松尾潔 Tamia『Better』を語る

松尾潔 Tamia『Leave It Smokin’ Remix feat. Wale』を語る 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でタミアの新作アルバム『Passion Like Fire』の中から『Better』を紹介していました。

Passion Like Fire

(松尾潔)改めまして、こんばんは。『松尾潔のメロウな夜』、10月1回目の放送。レギュラープログラム「メロウな風まかせ」、お楽しみいただきたいと思います。8月に亡くなったクイーン・オブ・ソウル、レディーソウル、アレサ・フランクリンの追悼特集を9月は二度にわたってお届けいたしました。この番組にしては大変珍しい長尺のノンストップミックス、おかげさまで皆さんからご好評をいただきました。

https://miyearnzzlabo.com/archives/52448
https://miyearnzzlabo.com/archives/52644

こういうメロウな時間の過ごし方もあるということで、あくまでもあればスペシャルケースという風にお考えいただければと思います。基本的には『メロ夜』は良い曲をご紹介する、おしゃべりする、その繰り返しでございます。その営みを今月からまた粛々と再開したいと思います。

ではまず1曲、ご紹介したいと思いますね。タミアです。タミアの『Leave It Smokin’』、この番組で何度かご紹介した曲です。

https://miyearnzzlabo.com/archives/50359
https://miyearnzzlabo.com/archives/52589

今年のアダルトR&Bシーン、まめメロウなR&Bの新譜の中ではエラ・メイの『Boo’d Up』と並んで「二強」と言ってもいいぐらいのロングヒットを記録した。そしていまもヒットしている、そんなタミアにとって新しい代表曲になりました。

で、その勢いをそのまま生かす形でアルバムが届きました。『Passion Like Fire』というタイトル。これは『Leave It Smokin’』をずっとこの夏に聞き込んだ方には馴染みのあるフレーズかと思います。あの曲の中で「I need passion like fire (fire) fire (fire)」って言っていますね。要はアルバムの中のヘソとなる曲の、その曲のタイトルではないが、サビのキーとなる文言。「パンチライン」なんて言いますけれども、そのパンチラインをアルバムのタイトルに引用したという。

まあ、このことからも明らかなように、この『Passion Like Fire』の軸となる曲は『Leave It Smokin’』であることは疑う余地はございませんが。それだけで語ってしまうにはあまりにももったいない、佳曲・良曲がたくさん詰まっております。このあいだもお話もしましたけれども、タミア。40代になってから絶好調ですね。大変聞きどころの多いアルバム『Passion Like Fire』の中から、今日はこちらをお聞きいただきたいと思います。タミアで『Better』。

Tamia『Better』

タミアの先月リリースされたばかりのニューアルバム『Passion Like Fire』の中から『Better』という、静かではありますが大変力強い1曲をご紹介いたしました。この番組で歌詞のことを話しすることというのは、まあ時間の制約もあってそんなにはないのですが、これは僕は自分の職業的・生業的にちょっとやっぱり聞き流せない歌詞が入ってましてね。サビの部分で「I’m the producer Just give me a love song Give me your heartbeat I’ll make it better」って言うんですね。

「私は音楽プロデューサーである。ラブソングを私にちょうだい。その曲とビートをくれたら、もっと素晴らしいものにしてあなたに返してあげるわ」っていうね。もうこのスイートなラブソングを聞きながら、「うん、自分はこういう仕事だった」っていう風に思っているんですけどもね(笑)。けど、「I’m the producer」っていうこのフレーズはちょっと僕はハッとしましたね。

面白いですよ。「ああ、そうか。プロデューサーっていうのはもちろん曲をゼロから作る人もいますけれども、何よりも曲を”ベター”にする人のことをなんだ」と。で、この歌詞の中で「ハウスをホームにする(I can make you complete Like a house to a home)」とかっていうフレーズが出てくるんですね。これなんていうのは、ハル・デヴィッドが書いた有名な歌詞でおなじみバート・バカラックの古典でもあります『A House is Not a Home』を思い出してしまいますね。

まあディオンヌ・ワーウィックやルーサー・ヴァンドロス、いろんな人たちが歌った曲ですけども。「家(ホーム)っていうのは人がいなくてもハウスなんだけども、そこに人がいるとそれはホームになる。ホームを求めるというのが人の愛の営みである」っていう、まあそういう趣旨の曲なんですが。

とにかく着眼点が面白いですよね。そしてこういう曲を歌うのにふさわしいキャリアと実年齢がある。仮にそれを知らない人が聞いても、その歌声には説得力が宿っている。べた褒めですけども。タミアのこれは本当に静かなる野心作と申し上げましょう。40代女性の美しさ、艶やかさ、そしてブレることのない歌の力。そういったものを感じさせてくれます『Passion Like Fire』の中から『Better』をお聞きいただきました。

<書き起こしおわり>

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