モーリー・ロバートソンと鈴木一人 2018年・中間選挙後のアメリカを語る

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モーリー・ロバートソンさんと鈴木一人さんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で2018年アメリカ中間選挙についてトーク。中間選挙の結果から見えてきた今後のアメリカについて話していました。

トランプ大統領とアメリカ議会

(プチ鹿島)もうね、さっそくお話をおうかがいしていきましょう。率直にこの本日の結果、もしくは状況。どうご覧になってますか?

(鈴木一人)概ね予想どおりいう感じで。これまで、2016年の大統領選挙がやっぱり予想を裏切ってトランプが勝ったので。かなりメディアは慎重に評価をしてましたけれども、概ね「上院は共和党が勝つ。下院は民主党が取る」っていうのは想定通りで。やや、州知事選はちょっとユニークと言うか。「こんな風になったんだな」っていう感じはしますけども。まあ、そもそも上院はもう最初から、共和党はこの(非改選の)42議席が変わってないので。なので、8議席をを守ればいいみたいな感じでしたね。

(モーリー)だから共和党は戦いやすかったんですね。で、むしろ下院の方がどこまで食い込まれるのを止めるか?っていうのはありましたね。

(鈴木一人)で、下院も「民主党は大勝した」っていう感じはしないですね。勝つには勝ったけど、それでも結構重要な選挙区というか、注目された選挙区は落ちているので。そういう意味では、共和党はなんだかんだ言っても粘った……言い方を変えると、トランプ批判みたいなものが日本だとすごい多いので。やっぱり「アメリカでもトランプ批判が強いだろう」みたいな、そんなニュアンスが強かったんですけど……実際のところはそうでもないっていうのが今回の選挙でわかったのかなっていう。

(モーリー)こちらにいろいろと結果の地図が出ておりまして。速報地図が出ているんですけども。左側が上院、右側が下院ですね。そして、いま鈴木さんがおっしゃったように、上院は過半数の51を取ればWIN。下院は218を取ればWIN。まだ集計途中のもあるんだけど、いまこの時点で上院は共和党、下院は民主党という風に確定しているわけですよ。

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真ん中は真っ赤、沿岸部は青い

(プチ鹿島)うん。

(モーリー)で、やっぱり面白いのはですね、下院の地図の真ん中が真っ赤になっていますよね? 真っ赤になっているのにそれでも民主党が勝っている理由、それは実は面積ではなく人口比だからなんですよね。要は人口がまばらな中西部、真ん中のこの州とか南部の州が非常にガチ保守に傾いていて、アメリカがいかにに分断されてるか。そして両側、西海岸のロサンゼルス、カリフォルニア、ワシントン州であるとか、あとは東海岸のニューヨーク。

(プチ鹿島)見事にそこは青いですね。

(モーリー)だからこのニュー・エコノミーに適応した両端とオールド・エコノミーのままあえいでいて、構造的にあと30年は豊かになれないであろうという真ん中の製造業地帯。ここの違い。いまのグローバル化する世界経済の恩恵を受けている人たちと恩恵を受けていない人っていう風に非常にぱっきりと分かるところがあると思います。

(鈴木一人)ただまあ、上院と下院をこうやって並べてみるとわかるんですけれども、中西部……たとえばニューメキシコっていうのは民主党が取っていますし。ミネソタとかウィスコンシン、ここはもともと「ブルーウォール」って言われているところで、ミネソタ、ウィスコンシンみたいなところはこれ、やっぱり民主党が……2016年の時にはトランプが勝ってるところですけども、ここをウィスコンシンなんかは取り返しているっていうところもあるので。

そういう点では、かならずしも……たしかに人口がまばらなところはガチ保守なんですけど、ガチ保守でも民主党が勝つところっていうのはあるんですよね。で、面白かったのはテキサスで、テキサスの上院選。ベト・オルークっていう民主党の若い人がテッド・クルーズっていうかなり共和党の中でも有力な……かつ、キリスト教保守派の。

(モーリー)ティーパーティーのナンバーワンだった人。トランプの前までは。

(鈴木一人)そうですね。ものすごいガチガチの保守派っていう人との対決で。で、テキサス、結果的にはテッド・クルーズが勝っているんですけど、ただテキサスはかなりオルークが追い上げて。もしかしたら、2020年の大統領選挙の候補になるんじゃないかっていうくらいの勢いがありまして。

(モーリー)ですよね。鈴木さん、僕はそれで悩んじゃったんですけども。もちろん、若々しい新たなオバマとしてベト・オルークをいまから応援したい気分もあるのね。でも、一応オバマさんは上院で勝った上で出てるんですよ。ここで負けた人が、いきなりロングショットでホールインワンのように大統領選を狙って、トランプの再選と戦った時に、どう?

(鈴木一人)まあ、ありはありだと思います。たしかにだから上院選で勝った方がもちろん有利になったと思いますし、いろんな実績を積むことができるので。ただまあ、トランプ自身、公職に1回も就いたことがない人が大統領になってますから。もういまや、なんでもありですよね。

(プチ鹿島)そうかそうか。過去のデータとかは(笑)。

(モーリー)トランプさんのあのわんぱくな、ちょっと暴力的なパワーを別の野獣のパワーで押し返す体力の持ち主っていう人なのかな? 最後の一騎打ちっていうのは。

(鈴木一人)そうですね。まあ最後の一騎打ちっていうか、結局はあのトランプのパワーをどういう風に民主党の力にできるのか?っていう時に、まだやっぱりそれを力にできる人というのは現れていない気がしますね。

(プチ鹿島)現れてきていないですか。

(モーリー)そのトランプのパワーについて、さらにお話をうかがいたいんですけども。アメリカのメディア、特にリベラル系のCNNやニューヨーク・タイムズとか。あとは左寄り、リベラル寄りのガーディアンみたいところの一貫した論調っていうのは、トランプさんの英語で言う「Nastiness」っていう……日本語ではなんて言うのかな? 意地悪、攻撃性の高さ、弱者をないがしろにする……。

(鈴木一人)いけずさっていう感じですかね。

(モーリー)本音語り。あの乱暴さが結局最後、選挙の戦術としては勝っちゃったっていうことを憂慮する論調が目立ちますね。

(鈴木一人)そうですね。やっぱりあのトランプの強みは結局、「自分たちの本音を言ってくれている」っていう、いままではポリティカリーコレクト。政治的に正しい表現というのをやらなきゃいけない。他の人の気持ちに配慮しなきゃいけない。みんなお互いに思いやっていかないといけないっていう、そういう社会の中で、「なんかもう、そういうの疲れた。そういうのって息苦しい。なんで俺はそんな他の人たち、黒人とかユダヤ人とかそういう人たちのことを慮って生きていかなきゃいけないんだ?」っていう。

(モーリー)「配慮しなきゃいけないんだ?」っていう。なにを言うにも、女性差別になっていないかどうかを気にして、男性たちは「今日はきれいな髪の毛だね」とかって言っちゃいけないんですよ。「#MeToo」が来るから、みたいな。そういう息苦しさを感じていた白人高齢者、そして製造業地帯、比較的低学歴とか。いくつかのプロフィールが重なる層があるんですけども。その人たちの不満を見事に代弁したわけですよね。トランプさんは。

(鈴木一人)まあだから彼らの心の叫びがトランプだったっていう。要するに、アメリカのNastinessっていうか、いけずさみたいなものがもう、それを堂々と、しかも大統領があのホワイトハウスの中から叫んでくれるというのはやっぱり、そういう人たちにとってみるとものすごく心地良いんですよね。

(モーリー)そしてその心地良さっていうのが、いわば人間の無意識対権限意識を、氷山の一角とか……その下の部分なんですよね。これがいわゆる合理性がない部分。そこにトランプさんは深くコネクトしちゃっているわけですよ。支持層に。だから彼がロックスターであればあるほど、はしたなければ……「はしたない」と「Nasty」は似ているね。「はしたナスティー」(笑)。そういう彼のパワーみたいなものを生で感じられるほど、実はトランプさんを「いい人だ」と感じる部分。ところが、いわゆる彼の被害者にあたる人たち。マイノリティーやムスリムとかヒスパニック、あるいは女性は「本当に嫌だ!」って。それそこ「Trump」から「Exit」する「Trexit」っていう言葉が出てきてるぐらいなんですけども。

(鈴木一人)ええ。

(モーリー)ただ、彼を「いいな!」って思っている人、集会に行って彼の演説を聞いた人は、実はトランプさんの温もりや優しさを感じてるんじゃないかと思うんですよね。

(鈴木一人)そうですね。「温もり」っていうか、「共感」ですよね。要するに「自分と同じことを考えてくれている、自分の気持ちがわかってくれる人」という意味での「Compassionate(情け深い、同情的な)」というか。

(モーリー)そうですよね。だから「Compassion」っていうのは相手と共感したり、慈悲深いっていう意味でもあるんですけども。彼に攻撃されてる人からするとたまったもんじゃなくって。あの全体主義ファシズムくらい怖いと思っている人もいるわけですよ。そしてそのトランプの乱暴な言動にある種、触発されるように、ユダヤ教のシナゴーグで乱射事件が起きたいとか。小包爆弾とか。テロですよね。そんなことが起きてるわけ。ところが、そういうことがあるにもかかわらず、彼のことを「Compassionate」だと思ってる人は、その全ての事実が脇に押しやられるっていう、この無意識のなせる技……。

(プチ鹿島)えっ、じゃあたとえば今回の選挙でトランプさんを支持する人はそれはそれで結束して。でもそうじゃない、「もういやだ!」っていう人……女性がたくさん当選したりとか。じゃあ、どっちが勝ってどっちが負けたんですか?

(鈴木一人)まあ、トータルで言うとたぶんトランプを支持していたり、トランプがいいと思っている人は全体の4割ぐらい。で、トランプが嫌だと思っている人も全体の4割ぐらいいて、真ん中にたぶん2割ぐらいの人たちがいて。この人たちが分かれることでこう、選挙結果というのが動いたわけですが、トータルで見ると下院っていうのはむしろ人口比なので、国民の雰囲気っていうものをよりよく反映するんですが。下院で民主党が勝ったということは、この2割の人たちがかなり民主党に動いた結果であろうという風には思います。

(モーリー)ただ、大統領選でまだまだいけますよね? そのぐらいなら詰めていける。

(鈴木一人)大統領選挙はまた選挙が特殊なので。「選挙人制度」という仕組みで、たくさん票を取っても州で勝てないと意味がないので。勝った州の数……州のそれぞれの選挙人の数(ポイント)で決まっていきますから。結局のところ、この間の2016年の大統領選挙では得票数でいくとヒラリーの方が勝っているわけですよね。でも、選挙人の数ではトランプが勝った。だから、そのどうやって勝つのか?っていうゲームはものすごく複雑になっていくんですが。そこを上手く戦略を立てれば、逆に言うとトランプに勝てるという風にもなるはずなんですね。

(プチ鹿島)じゃあTwitterで「とてつもなく素晴らしい日だ!」みたいにトランプさん、言ってましたけども。あれは強がりでもなんでもない?

共和党が上院を取る重要性

(鈴木一人)ただ、半分は当たりなんですよ。っていうのは、今回それでも重要だったのは共和党が上院の多数を維持するっていうことなんですね。アメリカは法律を通すとか予算を通す時は上院と下院の両方を通さなきゃいけないんですけど。最高裁判所の判事ですとか、あとは閣僚を指名するのは全部上院だけなんですね。あとは条約を通すとかも。なので、上院を取っているということは今後、とりわけ重要になってくるのは先日も最高裁のカバノー判事を指名したっていうのがあるんですが。最高裁の判事っていうのは終身制なので、今回ここで保守の判事を通しておくと、いまは5:4で保守の判事が多い。今後、それが6:3とかになったりすると……。

(モーリー)6:3になったらもうね、一世代アメリカの法律はどんどん真右に傾いていくっていうことですよね。そういうレガシーを残すことができるんですよ。

(プチ鹿島)そしたら、トランプの功績、すごいですね。

(モーリー)ということは、共和党の人たちは心の中ではトランプは最悪な人間だと思っていても、「こいつは使える。この勢いだったら共和党のレガシーが続く!」っていうんで、圧倒的に支持をする。ということで、党利党略から見て共和党支持者はたとえば80%以上は「トランプ、グッジョブ!」。で、反対にトランプが嫌だと思っている、たとえば「黒人」っていう層で見ると、たぶん9割ぐらいは反対票ですよね?

(鈴木一人)反対してるでしょうね。

(モーリー)でも、人口比では黒人の人口はそんなにいないわけ。そこが問題なんですよ。

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