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町山智浩 ウィル・スミスのクリス・ロック殴打事件を語る

渡辺志保 ウィル・スミスのクリス・ロック殴打事件を語る たまむすび
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町山智浩さんが2022年3月29日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で第94回アカデミー賞授賞式で妻を揶揄されたウィル・スミスがクリス・ロックを殴打した事件について話していました。

(町山智浩)ということで今日はまず、アカデミー賞ですね。僕がもう10年ぐらいやらせてもらっているWOWOWでアカデミー賞の授賞式の中継ですが、まあびっくりしましたよ。

(赤江珠緒)でしょうね!

(町山智浩)この番組でもご紹介した『ドリームプラン』という映画でセレーナ&ヴィーナス・ウィリアムズ姉妹の父親を演じてアカデミー主演男優賞をとうとう取ったウィル・スミスさんがですね、賞を受賞する前にコメディアンのクリス・ロックという人にちょっとからかわれて。奥さんを……そのウィル・スミスの奥さん、ジェイダ・ピンケット・スミスという女優さんが、頭を丸坊主にしてたんですね。で、それは脱毛症のせいで彼女は頭を丸めてたんですけども。それを見たクリス・ロックが……これ、ちょっと分からないと思うんですけど。「『G.I.ジェーン2』で会えるといいね」って言ったんですね。

(赤江珠緒)ああ、わかります、わかります。デミ・ムーアさんが丸刈りにされて出ていた映画ですね。

(町山智浩)そうなんですよ。もう20年以上前の映画なんですよね。軍隊、海兵隊に入ったデミ・ムーアが丸刈りしてするんで。「それの続編に出るの?」みたいなことを言ったら……その時はウィル・スミス、笑ってたんですけども。突然、舞台の上に上がっていって、クリス・ロックにかなりキツいビンタをかましたんですね。で、これがどうなるか?っていうことに今、なってるんですけども。ウィル・スミスは先ほど、正式に謝罪をしました。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。

(町山智浩)で、アカデミー協会はこれは規約違反なんで、ウィル・スミスをどう処分するのか?っていう話し合いをしているところですね。

(山里亮太)規約違反?

(町山智浩)もちろん。だって暴力とか、会の進行を邪魔したりしちゃいけないですからね。

(赤江珠緒)そうか……。

(町山智浩)もちろんビンタ自体はクリス・ロックが訴えれば、これは完全な暴行になるので刑事事件になりますけど。まあ、訴えないということですけどね。で、これがアメリカの方では非常に論争を呼んでるんですけれども。いろんな分析とかもあって。最初、ウィル・スミスが笑っていたりしたこともあるし。で、そのクリス・ロックがジェイダ・ピンケット・スミスが脱毛症であることを知っていたかどうかというのも、まだわからないんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですね。

(町山智浩)だから一体、これはどういうことなんだ?っていうことでいろんな取材が続いてる状態なんですけれども。僕も一事、脱毛していたことがあってよくわかるんですけど。こう、髪の毛がポロポロ抜けちゃうんですよね。それで真っ白になって肌が出ちゃうっていうことがあって一事、大変でしたけどもね。それで今、日本の方では……僕、ちょっとネットを見まして。「これ、日本ではどういう風になってるかな?」と思って見たら、日本ではウィル・スミスを支持してる人たちが圧倒的に多いんですね。「殴って当然」とか言ってる人たちが非常に多い。それはアメリカとかなり温度が違う感じです。

(赤江珠緒)でもやっぱり日本だと、そのウィル・スミスさんが後でスピーチしたのが全部、流れるわけでもなく。「家族を守るために」とか、そういう感じになると……。それと、あと「脱毛症のことをいじるなんて!」みたいに思う人はやっぱり多いみたいですね。

ウィル・スミスが殴打してしまった背景

(町山智浩)そうですね。元々、彼らには因縁みたいなものがあるっていうことも言われてるんですけども。まず、そのアカデミー賞、前にも話したんですが。かつて、6500人の会員で投票していたものが現在では9500人となって、3000人ほど増えてるんですね。それは2016年にウィル・スミスさんが主演男優賞を取るつもりだった『コンカッション』っていう映画があって。それでアカデミー賞の候補にも全然引っかからなかったっていうことがあったんですよ。で、その時にその作品の製作もしていたウィル・スミスが非常に怒って。しかも、奥さんのジェイダ・ピンケット・スミスがアカデミー賞授賞式をボイコットしたんですね。「授賞式には行かない!」と言ったんですが。その2016年のアカデミー賞の司会をやってたのがクリス・ロックなんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですか。

(町山智浩)それでクリス・ロックは「ジェイダ・ピンケット・スミスのアカデミー賞ボイコットっていうのは俺がリアーナをボイコットするようなもんだ」っていう風にステージ上で言ったんですね。これ、どういうことかって言うと「最初から呼ばれてねえよ」っていうギャグだったんですよ。それはちょっとウィル・スミスもジェイダさんも怒っただろうっていう風に思うんですけども。そういうのがまず、前振りであったけで。しかも今回、アカデミー賞の授賞式の一番初めの方でレジーナ・ホールという黒人女性の司会者がですね、やはりそのジェイダ・ピンケット・スミスいじりをしたんですね。

で、それは「私は独身だから独身の男を舞台裏に連れていって、コロナテストをしたいのよ」とか、なんかちょっとエッチなことを言ったわけですよ。その時に「ウィル・スミスもで呼びたい。彼は結婚してるけど独身みたいなもんだから」っていう風に彼女は言ったんですよ。で、それは実は結構ぎりぎりの話で。というのは2020年、一昨年に実はジェイダ・ピンケット・スミスと何年も肉体関係にあったということを告白した歌手がいたんです。

オーガスト・アルシーナっていう男性歌手がそういう告白をして、かなりマスコミに対してはっきり言って。「実はウィル・スミスとジェイダ・ピンケット・スミスはオープンマリッジ、互いの性的なパートナーに縛られない関係なんだ。だから僕がジェイダとずっと何年も関係があることをウィル・スミスはわかっているんだ。認めているんだ」っていうことを言ったんですよ。

で、それに対してジェイダとウィル・スミスの夫婦は「そんなことはない。事実無根だ」っていう風に反論したんですけども……非常にはっきりしない形が続いていたんで。それをそのレジーナ・ホールという司会者がいじったんですよ。

(赤江珠緒)なるほど!

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(町山智浩)つまり「ウィル・スミスとジェイダ・ピンケット・スミスは夫婦だけでも、本当は夫婦じゃないんでしょう? 彼女には男がいたんでしょう?」ってことをやっちゃったんですよ。で、その反応は映さなかったんですけども、ちょっとスミス夫婦いじりがひどかったんですね。

(赤江珠緒)本当ですね。

(町山智浩)だから、そこでクリス・ロックが過去の因縁も含めてやっちゃったんで、いろいろ積もり積もった感じになったんだろうというのも言われているんですけども。

(赤江珠緒)やっぱりこのクリス・ロックさんという方はアカデミー賞で何回も司会をされているっていうことは、有名なコメディアンの方なんですか?

(町山智浩)この人はものすごい毒舌なんですよ。とにかくめちゃくちゃ言う人で。もうほとんど、普通の時間のテレビに出るっていうのはアカデミー賞ぐらいで。他は出れない人ですね。非常に政治的な話をするんで。もうブッシュ大統領の時代には徹底的にブッシュいじりをしていて。政治家についてはものすごい……トランプなんかもそうですけど。徹底的に、もうめちゃくちゃに言う人なんですよ。そこが人気のあるところなんですけども。ただ、いくつも要素が重なっている事件だろうと言われていて。ウィル・スミス自身が出た映画っていうのは『ドリームプラン』っていう映画なんですね。で、その受賞の時の挨拶で彼が言っているのは「これはクレイジーな父親についての映画なんだけれども、自分自身もそうなってしまった」って言ってるんですよ。これは映画を見てもらったらわかるんですけれども。娘たちがチンピラにからまれるシーンがあって。そこでお父さん役のウィル・スミスは拳銃を持って、そのチンピラたちを撃ちに行くんですよね。だから「家族を守る!」と言いながら、拳銃を持って突っ込んでいく父親なんですよ。

「それを演じてるから、自分もちょっとそうなってしまった」という風に反省をしてたんですけども……これもまた、いろんな問題があって。ウィル・スミスさん、この間、自伝を出したんですよ。『Will』っていうタイトルで。そこで書かれているのは、「自分の父親がいつも母親を殴っていた」ってことなんですよ。「9歳の頃に、自分の父親が母親を殴って。本当に殴って、叩きのめすのを見た。それから、ずっと見ていたんだ」っていう風に言っていて。

両親は離婚してるんですけども。で、2016年にお父さんが癌で亡くなった時に彼、介護に行ってるんですが。介護をしながら、つまり父親を運んだりしながら、「この父を今ここで殺してやろうかと何度も思った」って書いているんですよ。だからすごくウィル・スミスさんっていうのは非常にいつもにこやかでね、ジョークばっかり言ってる人で楽しげなんですけども、ちょっと心の中には何か非常に傷がある人なんだなということもいろいろ言われてますね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、すごくスーパースターなんでね、『ドリームプラン』が完成した後……映画としてはコロナだったんでそれほどヒットしなかったんですけれども。主な出演者全員にウィル・スミス、合計で40億円のお小遣いをあげてるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ? 40億?

(町山智浩)40ミリオンドルです。合計で。そのくらい太っ腹なんですけど、それは逆に言うとすごく気を遣う、なんていうか親分体質なところなんですよね。

(赤江珠緒)また額がすごいですね。

(町山智浩)それはだからすごく「家族のために殴りに行く」みたいなところも非常に結びついたところで、批判もされています。現在は。それで弁護士のサニー・ホスティンっていう人とか、ショーン・ハーパーという男性学の教授とかがウィル・スミスがやった行為について、「自分の奥さんや彼女が侮辱されたから相手の男を殴るという行為は男性性の誇示なんだ。非常に有害な男性性(男らしさ)の誇示ということを彼は行ったのであって、愛とは関係がないんじゃないか」という風に批判していますね。

有害な男性性の誇示

(町山智浩)あと、キャシー・グリフィンというコメディアンの人はですね、トランプ大統領を茶化しすぎたんでトランプ大統領の支持者から殺害予告とかを受けてる人で。「コメディアンがキツいジョークを言ったために、それに怒った人が舞台に上がってコメディアン殴るということがよしとされてしまうと、コメディアンが非常に危険になる」という風にツイートをしています。

(赤江珠緒)なるほど……。

(町山智浩)「これはすごい怖いことだ」という風に言ってますね。で、僕自身が見て思ったのは、すごくアメリカの伝統的なことが行われたと思いました。アメリカでは奥さんを侮辱されると手袋を叩きつけて決闘するんですよ。

(赤江珠緒)はあ。

(町山智浩)見たことないですか?

(赤江珠緒)なんか、うーん。欧米のそういうなんかね、「決闘だ!」みたいなのは……。

(町山智浩)一番有名な例はアンドリュー・ジャクソンという政治家が人妻を略奪して結婚したんで。そのことを揶揄された時に決闘を申し込んで、相手を射殺しています。要するに「不倫だったんだろう?」みたいなこと言われて……まあ実際、それに近かったんですけれども。決闘で自分が正しいことを示すっていう。「勝った方が正しい」っていう考え方があるんですよ。欧米には。で、そのアンドリュー・ジャクソンはそれですごく人気になって。「妻を侮辱した男を殺した英雄」として大統領になりました。

(赤江珠緒)それきっかけで?

(町山智浩)そういうことがあるんですよね。だからすごく、そのウィル・スミスさんに対する批判の中で非常に「なるほど」と思ったところはですね、『最後の決闘裁判』っていう映画がありまして。去年、公開された映画なんですが。それはフランスを舞台に1386年に実際にあった事件で。騎士(ナイト)……だから日本の武士みたいな、侍みたいな人がですね、自分の奥さんを自分の留守中に別の騎士にレイプされて。それを訴えたんですが、相手が否認したので。それで決闘で決着をつけるっていうことが実際にあったんですね。

(赤江珠緒)そうですね。この映画、ご紹介いただきましたね。

(町山智浩)はい。これはマット・デイモンがその夫役なんですけれども。この映画は、奥さんが決闘を望まないんですよ。どうしてか?っていうと、この夫は別に奥さんのことを思いやっているわけじゃなくて。「自分が恥をかかされた」っていう男のメンツだけで戦おうとしているんですよ。だから、そこに愛はないんですよね。で、ウィル・スミスが今、批判されているのは受賞の演説の中で奥さんについて触れなかったっていうことなんですよね。

(山里亮太)ああ、なるほど。触れなかったんだ。

受賞スピーチで妻に触れなかったウィル・スミス

(町山智浩)「俺は、家族を守る! 俺は、俺は!」って言ってるばっかりで。いや、ちょっと待て? 奥さんのことはどこに行っちゃってるの?っていう。だから「俺は、俺は!」っていう、その自分のプライドのためにやったんじゃないか?っていう風に今、批判されてるんですけど。もうひとつ、僕が思い出した映画はですね、やっぱり2017年のアカデミー賞で外国語映画賞を取ってる映画で。『セールスマン』っていうイラン映画があるんですよ。それは、「奥さんが何者かにどうも暴行されたらしい」ということで、その暴行した犯人を探す夫の話なんですね。で、その夫は普段は非常にイランでは珍しいって言うとあれなんですけども。非常にリベラルで。女性の権利とかも非常に考えている優しい夫なんですけれども。

奥さんが暴行されたらしいっていうことを周りに知られるとですね、「絶対にその犯人をやっつけてやる!」っていう風にだんだんとなってくるんですよ。で、で奥さんは「そういうことをすると私自身の傷も広がるから、やらないで。やめて」って言ってるんですけれども、夫は徹底的にその犯人に復讐することだけを考えて、暴走していくんですよ。で、奥さんは「あなたの中には私への愛はないんだ。自分のためにそれをやってるんでしょう?」って言うシーンがあるんですね。それが『セールスマン』っていう映画だったんですけど。それも思い出させる話だなと思ったんですね。

<書き起こしおわり>

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