渡辺志保さんが2020年9月21日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でカニエ・ウェストがTwitter上で自身が音楽レーベルと結んでいる契約書を公開したことについて話していました。
(渡辺志保)今、ちょっとアメリカの音楽著作権について勉強してるみたいな。といいますのも、皆さんもご存知だと思うけど。カニエ・ウェストさんがTwitter上で「音楽業界は現代の奴隷制だ」っていうことで。自ら契約した、自らのサインが入った契約書を1ページごとに丁寧にPDFのファイルをTwitterに投稿してくださって。で、話題になっているということです。
— ye (@kanyewest) September 16, 2020
で、そもそもなんですけれども、そのカニエが暴露した契約書によると、最初はロッカフェラと契約した契約書。彼はもともとはジェイ・Zの、ロッカフェラの門下生みたいな感じでね、プロデューサーとして業界入りしましたので。その際のロッカフェラとの契約書。
プラス、あとはロッカフェラもそうですけど、ユニバーサルのレーベルと契約を結んだ際の内容がブワーッと暴露されちゃってるんですけど。この内容に関して、結構いくつもの音楽ニュースサイト……ヒップホップサイトとかもブレークダウン。この契約書ってどういうことなのか?っていうのを解説している記事がここ3日、4日でブワーッとネット上に上がっておりまして。私もウェブの辞書を隣りに、タブを広げながらその記事を読んで今、勉強してるっていう感じなんですよね。
で、基本的にメジャーレーベル……まあインディーもだいたいそうかな? レーベルと契約しているアーティストであれば、だいたい原盤権っていうもの。自分の作った楽曲の持ち主が自分ではなくて、レーベルに帰属するっていうことになってるんですよね。それで楽曲が売れたりとか、どこかで使われたりしたら、そのロイヤリティーと言って、パーセンテージをもらうっていう。そういったビジネスの形がずっと何十年も前からできあがっているんですけれども。それをカニエは「奴隷制と同じだ」っていう風に言っていて。
I need to see everybody’s contracts at Universal and Sony
I’m not gonna watch my people be enslaved
I’m putting my life on the line for my people
The music industry and the NBA are modern day slave ships
I’m the new Moses
— ye (@kanyewest) September 15, 2020
まあたしかに自分が作った作品なのに、自分の持ち物じゃない。それをレコード社に半ば売り渡すような制度になっている。というのは、アーティスト本人がそういう風に主張すると「ああ、たしかにそうだね」っていう感じにもなるんですけれども。でも私がひとつ疑問に思ったのは、カニエって本当に90年代からそういった音楽業界にいるじゃない? で、その原盤の制度であるとか、あとは出版の権利とか管理の制度って別にここ数年で変わった制度でもないし。取り沙汰されている問題でもないのに、なんでこのタイミングで彼がそういう風に告発したのかがちょっと分からないなと思っていて。
で、それこそテイラー・スウィフトなんかもその問題にとらわれてというか。めちゃめちゃ弁護士とレーベルサイドと戦って。で、自分の原盤を自分で所有するっていう風に動いて、それを自分で解決の方に導いたわけですよね。だからテイラーもそういう風に経験したことだし。あとジェイ・Zなんかも「アーティストに正しい印税が分配されない」っていうことで、自分で自ら音楽ストリーミングサービスのTIDALを買い取って。「他のストリーミングサービスとは違うロイヤリティーをアーティストに還元します」ってことをやってきた。
なんだけど、カニエもそんな……なんでこのタイミングでカニエが?っていう風にひとつ、思っていて。私も今、ピッチフォークとか。あと、大好きなDJBOOTHとかの解説の記事を読んでいるんですけれども。だいたい、弁護士さんが解説してくれてるんですが、結構弁護士さんたち側はレーベル寄りの意見というか。やはり、カニエの発言や主張に対して「これはどうなのか?」っていう風に言ってる記事が多い気がしますね。
契約書を見た弁護士たちの意見
で、カニエも日本時間の今朝になるのかな? 「僕が考えている新しい契約内容はこうだ! 新しいモデル、ニューモデルはこうだ!」っていうのをTwitterで発表していて。たとえば、アーティストの原盤権は1年ごとに帰属権が更新されるみたいな。1年ごとに交渉してそれがレーベルに預けられるのか、アーティスト側に戻ってくるのかを決めるみたいなえことを言っていたのね。なんだけど、それって弁護士の人が言うには「1年ごとにその交渉をする費用がさらにかかるから、実はコストパフォーマンスがめちゃめちゃ悪い提案だ」っていうことらしくて。
あとはピッチフォークの記事に書いてあったんだけど。契約書を読めばわかるんですが、カニエ・ウェストはちなみに『Yeezus』のアルバムを作る時にすでに12億円余り。12ミリオンドルだから12億円余りをすでにアドバンスとしてユニバーサルからもらっていて。そのうち、約4億円をレコーディング費用に充てたっていう風にも書いてあって。それってめちゃめちゃレーベルに守られてるってことじゃないか?っていう風に書かれていたんですよね。
で、カニエの今回の主張というのは「僕は(自分が所属しているメジャーレーベルの)ユニバーサルに全然守られていない」っていうことであって。でも、この巨額のアドバンスを払うっていうこと自体がめちゃめちゃ守られてることだと思うし。これは他のDJBOOTHの弁護士さんも言ってたんですけど。カニエがその原盤を所有したとして、それをどうしたいのかがちょっと分からないという。守るにもお金がかかるし、管理をするにもお金がかかるから。カニエはもちろんお金の問題ではないんだろうけれども。そのへんはどう考えてるんだろうね?っていうのも問題になっていましたし。
で、なんと言っても契約書をこうやって世界にさらすということは、その機密条項というんですかね? 守秘義務に反することなので、下手したらユニバーサルから訴えられかねないし。あと、カニエが自分の弁護士とテキスト、ショートメールでやり取りしているスクショをTwitterに上げているんだけども。これも弁護士と依頼人(クライアント)との守秘義務に反するから、これもまた問題だぞっていうようなことが淡々と解説されておりまして。
私もちょっとこのへん、ちゃんとわかっていない部分もあるので。ここでいろんなことをお話しするのははばかられるんですけども。ちょっと自分も勉強しながら、カニエ・ウェストさんの主張。そして音楽業界的にどうなるのが一番いいのか?っていうことをまったりと考えていきたいなっていう風に思っております。
(DJ YANATAKE)日本とも違ったりして。複雑な……俺、だから意外とほら、いきなりビッグビジネスになっちゃったというか。いきなりではないのかもしれないけども、そういうところもあるわけじゃない? だから、本当にあんまりわかってなかった可能性もあるよね。「そのへん、全部任せます!」みたいな。
(渡辺志保)そうね。「弁護士に任せます」っていうね。
(DJ YANATAKE)それで今、知って「ええっ?」ってなっているみたいな。
(渡辺志保)それでピッチフォークの記事に登場する女性弁護士の方がいて。「私が見た限りだと全然問題ない契約書だし、ぶっちゃけアーティスト側にかなり有利な契約内容になっている。ユニバーサルのスタンダードな契約内容からここまで持っていくのにもめちゃめちゃ強力な弁護士チームがいるはずだ」っていう風に言っていて。たしか印税の率が14%とか16%っていう風になっていた気がするんですよね。
で、日本でも「原盤権 アーティスト 印税」とかで調べたら出てくると思うんですけど。日本のスタンダードの印税、アーティストさんへ返っていく印税のパーセンテージって本当数%で。10%以下だったりするんですよ。だから私はそのカニエの契約書をパッと見て「えっ、めっちゃ良い条件じゃね? かつ、12億円もアドバンスをもらえるとか、なかなかなくね?」と思っていたの。まあ私も勉強をせねば……っていう感じだし。
で、ちょっと前に『Gucci Gucci』っていう曲で大ブレイクしたKreayshawnという女性ラッパーがいましたけど。でも彼女も、ちょっとソニーと結んだ契約の内容で今も苦しんでるみたいな。巨額の契約金を手にしたが、それが足かせになって今も苦しんでるみたいなことがちょっと問題になってましたので。私もこのへん、調べていきたいなと思っていますね。
(DJ YANATAKE)まあ、やっぱりCDメインの時とさ、今のこのストリーミングがメインになった時のそのパーセントのあれとかが、たとえば昔のと変わらないとかはいろいろと問題が起きることなのかもしれないけど。難しい問題ですよね。
(渡辺志保)難しいですよね。で、たぶん昔だと本当にそれこそね、スタジオを借りて録音してそのテープを所有するのが原盤権とイコールだっていうことだったのかもしれないけど。今は、当たり前だけどそういうことってほぼないんですよね。デジタルファイルでやり取りするのがメインだろうし。そうなってくると、その「原盤」の概念というか、それ自体をも揺るがすような、そんなこう問題提起になるのかなとか考えたりね。
(DJ YANATAKE)まあ、そうだよね。でもこの話すると、いつも思い出しますけどもね。1990年ぐらいにビースティ・ボーイズも言ってるんですよ。「自分たちの権利は自分たちで持て!」って。だからその時は「何の話かな?」と思ってたけど、すごい先見の明だったのかもしれないけど。
(渡辺志保)まあ、今も変わんないっていうことですもんね。だからまあね、この音楽に関する権利の問題って絶対に誰かが常にね問題提起してるような感じもしますので。カニちゃんがどうなるのか、ちょっと見守っていきながら、私もちょっと契約書を読む勉強をしないとなと思っているところです。
(中略)
(渡辺志保)(コメントを読む)「BAD HOPが『所持してるぜ、原盤権』と歌ってましたね」とつぶやいてくださっていまして。
(渡辺志保)なんかさ、私も原盤権がらみのリリックで強烈だったのが、あのレミー・マーティンことレミー・マがニッキー・ミナージュにあてたディス曲『shETHER』っていう曲がありましたけども。その中でも「私は自分のマスターライツ(原盤権)を所持していて。あんたなんて5人の男があんたの儲けを搾取して、その下にあんたがいるのよ」みたいな、そういうことをバシッと言っていて。
なので今、インディペンデントで活躍して、それでめっちゃ成功しているアーティストも増えているし。あとはその自分のマスターライツであるとかパブリッシング(出版)の権利。そういったものを守るために自分でプロダクションを設立して。そこで大手のレーベルと契約しているアーティストも本当にたくさんいるので。カニちゃんもG.O.O.Dミュージックとかやっているから。そのへんも完璧にやっていたんじゃないの?って思うんですけども、そうじゃないんだねっていうね。
(DJ YANATAKE)まあね。もうビッグビジネスすぎてね。なんかたぶん急に知っちゃったんだろうな。
(渡辺志保)で、前にもこの『INSIDE OUT』で話した気がするけども。カニエがそのGAPと新しく結んでいる契約書もすごいカニエにいい条件で。アパレルビジネスじゃありえないほど破格のカニちゃん寄りの契約内容になっているっていうこともニュースになっていたのね。だから本当にすごく優秀な弁護士チームがブワーッて。もう1クラス分ぐらいいるんだろうな、みたいな。で、カニちゃんはこの問題でもさ、「世界中の弁護士にこの契約書を読んでほしい」とか言ってツイートしていたけども。その次の投稿でですね、「Kim is my lawyer(キムが俺の弁護士だ)」っていうスウェットまで作っていましたので頼もしいなと思った次第です。
「Kim is my lawyer」
Uh oooooh ? pic.twitter.com/bupcJOYnxm
— ye (@kanyewest) September 16, 2020
<書き起こしおわり>