モーリー・ロバートソン トランプ政権の北朝鮮大量破壊兵器「凍結」発言を語る

モーリー・ロバートソン トランプ政権の北朝鮮大量破壊兵器「凍結」発言を語る 水曜日のニュース・ロバートソン

モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中でトランプ政権の北朝鮮担当特別代表のスティーブ・ビーガン氏が語ったとされる「北朝鮮の大量破壊兵器完全凍結」発言の意味について話していました。

(モーリー)今日紹介するのは2017年に登場した比較的新しい新興のWEBメディア、アクシオス(AXIOS)が放ったツイートです。これまでもトランプ政権に関連するスクープを連発しているアクシオスなんですが、そこが7月2日にこういうツイートをしました。アクシオス、この人材派遣みたいな怪しげなロゴを見て? よくわかんないよね。来年潰れるんじゃないかとか、横領してるんじゃないかとか。

(プチ鹿島)言いたいことを言ってますね(笑)。

(モーリー)ごめんね。で、いままで俺はね、アクシオスは引用してこなかったの。というのは、ポリティコが自分のアメリカのネットメディアのギリギリなんですよ。ハフィントンポストはまあまあOK。バズフィードもまあまあOK。ポリティコ……うーん? アクシオス、ちょっとやめておこう。盛られてたら嫌だなっていう。飛ばしを疑っている、そんな私なのに今回は認めざるを得なかったスクープをしました。英語で先に読んでみましょう。

(モーリー)ビーガンという人がこういう風に語ったということなんですが。その後のカッコ部分がやたらと長い。「アクシオスはオフレコに同意したわけではないので、これをバラす」っていう風に書いてありますね。日本語訳を見ておきましょう。ビーガンさんという北朝鮮問題担当の代表が言うには「『私たちが模索しているのは北朝鮮の大量破壊兵器(WMD)の完全な凍結だ』と彼は記者団について語った(アクシオスは飛行機に乗っていなかったので政府側との記録協定・オフレコ協定を結んでいません)」という。

つまり、本当はたぶんニューヨーク・タイムズあたりの記者にこの北朝鮮担当特別代表になったビーガンさんがオフレコを条件に語ったということなんですね。で、どういう背景なのか?っていうのを簡単に説明しますと、板門店で6月30日に行われた米朝首脳会談。いきなりやったやつ。向こう側にトランプさんが渡ったやつ。ツイッターがきっかけでの会談と言われています。で、その会談の後でアメリカに戻る飛行機。大統領機と国務長官機があるわけ。トランプさんの飛行機とポンペオさんの飛行機は別。

そのポンペオ側にビーガンさんが乗っていたんだけど、そこで記者と懇親会みたいなことを飛行機の中でやったわけですよ。そこで「これは書かないでね」っていうお断りで記者も「書きません」っていうことでしゃべったのが、2018年8月に北朝鮮担当の特別代表になったスティーブ・ビーガンさん。その中で、「核兵器を含む大量破壊兵器の完全な『凍結』を求める」っていう話だったのね。で、「その見返りに人道支援ぐらいだったらいいのかな……?」みたいな。

(プチ鹿島)うんうん。ということをオフレコで記者に話した。

(モーリー)で、そのオフレコは普通、リークしちゃいけないんですよ。ところがそれを誰かオフレコを聞いた人が「これは由々しきことだ」としてアクシオスにネタを渡した。

(プチ鹿島)「うちでは書けないから、お前んところでどう?」って。

(モーリー)それを堂々とアクシオスが断り書きをして。「うちはそのオフレコ協定は結んでませんから」って。じゃあ、それをリークしたのは誰なんだ?っていうことにもなるし、このビーガンさんの発言というのは実は共和党政権としてはかなり異例の発言なんですよね。2月末にベトナムのハノイで行われた2回目の米朝首脳会談ではアメリカ側が核兵器の”完全廃棄”を一気に求めるビッグディール(大きな取引)を主張して、金正恩は「そんなのは飲めない」ということで物別れになったわけですよね。

「完全廃棄」から「凍結」へ変化

(プチ鹿島)それに対して今回、トランプさんが即興的に板門店に渡って仲良くした。握手をした。それで「お前と俺と」って言ったのかもしれませんけども(笑)。

(プチ鹿島)ああ、中日的な(笑)。「俺とお前の板門店」。

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(モーリー)「俺とお前の板門店」って言ったわけですよ(笑)。その結果、なんか譲歩をしちゃってんのね。「凍結」っていうキーワードは実は共和党政権ではタブー中のタブーで。90年代に当時の民主党のクリントン大統領が寧辺核施設の問題で軽水炉を作ってあげるみたいなことをやったんですよ。「KEDO」とかって言って。それを「これは事実上、北朝鮮の核開発を認めていることでただの『凍結』じゃないか!」って共和党は当時のクリントン政権を猛攻撃したの。その自分たちが攻撃していたことをいまやトランプさんが軽々と、その一線を超えてしまっているわけですよ。

で、もし凍結になった場合、どういう風にゲーム・チェンジ、ルールが変わってしまうのか?っていうことなんですけども。まずひとつは北朝鮮が求めている朝鮮戦争の終結。それが現実味を帯びてきます。実現性が高まる。そうすると、これはつまり北朝鮮の体制がなにがあっても保証される。戦争はないのだから、アメリカは北朝鮮を攻撃する理由がない。北朝鮮もアメリカに向けたICBMは開発しない。アメリカに対しては核は用いない。だけど核は黙って持っていて、いくつ持っているのかは言わない。

「中距離ミサイル、日本も射程に入るやつ。それは別にね、議論の外でいいんじゃない?」っていう風にトランプさんは暗に言っているわけですよ。で、もうひとつは中国やロシアは朝鮮半島および東アジアから米軍のプレゼンス(存在感)が減ってほしいわけですよね。そこにトランプさんが自分から入っていってる部分がある。もともと、日本にG20に来る直前に側近にリークした言葉っていうのが「ああ、日米安保ウザい。破棄したい!」って言ったわけですよ。

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(プチ鹿島)そうそう。

(モーリー)その後で今度は「米韓同盟、ウザい。破棄したい! なんでお金を払うの? 北と南で勝手に当事者同士でやってよ! 核は凍結してるからさ。俺たちには関係ねえよ!」ってトランプさんが一歩引いてしまうと、その隙間、空白に中国が「学級委員です。民主主義の、学級委員です。北と南、仲良く話し合いをさせましょうね。みんなで戦争をやめましょうね」と言って北を追認して後ろ盾になり、堂々とみんなで経済支援。北はどんどんと増長し、いつかは南を飲み込むことを夢見はじめる。日本はその風下にあって、明白に北朝鮮の核の風下にさらされることになるわけですよ。

日本が北朝鮮の核の風下に

凍結だけど、何十発かは持っているんだよ。しかも中距離弾道弾にもしかしたらその核を小型化してマウントできるかもしれないじゃないですか。という日本のそのセンシティブな部分をトランプさんは一切、踏み越えてしまったわけです。それがトランプさんの考える荒っぽいアメリカンな、クライスラー社のようなビッグディールになっちゃうと、ハシゴを外されるのは誰なんだ?っていう話なんですよね。これをみなさん、個々人でお考えいただきたいんですけども。

たぶんこれは間接的になんですけども、じわじわと日本の「えっ、自分で自分の身は守らなくてはいけない。しかもすぐそこに核を保有したままの核保有国が誕生した。ということは、改憲かな?」っていう人もいれば、逆に「いやいや、アメリカ軍が撤退をして存在感が薄まることで戦争をする理由がなくなるじゃないか。日本の沖縄にアメリカの海兵隊とか軍がいなくなれば、中国だって脅威を感じなくなるんだよ」っていう人たちもいて。この2つの意見が日本を両極端へと引っ張っていくような、そんなトレンドを感じている今日このごろです。

(プチ鹿島)あれだけ炉端焼きを食わせたのに? もうそんなことが突きつけられるわけですか?

(モーリー)そうですね。「ついでにみかじめ料で1兆円出せ」って言われるかもしれない。「台湾は2400億円出した。日本はどうなんだ、シンゾー!」って言われるかもしれないですね。

<書き起こしおわり>

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