モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で2020年のアメリカ大統領選挙についてトーク。トランプ大統領の再選を予想していました。
(プチ鹿島)なんかモーリーさん、大事な予告があるというか……。
(モーリー)選挙の結果を。
(プチ鹿島)選挙! 大丈夫ですか? いま、選挙の予告をする。
(モーリー)なんかコンプライアンスの問題になると思うんだよね。まあいいや、やっちゃえ! 今度の選挙はトランプが勝つ!
(プチ鹿島)トランプかい! その予告? じゃあ、日本の参院選とかは飛び越えて?
(モーリー)飛び越えて。日本もトランプに揺さぶられ続ける4 More Years.
(プチ鹿島)ちょっと待ってください。トランプ、最近またさらにひどいことを言っていますよ。でも、まだ勝つんですか?
(モーリー)ひどいでしょう? でも、ひどければひどいほど勝つというスパイラルにいま、入ってきている気がするのね。というのは、ひどければひどいほど……要はデマ、嘘とか憎しみを広めるのってネットとか、早いじゃないですか。あとはみんなが無意識に感じていた「やっぱりそうなのか」っていうことで偏見が助長されて浸透するのはとっても早い。だけど「そんな偏見はダメだよ」って子供の頃から教育して、そうじゃないところに持っていくには12年以上かかるんですよ。
(プチ鹿島)偏見……しかも差別でしょう?
(モーリー)そう。「偏見と差別はダメだよ」って子供の頃から言って、小学1年生から高校3年生まで12年間かけて育てるじゃないですか。ところが大学に入って「あれは全部嘘で、あの差別は本当だったんだって」って聞いただけで「やっぱり!」みたいにあっという間に崩れるんですよ。
(プチ鹿島)崩れちゃう人もいる。
(モーリー)多くの人は崩れる。で、私の中の真左のアメリカ人がそう言っているんですけども。
(プチ鹿島)24人のモーリーがいますからね。
24人のモーリー・ロバートソン
(モーリー)24人のいちばん左のモーリーが、「アメリカの1%が残りの99%が持つのと同じお金を持っているのはおかしいから、これを強制的に、みんなでお城によじ登って中にある金庫をバーンと開けて小判をバラまけ!」って言っている。それが自分の中の極左なのね。
(プチ鹿島)いちばん左の。その時、右側のモーリーはどういう風に?
(モーリー)右側のモーリーは「そういうことをやるとその暴動を鎮圧してもっと右側に戻るから、それはやっちゃいけないんだ」っていうのが僕の中のバランスなんですよ。
(プチ鹿島)いつもその中でゴニョゴニョやっているんですね。
(モーリー)ゴニョゴニョ葛藤して、いい加減嫌になってきている。
(プチ鹿島)で、その24人のモーリーが今回のトランプさんは……?
(モーリー)そのトランプさんに対して、誰が対立候補になるのか? そうすると、この前、オバマ政権で副大統領をしていた真ん中のバイデンさんがなんか蜂の巣にされたじゃないですか。
(プチ鹿島)民主党の中では真ん中にいる人。
(モーリー)いちばんまともな、共和党内にいるトランプさんのことが嫌な人でも投票することができる顔だったんですよ。でも、その人を自ら食いつぶしてどうする? で、結局残った人たちは何を言っているのかっていうと、残ったバーニー・サンダースさんなんかを中心とする若手の候補の人たちの主張は、たとえば共通して「メディケア・フォー・オール(Medicare For All)」という宣言をしているんですね。で、メディケアっていうのはいまはアメリカの高齢者に向けた医療保険制度なんですけども。言わば日本式の国民健康保険をやりましょうって言っているだけなの。
(プチ鹿島)はいはい。
(モーリー)だから日本からすると、別にそれは大したことじゃないじゃんってなるんですけど、アメリカだとそれは民間の保険会社の雇用をどんどんとばっさり切って、失業を引き起こすことになるし。加えて、そのメディケア・フォー・オール、アメリカ式国民健康保険をたとえば今度の選挙が終わってサンダースさんやサンダースさんよりも左の人が大統領になったとしますよね? 増税。だってどこに財源があるの? 増税しかないじゃん。
メディケア・フォー・オール=増税
そしていまのアメリカのトランプに投票をした人のほとんど……大金持ちはもちろん献金をして投票をしてるよ。けど、貧しい人たちが「これ以上貧しくなりたくないから減税、お願いします。旦那!」って。もう99:1ぐらいの割合で。1%の富裕層には99%の減税、99%の貧しい人には1%の減税という風にトランプさんはやっていたわけだけど、そのパンくずをもらって「いやー、パンくず減税うれしいです。旦那さま! もっとください!」みたいな……まあ、極左のモーリーが言っているんですけども。
(プチ鹿島)たとえですよ、たとえ(笑)。
(モーリー)それで、そういう人たちに「増税」って言ったらどうなる? 投票をするわけないだろう? バカじゃねえの?って思って。
(プチ鹿島)じゃあ、たとえば前回、サンダース現象みたいなのがあって。それが敗れて。「ヒラリー・クリントンなんか嫌だ!」っていう風になって結果、トランプさんが勝ったわけじゃないですか。民主党内部で同じことがまた繰り返される?
(モーリー)同じこと、「サンダースに賭けてみよう!」みたいな感じでやったりして。もちろん、「増税しても大丈夫。アメリカの多様性、LGBTもOK。全てがOK。男女格差もゼロ。そんな国にしよう。理想郷は近い!」って叫んでいるけど、みんなで崖に向かってビャーッ! ですよ。
(プチ鹿島)ということで、選挙はトランプが勝つ。
(モーリー)トランプの勝ち!
(プチ鹿島)一足早い選挙特番でした。ということで『水曜日のニュース・ロバートソン』、スタートです。
(中略)
トランプ大統領の非白人の女性議員への「国に帰れ」発言
(モーリー)このトランプさんが非白人の女性議員に「国に帰れ」って言ったという。それさ、日本で2ちゃんねるでの「半島に帰れ」っていう在日コリアンに対する差別、あるじゃないですか。同じことを言っているんですよ。アメリカの大統領が。これね、2000年ごろにスレッドが2ちゃんねるでどんどん伸び始めた頃、僕も2ちゃんねるウォッチャーだったんですけども。その頃、「半島に帰れ」ネタってあったわけ。それが「19年後にはアメリカの大統領がこれを言うからな!」って誰か……。
(プチ鹿島)巡り巡っていちばんトップに行っちゃったっていう。表のトップに。
(モーリー)恐ろしいわ。でね、なんでこんなことをするのかなんですけども、私もちょっと深く考えてみました。実は、不法移民の摘発みたいなものも出ていますよね。すると、不法移民ってみんなヒスパニック系が中心なわけですよ。要は中南米から来た人たちがほとんどなわけですよね。この人たちを摘発する時、そこに親と子を引き離して一時収容所に入れたりとか、いろいろと非人道的なことをしている。
ところがそれを、人種差別の意識を持っている白人が見ると「ざまあみろ! この国に来た報いだ。親と子が引き離れるぐらい、それぐらいの罰を受けろ!」っていう心理が働くわけ。つまり、ひどければひどいほど、差別感情が……最初に申しました。もともとあった差別感情。小学校の頃からずっと「差別をしちゃダメなんだよ。白人じゃない人も白人と同じようにみんなと遊ばなきゃダメだよ」って教わってきていて、微妙な違和感を持っていたのに先生に言われたから人種的に平等に振る舞っていたんだけど、どうも違うっていう。それをトランプさんは代弁して増幅しているわけね。
(プチ鹿島)まあ火を付けたという。
(モーリー)火を付けている。これをやると、さっき申しました左の側はそれに対して、要は非白人をひたすら守る側に行きますよね。ところが民主党が非白人ばかりをかばうので、それは不法移民特権……つまり、「在特会(在日特権を許さない市民の会)」なんですよ。それのアメリカ版を自ら、民主党が作り出しているわけ。それが問題。そういう風にやたらとマイノリティーばっかりに民主党が行くという効果をトランプさんが差別発言をすればするほど、彼らを真左へと追いやっていく。
そうすると、その真左の人たちは結局ね、メディケア・フォー・オールに加えて、「ICE廃止」っていう風になる。「ICE(Immigration and Customs Enforcement・移民・関税執行局)」っていうのはアメリカの国土安全保障省の中にある組織で不法移民が犯罪を犯した時に取り締まるという。つまり、ギャングとかを取り締まるために作られた9.11以降の組織なんですけど、不法移民全般の取り締まりに使われているんですよ。
ということで、「ICEが悪い機関だから、こんなものは廃止しろ!」って民主党の左側の人たちはみんな言っているのね。ところが、結局そこから「全ての不法移民に米国籍を与えればいいじゃん」みたいなことをポロッと言う人も出てくるんですよ。不法でずっと来ている人たち、その人たちのせいでさっきの白人の低所得者の賃金は下がるわけだ。不法移民がそこに来て、建設現場なんかで闇で働いて賃金を押し下げる。
そうすると、「そういう人たちにも普通に市民権を与えればいい。アメリカ人として認めればいいんだ」っていうと、自分たちのこの賃金格差が固定されるじゃないですか。「それに誰が投票するの?」っていう話なわけですよ。だから、トランプさんが憎しみに火を付けて、白人の偏見で「不法移民の摘発、ざまあみろ!」っていう手柄も取られるし、それに反発するリベラル系の人たちがマイノリティー憑依をしてしまい、挙げ句の果てにはそこを取り締まる移民局の組織を廃止しろと。
そして、その人たちに堂々と、勝手に入ってきた人たちにも社会保障や医療、そして市民権を与えてしまえていう人たちが出てくると、真ん中にいる人たちは怖くなりますよね? 「この国は不法移民大国になるんじゃないか?」って。それって、消去法でトランプに投票をするか、投票に行かなくなるんですよ。だから、なにをやってもこれ、トランプさんが勝つようにできているという懸念です。
(プチ鹿島)僕ね、モーリーさんにおうかがいしたかったのは、たとえば日本のメディア……新聞でもいいですよ。この発言を報じるにあたって、たとえば解説として、いまモーリーさんが言った背景のことを言っているんでしょうね。「大統領選に向けて白人層にアピールする狙いがある」って言うんですけど、そういう冷静な解説ってありなんですか? だってこれ、差別は差別じゃないですか。
(モーリー)あのね、狙いじゃないの。差別なの。で、差別がそのまま……。
(プチ鹿島)だからそういう冷静な解説をしている場合なのかな?って思っちゃって。
(モーリー)まるで差別という仮想通貨。1差別みたいな仮想通貨みたいになって、それがキャッシュアウトしているんですよ。それで投票を勝ち取っているんですよね。だから差別政治。これは結局どこに向かうのか? まだ、これを書いてるアメリカの解説者も非常に少ないんで私、先に予言をしておきたいんですけども。アメリカのバルカナイゼーション(Balkanization)。これが来年の選挙では使われると思う。「バルカン半島化」っていう。
(プチ鹿島)はー。これはモーリーさん発?
アメリカのバルカナイゼーション(バルカン半島化)
(モーリー)ブレグジットに関してバルカナイゼーションっていう言葉がいま、出ている。というのはイギリスがスコットランドと北アイルランドが分離してしまうかもしれないので。バルカン半島っていうのはユーゴスラビアが解体した時、お互いに殺し合いましたよね? 何十万人も。セルビアとかクロアチアとかに分かれて。ムスリムも殺されたし。そういうのを結局、なにが起きたか?っていうとソ連が崩壊しかかった時に政府の仕組みが弱かった。一般の人の人権を守る仕組みが社会でそもそも弱かったところに、様々な民族の断層で煽るアジテーターが出たんですよ。そしてその人たちの声の方が圧倒的に強くなり、最初は政治の中、議会の中の論争だったもの。どれだけセルビア人、クロアチア人に権利や富を割り当てるのか? みたいな話が、いつしかストリートファイトへと急にスピルオーバーしたんですね。で、アメリカではそれが起きないと言われているんだけど。ただ、トランプさんがFBIやCIAを攻撃する。最高裁を攻撃してそこに若手の超強硬保守の最高裁判事を送ろうとして。そうすると、民主党の人から見ると最高裁っていうのは右に偏った……つまり、信用をしていない。そしてトランプさんが好きか嫌いかでCIAやFBIも違う。議会はいま、下院はねじれて民主党優位。上院は共和党がかろうじて優位。そうすると、自分の政治的な見解に応じて三権分立のこれらの機関が全て偏った機関に見える。つまり、政治。民主主義を守る柱がどんどんと侵食をされている。それね、ユーゴスラビアに向かっているんじゃないの?っていう風に言う人がいるんですね。
(プチ鹿島)それがバルカン半島化?
(モーリー)そう。アメリカは内乱に陥るようなそんな弱い国ではないけれども、投票行動や世論があまりにもお互いに真ん中がなくなっていく。この危険性。これが起きると最後はミロシェビッチとなったトランプが勝つ。
(プチ鹿島)はー! いずれにしても、トランプが勝つんですね。
(モーリー)「アメリカがセルビアになる日」っていうことでもいいです。
<書き起こしおわり>