ヤマザキマリ 年々長くなる日本滞在時間と自身に起きた変化を語る

ヤマザキマリ 年々長くなる日本滞在時間と自身に起きた変化を語る 安住紳一郎の日曜天国

ヤマザキマリさんが2023年6月18日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中でコロナ禍以降、日本の滞在時間がどんどん長くなってきていることについてトーク。そこで気づいた自身に起きた変化について話していました。

(安住紳一郎)イタリアベースでずっと生活されていて、たまに日本に戻ってこられるので。その時にメディアの仕事などを一気にやって、片付けて、またイタリアに戻られるということで。ちょうどここ3年ぐらいはコロナ禍のこともあって、日本に来たタイミングでイタリアに戻ることができなくなったので、『日曜天国』でも2021年はもう半年の間に3回、来てもらって。

(ヤマザキマリ)そんなに出ましたっけ?

(安住紳一郎)そうなんですよ。

(中澤有美子)「今だ!」って。

(安住紳一郎)「もう今がチャンスだ!」って。で、イタリアに戻られる前にもう全部、搾り取っちゃおうと。

(ヤマザキマリ)毎回「最後だ、最後だ」って出てるじゃないですか。そしてまた今日もここにいるっていう。これもまさか、また最後で通じるわけではないですよね? いや、もうだから本当は「行き来をしている」っていうテイなんですよ。私の住処はイタリアと日本だっていうことになっているんですけども。この間、去年出た後に1回、帰ったじゃないですか。イタリア、遠いんですよ! もう行ったり来たりするのには、非常に遠く感じちゃってね。やっぱり歳のせいと、あとはコロナでずっと移動しなかったせいもあって。それで今年も1回、帰ったんですけども、遠いんですよ。やっぱり。

「遠い」っていうのは今、飛行機のルートが戦争のせいで最短ルートでは行けないんですよ。もうシルクロードの上をマルコ・ポーロのようにターッと伝わっていかなきゃいけないもんですから。

(安住紳一郎)ロシア上空を通れないから。

(ヤマザキマリ)通れないですよ。だからね、羽田・ローマの直行で15時間とか、かかるんですよ。

(安住紳一郎)あら! じゃあ、いつもより4、5時間多い?

(ヤマザキマリ)そういうことですね。で、もう着くと「遠いな。なんか、来るのが面倒くさい!」っていう気持ちがどんどん募ってきちゃって。

(安住紳一郎)それで日本の滞在時間が延びている?

(ヤマザキマリ)延びているんですよ。だって日本は温泉もあるし、美味しいものもあるし……なんだかだんだん、日本にシフトしつつあるな、みたいな。

(安住紳一郎)そうですか。旦那さんはイタリアで寂しがってますよね?

(ヤマザキマリ)寂しがってませんよ。だって、しょっちゅう来ますもん。なんか。

(安住紳一郎)ああ、旦那さんも?

夫もしょっちゅう日本に来る

(ヤマザキマリ)もう、イタリアにいるのが飽き飽きしてきたみたいで。「日本にいると何でも美味しいしね! 日本はイタリア料理、美味しいよね!」みたいな感じで。「温泉もあるし」とか。私と同じことを言っていて。だからもう、行く必然性というかね。家族のために行くっていうことはなんかもう別に、それほど必要じゃないかなっていう感じですね。

(安住紳一郎)ああ、そうですか。でもほら、義理のお母さんなんかも結構、マリさんのことを楽しみしてますでしょう?

(ヤマザキマリ)いや、手伝わせたいだけですよ。私が来ないといろいろ、草むしりとかね、家事その他もろもろ……「今度はいつ来るのよ?」って言われると、それでますます私は行く気が……(笑)。

(安住紳一郎)旦那の実家にちょっと行きにくいみたいな(笑)。

(ヤマザキマリ)「うわっ、またこき使われるぞ」みたいな感じで。なるべく行く日を延ばすみたいな(笑)。

(安住紳一郎)あとはね、コロナということがあって日本での滞在が延びたことによって、ヤマザキさんの日本での仕事が広がったってのも大きいでしょうね?

(ヤマザキマリ)そうですね。やっぱりいるとわかっちゃうと、あれもこれもって感じでね。いろんなところに引っ張り出されてやってますけど。

(安住紳一郎)NHKなんか見てると、もうほぼ毎日出てますよね?

(ヤマザキマリ)あれはね、再放送が多すぎるんですよ。だって私ですら、朝起きてテレビをつけたらなんかすごい知ってる野太い声がテレビから聞こえてくるんですよ。「すごい野太い声。これ、誰?」って思ったら、私なんですよ。「これ、何年前の放送?」みたいなのがね、もう毎度毎度やっていて。「いつも出てる人」みたいに思われちゃうんですよ。なので、まあ最近も出てもいますけれどもね。だけど前よりは、そんなに出てないような気もしてるんですが。

(安住紳一郎)そうですか。あと本なんか、ものすごい冊数になって。

(ヤマザキマリ)やっぱりいるとなると、いろいろなことを書いちゃうんで。すると、それを出してくださるありがたい出版社があるんで。

(安住紳一郎)もう、だって必ず「ヤマザキマリと○○」みたいな。「ヤマザキマリ」ってつけると売れるみたいな感じになっちゃっていて。

(ヤマザキマリ)そこまではどうか、わかりませんけど。

(安住紳一郎)なんかもう「ヤマザキマリのパン作り」みたいな(笑)。

(ヤマザキマリ)アハハハハハハハハッ! 「パン作り」は出てないですけどね(笑)。

(安住紳一郎)なんでも、もう(笑)。

(ヤマザキマリ)誰かと語ると、それを見ているたとえば編集者とかが「ああ、それはもったいないから本にしましょうよ」ってことになってしまうんで。このように一旦、口を開けばどんどんいろんなことが出てきちゃうんで。それはただ文庫化してるっていう、そういうだけの話ですけど。はい、すいません。

(安住紳一郎)あとはね、やっぱりあれですか? イタリアと日本での生活で、少しやっぱり……イタリアってのはどうしても多民族っていうか。とにかく感情がストレート。で、何か、必ず褒めたりするっていう文化。

(ヤマザキマリ)まあ、大仰ですよね。私ね、だからこれだけ長く日本にいて、大仰じゃない生活の楽さっていうのをすごい感じてきたんです。毎日、怒らなくていいっていうのが素晴らしいなと思って。

(安住紳一郎)イタリアにいたら、怒らなきゃいけない?

イタリアでは毎日、怒らないといけない

(ヤマザキマリ)毎日怒っているんで。だから私をよく知る人は「ヤマザキさん、毎日怒ってますね」って言うんだけども。私にしてみればずいぶんこれでも抑制してですよ。怒っているように聞こえるけども、これはもう「心地がいい。幸せ」っていう意味ぐらいの怒りなんですよ。私にとっては。イタリアはもうね、毎日声を張り上げていないとダメですからね。お姑からね、前も言ったけども。「あんた、また漫画の仕事をしすぎているんじゃないの?」って言われるたびに、「だってそうしないと、私は食べていけないんですよ!」みたいなこと毎日、怒ってなきゃいけないんですよ。

(安住紳一郎)なるほど(笑)。

(ヤマザキマリ)それがなくなって、すごい表情筋が楽になった。

(安住紳一郎)ただ、ちょっとあんまり顔を使わなくなったから。やっぱその顔の筋肉の衰えみたいなのを感じることは?

(ヤマザキマリ)ああ、ちょっとほうれい線が目立ってきたかも(笑)。でもね、やっぱり顔に変な筋肉が入っちゃうっていうね。やっぱり表情がいかつい感じになっちゃうんですよ。眉間にシワが寄るとか。それがなくなってきたかもしれないです。眉間のシワは。あと、しゃべっていても絶対に私の上にかぶせてくるから。それを制御するために私、いつも大きい声で他の人を入ってこさせないしゃべり方っていうのをしていたんですよ。イタリアで。それをこのラジオでもやっちゃっていて、本当に顰蹙を買って申し訳ないんですけども。

(安住紳一郎)いやいや……。

(ヤマザキマリ)今も既にそれが発揮されている状態なんですけども。それがね、だんだんちょっと収まってきてるような気がしてる。

(安住紳一郎)ああ、そうですか。

(ヤマザキマリ)って、人に言うと「収まってない」って言われるんですけど。自分の気持ち的にはちょっと収まっているような……。

(安住紳一郎)入ってこさせないしゃべり方っていうのがあるんですね(笑)。

(ヤマザキマリ)こう、盾をどんどんどんどん突きつけて。「お前、入ってくんな、入ってくんな」っていうしゃべり方をしないといけないですよ。そうです。

(安住紳一郎)むしろきっと、そういう長い歴史が何万年も続いてあのイタリアの皆さんの顔の濃さっていうか。筋肉とか。

(ヤマザキマリ)そうです。あの眼力とか。もうみんな、カーッて開いちゃってますからね。

(安住紳一郎)あれは入ってこさせないための?

(ヤマザキマリ)そうです。顔構え、表情構えっていうやつですね。しゃべってる時点で「今、これから俺がしゃべるぞ? いいな? お前、黙ってろよ?」っていう威圧感の盾なんですよ。

(安住紳一郎)そういう犬、いますよね(笑)。

(ヤマザキマリ)います、います(笑)。

(安住紳一郎)なんか、こっちがしゃべっちゃいけないような威圧感(笑)。

(ヤマザキマリ)そうそう。「これから自分が自己主張するんだ!」っていうね。それが少し、緩んだかもしれない。そう自分では思っています。ちょっとわからないですけども。

(安住紳一郎)アジア人はね、顔平たい族ですもんね。

(ヤマザキマリ)そう。で、顔の表情にあんまり力を入れないじゃないですか。だからほら、コロナでみんな、マスクしていてなにが苦しいって、表情を人に見せることができない苦しみっていうのがあったらしいんですよ。

(安住紳一郎)ああ、イタリア人は?

(ヤマザキマリ)だから目だけ見ていても、わかんない。とにかく鼻のあたりから口から全部、使っているんで。でも日本の人はそれをする必要がないじゃないですか。だから私は本当にこのコロナにおいて「自分は本当は日本人だったんだ」っていうことをすごくね、実感しました。

(安住紳一郎)そうですか。いろんなことをね、感じたということですね。

(ヤマザキマリ)そうですね。

<書き起こしおわり>

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