モーリー・ロバートソンと鈴木一人 2018年・中間選挙後のアメリカを語る

モーリー・ロバートソンと鈴木一人 2018年・中間選挙後のアメリカを語る 水曜日のニュース・ロバートソン

(プチ鹿島)じゃあ、Twitterが……。

(森山みなみ)ここでTwitterで質問が来ているようです。「米国の選挙にも日本みたいに一票の格差問題とかあるんですか?」とのことです。

(鈴木一人)ないです。上院と下院で一票の格差があるのは当然となっていて。

(モーリー)それが憲法に組み込まれている。

(鈴木一人)むしろ、大事なのは州を代表する上院議会がいるということは、自分たちの州が大きくても小さくても同じくカウントされているっていうのはこれ、アメリカの建国の理念のもとにあるので。それは一票の格差があっても全然問題はない。まあ、下院の方は一票の格差があるのは問題なので、一票の格差がないように選挙区割りを毎回毎回、センサス(国勢調査)ごとにやるわけですけども、その時にみんなグイーッと自分の党利党略に合わせて。「いや、ちゃんと人口比にしなきゃいけないから!」とかって理屈をつけてめちゃくちゃな選挙区割りをやるので。そこは現職が勝つという、そういう仕組みになっちゃうんですね。

(モーリー)ということなんですけども、これからトランプ政権。要は、ねじれたわけです。そうすると、これから2年間、大統領選に向けるんですけども、大方のジャーナリストや専門家にだいたい通底した意見っていうのは、「トランプさんはこれから次なる選挙モードに入るだろう。だからトランプ政権の運用そのものが大統領選に勝つことが最終目標になって、いまから2年間は選挙のお祭りが始まっちゃうんだ。だからトランプさんの派手さも場合によってはより先鋭化する」っていう。このねじれによって謙虚になって……たとえばブッシュであれオバマであれ、ねじれた時にはだいたい謙虚になって歩み寄りをするんですが、むしろトランプさんはこれは絶妙なバランスが必要になるんですけど、民主党の下院のことを「自分の政治の邪魔をする、国益にかなわない悪いやつら」っていう扱いをして。上院と結託し、支持層の支持をより厚くするっていう……。

(プチ鹿島)だから今回の結果、また分かりやすい敵ができたっていう、そういうことですよね?

(モーリー)下院全体を敵にするんですよ。という、すごい技に打って出るんじゃないか?って言われているんですけども。どうでしょう?

トランプ大統領を弾劾できるのか?

(鈴木一人)そうなると思いますね。とりあえずこれからトランプ大統領は……まあトランプ大統領っていうのは常に敵を作るっていうのが彼の戦術なので。もう目の前に格好の敵がいて。いままでも上院でギリギリの過半数だったんですよね。なので、上院で物事を通さないというので民主党をただでさえ、少数なのに攻撃していたんですよね。で、今回はまあ民主党が下院で過半数を取っていますから、完全に要するに「こいつらオブストラクション、邪魔してるんだ」ということで攻撃をしまくって。で、こいつらのせいで自分の正しいことが実現しないから皆さん、かわいそうな結果になってますね。あんたらの生活が悪いのは俺のせいじゃない。あいつらのせいだ!」ってなるんですよ。

(モーリー)で、わざと悪政をやって、全部なすりつけることができるんですよ。で、それに対する唯一の切り札だと表面的に見えるのは、「じゃあ下院を取ったから”Inpeach(弾劾)”、行けるね!」って。まあ、弾劾の手続きをやろうと思ったら、もうこの時点ですぐにできます。ところが……。

(鈴木一人)ところが、弾劾の手続きっていうのにはルールがありまして。下院で発議して、上院で決着をしなきゃいけないんですね。で、上院は先ほど出たように共和党が多数を握っていますから、上院は絶対に弾劾をしないんですよ。

(モーリー)最後に裁判員としてみんなで投票する時に、トランプが無罪放免になっちゃう。

(鈴木一人)だから結局、「弾劾をするぞ、するぞ」って言って弾劾ムードを作り出すことはできますけど、弾劾をしようとしても結果的には弾劾という結果にはならない。

(モーリー)それがブーメランで逆に、大統領選の勝利のために使えるわけだ。民主党がいかに感じ悪い政党か?っていうことを国民にさらすことで。

(鈴木一人)「みんなの大統領である俺を民主党が攻撃している!」みたいな感じになりますし。かつて、ニクソン大統領が弾劾手続きをされた時。あれも実は下院が発議した時に、「このまま行ったらヤバい」っていうことでニクソンは自分で辞めているんですよね。弾劾の最後までは行っていないんです。で、クリントンの時もあれは下院が発議をしているんですが上院までは結局行かなかった。発議するだけではダメで、その間に捜査を……いま、モラー特別捜査官がやっていますけど。そのモラーさんのロシア疑惑の捜査で、本当にそれが弾劾に足る証拠があり、問題であるということが証明されないとその先には行けないので。

(モーリー)そうなんです。だから物証が出なかったから、結局伝聞じゃないか?っていうことになって、上院で否決をされてしまうと、クリントンの時にも弾劾をしてモニカ・ルインスキーに……最初はホワイトウォーターっていうお金のスキャンダルだったのが、いつしかモニカ・ルインスキーとの性的に不健全な関係というところ。そこで嘘をついた、偽証をしたということだけに焦点が絞られていったわけ。でも結局、そのブーメランでクリントンは再選されちゃったんですよ。だから、トランプもそれを狙えるから、民主党は自分たちがそれで1回勝ってるんで、みすみすそれをオウンゴールでトランプに自分から渡すことはないだろうという観測もあるんですね。

(プチ鹿島)ということは、トランプさんは2年後、再選の可能性の方がいまは高いということですか?

(鈴木一人)可能性は五分五分ぐらいだと思います。

(プチ鹿島)じゃあ民主党はどういう……この後の2年間で、何をすればいいんですか?

2020年、トランプ再選の可能性

(鈴木一人)まあ、難しいですよね。ひとつは、トランプはなんにしてもいま、メディアで自分の敵を作って嘘をついて、「フェイクニュースだ、フェイクニュースだ!」と言って自分を守るやり方を完全にこの2年間で身につけてしまっているので。それにどう対抗するのか?っていうのはなかなかいま、突破口が見いだせない。で、ひとつはトランプに対抗できるようなスターを作るということですね。まあベト・オルークというのはそういう可能性がある人物だとは思っていますけども。

(モーリー)ベト・オルークはね、負けた時のスピーチで支持者に向かって「君たちはみんな、ファッキン・グレートだ!」って言ったんですよ。Fワード。普通、大統領候補って使っちゃいけないけど、そこをやるっていうことである種示唆しているのは、「俺だってトランプと同じぐらい汚い戦いができるぜ!」っていうことなんですよね。

(鈴木一人)そうですね。だからそういうタイプの、なんていうか爽やか系。みんなに近い、庶民のヒーロー的なそういうベト・オルークか、もしくはバーニー・サンダースの生まれ変わりみたいな……いま、ニューヨークの下院の14区で勝ったオカシオ・コルテスっていう女性がいるんですけど。この人は移民で女性でサンダースみたいな民主社会主義者で。ということになって、こういうやや左のラジカルな人。でも、これはなかなかやっぱり保守を取り込むという時には……。

(モーリー)真ん中の州がねえ。

(鈴木一人)真ん中を取り込むのは難しいですね。

(プチ鹿島)じゃあ、たとえばトランプさんみたいに政治家としてのキャリアはないけど、誰でも知っている知名度のタレント的な要素がある人っていうのも……?

(鈴木一人)そこでいま話題になっているのがオプラ・ウィンフリーっていう人で。

(プチ鹿島)はいはい。司会者の。

(鈴木一人)今回、ジョージア州の州知事選の女性候補を支持したということで大統領選に出るんじゃないか?っていうような話題にはなっていますけども。

(プチ鹿島)はー。

(鈴木一人)まあ、この人が出れば相当なパワーになりますね。

(モーリー)オプラさんはメディアエンパイアー(メディア帝国)を一時代で作り上げた人で、相当の資産家でもあるんです。だから自分で大統領選に出ようと思ったら、富豪として自分で自分のキャンペーンをファンドすることができる立場にあるわけです。プラス、ドネーション(寄付)も来るから、彼女は金銭的には問題ないんですよ。知名度もあるし。ただ、実際に大統領選になると、非常にそのNastyな、戦いが下卑たものになってきた時に耐えられるかですよね。精神力が。

(プチ鹿島)どれぐらいのタフさがあるか?

(モーリー)そこまで汚れられるか?

(鈴木一人)トランプは「テフロン・ドン」と呼ばれていて。なにが来てもとにかく全然気にしないみたいな、そういう人なので。ただ問題は、トランプ対オプラっていうのはちょっともう本当にテレビVSテレビなんですよね。で、本当にアメリカ政治はこれでいいのか? みたいな問題も出てきちゃうんで。

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