(荻上チキ)放送中にも豪さんのDMが鳴りっぱなしですが……。
(吉田豪)鳴りっぱなしというか、1つ来ていましたね。タレコミが。
(荻上チキ)で、いろいろDMが来られている中で、男性地下アイドルの相談もあるということで。男女での根深い違いとか共通点、どうお感じになりますか?
(吉田豪)だいぶ近いですね。もともと女子でアイドルグループをやっていた運営サイドが「ちょっと女子よりもこれ、いまは男子の方が儲かるぞ」と思って商売を鞍替えしたケースが最近、増えてるんですよ。女性の方が意外と……男性地下アイドルってホストとビジュアル系バンドの中間みたいな形態になっていて。女性ファンが結構、お金を払う。
(荻上チキ)太客として。
(吉田豪)そうなんですよ。なので、その割に実は全然払われてないケースがあるらしくて。で、僕のところに送ってきた人は正直、こんなことを……「これをスクショで出してください」っていうのは来たんですけど、完全に身元がバレるレベルのことを書いていて。「いいので、出してください」って出したら案の定、かなりいろいろとTwitterが騒ぎになったみたいですけども。
男性地下アイドルからのDMも届きました。女性地下アイドルを手掛けていた運営が男性地下アイドルビジネスに鞍替えするケースが増えてるから、まあこうなっちゃうんだろうなとは思います。 pic.twitter.com/yzEaPcp1gY
— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) 2018年10月15日
(荻上チキ)うんうん。「あそこじゃないか?」って。
(吉田豪)それでも、多分何かを変えたかったんでしょね。
(荻上チキ)また、たとえばチェキなども含めて身体接触があるような場合もあると思うんですけど、男性アイドルのサービスも、中には過激なものもあるんですよね?
(吉田豪)男性アイドルの方が意外と、僕から見る限りハードに見えますよね。
(荻上チキ)指チューとか。指を挟んでキスをするっていう。だから「シーッ!」ってしながらキスをするっていうところをひとつのショットとしてやったりして。
(吉田豪)密着は当たり前な感じですもんね。
(荻上チキ)その密着には未成年も含まれるわけですか?
(吉田豪)どうなんですかね? 小学生の男性地下アイドルとかもいますけど、どこまでやってるのかわかんないですけどもね。
(荻上チキ)さて、いろいろメールが来てますので紹介しましょう。
(南部広美)「数年前、20回ほどを東京で地下アイドル数組が出るイベントの構成をやりました。何組かのアイドルが出てバラエティ番組でやるようなゲームやトークをするイベントでしたが、客の数は多くて30名から50名ほどで、料金は1000円ぐらい。ペイできるのかなと思いましたが、儲けるのは物販です。ツーショットで写真を撮ったり、イベントで使ったフリップにサインをしたり、1分トークできたり、似顔絵をアイドルに書いてもらったり、それぞれに金が必要で。お客さん1人当たり1万円は使っていました。まだ高校生のタレントも多い中、この集金システムには疑問が残りました。それからメジャーになったアイドルもいたり、解散しても個人で頑張っているタレントさんもいますが、多くは志半ばで挫折していきました。夢をチラつかせて金儲けに利用するような大人が多いことに驚きました」。
(荻上チキ)なるほど。やはり実際の物販というところが命なので、非常に精神的にも消耗する業態ではあるわけですよね。
(吉田豪)そうですね。
(荻上チキ)そこで何とか稼げないと、食っていくことはできないという状況を作ることによって、「そこでのサービスができないんだったら君はファンを大事にしてない」とか、そうしたような発想に変えていくような構造があるということですね。次のメール。
(南部広美)「某地域アイドルの事務所を運営する会社では『事務、経験不問、土日祝休み、給与20万から』とこの地域としては好条件で求人し、採用者(多くが社会人経験の少ない女性)をアルバイトの裏方として、土日や時間外も関係なくイベント準備などに駆り出し我慢を強いたり、退職するとまた他の人を採用するということを繰り返しています。それでも、その地域アイドルは地元ではそこそこ知名度を持っています。法令遵守意識のない事業所が若い女性をアイドルや事務職など、釣りやすい職種で食い物にしているようにしか見えません」という。
(荻上チキ)アイドルの裏方も大変だという。
(吉田豪)まあ、そうですね。マネージャーとかも辞めることが多いですけど。ただ本当、ある関係者が言っていたんですけど「たぶんこれ、税金払ってないだろう」みたいな。領収書も何も出ない、その場限りのお金なんで。納税していない可能性というか、納税していない事務所が多いよねっていう。
(荻上チキ)「確定申告 チェキ○枚」とか、そういうことはされないですもんね。アイドルの収入の面でも、そこは不透明なところも残りそうですね。
(吉田豪)不透明すぎますよ。
(荻上チキ)こういった、いろいろな情報量の違いもさることながら、裏方などについてもいろいろと事務所が管理されてないということも出てきました。それから論調についてはこんなご意見も来ております。
(南部広美)「気になったのは今回のニュースを取り上げているテレビなどで自殺したことに『死んだら負け』とか母親の手記について『わからない』とか言っていることです。今回の件について、まだ本当のところは何もわかっていないと思うんですが、コメントした人の真意はもっと深いのかもしれませんが、被害者やその遺族を責めるように聞こえるコメントが出ることに対して、私は悲しい気持ちです」。
(荻上チキ)まあ、基本的には浅いコメントだと思うんですけど。ただ、死なせた社会の側の問題なので、その社会をどう変えるかという話をしてる時に、個人の特定をするっていうのはもっともリソースの無駄な議論ではあると思いますね。では、そうした無駄なリソースを割かないでどういうところを改善していこうかというのを残りの時間でやりたいと思うんですが。ここまでの話を聞いていて、まず深井さん。法的な知識の普及と、それから新たな整備なのか相談体制なのか、どういったものが必要だとお感じになりますか?
今後、どのように改善していくべきか?
(深井剛士)まあやっぱり法教育というものが非常に重要だという風には思ってはいるんですけれども、なかなかアイドルになるような子に、どうやって届けるのかということについては非常に悩ましいなという風に思っております。ただやっぱり、この番組を聞いてくれてる方もいらっしゃるかもしれないのであえて言いますけども、やっぱりどのタイミングでも早すぎるということはないと思いますので、なんらかの相談をどこかのタイミングでできていれば救えたのに……という風に思うことは結構ありますので。法律家というものがいるんだということは知っておいていただきたい。
それは声を大にして言いたいところあるんですけれども。それ以上にですね、「アイドルという職業が法的に守られている職業なんだ。大人が言ってることだけが全てではないんだ」っていう。今回の社長が言った「1億円」という発言が、本当かどうかという問題はありますけれども、法的に根拠はないものだと思いますが、おそらくはそれを信じ込んでしまったということになるのであれば、まずそうではないんだということをぜひ、知ってもらう体制。それはやっぱり法律の知識ということになると思いますので、学校ないし地域での法教育というものが大事になるんじゃないかな。
(吉田豪)この愛の葉の罰金制度というのは法的にはどうなんですか? 情報漏えいで50万から100万円とか書かれていたっていう。
(深井剛士)それはさっきも多少出ましたが、情報が漏えいしたことによって50万から100万円という損害が実際に発生するわけはないという風に思うんですよね。アイドルが得られる情報なんかが事務所の営業秘密にかかわることで、それを明らかにすることによって営業の機会が失われるとか、そういうものではないと思いますので。50万から100万円という損害が実際に発生することはないと思いますので。そういうものを決めておくということは基本的には違法じゃないかなと思います。
(荻上チキ)うんうん。
(深井剛士)何度も繰り返しになって申し訳ないんですが、仮にアイドルが労働者だとしたら、このように罰金を決めておくことすら違法になりますので。もしそういう解釈ができるのであれば、そもそもこんな条項自体が無効だということになると思います。
(吉田豪)ただ、いまだにちょっとアレな運営サイドから離れてセルフプロデュースに切り替えてやっているグループの人から聞いたんですけど、辞める時にいろいろ言われて、いまだにメンバーがその元運営にお金を払い続けているっていう。自由になりたいがために。そんなこともあるんですよ。
(荻上チキ)それは法的にはアウト?
(深井剛士)アウトだと思いますね。
(荻上チキ)そういう法律相談ができる、法テラスなどの無料相談ができるところもある。そうした中で実際に法律っていうのは「嫌だな」ということとか理不尽さから守ってくるために作られているところがあるので、いろいろ相談してみるというところは重要ですよね。秋山さん。これからの議論をさらに普遍化するためには、いかがでしょう?
(秋山千佳)私が言いたいのはですね、もう法律の知識以前の問題ですね。たとえば先ほどチキさんからも「スクールセクハラ」っていう言葉が出ましたけども。学校で、たとえば教師から生徒に対する性被害ですよね。そういった問題を今年に入ってネットメディアで複数回、配信したんですけれども。その度にこれまで被害にあったという方からドッとメールが寄せられたんですね。で、そういう意見を拝見していると、基本的に被害にあった方は真面目で、おそらくは子供の時に「大人の言うことを聞かなきゃいけないよ」っていう風に言われたら、本当にその通りに聞いてきただろうなという。
いわゆる良い子だっただろうなという印象で。それは褒められることだったとは思うんですけれども、一方でたとえばそういう性被害にあった時に、「もう嫌だ!」とか逃げるだとか、ということができなかったっていう側面にもなってたと思うんですね。なのでもう本当にその法律以前に言いたいのは、そのアイドルの子たちにもそうですけれども、大人だって間違ったことをすることもあるし、そういう時は自分の身を守るために「NO」と言うことも時には必要だし。さらに、時には逃げなきゃいけない時もあるんだよということを、これは大人が繰り返し伝えてあげなきゃいけないことだなっていうのは、今回の件からも思っています。
(荻上チキ)こういったタイミングで一気に周知をするというのも大事ですよね。豪さん、これからの議論はいかがですか?
(吉田豪)これからというか、今回いちばん切ないのが、人が1人亡くならないとここまでの騒動にならないことなんですよ。地下アイドルとかの運営の杜撰さっていうのは何度も事件になったり、何度も問題視されてたりしてたんですけど。ここまでの広がりっていうのはなかったんですよね。今回、この時に僕は初めて知ったし、まだ裏も取れていないんですけど、あるアイドルの子からのタレコミで、実はある地方アイドルの子も1人、亡くなっているらしい。ただ、それは遺族サイドが「大事しないでほしい」って言ったから出てないけど、果たして本当に遺族がそう言ってたのかもわからない。っていう風に聞くと、ねえ。これ、もっと早く動いとかなきゃいけなかったことですよね。
(荻上チキ)そうですよね。繰り返してはいけないからこそ、しっかりと切り込んでいくということも重要ですし、そうした、豪さんのところに来ている声も、それも氷山の一角だと思うんですよね。だからそうしたことをどういう風にこれから受け皿として、豪さんという個人ではなく、より別のところにつなげていくことができるのか。それが問われていくということですよね。そして、その動きはいま、始まりつつあるということですよね。
(吉田豪)そうですね。本当に毎回言っているんですけど、全員未払いだったアイドルイベントがあったんですよ。そこはでも1社だけ裁判して、お金を取ったんですよ。意外と勝てるんですよ。やれば。「やりましょう!」っていう(笑)。
(荻上チキ)なるほど(笑)。それ、豪さんがこれから中心になにか動くみたいなことは?
(吉田豪)中心になって動く気はないですけど、こうやって騒ぎにはします。
(荻上チキ)ああ、なるほど。いま、いろいろ来てるわけですからね。これから発信役となってむしろ、声を上げやすい環境をみんなで作っていくということが必要かと思います。
(南部広美)深井さん、秋山さん、吉田さん、ありがとうございました。
(一同)ありがとうございました。
<書き起こしおわり>