町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、小さな部屋に何年も監禁された親子を描いた映画『ルーム』を紹介していました。(※放送時には邦題が決まっていなかったため、『部屋・Room』というタイトルでお話されています)
This Fall, love knows no boundaries. pic.twitter.com/FwzxC3v8Ho
— Room (@RoomTheMovie) 2015, 7月 30
(町山智浩)ええと、今日もそういう話なんですけど。本なんですね。原作がね。今日は『部屋』というタイトルで文庫が出ているんですが。それの映画化で『Room』という映画を紹介します。これ、日本公開はね、決っているらしいんですけど、映画会社に僕、連絡したんですがまったく返事が来ないので。やる気がないのか?と思いますが(笑)。はい。
(赤江珠緒)(笑)
(町山智浩)配給はされるそうです。
(赤江珠緒)そうか。時期はわからない。まだね。
(町山智浩)はい。まだ公開はわからないですね。タイトルも『部屋』じゃなくなるかもしれないですけど。これはある部屋の話でですね、5才の男の子がその部屋で目覚めるところから始まります。ジャックという男の子で、金髪のかわいい子なんですけど。男の子かどうか、最初見ている人はわからないんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)あの、髪の毛がすごく長いブロンドでですね。声なんかも5才ぐらいの男の子と女の子、あんまり差がないですよね。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)体とか顔もね。まあ、だからわからないんですよ。見ている方はね。で、女の子のパンツとか履いているんですよ。
(赤江珠緒)ふーん。
(町山智浩)で、この子は生まれてからいままで、その部屋を出たことがないんですよ。
(赤江珠緒)えっ?一歩も?
生まれてから一度も部屋から出たことがない子供
(町山智浩)その部屋は10平方メートルぐらいの部屋で。窓がひとつしかなくて。その窓は天井についている天窓だけで。空しか見えないんですよ。
(赤江珠緒)ええっ?
(町山智浩)で、ドアは部屋にはあるんですけど、重い鉄の扉で。ぜったいに開けられなくて、このジャックっていう男の子は開いたところを見たことがないんです。で、お母さんからは『この部屋の外には何もないんだ』とずっと教えられているんですよ。
(赤江・山里)ええっ?
(町山智浩)この部屋だけが世界の全てで。外には何もないんだと教えられていまして。ただ、その部屋にはお風呂もあるし、水道も電気もあるんですよ。で、テレビもあるんですよ。
(赤江珠緒)テレビも?
(山里亮太)っていうことは、外の世界も知れちゃう?
(町山智浩)テレビ、映っているんですけど、お母さんは『そこに映っているものは存在しないんだ』って言っているんですよ。ジャックに。
(赤江珠緒)ん?
(町山智浩)『映っているだけだから』って。で、そこでずっと暮らしているんですけど、ただお母さんはちゃんと子供に本を読ませたり字を書かせたりして、すごくちゃんと教育はしています。
(赤江珠緒)へー。ええ。じゃあ、世界に2人だけ?
(町山智浩)2人だけなんです。世界に2人しかいない。ジャックとママだけなんですね。で、その部屋は夜になると、ジャックはその部屋にあるクローゼットに閉じ込められて。そこで寝かされるんですよ。で、ちっちゃい頃はわからなかったんですけど、ジャックは5才になったから、夜中に目が覚めるようになったんですね。
(赤江珠緒)はいはいはい。
(町山智浩)で、そのクローゼットの隙間から部屋の中を覗くと、暗がりで部屋の
鉄の、開かないはずのドアが開くんですね。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、大きな男が入ってくるんですよ。で、その男のことをお母さん、ママは『ニック』って呼んでいるんですけど。そのニックっていうおっさんはですね、食べ物や服とかいろんな必要なものを持ってくるんですよ。外の世界から。ただ、そのニックはママにのしかかって、なんかママをいじめているんですね。夜な夜な。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)恐ろしい怪物なんですよ。で、これはどういうことか?っていうと、実際はママは19才の時にそのニックという男に誘拐されて、彼が庭に作った小屋に監禁されて7年目になるっていう話なんですよ。
(赤江珠緒)ええーっ?
(山里亮太)おおー、なるほど。
(町山智浩)で、ニックに犯されてママはジョイっていう名前だったんですけど。5年前にジャックをこの部屋で産んで、1人で育てているという話です。
(赤江珠緒)ええーっ!?
(町山智浩)で、これはね、『部屋』というタイトルで日本でも翻訳が出ていて。エマ・ドナヒューっていうカナダの女性作家が書いたんですけども。2011年に出版されて、ベストセラーになっている本ですね。
原作小説『部屋』
(赤江珠緒)ふーん。
(町山智浩)で、これをエマ・ドナヒューっていう人が書いた理由っていうのは、2008年にね、ヨーロッパのオーストリアでフリッツル事件っていうのがあって。大変なニュースになったんで、それでヒントを得て書いたそうです。
(山里亮太)フリッツル事件?
(町山智浩)フリッツル事件っていうのはね、2008年にエリザベート・フリッツルという女性がですね、警察に保護されたんですけど。彼女は1984年から24年間、自宅の地下牢に閉じ込められていたと。
(赤江珠緒)24年間も?うん。
(町山智浩)24年間。で、閉じ込めたのは父のヨーゼフという男で。このヨーゼフは自分の娘であるエリザベートを犯してですね、7人の子供を産ませているんですよ。
(赤江珠緒)ええっ?
(町山智浩)で、これがまあ大変な、オーストリアという国自体の国辱問題みたいなものにまで発展して。すごく国のイメージが落ちるぐらいまでのことになったんですね。で、この『部屋』の中でも、お母さん、ママの歯が栄養失調で抜け落ちたりするシーンとかは、この実際にあったフリッツル事件と一致する部分なんですよ。
(赤江珠緒)はー!いや、まあでも、そうですよね。こう、日光とかも浴びてないわけですもんね。
(町山智浩)浴びてないですよね。食べ物もひどいし。で、この『部屋』っていう本がアメリカで大変な話題になったのは、この本が出版されるちょうど1年ぐらい前にですね、僕の住んでいる家の近くで似たような事件が発覚したからなんですよ。
(赤江珠緒)カリフォルニア州で?
(町山智浩)これ、アンティオックっていう郊外住宅地がうちから車で15分ぐらいかな?のところにあるんですけど。そこに18年間、少女が監禁されていて。助けられたんですね。それも、2009年に助けられた時、うちの近所にあるUCバークレー大学で彼女は保護されているんですよ。
(赤江珠緒)ふん。
(町山智浩)で、これはね、1991年にジェイシー・デュガードちゃんっていう女の子が自宅の近くで学校に行く途中に誘拐されたんですね。車で。11才で。それから18年、フィリップ・ガリドーという男の家の庭にあった小屋でずっと監禁されて。そのフィリップ・ガリドーっていうおっさんに、まあ犯されて。2人の娘を産んでいるんですよ。
(赤江珠緒)うわー・・・
(町山智浩)で、彼女、そのジェイシーさんがすごいのがですね、全部手記を書いて、マスコミとかにも登場しているんですね。
(赤江珠緒)ああ、もう顔を出して。こちら、本がありますけど。自分の写真も使って。
(町山智浩)日本でも出版されています。『奪われた18年間』とかいうタイトルで。
(赤江珠緒)そうですね。
(山里亮太)『奪われた人生―18年間の記憶』。
(町山智浩)はい。で、彼女がすごいのは、誘拐犯のフィリップ・ガリドーっていうのは印刷屋。地元の人の店とかのチラシとかの印刷をやっていたんですけども。そこで、グラフィックデザインをやっていたんですね。パソコンを使って。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)自分を誘拐した犯人を食わしていたんです。
(赤江珠緒)えっ?彼女が?
(町山智浩)誘拐されたこのジェイシーちゃんは。だからこの誘拐した犯人はボケ野郎たちだったんで、まともに生活ができなかったんですよ。で、インターネット時代になって、インターネットでDTPとかで作る技術を彼は持っていなかったんだけども、彼女はインターネットでその技術を覚えて、それで印刷のグラフィックデザインとかをやって、仕事を請けて誘拐犯人たちを食わせていたんですよ。
(赤江珠緒)ええっ!?
(山里亮太)それだったらでもね、外部とも連絡も取れるし、逃げようがあったんじゃ・・・
(町山智浩)はい。で、逃げられなかったというか、これはいわゆるストックホルム症候群といわれるようなもので。誘拐されると、誘拐された人たちとか人質になった人たちは自分を限られた状況の中で生かしているのはその誘拐犯とかテロリストだから。彼らを守るようになっちゃうんですよ。
(赤江珠緒)ああー。そう言いますよね。
(町山智浩)一種の洗脳行為があって。宗教団体とかが、新興宗教とかが人を監禁して洗脳するのとシステムは似ているんですね。
(赤江珠緒)ふーん。
(町山智浩)で、実際このフィリップ・ガリドーっていうのは新興宗教みたいなことで、カルト洗脳を行ったみたいですけどね。そのジェイシーさんに対してね。
(赤江珠緒)へー!このガリドーっていうのは夫婦ですか?夫婦で?
(町山智浩)これ、夫婦でやっているんですよ。その前のフリッツル事件も、母親が加担してるんですよね。
(赤江珠緒)えーっ!?
(町山智浩)はい。だからまあ、一種の変な閉じられた・・・日本でも、こういった事件があると、かならずそうじゃないですか。1人じゃなくて、周りが加担して、協力していくでしょ?ねえ。だからまあ、よくあることなんですね。人間っていうのは面白いっていうか、不思議なものですね。はい。
(赤江珠緒)うーん。
(町山智浩)ただね、実は日本でもAmazonで『監禁』とか『虐待』とかね、本がいっぱい出ているんですよ。で、こういう本はなぜかね、非常に売れるんですね。
(赤江珠緒)はー・・・
(町山智浩)はい。でね、変に美化したりして。一種の娯楽と化している部分もあって。たとえばすごく悪い例だと、『サラ、いつわりの祈り』っていう本がベストセラーになったことがあるんですけども。
(町山智浩)これはある男の子が母親に無理やり少女として育てられて。売春を強要されていたという、虐待されていた本人のJ.T.リロイという少年が書いたということで大ベストセラーになったんですよ。
(赤江珠緒)うん、うん。
(町山智浩)でも後から、実はこれは売れない女性作家が自分で勝手に想像したフィクションを売るために、少年の自伝として売ったことが発覚して、大変な問題になりましたね。
(赤江珠緒)はー。
(町山智浩)だからちょっと嫌なのは、そういうので商売しようとしている人もいるんですが。ただ、この『部屋』という話はね、そういうゲテモノとか金儲け目当ての話とちょっと違うんですね。
(赤江珠緒)うん。
『部屋』が他の拉致監禁小説と違うところ
(町山智浩)この映画は。というのはまず、ひとつはですね・・・あ、そうそう。こういう話って、拉致監禁ものの小説って原点はすごく古くてですね。話が戻っちゃうんですけどね。『コレクター』という小説が1963年に書かれてベストセラーになっているんですよ。
(赤江珠緒)ふんふん。
(町山智浩)これはね、ジョン・ファウルズっていう人がイギリスで書いた本なんですけども。これはね、蝶々の収集をしている暗い青年が、好きになった女の子の美大生を誘拐して地下室に監禁するっていう話なんですよ。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)で、親の遺産かなんかで金があるから。地下室を監禁部屋として改造して・・・っていう話なんですね。で、これは映画化されたりして、主人公をすごく美青年がやっていたりするんで、ちょっとあれかな?と思いましたけど。これはね、完全なフィクションだったのにこの本のおかげで少なくとも3件の真似をした模倣犯の拉致監禁事件が起こっているんですよ。
(赤江珠緒)うわー・・・
(町山智浩)だからこういうのは難しい問題ですね。
(赤江珠緒)ねえ。でもこれは事件としてはひどい事件ですよ。
(町山智浩)ひどい事件ですね。はい。まあ、こっちの方の『部屋』というのは女性が書いたもので、しかもこれ、小説の方がこの5才の男の子、ジャックの視点で書かれているんですよ。
(赤江珠緒)ほー。
(町山智浩)それがね、ただのゲテモノじゃないものになっているんですね。で、ジャックは要するに最初は世界っていうものはその10平方メートルの部屋しかないと思って、ずっといたんですけども。このままだと私たち、下手したら大変なことになるんじゃないか?っていうことになってくるんですね。そのお母さんと一緒に話していて。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)っていうのはその誘拐犯がですね、会社をクビになってお金がなくなっちゃうんですよ。で、フォアクロージャーっていうんですけど、差し押さえられちゃいそうになるんですよ。その家を。親の家だったらしいんですけど。
(赤江珠緒)ふんふんふん。
(町山智浩)したらそこを無理やり、強制退去させられることになったら、彼らのことが発覚するからたぶん、この2人は殺されるかもしれないんですよね。
(山里亮太)そうか。なるほど。
(町山智浩)だからそのことを気づいたヒロインのジョイは、なんとか脱出しようということでもって、5才になって頭がこの子は普通にいいですから。なんとか脱出する方法を考えだすんですよ。どうやって脱出するか?ってことになってくるんですけども。で、この映画はですね、映画だから語り部の男の子の視点でカメラが撮影されているんですよ。全部。基本的に。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)で、もちろんジャックも映るんで。外側から撮ってはいるんですけど。ジャックの目から見た世界っていうものが映像化されているんですけど。これね、5才の男の子にとっては本当に、大人ってデカくて怖いんだってことがよくわかりますね。
(赤江珠緒)ああ、その目線になるとね。そうか。
(町山智浩)もうぜんぜん忘れているけど、子供の頃って本当、大人が怖かったでしょう?
(赤江珠緒)おっきいなと思ってましたもんね。なんでも大きく見えました。
(町山智浩)でっけー!って思いましたよね。で、まあ子供の頃に育った街とかに行くと、街があまりにちっちゃいので驚いたりしますよね。
(赤江珠緒)うん。小学校のグランドとかもちっちゃー!って思いますもんね。
(町山智浩)ねえ。こんなちっちゃいところで遊んでいたの!?って思って、びっくりしますよね。そういう感覚をすごく上手く映像化してるんですよ。この映画は。
(赤江珠緒)でも、生まれた時からそこだけしか世界がないと思っていた人間が、こう世界が突然見えるわけですから。その感覚も、ちょっと普通ではないですもんね。
(町山智浩)そう。それを観客に上手くね、共有させるように撮られていてね。上手いですね。これね。最初は広いところに行ったからって、『わー、広い。世の中に出られた。助かったぞ!』っていう感じじゃなくて、ものすごく怖いんですよ。外が広くて。
(山里亮太)あっ、知らないものがいっぱいあるから。
(町山智浩)で、しかもその、わずか数メートル以上のものに目のピントを合わせたことがないから、遠くのものが見えないんですよ。
(山里亮太)あ、体もそうなっちゃう。
(町山智浩)そう。だから近くのものははっきり見えるんですけど、レンズをすごくピントの浅いカメラにしてあって。で、遠くのものはボケボケなんですよ。
(山里亮太)えーっ?そうなるんだ。体って。はー!
(町山智浩)これ、上手いなって思いましたね。感覚をね、セリフじゃなくて。だから原作は言葉なんですけど。全部ね。男の子の。でも、これをね、カメラワークで見せていくっていうのはすごいなって思いましたね。
(赤江珠緒)へー!いやー・・・
(町山智浩)で、最初は外に出ても、狭い部屋の方が落ち着くから。怖いから、なかなか外に出れなくて。狭い部屋の中で暮らしているんですよ。お母さんのお母さんの家に引き取られてね。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)それが少しずつ少しずつ外に出て行くところとかね、まあ進化してるみたいに見えるんですよ。人間が。
(赤江珠緒)はー!そっか。
(町山智浩)あの『ゼロ・グラビティ』っていう映画も最後は、人間の進化に見せてましたけど。地球に帰ってきたサンドラ・ブロックがゆっくりと歩いて行くところね。これもね、ひとつの進化に見せているんですよ。
(赤江珠緒)ああー。でもね、この子は特異な状況だからそれが際立っているけれども、普通の人間も本当はそういうのを知らない間に重ねて、大人になっているわけですもんね。
(町山智浩)そうそう。でも忘れているんですよね。1才、2才の頃にそういう体験をしてるんですけどね。で、うちの娘なんかを見ていても、最初は家の近所しか知らなくて。その後、アメリカっていうところで、あと日本っていうところがあって・・・って後からどんどん知っていった時の衝撃ってすごかったと思うんですけど。
(赤江珠緒)ねえ。
(町山智浩)そういうのをね、すごく観客が、初めて世界っていうものをだんだん知っていく過程っていうものを5才の子に体験させることで、非常にわかりやすく体験させるんですよ。
(赤江珠緒)そうですね。
(山里亮太)ただの残虐で怖い話っていうわけじゃないんですね。
(町山智浩)そう。世界がどんどん新鮮な、驚きの連続で広がっていくんですよ。どんどん。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)で、『あっ、世界ってこんなに素晴らしかったんだ!』ってことを観客に改めて認識させるんですね。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)で、この子は子供だからどんどんどんどん世界に対して心を開いていくんですよ。ところがですね、逆はこれ、実は原作は文庫が上下巻で。上巻はインサイドで、下巻はアウトサイドで。実は半分のうち、真ん中でもって脱出して、後半は脱出してからなんですよ。
(山里亮太)そっちの方が長い・・・それぐらい、同じ量、描かれているんですか?
脱出後の話も描く
(町山智浩)はい。だから他のゲテモノと違うのは、これ、脱出してからの方が大変なんだってことをちゃんと描かれているんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(山里亮太)たしかに、脱出したところでゴールっていう感じ、しちゃうけど。違うんですね。
(町山智浩)そう。だからこの女の子はものすごい心の傷を受けているし。世間はいやらしい目で見るでしょ?この人を。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、子供に対してもいらんことしい目で見るじゃないですか。で、しかも彼女はなんで逃げなかったのか?って責めるやつらまでいるわけですよ。ネットとかに、バカが。マスコミとかで、言う人がいるわけですよ。コメンテーター。『なぜ逃げなかったんですかね?』とか言ったりするんですよ。
(赤江珠緒)うーん。その感覚がわからないっていうのは・・・
(町山智浩)で、しかも人生のいちばん大切な19才からの、いちばん大切な時期を失っちゃってるんですよ。7年間も。で、これからどうして生きていったらいいかわからないし。世間の人はみんな敵に見えるわけですよ。で、人を本当に愛せるかどうかもわからないわけですよ。
(赤江珠緒)いや、そうですよね。
(町山智浩)誰にも会いたくないし。『このまま消えてしまいたい』って、どんどん逆にちっちゃくちっちゃく、子宮に赤ん坊が入っていくようにどんどんちっちゃくなっていくんですよ。このお母さんは。
(赤江珠緒)はー!
(町山智浩)だから部屋を出た後も、精神的には部屋から抜け出せないんですよ。だから『部屋』っていうタイトルなんですよ。
(赤江珠緒)これは・・・
(町山智浩)で、この子供は未来に向かってどんどん開いて生きていくけども、親は過去から逃げられないんですね。で、この、どうなるか?っていうのは映画を見ての・・・という感じです。
(赤江珠緒)へー!
(山里亮太)ただ単に気持ちが暗く落ちるっていうだけの映画じゃない感じは、いいかもしれない。
(町山智浩)はい。僕、こういうね、世間を知らなかった人が世界に目覚めて・・・要するに閉じ込められたところで生きていた人がどんどん世界を知っていくっていうのはものすごく好きでね。本当に感動しましたけど。
(赤江珠緒)へー!そうですか。
(町山智浩)で、またこのジャック役のジェイコブ・トレンブレイくんっていう名前です。難しいですね。この男の子の演技が素晴らしいですね。
(赤江珠緒)ふーん!
(山里亮太)ああ、じゃあ賞にかかわってきそうな?
(赤江珠緒)ねえ。5才ですけども。
(町山智浩)はい。で、いちばん感動的な言葉っていうのは、この映画の中で言えないんですけど。このお母さんのお母さん。だからおばあちゃんに向かって、すごく素朴な言葉を一言、言うんですけども。まあそれが本当に、どんな映画にも出てくる言葉ですけど。まあこの映画ほどすごく響くように聞こえることはないですね。
(赤江珠緒)へー!それはちょっと見てね、『ああ、これだ!』っていうのを味わいたいですね。
(山里亮太)でも、日本の公開日をまだ教えてくれてないですよ。
(赤江珠緒)ああ、そうそうそう(笑)。まだ日本の公開日は決まっていないと。
(町山智浩)『部屋』、または『Room』、またはどういう邦題がつくかわかりませんけど、日本公開は決定していますが、いつだかわかりません。はい。『部屋』でした。
(赤江珠緒)はい。ありがとうござます。今日はね、『部屋』という映画を町山さんにご紹介いただきました。町山さん、ありがとうございました。
(町山智浩)はい。どもでした。
<書き起こしおわり>