林剛と松尾潔 ESSENCE Festival 2018を語る

林剛と松尾潔 ESSENCE Festival 2018を語る 松尾潔のメロウな夜

(松尾潔)で、まあ今回、そのエッセンス・フェスティバルのレポートなんですが、やっぱりエッセンスと言いますと、ニューオリンズで開催されてるっていうところが全ての源と言いますか。

(林剛)そうなんですよね。今年はニューオリンズが実は市の誕生の300年、300才の記念すべき年で。

(松尾潔)そういうメモリアルイヤーだったんですね。

(林剛)そうなんですね。で、今回ですね、初日の最初の方に登場したアクトというのがですね、メインステージっていう大きいステージでやってるアーティストも、ちっちゃいステージでやってる人もみんな、7時台にスタートしたアーティストはニューオリンズ生まれの人だったっていうね。

(松尾潔)それは偶然じゃないんですよね。きっとね。

(林剛)きっと偶然じゃないと思います。名前を挙げるとレディシ、ロイド、ペル。で、みんなね、ニューオリンズから一旦離れて活動している人っていう感じで。

(松尾潔)いま、サラッとお話しされましたけども、聞いてるの気持ち代弁するように言いますけども。レディシ……もう『メロ夜』でもう本当に4番バッターみたいな。ロイドもまあ定番の人。ペルっていま、林さんはサラッと言ったけど、ペルってなんじゃらほい?って。

(林剛)ペルは90年代初頭生まれ。92年だったかな? ニューオリンズの新世代のラッパーですね。

(松尾潔)なるほど。まあ逆に言うと男女、もしくはR&B、ヒップホップ関係なく、単純にニューオリンズご出身ということで皆さん、たぶんくくられてるっていうことなんですね。

(林剛)そうだと思います。

(松尾潔)見事に分かれてますよね。

(林剛)そうなんですよね。それで思ったのは、今年エッセンスじゃないんですけども、コーチェラっていうフェスティバルがありますよね。

(松尾潔)ビヨンセのパフィーマンスが大変に話題になりました。

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(林剛)そう。で、彼女がすごくニューオリンズの……まあブラスバンドとか。もともとあの人はね、『B’Day』っていうアルバムの時にすごい自分のクレオール・ルーツを突きつめたようなアプローチをやっていましたけども。今回、改めてそのニューオーリンズ的な……いろいろとね、ブラスバンドを使ったりとかバウンスをやったりとか。

(松尾潔)セカンドライン的な展開ですとかね。

(林剛)やっぱりそれもニューオリンズ300年っていうところと関係してるんじゃないかなというね。

(松尾潔)なるほどね。それは知っているようで知らない情報だったな、僕は。それもあって盛り上がってるんだ。

(林剛)そうですねそれもあったと思います。「New Orleans 300」っていうプレートっていうのかな? 電光掲示板っていうのかな? そういうのがよくありました。見ましたね。

(松尾潔)ああ、そうですか。大きな節目のエッセンスだったということですね。じゃあ、その活況を呈していたニューオリンズ勢の曲を続けて2曲、聞いていただきたいと思います。先程ご紹介もありましたロイド。もう彼もちょうど新譜が届きましたんで。これは『Caramel』という曲っですね。そしてもう1曲、これはペルのリード作品と言うか、ペルがフィーチャーされていた……。

(林剛)で、これは今回、ペルのライブがあったんですけども、ちょうど僕が行った時、ラウンジっていうちっちゃい会場に足を運んだ時に、PJ・モートンととこの曲を共演していたという場面に出会いましてですね。

(松尾潔)おお、なるほど。アルバムの中の組み合わのまんまをやってたという。素晴らしいですね。

(林剛)『Gumbo』っていうアルバムだったんですけどもね。

(松尾潔)じゃあ、2曲続けて聞いていただきましょうか。ロイドで『Caramel』。そしてPJ・モートン feat. ペルで『Claustrophobic』。

Lloyd『Caramel』

PJ Morton feat. Pell『Claustrophobic』

(松尾潔)お届けしましたのはニューオリンズ勢。

(林剛)ニューオリンズ生まれですね。

(松尾潔)エッセンス・フェスティバルの地元の2組。ロイドで『Caramel』。そしてPJ・モートン feat. ペルで『Claustrophobic』。これは「閉所恐怖症の」という意味で、ちょっと気持ちが落ち着かないとかそういう時に使う言葉らしいんですが。これ、ライブバージョンもね、出ていますけどもね。

(林剛)『Gumbo Unplugged』っていうね。

(松尾潔)まあ、本人お気に入りの1曲のようですが。

(林剛)ロイドの方は、ニューオリンズといえば途中でね、ビッグ・クリットとマニー・フレッシュが登場したっていうね。

(松尾潔)ああー、ご当地感ありますね!

(林剛)そうですね。マニー・フレッシュは特にね、そこらへんはやっぱりすごい盛り上がりましたね。

(松尾潔)ロイドはやっぱりね、もともとリル・ウェインとの共演で浮上してきたようなところがあるから。やっぱりダーティー・サウスのヒップホップ的なマナーを備えた歌うたいっていうところなんで、まさにそういうのはもう面目躍如っていう感じの組み合わせですよね。

(林剛)で、今回ね、アルバムのジャケットがすごいんですけどね。股間からギターが伸びているみたいなね。

(松尾潔)しかももっと言うと、全裸の股間っていう。

(林剛)で、本人もね、エッセンスでもGジャンを着てバンダナみたいなのを巻いて、アコースティックギターで弾きながら歌ってるっていう、ちょっとなんかいままでのイメージとは若干違うような感じでしたけど。やっぱりでも、声はそのまま……そのエル・デバージとマイケル・ジャクソンの中間を行くような。

(松尾潔)なんかいま、嬉しそうに語りましたね。まあけど、本当にこの人の声っていうのは、さっきおっしゃったそのエル・デバージがそうであるように、もしくは何て言えばいいんですかね? ラファエル・サディークがそうであるようにって言えばいいのかな? まあストークリーとかがそうであるように、世に出てきた時のその清涼感のある若者の声っていうのをずっと保ってますよね。まあ、実際にロイドはまだ若いですけど。そしてPJ・モートン。PJ・モートンはね、もしかしたら本当にこういう『メロウな夜』をお聞きになる人たちはPJ・モートンとして認識されるかもしれないけど、一般的にはマルーン5のキーボーディストとして露出することが多い人かと思いますが。

(林剛)2012年ぐらいから正式メンバーになったんですよね。マルーン5の。

(松尾潔)しかしあの、マルーン5でも相当忙しいはずなんだけど、ソロの活動では素晴らしくレペゼン・ニューオリンズっていう感じですよね。

(林剛)1回、アトランタに行って。それでLAに行って、ニューオリンズに帰ってきた。それで、なんか自分でいま、モートン・レコーズっていうのを主催しているんですけども。
(松尾潔)自主レーベルね。

(林剛)彼はだからそれは「ニューオリンズをモータウンにしたい」っていうね。

(松尾潔)はー、自分の名前っていうだけじゃなくてね。

(林剛)そう。それでペルも実際にハリケーン・カトリーナちっちゃい時にミシシッピかどっかにちょっと行ってたんですけど。それでいま、ニューオリンズに戻ってきて、PJ・モートンと一緒にやっているっていう。

(松尾潔)やっぱり一度離れた人がまたホームタウンに戻るっていうの大変な意味があるような気がしますね。

(林剛)だから今後ね、いまちょうどそのPJ・モートンとかペルだけじゃなくてね、タンク&ザ・バンガズとかね、そこらへんのニューオリンズの新世代が結構熱いので。そこらへんもちょっと僕、注目してるんですけども。

(松尾潔)あと、なんか地元勢で言うとね、ビッグ・フリーディアがなんか素晴らしくライブがよかったっていう話をしていましたよね。

(林剛)ビッグ・フリーディアはね、今回僕がラウンジで見た中では最高でしたね。ニューオリンズ・バウンス、いわゆるゲイで女装家の人。それを売りにしてる人なんですけども。売りにしていて、ニューオリンズをバウンスを……。

(松尾潔)もう長いですよね。彼というか彼女というか。

(林剛)まあ、いわゆるシッシー・バウンスっていう言い方もされているんですけども。彼、つい最近というか去年ですかね? 再始動をしたアサイラムと契約して、メジャーデビューを果たしたっていうところからも、やっぱりすごい注目を集めていて。やっぱりすごいね、もう本当にとにかくね、お尻を振るための音楽なんですけども。あれ。いわゆる「トゥワーク」っていうか、トゥワーキングってありますよね? マイリー・サイラスとか有名にした。あれをずっと、ああいう音楽をやり続けていた人なんですけども。やっぱりもう街中でもね、ああいう曲が流れるとね、みんなで女の子が夜中とかね、お尻を振りまくってね。

(松尾潔)そういう文化なんだよな。

(林剛)そうなんですよね。やっぱりニューオリンズ楽しいなっていうのはありますね。

(松尾潔)なるほど。

(林剛)あと、PJ・モートンに関して言えば、今回はH.E.R.っていうね、『メロ夜』でもお馴染みの女性シンガーがいますけども。彼女のライブもあったんですけど、そこに見に行ったらPJ・モートンが僕の横で見ていたっていうね(笑)。

(松尾潔)フフフ(笑)。そういう時ってお客さんは「おっ、PJ・モートン!」って騒いだりしないもんなんですか?

(林剛)誰も騒いでいなかったですね。僕も声かけようかなとも思ったんですけども、PJ・モートンはなんか関係者と何人かでいて。ずーっとね、携帯見てたりしたんで、そこに割り込むのな……って思って。けどね、その携帯を見たらね、ペルから電話がかかってきたって。「Pell」って書いてあったりね(笑)。

(松尾潔)あなた、かなり覗き込んでるわね!(笑)。

(林剛)だって真横にいたんですから(笑)。

(松尾潔)へー! それは現場感あふれるいい話ですね(笑)。面白いな。

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