プチ鹿島 モーリー・ロバートソン『挑発的ニッポン革命論』を語る

プチ鹿島 モーリー・ロバートソン『挑発的ニッポン革命論』を語る YBSキックス

プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中でモーリー・ロバートソンさんの著書『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』を紹介していました。

(プチ鹿島)本日は1冊の本をご紹介いたします。こちらです。『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』。モーリー・ロバートソン。まあモーリーさん、最近テレビで見ない日はないっていうぐらい売れていますよね。で、僕は2、3ヶ月に1回、産経新聞で書評をやらせていただいているんですけども。今回はこの本を紹介しようと思って日曜日に改めて再読したんですね。で、『キックス』では最初にお話をしようと思うんですけども、モーリーさんっていうのはそもそもどういう人か?って言いますと、1963年生まれ。ニューヨーク出身。お父さんがスコットランド系アメリカ人のお医者さんなんです。

(塩澤未佳子)うん。

(プチ鹿島)で、お母さんが日本人のジャーナリストなんですね。で、広島に住んでいたということなんです。で、日米を行き来しながら、日本とアメリカのどちらの教育も受けて育つ。すごいのは東京大学とハーバード大学に現役合格。

(塩澤未佳子)どんな頭の良さなんだろう(笑)。

(プチ鹿島)もう一周してアホなんじゃないか?っていうぐらいの。アハハハハッ! で、国際ジャーナリスト。ミュージシャンでもあるということなんですよね。そんなモーリーさんと出会ったのが……もちろん、存在は知っていましたよ。だけど、出会ったのは3年前だったんですよね。ちょうど2014年。スカパー!の海外ニュースだけを扱う番組『ニュースザップ』っていうのがあって。そこで毎週、もしくは毎月。この3年間、6月までずっと会っていたんですよ。

(塩澤未佳子)ええ。

ニュース番組で3年間共演

(プチ鹿島)そこで、この3年間といったらまた世界は激動だったでしょう。ISとかオバマ政権の後半であったりとか、ヨーロッパでもテロが起きたり、移民排斥とか。あと、極右が出てきたりとかね。あと、EUがどうしたとか。そして去年、トランプですよ。だからこの3年間ってさらに激動だったんですけど、そこで僕はモーリーさんとお会いしていろんな……まあ、スカパー!ですから、ひとつのニュースに関しても地上波と違って3分から10分、たっぷりと話せるんですよ。だから逆に言えば、知識がないと持たないんです。で、僕は、やっぱり視聴者側として、あらゆる……たとえばISの中東地域の国々の関係ってなかなかわからないじゃないですか。そういうのを聞くと、すごくスラスラとわかりやすく。時にはウィットやユーモアを入れて解説してくれて。で、僕は「それってこういうことですか?」って、まああたかも時事漫才をやっているような心地よさもあったし、評判もよかったんですよ。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)で、この人はすげえなと。しゃべりだしたら止まらないわけですよ。どんな国もスラスラと答えられる。面白いもんで、いまでこそ地上波でさ、すごいいろんな番組に出ているでしょう? やっぱりモーリーさんを見ると、別にここ1、2年で急に変わったわけじゃないんですよ。だから僕は3年前の時点で……ということはもう10年前の時点からそれぐらいの埋蔵量はあったわけですよね。

(塩澤未佳子)うんうん。

(プチ鹿島)で、それがスカパー!の番組、たぶんどなたかが見たんでしょう。で、評判になって。で、『ユアタイム』っていう地上波の番組に引っ張られて。で、『ユアタイム』でコメントをしていたら、またそれを見て、「ああ、こんな人がいるんだ」って。なんかどんどんどんどん……誰が最初に「この人、面白いよ」とか「この人はすごいよ」っていうスタンプというかね、太鼓判を押す。そうすると人って安心するじゃないですか。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)本当は知っているんですよ。最初からモーリーさんのことを。「あの人、すげえな」って。だけど、じゃあ誰か、最初に安心安全の人が使ってくれないかな?っていうのがあって。そうするとまた安心して、どんどんどんどん使っていくっていう。いまだってもうクイズ番組に出ていますからね。

(塩澤未佳子)ええ、ええ(笑)。

(プチ鹿島)だからまあ、そういう売れ方としても面白いんだけど。やっぱりでも、そういうタレント性の話とは別に、やっぱり国際ネタのニュースを聞くと、面白かったわけですよね。だからその3年間のことを、『プレイボーイ』という雑誌で連載コラムを持っていたんで、それをまとめたものなんで。僕が3年間、モーリーさんと一緒にいて「ああ、すごく面白いな」と思っていたのがある意味一冊にまとまっている本でもあるんです。

(塩澤未佳子)うんうん。

(プチ鹿島)ですから最初の章はね、「トランプ旋風とポピュリズム」っていう。でも、トランプさんを見るということは、結局アメリカを見るっていうことなんですよね。で、「トランプのネタ元は誰なのか?」ということで5人、挙げているんです。

(塩澤未佳子)ほう。

ドナルド・トランプの5人のネタ元

(プチ鹿島)で、わかりやすいのはこの中で僕もお話しましたけど、WWEのビンス・マクマホンのCEO。あれはもともとトランプさんの友達なんですよ。で、プロレスのリングに上ったりなんかして。で、相手を罵ったり、不適切なことを言って相手が乗っかってきたらそれをひっくり返す言説とかはビンスのやり方そのものなんです。だからノウハウをやっぱりビンスから学んだんじゃねえか? みたいな。で、モーリーさんとも盛り上がったんですけども。

プチ鹿島 ドナルド・トランプがWWEプロレスで学んだことを語る
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(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)でももちろんそれ以外にモーリーさんはたとえばロイ・コーンっていうマフィア弁護士とか、ジョージ・ウォレスっていう人種隔離を訴えた南部戦略の父。ウォーリッド・ファレス、反イスラムのイデオローグ。ロジャー・ストーン、選挙を茶番化する男。だからそういう人がずーっと、トランプさんが出てくる素地を作っているというか。だからある意味、トランプ大統領が誕生した……だって、思い出してみてください。こういう言い方は嫌ですけど、トランプさんが出てきた時って泡沫候補でしたよ。泡沫候補っていう言い方は本当に失礼ですから、まあ「インディーズ系」だったですよね。

(塩澤未佳子)そうですよね。

(プチ鹿島)だけど、あれよあれよという間に逃げ切っちゃったわけですよね。でも、それって単なる偶然じゃなくて、むしろ白人の人に根拠のない優越感を抱くように教え込んだ人とかって、トランプ前からいるわけですよ。たとえば、「白人たちに扇動に乗ることの快感を刷り込んだトランプ」。あと、「トランプは適度な陰謀論をスパイスとしてまぶしながら、それを刺激してキリスト教右派の人々をひきつけたわけです」と。だから、人間ってたとえばある脅威を設定されて、それを焚き付けたれた時に一気に燃え上がったりとか。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)あと、えてしてすっきりしたわかりやすい「正義」という物語の中に逃げ込みたい。そうでしょう?

(塩澤未佳子)それ、ありますねー。

(プチ鹿島)で、それがどこか多様化するというアメリカ社会の中で白人たちはどんどんどんどん、表では言わなかったけど、なにかストレスを……別にそれを「ストレス」と言う方がおかしいんだけど、でもそれを突いて出てきたのが、「いや、俺たち白人は、なあ?」みたいな。そこを焚き付けてきたのがトランプということで。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)つまり、やっぱりこの本を読むとネタ元はいろんなところに転がっていたという。その源流を知れば知るほど、トランプというのはアメリカ社会の必然の産物だとわかるわけですよね。で、モーリーさんはこうも書いています。「アメリカ最大の敵はイスラムでも移民でもなく、内に潜んだ建国以来の狂気なのかもしれません」と。だからそれを誰かが、そのふくらんだ風船をちょいちょい刺激してやるという。その結晶がトランプだったんでしょうね。

(塩澤未佳子)はー。

(プチ鹿島)でね、これってじゃあ他人事なの?って思うと、なんか日本の将来にもすごくダブっているような感じがあるんですよね。たとえば、見たいものしか見なかったりとか、自分がいつも正しい側にいると信じている。これってやっぱりネットのデメリットのところじゃないですか。白か黒かで相手の意見を聞かずにシャッターを下ろして、なにかぶつけ合っているっていう。そういう隙に、たとえばポピュリズムとかヘイトみたいなものは忍び込んでくるわけですよね。これってもう、アメリカだけのことじゃないなってゾッとするわけです。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)で、『挑発的ニッポン革命論』って書いてありますけど、よく読むと、やっぱりモーリーさんって帯にも書いてありますけど、「右からでも左からでもなく、世界を立体視する知性を身に付けよ」って。つまり、凝り固まったいろんな「側」の人たちがいるけど、モーリーさんはそれを俯瞰して、「いやいや、もっとアメリカの現実を見てください。もっとシビアなリアルな現実を見ると、お互い自分の好きな場所に留まっているだけだと何も踏み出せませんよ」っていう、そういう宣教師的な役割もしているわけですよ。この本を読むと。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)なんかこう、すごくこんがらがった糸を丁寧に丁寧にほぐして、「もっと現実を見ましょうよ」っていうのを右にも左にも問いているわけですよ。だから、「挑発的」とは言っていますけど、実はすごく丁寧なんです。だから僕、この本を読んで改めて思ったのは、モーリーさんのこういう親切さというか柔らかさというか丁寧さというか。自分はめちゃめちゃ頭がいいし、知識を持っているけど、「だからお前、こうだよ。俺の言うことは信用出来ないのか?」っていう言い方はついぞされたこと、ないんですよ。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)「お前、そんなことも知らないの?」みたいな態度も取られたことないんです。「うん、じゃあ教えてあげるね」っていう、そういう風に柔らかく下から来るんです。だからすごく心地よかった。だからよく「時事漫才」みたいなことを言われましたけど、やっている僕がいつまでも話せるなっていう。そういう柔らかい人なんですよね。だからこのコラムを読んで、改めて思いました。

(塩澤未佳子)へー!

(プチ鹿島)だからすごく、どうしても人間って自分がいまいる、自分が見たいものしか見ない、信じたいものしか信じない。ちょうどモーリーさんと去年のいまごろ、フェイクニュースっていうのが出始めた時に、そういう話ですごく盛り上がりましたよね。で、アメリカ大統領選ではトランプ支持者とヒラリー支持者がお互いに相手のネガティブな情報が出てきたら、「そら見ろ! ざまあ見ろ!」っていうんでそれをシェアする。それって実は嘘なんですよ。嘘なんだけど、シェアすればするほど、それがどんどんどんどん勢いが増して。まるでノーガードの殴り合いのようになって。それで最後に立っていたのがトランプだった、みたいな。そりゃあそうでしょう。トランプ、タフだもんね。トランプ支持者ってね。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)だからこれ、フェイクニュースが真実になっちゃって。で、なんだったらフェイクニュースとか過激な言論を送り続けていたブライトバードの人、スティーブン・バノンらがホワイトハウスに入っちゃったりね。

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(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)だから嘘から出た真みたいな。じゃあ、その「嘘から」ってなに?っていうのをさんざん1年前に解説してくれたわけですよ。だから、これはただ「アメリカを知る」っていう本でもあるんですけども、いまの時代の、特に僕らみたいな絶対に自分のことは正しいと思うし、自分は間違っていないとつい思ってしまうんだけど、反対側はどう思っているのか? 現実がどう思っているのか? さあ、もうひとつの考えはない?っていう。そういうのをすごく優しく丁寧に教えてくれているんです。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)だから最初の方にこんなことを書いてあるんですよ。「保守的、排他的になるのではなく、数%の不利益やカオスを『多様性』として受け止めて許容する」っていう。僕らはほら、やっぱりちょっとでもノイズが入るような自分と違う意見になるともう「ふざけるな!」みたいになっちゃうけど……「そういうのは最初からある。数%の不利益やカオスすら、多様性として受け止めて許容する。それ(不利益)以上の利益を生み出す社会にしていけばいいじゃないか」っていうことを言っているわけです。ある種の潔癖症というのはよくないよと言っているわけですよね。「時計の針を戻すことはできない以上、議論する能力、物事を検証する能力を上げて行き、排他性よりも多様性を推し進めるしかないんです」と。ここでも、多様性ですね。

(塩澤未佳子)そうですね。

(プチ鹿島)だから「昔はよかった」とかそういうことを言っている場合じゃなくて現実を……だから、本当にリアリストなんですよ。すごくモーリーさんだなって思って。すごく読みやすい本ですし、刺激のある本でもあります。でも、「挑発的」って言っていますけど、すごく丁寧に説明してくれています。よかったら読んでみてください。モーリー・ロバートソン著書『挑発的ニッポン革命論』という。この間、ありがたいことに出版記念イベントにゲストに呼んでいただいて。また2時間半ぐらいしゃべって来ました。

(塩澤未佳子)しゃべりました?

(プチ鹿島)その時の一部がそろそろWEBでも配信されますんで。そちらも楽しみにしていてください。

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<書き起こしおわり>

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