安住紳一郎 宮崎県日南市大堂津 醤油の旅を語る

安住紳一郎 宮崎県日南市大堂津 醤油の旅を語る 安住紳一郎の日曜天国

(安住紳一郎)それで高速代がETC日曜日割引ですから、1000円になるかな?って思ったんですけど、当然のごとくETCカードは家に忘れておりましたんで。6500円払って。「ああ、2万6500円になった……」って。どんどんお金もなくなって、時間もどんどんなくなって。でも、念願の大堂津にやっと着きまして。

(中澤有美子)着いたんですね!

(安住紳一郎)ええ。そしたら本当に無人駅がひとつあって。それで本当にコンビニエンスストアもないような駅前の通りがあって。それで、お土産屋さんとお菓子屋さん、魚屋さん、八百屋さんぐらいがあるような街並みですね。本当にほのぼのとした感じで。あんまり道路もそんなに大きくないですが。「ええっ、こんな街に醤油メーカーが4つもあるのかな?」と思って。でも、やっぱり散策してみると、蔵がね、4つもあるんですよ。で、もうテンション上がって上がって。すごいでしょう?

そんな街にだって4つもあるんですもん。なかなかいい感じじゃないか! と思って。もう午後5時ぐらいなんで、もうそろそろ蔵も閉まるくらいなんで、慌てて。1軒1軒回って。ちょっと閉まっていたところもあったんですが。で、空いてるところがあって。蔵ですから、ちょっと小売りをしてるかどうかわかんないんですけど、建設会社の事務所みたいな横の引き戸をガラガラガラッなんて開けると、人がいるようないないような事務所があって。

(中澤有美子)うんうんうん。

(安住紳一郎)「空き巣に入られないかな?」っていうような事務所ですよ。ガラガラッて開けて、「すいませーん! 小売りはしていますか?」なんて言うと、奥からご主人が出てくるんですよ。上はシルバーの作業着で、前田吟さんみたいなイメージね。遠近両用メガネみたいなシルバーのメガネね。(ガラガラッ……)「なに?」「あ、すいません。ちょっと小売りをしていただきたいんですけど」って。蔵に行って「小売りしてくださいますか?」っていうコメントも醤油マニアとしてはもう、すごいわけよ(笑)。

(中澤有美子)アハハハハッ! うれしい! そんな自分がうれしい。

蔵に行って「小売りしてくださいますか?」

(安住紳一郎)それでその前田吟さんが遠近両用メガネをクククッてやって。で、まずは店先に停まっている私のイストを見たわけ。それで「ああ、車で来たの? どこから?」って。で、ナンバーをご主人が見たみたいで。福岡のレンタカーなんで、福岡ナンバーが書いてあって。「福岡から買いに来たのか?」って言われて。「物好きだな!」なんてさ。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)「わざわざ来たのか? 物好きだな!」なんて言われて。でも本当に俺、喉元まで「福岡じゃない。東京だ」っていうのが出かかったのね。そうですよね。でも「東京だ」なんて言ったら、ただの物好きじゃないみたいなことになっちゃうから。「福岡から来たのか、物好きだな!」なんて言われて。「すいません。1リットル、一升瓶でも構わないので小売りしていただけますか?」って言ったら、「ああ、いいけど。わざわざ買いに来たのか?」「はい。ちょっといろいろと醤油が好きで。あちらこちらのメーカーから醤油を買い求めているんですけども」「ああ、そうか。わかった。ちょっと待ってくれ」って。で、奥から1リットルのペットボトルに入ったのを「これでいいか?」とかって言って。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)そしたら「吟醸」とか書いてあって。たぶんいい醤油だと思うんですね。で、私のポリシーは吟醸とかプレミアものではなくて、ごくごく一般のラインナップっていうの? ファーストラインナップみたいなのがほしい。で、「こういう立派なものではなくて一番オーソドックスなものをください」って言ったら、「いちばんオーソドックス? ちょっと待って」ってオーソドックスなのを持ってきて。「でも、こっちの方が上手いんだよ!」って、吟撰の方をね。

(中澤有美子)先ほどすすめてくれた。

(安住紳一郎)「絶対こっちなんだよな。こっち、売りたくねえんだ」みたいなことになっちゃって。「でも、私は収集の定義からいってこっちなんです」「収集の定義ってなんだ?」みたいなことになっちゃって。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)「全国の醤油メーカーのいちばんオーソドックスな醤油の味を比べてるので、逆にそのプレミアとか吟撰とかついてしまっては困るんです」みたいなこと言って。「でも全国の味を調べているんだったら、余計に困るんだけど!」みたいなことになっちゃって。

(中澤有美子)ああ、そうか。自信を持ってこちらをおすすめしたいと。

(安住紳一郎)で、有耶無耶なままその2つをもらうことになって。で、まあとりあえずは、あんまり機嫌を損ねてもあれだから。「ああ、2つください」なんて言って2つもらって。さあ、そして問題の、なぜこの大堂津に醤油メーカーがひしめいてるのか? これだけお金かけて、これだけ時間かけて行ったわけですから、聞きたくて聞きたくて仕方がない。ちょっと、ある程度コミュニケーションができていないと向こうも話しづらいだろうから……みたいなところで、ちょっとね、無駄話なんかもして。

(中澤有美子)はい。

(安住紳一郎)で、いよいよ核心ですよ。 「で、ご主人、こちらの大堂津は人口4200人にして4つのメーカーがありますけども、なぜこの地区は醤油づくりが盛んなんでしょうか?」というね、過不足ない質問をね、ぶつけたわけですよ。

(中澤有美子)はい。本丸へ。

(安住紳一郎)本丸へ。もうこの日1日、時間とお金をたっぷりかけているのよ! で、その答えが聞きたくて行ったわけよ! そしたら前田吟さんがさ、遠近両用メガネをスッと外してさ、キッとこっちを見て言うわけよ。

(中澤有美子)はい!

(安住紳一郎)「キターッ!」って思って。「うううーっ!」って思うわけじゃない? 醤油マニアにはたまらないわけよ。だってインターネットにも本にも書いてないことを、これから直で耳で聞くんだから!

(中澤有美子)はい!

(安住紳一郎)そのシルバーの作業着の前田吟さんからさ。で、メガネを外したんだよ。で、こっちを見たんだよ? 「うわーっ!」って思ったわけ。前田吟さんが一言、私にビシッと言ったのよ。「知らん!」って。

(中澤有美子)フ、フハハハハッ!

(安住紳一郎)「ひえーーーーーっ! ひゃーーーーーーっ!」。

(中澤有美子)メガネ、外して(笑)。

(安住紳一郎)別に意地悪して言っているわけじゃないのよ。本当に知らないんだって。メガネをバッと外して、「知らん!」。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)忘れられないよ、あの光景は。びっくりしたもん! 「ひえーっ!」って言ったもん。俺、本当に(笑)。

(中澤有美子)安住さん、涙目になっている(笑)。

「知らん!」

(安住紳一郎)「な、なんで知らないの!?」って。「待ってください、ご主人! 全国には1500のメーカーがあって、全国平均は人口10万人に1メーカーの割合なんですよ。こちらの大堂津地区は人口4200人で4メーカーじゃないですか。全国的に見て大変特異な地域なんですよ。なにか、理由はありますよね? 教えてください!」って。

(中澤有美子)すがるように(笑)。アハハハハッ!

(安住紳一郎)で、前田吟さん。メガネを外して歩きながら、僕の方に来て。僕の持っている醤油の吟撰の方のラベルを拭き拭きしながら、「そんなこと言われても、俺たちそんなこと知らねえもん!」って。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)うん。本当なんだよ。「えっ、そうなの?」って言ってたよ。「このへん、そんなに多いの? 昔からみんなやっているからな。全国的にこの地区は醤油メーカーが多いのかい?」なんて言われて。

(中澤有美子)じゃあもう、ご自身も良さに気づいていないみたいな。

(安住紳一郎)びっくりですよ。もうこんこんと説明しておきましたよ。「大変に珍しい地区ですよ!」って。まあでもね、自分の魅力に気づいていない美人ほど、美しいと言いますからね。またそんな素朴さがね、いいのかなとも思いましたけども。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)驚きましたよ。メガネを外して……たぶん、迷ったんだろうね。「えっ、なに言ってんの?」みたいなことだったんだろうね。パッと外して、「知らん!」って。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)「知らん!」って言われて。あた時間がある時、ゆっくり行って、いろいろと調べたいと思いますけど。たぶんね、いろいろと焼酎作りが盛んだったとか、水が美味しいとかいろいろとあると思うんですけどね。たぶん、住んでらっしゃる方、自分の街の良さに、まあ謙虚な気持ちも含めてかもしれませんが、ちょっとあまりそういう風に自慢するような感じでしゃべってなかったのかもしれないなと。まず、そこの素朴さがまたたまらないんですけどね。

(中澤有美子)本当にそうですね。へー!

(安住紳一郎)帰りの車、レンタカーの中で……私も普段はメガネを掛けるんですけども。メガネを取って「知らん! 知らん!」って練習して(笑)。

(中澤有美子)アハハハハッ! フハハハハッ!

(安住紳一郎)「かっこよかったな、あれ……」「知らん! 知らん!」ってずーっと。ルームミラーを見ながら「知らん! 知らん!」って練習して(笑)。

(中澤有美子)フハハハハッ!

(安住紳一郎)はー、びっくりした! 長くなりました。今日のメッセージテーマはこちらです。

<書き起こしおわり>

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