
(増田岳哉)当時33歳ぐらいやったんですけど。それで会議とかを全員でやるんですけど、自分が発言したこととかが全部採用になってたの。アイデアっていうか、企画とか。で、自分がいっぱいいろいろ製作とかしてやってたんだけど、なんか家に帰った時とかに「33っていう年齢で『自分が会社に貢献できているな』とか、『俺、やってるな』みたいな感じに思っているのってすごい危険やな」って思ったの。
「そんなはずはない」って思って。もっと、たとえばソニーとかアップルとか、まあ企業名は関係なしですごい……まあ、ファイルレコードとかもすごい先輩方たちだったけども。やっぱり優しいから。なんか「増田が思うようにやってみたら?」って言ってくれていたの。でもそれに俺、なんか天狗になりそうで怖かったのよ。
(PUNPEE)ああ、当時?
(増田岳哉)「俺、できる!」みたいな。「この状態でやっていって、たとえば40とかになってCDがもっと売れなくなったりとかして。その時に『悪いけど辞めてくれるか』ってなった時に俺、何かできるかな?」って思った時に、「もっと野原に、荒野に解き放たれた方がいいんじゃないのかな?」と思ったの。
(PUNPEE)なるほどっすね。
(増田岳哉)そう。だから「ファイルレコードを辞めたい」なんて全く思ってなかったの。
(PUNPEE)それまで?
(増田岳哉)「それまで」っていうか、今も思ってないというか。極端な言い方すると。何か、自分がマジで調子に乗りそうかなって思ったの。「俺ができてることって何なんやろうな?」みたいな。すごい自分を疑う時期が急に来て。それが金曜日やってんけど。仕事を終わって帰ってきて。それで「ああ、もう辞めよう」って思って。月曜日に社長に言って。金曜日にはじめてその自分に気がついて。「なんか俺、こんな感じでやって大丈夫かな? 俺、なんか回せてるみたいな感じになってないかな?」って。
(PUNPEE)ああ、自分の中で?
(増田岳哉)自分がいい企画を出したりとかすることに反論がない状態とかで、ちょっと嬉しくなってる感じとか、結構キモいなとか思って。で、月曜日に定例会議があるねんけど。なんか定例会議が終わった後に佐藤さんっていう社長に呼び出されて。「なんか増田、お前、今日の会議で変だったな。いつも、思ったら絶対に『こういう風にした方がいい』とか言うのに。お前、なんかあるのか?」って言われて。「いや、実はもう辞めようと思っていて」っていう。
(PUNPEE)それ、なんかあれっすね。風邪を引いて具合悪くなった人って職場で調子悪そうに見えるじゃないですか。「お前、なんか具合が悪そうだぞ?」みたいな。それぐらいの感じだったんですかね?
(増田岳哉)もう会議に参加する意志がないっていうのがバレたのかな? だから、その佐藤さんが全体の会議が終わったった後、俺だけ呼び出して。「お前、なんか今日の会議に全然身が入ってなかったけど、何かあるの?」って言われた時に「いや、すぐに言うつもりはなかったんですけど、実は先週末に帰った時に、『もう辞めようかな?』って思ったんですよね」って言って。
(PUNPEE)へー。そこで言ったんですね。
(増田岳哉)そう。もう言ったの。で、ファイルの社長の佐藤さんが「お前が見つけてきたやつ、他に誰が担当できるんだ?」みたいな感じで言ってくれて。「じゃあ僕から『僕がファイルレコードを辞めるけど、一緒に仕事してもらってもいいか、そういうのを考えてもらえるかな?』って聞いていいですか?」って言ったら「全然いいよ」って言ってくれたから、俺はその日のうちにもうPUNPEEにも電話したの。
(PUNPEE)という経緯。今だから聞くっすけど、展望としてSUMMITから出た最初の作品って、全部品番を言われたらわかります?
(増田岳哉)いや、無理やで(笑)。
(PUNPEE)フフフ、ああ、それはわかんない?(笑)。
(増田岳哉)スマン……。
(PUNPEE)今、何番ですか?
(増田岳哉)今、140に行ったね。Pさんの今度出る『Sofa Kingdom』が140。でも、CD、音楽作品で140あるんじゃなくて、Tシャツとかにも全部付けてたんで。
(PUNPEE)パーカーにはつけてないですよね?
SUMMIT作品の品番
(増田岳哉)当時はパーカーにもつけていた。今はもうつけていないけど。それもまあ、一応自分なりに……もう今は崩れてしまったんですけども、あって。UKのファクトリーっていう、映画『24アワー・パーティー・ピープル』の。そのファクトリーは音楽作品以外にも全部品番を入れていて。そういうのっていいなと思っていたの。全部、やっぱり表現やから。で、ファクトリーのその主人公のA&Rの人、いるやん? ディレクターの。で、その人が亡くなった時の棺が最後の品番なんですよ。
(PUNPEE)ああー。じゃあ、それもやるんですか?
(増田岳哉)まあその時に……レンくんとかがつけてくれないとダメなんやけども。
(PUNPEE)たしかに。ZAIちゃんには品番はついてないですか?(笑)。
(増田岳哉)フフフ、まあ、自分がかかるものすべて……だから俺、アーカイブ癖もすごいじゃないですか。そういうのがすごい好きなんで。自分がやってきたこととか自分の汚いところとか、自分をいいところも悪いも含めて、自分がちゃんと知りたいんですよ。そういうのもあって、自分がかかわる音楽以外のグッズとかも品番をつけていたのね。
(PUNPEE)なるほど。
Dj Hi’Spec & J.T.F from SIMI LAB『F.T.B』
(CM明け)
(PUNPEE)でも、俺の時には近くにダイエーがあったんで。セービングコーラっていうのがあって。
(増田岳哉)あった!
元ダイエーのセービングコーラ生きとったんかワレ!(輸入元が丸紅になり流通が変わってた) https://t.co/73DBy7nwpc pic.twitter.com/CqdGdlXFsz
— アドキチ (@adokichi) December 2, 2017
(PUNPEE)ダイエーがたぶん自社で出しているやつ。それが、たしか40円だったんですよ。で、それに針を刺したりしませんでした?
(増田岳哉)あ、いや。俺はそんなスケーターみたいなかっこいいことはやってなかったわ。スケーターの人とかね、下から飲んだりとかあるけど。
(PUNPEE)ここに安全ピンで針を刺して、こうやって振るとここからブワーッて出てくるんですよ。
(増田岳哉)こんな固いもんに穴って開くもんなの?
(PUNPEE)開くんですよ。板橋ではそれ、やってました。セービングコーラとセービングノートで結構みんなあれしていた気がする。安いっつって。
(増田岳哉)うちもね、最寄りのスーパーはダイエーやったの。だからダイエーで買ったCDラック、いまだに使っているもん、俺。
(PUNPEE)セービングコーラ、なかったっすか?
(増田岳哉)あった! いや、本当に40円ぐらいやったね。
(PUNPEE)40円。