松尾潔 アレサ・フランクリンを追悼する

松尾潔 アレサ・フランクリンを追悼する 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でアレサ・フランクリンさんを追悼。80年代から21世紀にかけてのアレサ・フランクリン関連楽曲を15曲、紹介していました。

(松尾潔)今夜は先月、8月16日に76歳で亡くなったアレサ・フランクリンに敬意を表して、アレサに関わる曲をノンストップでお届けしたいと思います。『松尾潔のメロウな夜』、いままで何人かのソウル・レジェンドが亡くなった時にその追悼放送っていうのをね、何度かやってきたのですが、アレサ・フランクリンに関して言いますと、あまりに残した作品も多い。功績ももちろん大きいです。クイーン・オブ・ソウル、レディー・ソウル、いろんな呼び方がありますが、まあ彼女がいま、R&Bと呼ばれている音楽、この歴史の頂点に位置する1人であることは間違いなかろうと思います。

アレサ・フランクリンはね、デトロイトで育って。まあ生まれはメンフィスですけども。で、お父さんがC・L・フランクリンという有名な牧師さんで。その高名な牧師の娘としてもう子供の頃から天才少女としてその歌声を披露してきたというのは有名な話です。ですが、そういったエピソードはもうすでになんか歴史上の偉人のような感じがして、ちょっとどこからそこにたどっていけばいいのかわかんないような気持ちも正直ありました。

で、初めて手にしたアルバムというのは1981年の『Love All the Hurt Away』というアルバムだったんですね。『想い出の旅路』というそのアルバム最初に手にして、そのアルバム表題曲は素敵だなと思ったんですけれども。なんかちょっと大人っぽいな。僕が聞く感じでもないなってその時は思ったんですね。

ですが、それからルーサー・ヴァンドロスという人に大変入れ込む時期が自分にやってきまして。そのルーサー・ヴァンドロスがちょっと前にアレサ・フランクリンのアルバムを2枚、プロデュースしてたよって聞いて、まあ『Jump to It』『Get It Right』。もうこの2枚が僕にとって決定的で、そこが入り口になりました。これは大変僕にとってラッキーだった。

Jump to It (Expanded Edition)
Posted at 2018.9.15
Aretha Franklin
Arista/Legacy
Get It Right
Posted at 2018.9.15
アレサ・フランクリン
Arista

なぜかと言うと、それは歴史上の人物と思ってた人が現役で、しかもその懐古的ではないその時にいちばんかっこいいパフォーマンスを見せるっていうところを目撃できたからなんですね。まあ、それがあったから僕は昔のものを聞くという行為が楽しくなったんだと思います。そしてコンテンポラリーなものも、まあこの番組でもそうですけれども、あの新譜を聞く楽しみというのも自分の中で難なく両立していますし。そういったことを教えてくれたのが80年代前半のアレサ・フランクリンだったような気がいたします。

今日はアレサ・フランクリン、その頃の作品を軸として、そのちょっと前から21世紀に入っても素晴らしい作品をたくさん残しておりますので。彼女の歌声、そしてその関連作品。アレサとその周辺の楽曲を集めてみました。全部で10数曲ございます。40分近くになるかと思いますが、テーマはメロウなアレサ・フランクリン。それでは1曲目はこちらです 。アレサ・フランクリンで『DAY Dreaming』。

Aretha Franklin『Day Dreaming』

(約40分間のミックス終了後に……)

(松尾潔)先月、8月16日に76歳で亡くなったクイーン・オブ・ソウル、アレサ・フランクリンに敬意を表して、今日はアレサに関わる曲。とりわけメロウなアレサ・フランクリンナンバーを中心にノンストップでお届けいたしました。曲をご紹介したいと思います。曲名……合計15曲ございました。まずはアレサ・フランクリンで『Day Dreaming』。そして同じくアレサで『Here We Go Again』。これはジャーメイン・デュプリがプロデュースした曲でございまして。まあ、お気づきになった方も多いと思いますけども、Changeの『The Glow of Love』という曲をうまく取り込んでいます。

そしてそのChangeの『The Glow of Love』でリードボーカルを取っておりましたルーサー・ヴァンドロスによる『Superstar / Until You Come Back To Me』。メドレーで発表された曲のイントロ部分だけをご紹介しました。

そしてアレサ・フランクリン『Love me Right』。ルーサー・ヴァンドロスのプロデュースによるアルバム『Jump to It』の中のメロウな、つゆが滴り落ちるような曲でございました。

そしてミキ・ハワードでやはり『Until You Come Back To Me (That’s What I’m Gonna Do) 』。

そのイントロから、この曲の作者でありますスティービー・ワンダーの『Until You Come Back To Me (That’s What I’m Gonna Do) 』へとまた続きまして。

そしてアレサ・フランクリンで『Jump to It』。

そしてこの『Jump to It』を換骨奪胎したようなフランスのユニット、Melgrooveの『Apoca Arrive』へとつなげてみました。

そしてアレサ・フランクリンといえば数々のデュエットを残しておりますが、アレサ・フランクリンとジョージ……と言って、マイケルじゃなくてベンソンをかけるのが『メロウな夜』ですね。アレサ・フランクリンとジョージ・ベンソンで『Love All The Hurt Away』。

そしてアレサ・フランクリン『Angel』。これはアレサの妹が書いた曲ですね。

そしてアレサ・フランクリンにはソングライターとしてもね、『Take Me With You』とか素敵なナンバーをいくつか提供してもいるフィル・ペリーによるアレサ・フランクリンのカバー『Call Me』。

そしてそのアレサ版の『Call Me』をうまく取り込んだカニエ・ウェストのプロデュースナンバー、スラムヴィレッジ feat. カニエ・ウェスト&ジョン・レジェンドで『Selfish』。

そしてアレサ・フランクリンで『When You Love Me Like That』。これもルーサー・ヴァンドロスのプロデュースですね。『Jump to It』に続く『Get It Right』という83年のアルバムの中にひっそりと収められていたメロウなナンバーです。

そして名ソングライターとの出会いに恵まれてきたアレサ・フランクリン、こんな人ともやってみました。ボビー・ウーマックのペンによる『I’m In Love』。

そして21世紀になってもメロウないい曲をこうやって歌ってくれたんだなっていう。アレサ・フランクリン『Wonderful』と続きました。全15曲でございました。

ここには『Respect』とか『Think』、『 (You Make Me Feel Like) A Natural Woman』、こういった曲は含んでおりません。アレサ・フランクリンが亡くなって、まあいろんなメディア、いろんな人たちが彼女の功績を語っています。アメリカにおける公民権運動の高まりと彼女の活躍っていうのがいかに切り離せないことかとか。もしくはいま、「#MeToo」ムーブメントに繋がる女性性というものをポップミュージックの形で表現してきたということで『Natural Woman』を紹介するとか、まあ啓蒙する度合いの高いいろんな記事ですとか、いろんな番組というものとか、もうたくさん世に出尽くしたかなっていうタイミングでのこの特集なんですけども。

まあ『メロウな夜』、僕はね、そういったアレサ・フランクリンの社会的な功績とかその存在意義っていうのはもちろんを否定する理由はなにもないんですが、それ以前に僕にとっては彼女は偉大な流行り歌の歌手でした。僕はアレサ・フランクリンの歌を聞いて政治のことに思いを馳せることよりも、彼女の歌を聞いて美味しいお酒が飲みたいし。素敵なロマンスを夢見る時のBGMとしてのアレサ・フランクリン。その部分こそが偉大だったんじゃないかなと思いますね。はい。そういったわけで今日はメロウなアレサ・フランクリン、全15曲をお届けいたしました。

(中略)

さて、楽しい時間ほど早く過ぎてしまうの。今週もそろそろ別れの時が迫ってきました。ということで今週のザ・ナイトキャップ(寝酒ソング)ですが、今夜はね、先ほど何度か触れましたようにアレサ・フランクリンのキャリアの後半に大変偉大な功績を果たしました。クリエイターとしてのルーサー・ヴァンドロス、そのルーサー・ヴァンドロスがアレサ・フランクリンよりも随分若いのに先に亡くなってしまった。その時にアレサ・フランクリンが胸を痛めて、自分の若き恩人であるルーサー・ヴァンドロスのために歌ったルーサーに捧げる『A House Is Not A Home』。こちらを聞きながらのお別れです。これからお休みになるあなた、どうかメロウな夢を見てくださいね。まだまだお仕事が続くという方、この番組が応援しているのはあなたです。次回は来週9月17日(月)夜11時にお会いしましょう。お相手は僕、松尾潔でした。それではおやすみなさい。

Aretha Franklin『A House Is Not A Home』

<書き起こしおわり>

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