DJ YANATAKE・渡辺志保 Kanye West『ye』の第一印象を語る

DJ YANATAKE・渡辺志保 Kanye West『Ye』の第一印象を語る INSIDE OUT

DJ YANATAKEさんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でカニエ・ウェストのアルバム『Ye』の第一印象についてトーク。ニューヨークに旅行中の渡辺志保さんも現地からコメントで第一印象や現地の人々の反応などを紹介していました。

(DJ YANATAKE)やっぱりヒップホップの今週の話題といえばカニエ・ウェストではないでしょうか? とにかくいろんな方が……まあTwitter上で大絶賛していたりもしますが。僕的にはまだ、手放しでめちゃくちゃ、「すげえ! 最高だよ、ヤバい!」とかって言えるほどまだちゃんと追えていないような状況ではあって……すごい考えちゃっていると言うか。うん。でも、すごいかっこいいなと思う曲もいっぱいあるし、いろんなチャレンジングなこともあるし。まあ、カニエらしいアルバムだなとも思うし。でも、もっと1つ2つほしかったなって思う面もあるし。でも、それって俺が気がついていないだけなのかな? みたいなところもあったりするんですけども。

また、そのへんは志保さんがお帰りになったら語られると思いますし、話していきたいと思うんですが。でも、そのへんも志保、やっぱりニューヨークにいても言いたいことがいっぱいあるわ!っていうことだと思うんですけども。ニューヨーク現地レポートも含めてなんと志保からコメントも届いてますので。ちょっとそちらの方を聞いていただきましょうかね。では、志保からコメント、そちらの方を聞いてください。

(渡辺志保・コメント)みなさん、こんばんは。渡辺志保です。いま、日時は6月3日。私はいまニューヨークのハーレムにいるんですけど。2週間ほどアメリカ旅行を楽しんでいる……めっちゃ疲れているけど楽しんでいるというような状況です。毎年、年に1回ぐらいちょこちょこアメリカに8割ぐらい遊び、残り2割ぐらいは仕事みたいな感じで行っているんですけど。今回の目的のひとつはあのTDE。ケンドリック・ラマー率いるTDEのコンサート、いま『チャンピオンシップ・ツアー』というのをやっているんですけど、そのニューヨーク公演を見に行くこと。そしてフィラデルフィアで行われました『The Roots Picnic』という、フィラデルフィアを代表するヒップホップミュージシャンであるザ・ルーツが毎年自分の地元でフェスをやっているんですけども。それを見に行くのが目的で来ております。

プラス、来週からはニューオリンズ、そしてアトランタ。南部の方に移動しましてちょっとサウスのバウンシーな感じを堪能しにあと1週間アメリカですごしたいと思っているところなんですけども。あのね、ちょっと実は昨日、そのフィラデルフィアで『The Roots Picnic』を見てきたばかりなんですけども。今回はヘッドライナーにデイヴ・シャペルが登場するという。それを聞いて「ああっ、絶対に行きたい!」って思ったわけなんですけども。デイヴ・シャペルってドキュメンタリー映画『ブロック・パーティー』でご存知の方もいらっしゃるかもしれないですが、本当にいまのアメリカを代表する黒人コメディアンの方なんですね。

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Posted at 2018.6.4
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で、それにプラス、2チェインズが出たり、ブランディが出たり。あと、ディプロマッツが出たりということで非常に豪華なメンツなわけなんですけども……めっちゃ天気が悪かったんですよ。前もって天気予報もチェックしていて。6月2日の『The Roots Picnic』の日はめっちゃ天気悪いっていうのは承知の上だったんですけども、なんと大トリのそのデイヴ・シャペルとザ・ルーツのジャムセッションが始まって5分後ぐらいにもう嵐がやってきまして。大雨かつ雷がガンガンに轟いているような状況になりまして、なんと大トリが始まって5分後ぐらいにイベントが終了してしまったという非常に残念無念な状況でした。ザ・ルーツのメンバーのクエストラヴなんかもTwitterで「本当に無念です」みたいなことをつぶやいていたんですけども。

まあ、でもあのデイヴ・シャペルを5分ぐらい……10分にも満たないぐらいだけど生で拝めたのは非常に意義深いなと思いましたし。あと2チェインズも一瞬だけ見れたのよ。そのジャムセッションに2チェインズが参加するテイで2チェインズはフィリーに来ていたんですけども。2チェインズは「トゥ~~!」って言っていましたね。で、「チェイ~~ンズ!」っていうのをお客さんに言わせていて。あと、チャンス・ザ・ラッパーの『No Problem』をフックをアカペラで歌ってくれたりもして、それは本当によかったなというような感じです。

あと、そこではシークレットゲストでT.I.が出てきたり、同じくアトランタのリル・ベイビーとかが出てきたり。あと、ジェイダキスとファボラスのステージもすごいよかった。かつ、ディプロマッツのステージもジュエルズ・サンタナがいまハウス・アレストって言ってお家から出ちゃいけない命令が出ておりまして、キャメロンが1人だけで来たんですけども。でも、往年のヒット曲をやってくださいまして、よかったですね。あとフィラデルフィア出身のフィリーウェイなんかも飛び入りで出てきまして本当に盛りだくさんでした。

あと、『INSIDE OUT』でもちょこちょこ曲をかけてますけど女性ラッパーのラプソディーが出ていたんですが、ラプソディーのライブも本当に最高で。私も粘って粘って彼女と写真を撮ってもらって。ちょこっとだけお話をすることもできまして非常に意義深いなと思いましたし。あと、このフェス、すごくいいなと思ったのがポッドキャストステージっていうのがあって。ヒップホップの人気ポッドキャストがそこで生公開収録をしていたんですよ。で、そこだけはちゃんとみなさんにヘッドホンも配られて周りの騒音が聞こえないようにポッドキャストのトークが聞けるようになっていて。そこでいろんなお話を聞くこともできてすごく面白かったし盛りだくさんなフェスでした。

で、リル・ウージー・ヴァートとかリッチ・ザ・キッドとかそういう次世代の若い人気ラッパーも出ていて。特にリル・ウージー・ヴァートも地元がフィラデルフィアですからすごく大きいステージでパフォーマンスしていたんだけど……でもね、自分も歳だなという風に感じたんですけど。彼らのパフォーマンスってやっぱりラップを基本、しないのよね。本当にたくさんの人が最近言っていることですけど、全て声も入ったトラックをバックで流して、それに合わせてラップしたり叫んだり水をまいたりするっていうようなステージングなんですけども。

かたやジェイダキスとかファボラスなんかがすごく肉厚なステージというか、すごく硬派なラップを聞かせてくれる一方でちょっと声入りのトラックでワイワイやっているリル・ウージー・ヴァートとかリッチ・ザ・キッドのライブはちょっと物足りなく感じてしまったというのが私の率直な感想ではあるんですけども。まあ、これは私がちょっと歳を取ってしまったからだと思います。あと、その『The Roots Picnic』に加えてTDEのコンサートにも行ってまいりまして。一時期、そのチャンピオンシップ・ツアーから外されていたSZAも私が見に行ったニューヨーク公演では復帰しまして。

もう本当に98%ぐらい今回SZAの姿を見ることは諦めていたんですけど、非常にうれしいサプライズでした。ただ、このニューヨーク公演に復帰したことが原因でさらに彼女の喉の調子が悪くなってしまったということも報じられていまして。ファンとしてはすごく複雑な胸中かなと思います。そんなわけですごく目まぐるしくアメリカ滞在をしているんですけども、来週はいよいよニューオリンズとアトランタに行ってきますのでまたそちらのレポートも来週の放送でお伝えしたいと思います。

Pusha T VS Drakeのビーフ

で、本当にね、すごい忙しいのはデカいリリースが続いているからっていうのもあるんですけども。もうプシャ・Tのディス曲もすごかったし。プシャ・Tがドレイクのディス曲『The Story Of Adidon』っていうのを発表しまして。その発表された数時間後、私はちょっとこちらでエイサップ・モブのクルーの一員でもあるエイサップ・P・オン・ザ・ボーズくんと、彼の義理のお兄さんみたいなアレックスさんという人がいるんですけど。アレックスさんもJ・コール率いるDreamvilleの仕事なんかをしているプロデューサーでして。彼らと一緒に会う機会があったんですけど、本当にみんなやっぱりその話しかしていないみたいな感じでしたね。

で、みなさん「プシャ・T優勢」っていう風に言っていまして。私も今回ばかりはドレイク、本当にピンチなんじゃないかな?って感じている次第です。っていうのと、あとはなんと言ってもカニエのアルバム『Ye』が発表されたという。6月1日(金)、予告どおりに発表されたといううことで。で、前日にワイオミングのジャクソンホールっていうところでリスニングセッションをしていましたけど。このホストも黒人有名コメディアンのクリス・ロックがホストを務めて。あとはジョナ・ヒルとかも来ていて、2チェインズとかナズとか本当にみなさんオールスター勢揃いでしたね。

で、いまのシーンにおけるカニエの立ち位置って本当にどうなっているんだろう?って思っていたんですけど、でもジョナ・ヒルがいて、クリス・ロックも彼をバックアップしている姿勢であるのであれば、まあカニちゃんも安泰かなって勝手に思ってしまいました。で、この『Ye』の話もみなさん、すごくこっちでもお話をしていますけども。うーん、結構みなさん、ミックスド・レビューっていうかね。「いい」という人もいれば、「めっちゃクソだ」って言っている人もいるような感じで。私もまだ本当に細かく細かくブレイクダウンして聞いているとは言えない状況ですのでなんとも言えないんですけども……ただ、昨日も『The Roots Picnic』に行った時にプロデューサーの9th Wonderがポッドキャストの場で言っていたんですけども。

アメリカでも賛否両論

「いま、現代社会は嫌いなものを嫌いってはっきり言えない社会だ。そんな中でカニエがあれだけ自分の意見をはっきり言うことができて、しかもそれをラップというアートフォームに落とし込むというのは本当に素晴らしいことだと思う。なので今回の『Ye』というアルバムに関してはすごくパーフェクトだと思う」という風にも言っていまして。で、女性ラッパーのラプソディーも他のポッドキャストに参加していたんですけど、そこでもやっぱり「カニエはクレイジーだけどグッド・クレイジー(いい意味でクレイジー)。だから今回の作品に関してもすごくいいと思う」っていう風にも言っていて。ただ、そのポッドキャストに他にも参加していたいわゆるブロガーとかライターの人に関しては本当に「トラッシュ(ゴミ)みたいなアルバムだ」みたいにも言っていて。

本当にね、7曲入りのすごく短い尺でもあるし、なんとも言い難いなとも思ってはいるところなんだけど。でも、私は前作『The Life Of Pablo』がすごく好きなアルバムなんですけども。なぜ好きか?っていうと、本当にカニエ・ウェストの人間臭さみたいなところが存分に表れているという、そういう点においていいなと思ったんですよ。

渡辺志保 カニエ・ウェスト『The Life of Pablo』徹底解説
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で、この『Ye』に関してもまさにそうなんですけども、本当に他のサイトのレビューにも書いてありましたけど「カニエがカニエのために作ったアルバム」みたいにも言われてまして。まあ、まさにそうだなと。アーティストの人がアルバム作品を作るのは自分の主義主張であるとか自分の感情だとか、そういったことをアートフォームに落とし込む形がひとつ、アルバムだと思うので。そういう点においては本当に素晴らしい作品だと思う一方で……うーん。なんかもうちょっとまとまった形で聞きたかったなと。7曲以上聞きたかったと思いますし、話しているトピックなんかを聞いても本当にここ1、2週間で録ったのかな?っていうような内容が多かったりしたので。

たとえばこれが、うーん。いまのカニエにはそういうことは無理なのかもしれないですけど、もっと時間をかけて作ったアルバムだったらどんなだったんだろう? とかも思ったりしました。もちろん『The Life Of Pablo』がリリースされてから1年以上の時がたっていますので、それぐらいの時間はもちろんかけて作られたアルバムだとも思うんですけども。また違った形の『Ye』がもしあるんだとしたら、そちらも聞きたいなという風に思った次第です。このアルバムに関しても、また帰国してから『INSIDE OUT』で改めて紹介したいなとも思うんですけど。今日は私からこのカニエ・ウェストの最新アルバム『Ye』の中から1曲、お届けしたいなと思いまして。

どうせかけるならちょっとポジティブな気分になれる曲をかけたいという風に思ったんですね。いまから聞いていただきたい曲はカニエの『Wouldn’t Leave』っていう曲なんですけども。これはパーティー・ネクストドアーとジェレマイが参加している曲なんですけども。まあね、「いろんな奴隷制に対する発言とかトランプに対する発言とかをしてみんながガヤガヤ意見を言ってきた。自分の奥さん(My Wife = キム・カーダシアン)が叫びながら僕に言ったんだ。『私たち、全てを失ってしまうかもしれないわよ!』っていう風に言ったけど、そんな彼女を落ち着かせて、そういう状況だから彼女は僕のもとを離れてしまったかもしれない。だけど、『Wouldn’t Leave』。彼女はまだ僕のもとを離れないんだ」っていう、なんか夫婦の絆を歌ったような歌ですので、ちょっとここで聞いていただきたいと思います。カニエ・ウェストで『Wouldn’t Leave』。

Kanye West『Wouldn’t Leave』

(DJ YANATAKE)いまお聞きいただいているのはニューヨークにいる渡辺志保の選曲でカニエ・ウェスト『Wouldn’t Leave』でした。本当にね、カニエのアルバム、志保はまだまだ話したいことがいっぱいあると思うし。俺もまだなんかね、簡単に聞いてSNSで「超最高!」って言えるような、そういうような感じじゃないというのが正直な感想です。なのでまだまだもっと深いところまで調べてから話したいなという気もするぐらいのアルバムだったと思いますし。でも、俺は7曲が物足りないっていう感じはあまりしなくて。逆にこういうのが本当に時代に合っているなという気もするし。そういうことに関しては結構ずっと前からこの番組でも言ってきたけど、ストリーミングサービスが背景にあるんじゃないかと思っています。

DJ YANATAKE ストリーミング時代のアルバム像を語る
DJ YANATAKEさんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でカニエ・ウェストの『Ye』やプシャ・T『Daytona』など、短めのアルバムの流行の兆しについてトーク。ストリーミング時代の音楽アルバム像について話していました。 K...

そこでの再生される感じだったり、音楽の聞き方自体がやっぱりアルバムっていうフォーマットをいままでみんなが思っていた「アルバム」っていうものからどんどん変わってきているっていうことじゃないかなと思っています。あと、プシャ・Tとドレイクに関してはね、もうやっぱり完全に用意されていた感じがするんだよな。あのタイミングであの写真ありきでビーフも行われている気もするし。あのタイミングであんなに都合よく写真がゲットできるわけないし。あそこまで用意されていたんだよ。

DJ YANATAKE Pusha TとDrakeのビーフを語る
DJ YANATAKEさんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でPusha Tの新作アルバム『Daytona』に収録されていた曲を発端にして発生したPusha TとDrakeのビーフについて話していました。 Pusha T: Dr...

で、その後に急に、いままで速攻でアンサーを返していたドレイクが今度は逆にインスタかなんかで弁明しただけで戻してこないっていうのも、なんかやっぱり今度ドレイクはアルバムで何を言うんだろう?っていうところまでのシナリオができている風に見えちゃうんだよなっていう、まあ勝手な邪推ですけども。そういう風にも思っております。

<書き起こしおわり>

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