町山智浩 故・ピーター・オトゥールと『アラビアのロレンス』を語る

町山智浩 故・ピーター・オトゥールと『アラビアのロレンス』を語る たまむすび

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、亡くなったばかりの俳優ピーター・オトゥールさんと映画『アラビアのロレンス』について話していました。

アラビアのロレンス (字幕版)

(町山智浩)昨日か一昨日、ピーター・オトゥールさんが亡くなって。

(赤江珠緒)そうそう。『アラビアのロレンス』。

(町山智浩)はい。まあいいお年なんで、大往生ですね。この人の場合、アカデミー賞をもらえなかったのがね。僕、とっていると思ってたんですけど。

(赤江珠緒)アラビアのロレンス、すごく名作として。いまだに見られているような映画ですけど。

(町山智浩)大名作なんですけど。たまたま取り損なったみたいですね。だからなんていうか、ディカプリオとかと同じで。たまたま取れない人って、結構いるんですね。このアラビアのロレンスっていう映画は名作だって言われて。学校でみんなで見に行ったような映画だったんですよね。

(赤江珠緒)あ、そうだったんですね。

ピーター・オトゥールの演技の意味

(町山智浩)だからまあ、文部省推薦みたいな感じで、生徒連れて。先生がみんな連れて見に行ったんですけどもね。アラビアのロレンスっていう役がですね、いま見直すと完全にあれですよ。なんていうか、楽しんごさんみたいな演技をしてるんですよ。

(山里亮太)えっ?ちょっと・・・

(赤江珠緒)ああ、そういうシーン、ありましたよ。

(町山智浩)いわゆる、おネエなんですよね。立ち振舞いがよく見るとそうです。完全にしゃべり方もそうですよ。ピーター・オトゥールの演技が。アラビアのロレンスのね。

(山里亮太)そういう役の設定だったんですか?

(町山智浩)アラビアのロレンスさんっていう人は亡くなるまで童貞だったんですけど。いわゆるホモセクシャルの人だったんですよね。なにをもってその場合、童貞っていうのかあれなんですけど(笑)。マゾで、ムチ打たれたりするのが好きな人で。拷問されるシーンとかあって、いま見るとものすごく、非常に危険な映画なんですよ。

(赤江珠緒)たしかに。私も見ましたよ。

(町山智浩)わかりました?意味。

(赤江珠緒)そのへん、意味が・・・ん!?っていうシーンもあったし。あと、砂漠だったんですごく喉が渇く映画だな!と思ってね。見てたら。

(山里亮太)なにその感想?

(町山智浩)ん!?っていうシーンは敵軍に捕まって、いわゆる男の人に掘られちゃうシーンがあるんですよね。

(赤江珠緒)そうですよね。完全にそういうシーンありましたよね?

(町山智浩)はい。でもあれだと、あの映画を見てると、本人が傷ついたり屈辱を受けたように見えるんですけど、実際には違うんですよ。彼は同性愛でマゾだったんですよ。アラビアのロレンス自身は。それもちゃんと描かれてるんですけど、はっきり言葉で言ってないんですよ。

(赤江珠緒)そうそうそう。

(町山智浩)だからすごい深い難しい映画なんですよ。アラビアのロレンスっていう映画は。だからいま見直すと、非常に難しいけど(笑)。淀川長治さんがやっぱり当時から見抜いて説明されてましたけど。あの人はそういう点に関しては、誰よりもすごい目を持っている人だったので(笑)。

(山里亮太)なるほど。そういう目に関しては。

(赤江珠緒)まあ、超大作の中にね、さりげなくそういうのが入ってました。

(町山智浩)そう。非常に奇怪な映画になってるんですね。事実通りなんですけどね。あと、ピーター・オトゥールさんはかなり年とってからの傑作で、『スタントマン』っていう映画があったんですよ。それでは、アクション映画を撮る映画監督になるんですけど。映画のためだったら、誰が死んでも構わないっていう映画に賭ける鬼のような役を演じてまして。これ、ほとんど知られてない映画なんです

(赤江・山里)へー。

(町山智浩)これは知られざる名作なんで、是非ご覧になっていただくと、ピーター・オトゥールっていう役者のすごさがよくわかると思います。

(赤江珠緒)ちょっといまのお話だと、『地獄でなぜ悪い』みたいなね。映画好きな。

(町山智浩)そうそう。映画監督ってみんなそんなもんですから。

(山里亮太)はー。映画のためなら死んでもいいと。

(町山智浩)ものすごい爆発が撮れると、それだけでうれしい人たちだから。そこで誰が怪我しようと、あんまり関係ない人が多いので。はい。ちなみにね、『プロメテウス』っていう最近のエイリアンの続編の映画で、マイケル・ファスベンダーっていう役者さんがね、アンドロイドを演じてるんですけど。彼の演技、しゃべり方からなにからなにまで、全部アラビアのロレンスのピーター・オトゥールの真似をしていますよ。

(赤江・山里)へー。

(町山智浩)見ると面白いですよ。すごく不思議なしゃべり方で。『ボクは、◯◯なんですぅー』みたいなしゃべり方をしてるんですけど。あれはマイケル・ファスベンダーの普通のしゃべり方じゃないんで。あれはピーター・オトゥールなんですよ。アラビアのロレンスの中の。本当に当時はね、ぜんぜんわかんなかったんですけど。そういうところは。いま見ると、よくわかるようになりましたけど。僕に性的な変化があったわけではありません。はい(笑)。

(山里亮太)まさか・・・!?どんだけー!?

(町山智浩)で、今日の映画なんですが・・・

<書き起こしおわり>

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