松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中で2017年の第59回グラミー賞についてトーク。現地で授賞式を見て感じたことなどを話していました。
アデル、圧巻。先程終了した今年のグラミー賞に集ったプロデューサー8人。左から多保孝一、蔦谷好位置、松尾潔、小林武史、島田昌典、本間昭光、根岸孝旨、寺岡呼人。LAステープルズセンターにて。#日本のポップミュージックのために pic.twitter.com/d2GfgAvxwn
— 松尾潔 (@kiyoshimatsuo) 2017年2月13日
ジェレマイは最近ですと人気ラッパー……いま、いちばん勢いがあるラッパーと言ってもいいでしょう。チャンス・ザ・ラッパーと一緒にコラボ作品を出しています。チャンス・ザ・ラッパーと言えばね、この間のグラミー賞で新人賞を授賞しましたが、彼はいままで出した作品というのはCDなんかのパッケージで出してなくて、ネットだけで。しかも無料で音を公開して。それでグラミー賞をとってしまうという特例中の特例の存在になったんですが。こういう異端の人がいつも歴史を作ると考えると、チャンス・ザ・ラッパーがグラミー賞をとったというのは後々音楽ビジネスのあり方を変える起点として記憶されるのかな? なんていう気もいたします。
はい。いまごく自然にグラミー賞の話に入っていきましたけども。ちょうど先週ですか? アメリカ ロサンゼルス ステイプルズ・センターで行われましたグラミー賞の授賞式に今年も行ってまいりました。で、ご覧になった方も多いかと思います。今年はもう、アデル・ショーですね。その授賞式自体がアデルの「Hello」っていうあのおなじみの凄みをたたえた女性の声で始まるグラミー賞授賞式だったんですが、フタを開けてみますと、いわゆる四大部門と言われております中の3つですね。最優秀ソング、最優秀レコード、最優秀アルバム。この全てでビヨンセを蹴落として、アデルがかっさらうというね。まあ、アデルにとっては2回目のことですか。
で、4部門のうちのもうひとつは新人賞ですから。これはもちろんアデルはノミネートされていないわけですが、ここで受賞したのがチャンス・ザ・ラッパーというさっき紹介した、曲のリリースの方法も新しいという人が選ばれました。で、そんな、来年が60回という節目というところもあって、今年のグラミー賞は59回目で。まあ、いろんな変化の始まりを感じさせる内容でしたし、そういう演出がたくさん施されていました。新しい政権に変わってからはじめて。しかもね、ほどないところでの開催ということもあって、そこに対しての発言ですとか目配りもたくさん感じられましたけども、個人的には僕はザ・タイムがプリンストリビュートというお題のもと、あのステージに立った。もう、たまりませんでしたね。
ザ・タイムのプリンストリビュート
同じ内容をたぶん、来週鈴木雅之さんが同じ時間帯にお話しされるんじゃなかろうかと思っているんですけども(笑)。ザ・タイムの面々がね……まあ、グラミー賞のために再結成したとかじゃなくて、いまのメンバーでザ・タイムはよくアメリカでショーをやっていますし。僕も実はいまのザ・タイムを何回か見ていますけども、やはりプリンスのトリビュートということで出てくるザ・タイムは格別ですし。そのモーリス・デイ率いるザ・タイムがショーをやった後に完全にプリンス&ザ・レボリューションの衣装に扮したブルーノ・マーズファミリーが『Let’s Go Crazy』をやって。そして、その『Let’s Go Crazy』であのギター・ソロまでも務めたブルーノ・マーズを称えるかのように、演奏後にザ・タイムのメンバーがブルーノのところに駆け寄って。で、ハグしたりするというあのシーンはもう、グッと来るものがありましたね。
まあザ・タイムのメンバーの1人でありましたジミー・ジャム。ジャム&ルイスのジミー・ジャムですけども、ジミー・ジャムはね、ちょっと前までグラミー賞を運営しているNARASという組織の副会長をやっていましたから。そういう意味では、グラミーとザ・タイムっていうのは実は親和性が高いのですが。まあ、それにしても、あのミネアポリスのやさぐれ男たちみたいな……優男とやさぐれ男の集団っていう感じで売ってきたザ・タイムが晴れ舞台に乗っかったというのはなかなか痛快な出来事でしたね。
個人的な話になりますけども、そのショーを見終わった後に、いくつかのパーティーに出て。で、ホテルに戻ってきて。ホテルが階数指定のエレベーターで、慌ててエレベーターに飛び乗ったら、そこで僕ともう1人、黒人客がいて。居合わせたその彼、「なんか見覚えがあるな?」って思ってよくよく話してみると、ジャム&ルイスの秘蔵っ子グループだったミント・コンディションのボーカル ストークリーだったというね、そんなオマケまでついていましたね。ちなみにこの番組でミント・コンディションは何回もおかけいたしました。で、僕そのこともストークリーにも話しましたし、ストークリーに「『Not What I Wanted』、あれは本当に最高だな!」っていう。
本人にそれを伝えることもできたんで、僕としては彼らのアルバム『Healing Season』が授賞を逃しましたけども、「個人的にあなたが今日の主役です」ということは伝えることができたので、本当によかったです。
グラミーも終わり、LA滞在も終わりに近づいています。いくつかの酒席を経てホテルへ戻り、かけ込んだエレベーターで二人きりになったのが…なんとミント・コンディションのストークリー!久々の再会にエレベーターを止めて長話。LA、天使のいる街。 pic.twitter.com/B933eDdR7w
— 松尾潔 (@kiyoshimatsuo) 2017年2月13日
<書き起こしおわり>