安住紳一郎 宮崎県日南市大堂津 醤油の旅を語る

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安住紳一郎さんが2009年9月にTBSラジオ『日曜天国』の中で話したトークの書き起こし。醤油マニアの安住さんがお休みを使って宮崎県日南市大堂津まで醤油の買い付けに行った際の模様を話していました。

(安住紳一郎)さて、一方休んだ方の私なんですが、実は少し他の番組のスケジュールとうまく連携が取れず、結局日、月の2日間の休みを頂きまして。まあ、かなりグチグチ言ってたんですが……ちょっとね、2日間の夏休みって短いな、みたいなことですよね。世の中5連休、9連休と言っている中で。まあでも、せっかく頂いた休みなので、気分転換に旅行にでも行こうと思い。2年前くらいからずっと行きたいなと思っていたところが実はありまして。それで、まあよく思いつきであちらこちらブラリと出かけることが多いんですが、今回は珍しく3週間前くらいに予定を立て、予約も取り。日、月と2日かけて一人旅なんですけれども。ずっと行きたいなと思っていた場所なんですけども。

(中澤有美子)どこでしょう?

(安住紳一郎)九州の宮崎県にあります日南海岸。ここにずっと行きたかったんですね。みnさんは行かれたことございますでしょうか? 宮崎県というと九州の、地図で書きますと右下の方にあるわけですけれども。ちょうど鹿児島の上、熊本の右。四国と反対側の九州にあるということなんですが。縦に長い宮崎県の中でも、最も南の方ですね。リゾート地で有名な青島から、下の都井岬までの太平洋側の海岸線ですね。

(中澤有美子)ふーん!

(安住紳一郎)日南海岸。国定公園にも指定されていますけれどもね。一時期、海外旅行や沖縄旅行が一般的ではなかった時代は、ずいぶん新婚旅行といえばこのへんの青島とか日南というと、伊勢志摩と並んで新婚旅行の大変多い多かった時代もありまして。私の父母の世代などはそういう世代なんですけれども。行かれた方も多いんではないかなと思いますが。その日南海岸に程近い日南市というのがあるんですが。日南市の海岸沿いにある大堂津という場所にどうしても行きたかったね。

(中澤有美子)ふーん。

(安住紳一郎)大堂津。名前からしてかっこいいですけどね。大堂津。人口4200人ぐらいの街なんですけれども。2年くらい前から、ずっとこの宮崎県日南市大堂津地区っていうんですが、大堂津にどうしても行きたかったんですよ。なぜでしょうか?

(中澤有美子)ねえ。

(安住紳一郎)ユミタンファン、答えろ!

(中澤有美子)フハハハハッ!

(安住紳一郎)反乱分子、答えよ!

(中澤有美子)なんだろうな?

(安住紳一郎)うん。「なに質問してるんだよ!」っていう風にね、たぶん聞いていると思うんですよ。「(安住さん休暇のため中澤有美子さんが1人でMCを務めた)先週の方がよかったのに……なにこいつ、勝手に質問してくるんだよ?」って(笑)。

(中澤有美子)フフフ(笑)。いやいや。

(安住紳一郎)日南市大堂津。おわかりになりますか?

(中澤有美子)うーん? 景色がいいんですか?

(安住紳一郎)ああーっ、私が景色のいいところを好んで行くでしょうか?

(中澤有美子)フハハハハッ!

(安住紳一郎)まあ、行きますけども。2年前ぐらいから、どうしても宮崎県日南市大堂津地区。行きたいんですね。

(中澤有美子)美味しいものがある?

(安住紳一郎)うーん、近いですね。ユミタンファン、聞くのをやめるな!

(中澤有美子)フハハハハッ! なんで(笑)。

(安住紳一郎)大堂津になにかがあるんですね。おわかりになりますか?

(中澤有美子)洞穴とか?

(安住紳一郎)洞穴がある? ああー、違いますねー。

(中澤有美子)わかった。

(安住紳一郎)はい。

(中澤有美子)醤油!

(安住紳一郎)やっぱり、わかっちゃいますね(笑)。やっぱりわかっちゃう。そうなんですよね。もうみなさん、耳にタコができぐらいだと思うんですが、私、醤油が大好きなもんでして。ずいぶんこの番組でもそんな話を、最初は嫌だ嫌だと言いながらも、相当話しているんですが。

安住紳一郎 日本全国の醤油の地域差を語る
安住紳一郎さんが2008年12月にTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』で話したトークの書き起こし。醤油研究が趣味の安住さんが日本全国の醤油の地域差について語っていました。 ...

(中澤有美子)フフフ(笑)。嫌だったんですか? 最初は(笑)。

(安住紳一郎)最初はね。あの80、90になるまで誰に知られることもなく自分の趣味としてやっていきたいなという風に考えたところがあるんですけれども。ちょっとね、いろいろと……ブログで煽られた経緯なんかもあって。

(中澤有美子)フフフ(笑)。ああ、そうだ(笑)。

(安住紳一郎)ついついね、自分から発表しちゃったという経緯もありますが。私は、これもしつこく何回も言っているんで、皆さん本当に吐き気をもよおすんじゃないかと思うんですけども。全国に1500の醤油のメーカーがある。で、私はいまのところ150から180ぐらいまでいってるんですが。だいたい1年に30メーカーぐらいの醤油を手に入れることができるんですけれども。ということで、繰り返しなりますが私はこの醤油のコレクションを85才になるまでやり続けなくちゃならないという計算になるんですが(笑)。

(中澤有美子)そうですね(笑)。網羅するには。

(安住紳一郎)その全国に1500あるメーカーの一覧表っていうのを私、去年の夏かな?  インターネット、電話帳などを駆使して作ったんですけども。それで、このまだ見ぬ醤油に思いを馳せているという、、この気持ち悪さなんですが。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)そこで、その全国一覧を見ていて、ある日ちょっとね、すごい現象に出くわしたんですよ。それでその、宮崎県日南市大堂津という住所なんですが、大堂津の3丁目と4丁目に醤油メーカーが4つあるんですよ。醸造メーカーが。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)人口4200人の街ですよ? 人口4200人の街で、醤油メーカーがなんと4つもあるというんだから。マルアン、マルタニ、エンマン、宮田っていうメーカーなんですけども。何度も言っていますけど、全国に1500ですからね。だいたい人口10万人に1つのメーカーがあるのが全国平均なんです。で、この地区は1050人に1メーカーですからね。人口55万人いる八王子市を計算すると、八王子市に550の醤油メーカーがひしめいているぐらいの異常さですよ。

(中澤有美子)フハハハハッ! 異常(笑)。

(安住紳一郎)八王子に550種類の醤油メーカーがあったら、驚きますでしょう?

(中澤有美子)すごい! 驚きますね!

(安住紳一郎)そういうことがその日南市大堂津地区で行われているという。これはまさに一票の格差ならぬ、醤油ひとさしの格差!

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)1メーカーの人口が少ないんですから。で、それはどういうことか? というと、たぶんそこにお住いになっている方々、住民の醤油に対しての思い入れがまず強い。さらには、その小さい街でありながらも住み分けができているということは、たぶん醤油メーカーそれぞれの各個体のレベルが高いはずなんですよ。

(中澤有美子)そうでしょうね。

(安住紳一郎)優劣がはっきりついたらかならず、長い歴史の中で淘汰されますから。合併したりね。全く売れなくなったりするわけですから。っていうことは、それを4つのメーカーがそれぞれに主張して、それぞれに受け入れられて。で、長い歴史を刻んでいる。これは相当その醤油の文化レベルっていうのかな? その賞味感覚が優れてる地区なんじゃないかということで。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)もうずっと、2年ぐらい前から行きたかったんですが。なかなかちょっとね、宮崎市内からも車で1時間半……もっとかな? 離れてるんで、行くことができなくて。「よーし、じゃあちょっとこの日曜日と月曜日使ってみよう!」と思うに至ったということなんですけどね。

(中澤有美子)おおっ! へー!

(安住紳一郎)たしかに全国にはこういうように醤油メーカーがある地域に固まっている所っていうのが数ヶ所あるんですね。いわば「醤油の街」などと言われるところなんですが。関東にお住まいのみなさんですと、言わずと知れた千葉が有名だと思いますけれども。ヒゲタ、ヤマサ、大メーカーを抱える銚子市。あるいは、キッコーマン、キノエネのあります野田市。それから関西だと、薄口醤油になりますが兵庫県たつの市っていうのが醤油の街ですね。ヒガシマル、マルテン、末廣、カネヰ、ヤマイっていうね、強豪薄口メーカーがひしめいていますが。更には、たつのには「うすくち龍野醤油資料館」っていうのもありますよね。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)それから、ちょっと下がって紀伊半島。和歌山の方に湯浅。湯浅も醤油のふるさとという風に言われてまして、歴史もあるところなんですね。さらに醤油の街でいまいちばん賑わっている。名実ともに、四国香川県小豆島。ここが醤油の街ですね。『二十四の瞳』の撮影場所と醤油蔵めぐりが観光の目玉になっていますからね。

(中澤有美子)ああ、そうなんですね。

(安住紳一郎)もうみんな、小豆島に行くとだいたい『二十四の瞳』の撮影場所、それから醤油蔵めぐりみたいなのが観光コースに組み込まれているっていう。さらに、小豆島は黄色いキャップでおなじみのごま油、かどや製油。あのごま油の本社もあったり。さらには、オリーブが名産でオリーブオイルが取れたり。醤油も名産でごま油も名産でオリーブオイルも名産っていう、ちょっと小豆島はなんとなく台所のいちばん下の引き出しの街みたいな、そういう……。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)「ここ全部小豆島だな!」みたいなね。そんな感じ、するでしょう?

(中澤有美子)まったくですね!

(安住紳一郎)ごま油、オリーブオイルに醤油ですよ。これ、香川県小豆島。マルキン醤油っていう有名なメーカーがありますけど。要するに、ですから兵庫県のたつの、それから若山の湯浅。それから四国香川小豆島。そして千葉県の野田・銚子。さらには、北陸金沢の大野町というところも醤油の街として有名なんですが。だいたいこれが五大醤油名産地って言われているんですけども。まあ、これは何回も言うことがあると思いますから、覚えておいてください。

(中澤有美子)フフフ(笑)。出ますよ。

(安住紳一郎)ええ。銚子・野田。兵庫たつの、和歌山湯浅、それから四国香川小豆島、石川県香川大野町。

(中澤有美子)6ですね(笑)。

(安住紳一郎)6ヶ所になったね(笑)。銚子と野田は一緒に数えるから、5ヶ所ですね。

(中澤有美子)ああ、そうですか。はい。

(安住紳一郎)話は戻って、宮崎の大堂津。これ、私まったく聞いたこともないし、インターネットや本を見ても「醤油の街」というような記述は載っていないんですよ。でも、人口4200人で4つのメーカーですからね、十分に醤油の街を名乗ってもいいぐらいな。むしろこれだけ街おこし全盛の昨今、なぜアピールをしないのか? それぐらいの気持ちになりますよね? で、いったいその大堂津という……まあカツオの一本釣りなんかが有名な漁港が近いんですけども。なにゆえ、醤油づくりに適した理由があるのだろう? と。小さな街で4メーカー存在する理由はなんなんだろうか? この2年余りで私、その自分で作った一覧表を見ながら、想像は大きく膨らみ、好奇心の炎が天を焦がすがごとくというですね。

(中澤有美子)フハハハハッ!

(安住紳一郎)みなさん、興味ありますかね?

(中澤有美子)あるでしょう!

(安住紳一郎)どうですかね? 人口4200人で4つの醤油メーカーですよ。なんだ、その理由は? しかも、ぜんぜん名所にも観光地にもなってない。なんだ? そんな積年に渡り恋い焦がれた大堂津についに行く日を迎えました! 先週の日曜日、9月13日ですね。休みをいただきましたから。私、張り切っておりましたから。宮崎行きの飛行機、朝一番羽田発。6時45分発の便を予約いたしました。

(中澤有美子)わお!

(安住紳一郎)ええ。6時45分はさすがに早いかな? とも思いましたが、いや、2年も待ったんだからこれぐらいでいいんだ。6時45分、朝イチに乗り込むんだ。問題ない!……でも、さすがに早すぎた。私、寝坊しました。

(中澤有美子)フハハハハッ!

(安住紳一郎)乗り遅れました(笑)。

(中澤有美子)最初から(笑)。

(安住紳一郎)終わりです。

(中澤有美子)えっ……?(笑)。

(安住紳一郎)もうさすがに好奇心と体力がユニゾンする年代ではなくなりましたね。もう布団の中で泣きました。せっかく3週間前に格安航空券を取ったのに、台無しですよ。半額以下で取ったんですよ。で、日本の航空業界は時間を守れない人には定額運賃を求めますね。要するにもう、3週間前に格安で取った航空券はそれは払い戻し手数料がかかる上に、今度は新しく、乗り遅れましたから次の便で行こうとするとそれはいわゆる当日航空券になりますので定額運賃になっちゃう。

(中澤有美子)そうか、そうですね。

(安住紳一郎)それで+2万円ぐらいの出費になっちゃってるんですよ。で、私ケチだから。考えに考え悩んじゃって。「2万円余計に払ってでも行こうか、それとも2万円出すのはもったいないからやめて、日曜日どっか行こうか……」みたいな風に考えたんですが、でもね、せっかくもらった1年に一度の日曜日なので、またちょっと、「こういう晴れない気持ちで2年抱えた疑問を胸にしまっておく日曜日も辛かろう。ああ、また働けばいいんだろう!」と思って、それでとりあえず家を出て羽田に向かって。

(中澤有美子)ああ、そうですか。

(安住紳一郎)それで、ちょっと次の宮崎行きの飛行機は JALもANAもスカイネットアジアも飛んでるんで、ちょっとどれか分からないんで。とりあえず羽田空港に向かって。それで空港のカウンターに着いて、乗れる飛行機探して。「すいません、宮崎県行きのチケット、いちばん早いのをお願いします」みたいなこと言ったら、「今日は日曜日ですので早い便は満席をいただいております」になってしまって。「ああ、日曜日だった。そうか!」って思って。でも、ここから怖いくらいの執念が湧いてきて。やっぱり「ヨットは向かい風の方が早く進む」みたいなことになっちゃって。

(中澤有美子)フハハハハッ!

(安住紳一郎)「早い時間は取れないんですかっ? じゃあ、何時だったら取れるんですか?」って言ったら、「午後5時の便です」って言うんですよ。「私は大至急、問題を解決しにいかねばならないんですっ!」みたいな、なんかレイトン博士みたいになっちゃって。それで、「じゃあわかりました。九州の他の空港は空席ありますか?」って聞いたら、「福岡の便だったらたくさんありますので、早い時間の便が取れると思います」って。「もういいや。福岡行こう」と思って。で、福岡行きに乗って。8時発ぐらいの福岡行きの飛行機に乗って、福岡空港に着いたのが10時過ぎぐらいで。駅前のレンタカー屋さんでレンタカー借りて。またちょっと突然だったもんですから、借りれるかな? と思ったんですけど運よく空いてまして。でも、私のいつもの定番のヴィッツを空いてなかったんで今回はイストなりましたけれども。

(中澤有美子)ほう!(笑)。

(安住紳一郎)それで宮崎までレンタカー飛ばしてブーン!って行って。

(中澤有美子)わお!

(安住紳一郎)それでよくテレビで東国原知事が話をしていましたけども、宮崎県は高速道路がどうのこうの……っていうのがすごくわかっちゃって。途中までしかできてないんで、ずっと佐賀・熊本で鹿児島の方からグーッと回って。結構遠くて。うん。結局、目的地の大堂津に着くまで5時間半ぐらいかかっちゃって。

(中澤有美子)うわーっ!

(安住紳一郎)「長時間の運転、お疲れ様でしたそろそろ休憩を取ってください」っていうのを3回、聞いちゃいましたよ。

(中澤有美子)フハハハハッ! ナビが言ってくれるんだ(笑)。

(安住紳一郎)それで高速代がETC日曜日割引ですから、1000円になるかな?って思ったんですけど、当然のごとくETCカードは家に忘れておりましたんで。6500円払って。「ああ、2万6500円になった……」って。どんどんお金もなくなって、時間もどんどんなくなって。でも、念願の大堂津にやっと着きまして。

(中澤有美子)着いたんですね!

(安住紳一郎)ええ。そしたら本当に無人駅がひとつあって。それで本当にコンビニエンスストアもないような駅前の通りがあって。それで、お土産屋さんとお菓子屋さん、魚屋さん、八百屋さんぐらいがあるような街並みですね。本当にほのぼのとした感じで。あんまり道路もそんなに大きくないですが。「ええっ、こんな街に醤油メーカーが4つもあるのかな?」と思って。でも、やっぱり散策してみると、蔵がね、4つもあるんですよ。で、もうテンション上がって上がって。すごいでしょう? そんな街にだって4つもあるんですもん。なかなかいい感じじゃないか! と思って。もう午後5時ぐらいなんで、もうそろそろ蔵も閉まるくらいなんで、慌てて。1軒1軒回って。ちょっと閉まっていたところもあったんですが。で、空いてるところがあって。蔵ですから、ちょっと小売りをしてるかどうかわかんないんですけど、建設会社の事務所みたいな横の引き戸をガラガラガラッなんて開けると、人がいるようないないような事務所があって。

(中澤有美子)うんうんうん。

(安住紳一郎)「空き巣に入られないかな?」っていうような事務所ですよ。ガラガラッて開けて、「すいませーん! 小売りはしていますか?」なんて言うと、奥からご主人が出てくるんですよ。上はシルバーの作業着で、前田吟さんみたいなイメージね。遠近両用メガネみたいなシルバーのメガネね。(ガラガラッ……)「なに?」「あ、すいません。ちょっと小売りをしていただきたいんですけど」って。蔵に行って「小売りしてくださいますか?」っていうコメントも醤油マニアとしてはもう、すごいわけよ(笑)。

(中澤有美子)アハハハハッ! うれしい! そんな自分がうれしい。

(安住紳一郎)それでその前田吟さんが遠近両用メガネをクククッてやって。で、まずは店先に停まっている私のイストを見たわけ。それで「ああ、車で来たの? どこから?」って。で、ナンバーをご主人が見たみたいで。福岡のレンタカーなんで、福岡ナンバーが書いてあって。「福岡から買いに来たのか?」って言われて。「物好きだな!」なんてさ。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)「わざわざ来たのか? 物好きだな!」なんて言われて。でも本当に俺、喉元まで「福岡じゃない。東京だ」っていうのが出かかったのね。そうですよね。でも「東京だ」なんて言ったら、ただの物好きじゃないみたいなことになっちゃうから。「福岡から来たのか、物好きだな!」なんて言われて。「すいません。1リットル、一升瓶でも構わないので小売りしていただけますか?」って言ったら、「ああ、いいけど。わざわざ買いに来たのか?」「はい。ちょっといろいろと醤油が好きで。あちらこちらのメーカーから醤油を買い求めているんですけども」「ああ、そうか。わかった。ちょっと待ってくれ」って。で、奥から1リットルのペットボトルに入ったのを「これでいいか?」とかって言って。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)そしたら「吟醸」とか書いてあって。たぶんいい醤油だと思うんですね。で、私のポリシーは吟醸とかプレミアものではなくて、ごくごく一般のラインナップっていうの? ファーストラインナップみたいなのがほしい。で、「こういう立派なものではなくて一番オーソドックスなものをください」って言ったら、「いちばんオーソドックス? ちょっと待って」ってオーソドックスなのを持ってきて。「でも、こっちの方が上手いんだよ!」って、吟撰の方をね。

(中澤有美子)先ほどすすめてくれた。

(安住紳一郎)「絶対こっちなんだよな。こっち、売りたくねえんだ」みたいなことになっちゃって。「でも、私は収集の定義からいってこっちなんです」「収集の定義ってなんだ?」みたいなことになっちゃって。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)「全国の醤油メーカーのいちばんオーソドックスな醤油の味を比べてるので、逆にそのプレミアとか吟撰とかついてしまっては困るんです」みたいなこと言って。「でも全国の味を調べているんだったら、余計に困るんだけど!」みたいなことになっちゃって。

(中澤有美子)ああ、そうか。自信を持ってこちらをおすすめしたいと。

(安住紳一郎)で、有耶無耶なままその2つをもらうことになって。で、まあとりあえずは、あんまり機嫌を損ねてもあれだから。「ああ、2つください」なんて言って2つもらって。さあ、そして問題の、なぜこの大堂津に醤油メーカーがひしめいてるのか? これだけお金かけて、これだけ時間かけて行ったわけですから、聞きたくて聞きたくて仕方がない。ちょっと、ある程度コミュニケーションができていないと向こうも話しづらいだろうから……みたいなところで、ちょっとね、無駄話なんかもして。

(中澤有美子)はい。

(安住紳一郎)で、いよいよ核心ですよ。 「で、ご主人、こちらの大堂津は人口4200人にして4つのメーカーがありますけども、なぜこの地区は醤油づくりが盛んなんでしょうか?」というね、過不足ない質問をね、ぶつけたわけですよ。

(中澤有美子)はい。本丸へ。

(安住紳一郎)本丸へ。もうこの日1日、時間とお金をたっぷりかけているのよ! で、その答えが聞きたくて行ったわけよ! そしたら前田吟さんがさ、遠近両用メガネをスッと外してさ、キッとこっちを見て言うわけよ。

(中澤有美子)はい!

(安住紳一郎)「キターッ!」って思って。「うううーっ!」って思うわけじゃない? 醤油マニアにはたまらないわけよ。だってインターネットにも本にも書いてないことを、これから直で耳で聞くんだから!

(中澤有美子)はい!

(安住紳一郎)そのシルバーの作業着の前田吟さんからさ。で、メガネを外したんだよ。で、こっちを見たんだよ? 「うわーっ!」って思ったわけ。前田吟さんが一言、私にビシッと言ったのよ。「知らん!」って。

(中澤有美子)フ、フハハハハッ!

(安住紳一郎)「ひえーーーーーっ! ひゃーーーーーーっ!」。

(中澤有美子)メガネ、外して(笑)。

(安住紳一郎)別に意地悪して言っているわけじゃないのよ。本当に知らないんだって。メガネをバッと外して、「知らん!」。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)忘れられないよ、あの光景は。びっくりしたもん! 「ひえーっ!」って言ったもん。俺、本当に(笑)。

(中澤有美子)安住さん、涙目になっている(笑)。

(安住紳一郎)「な、なんで知らないの!?」って。「待ってください、ご主人! 全国には1500のメーカーがあって、全国平均は人口10万人に1メーカーの割合なんですよ。こちらの大堂津地区は人口4200人で4メーカーじゃないですか。全国的に見て大変特異な地域なんですよ。なにか、理由はありますよね? 教えてください!」って。

(中澤有美子)すがるように(笑)。アハハハハッ!

(安住紳一郎)で、前田吟さん。メガネを外して歩きながら、僕の方に来て。僕の持っている醤油の吟撰の方のラベルを拭き拭きしながら、「そんなこと言われても、俺たちそんなこと知らねえもん!」って。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)うん。本当なんだよ。「えっ、そうなの?」って言ってたよ。「このへん、そんなに多いの? 昔からみんなやっているからな。全国的にこの地区は醤油メーカーが多いのかい?」なんて言われて。

(中澤有美子)じゃあもう、ご自身も良さに気づいていないみたいな。

(安住紳一郎)びっくりですよ。もうこんこんと説明しておきましたよ。「大変に珍しい地区ですよ!」って。まあでもね、自分の魅力に気づいていない美人ほど、美しいと言いますからね。またそんな素朴さがね、いいのかなとも思いましたけども。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)驚きましたよ。メガネを外して……たぶん、迷ったんだろうね。「えっ、なに言ってんの?」みたいなことだったんだろうね。パッと外して、「知らん!」って。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)「知らん!」って言われて。あた時間がある時、ゆっくり行って、いろいろと調べたいと思いますけど。たぶんね、いろいろと焼酎作りが盛んだったとか、水が美味しいとかいろいろとあると思うんですけどね。たぶん、住んでらっしゃる方、自分の街の良さに、まあ謙虚な気持ちも含めてかもしれませんが、ちょっとあまりそういう風に自慢するような感じでしゃべってなかったのかもしれないなと。まず、そこの素朴さがまたたまらないんですけどね。

(中澤有美子)本当にそうですね。へー!

(安住紳一郎)帰りの車、レンタカーの中で……私も普段はメガネを掛けるんですけども。メガネを取って「知らん! 知らん!」って練習して(笑)。

(中澤有美子)アハハハハッ! フハハハハッ!

(安住紳一郎)「かっこよかったな、あれ……」「知らん! 知らん!」ってずーっと。ルームミラーを見ながら「知らん! 知らん!」って練習して(笑)。

(中澤有美子)フハハハハッ!

(安住紳一郎)はー、びっくりした! 長くなりました。今日のメッセージテーマはこちらです。

<書き起こしおわり>

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