安住紳一郎と大山顕 2021年最新マンションポエム事情を語る

再掲だけども、「おやすみっふぃー」は実在してる。 https://t.co/WdKs85Jahu pic.twitter.com/vVAPrpbfZn— タナボタ (@tanabota) January 17, 2021 オードリーのオールナイトニッポン

(安住紳一郎)さて、今日お話しいただくテーマはこちらです。大山顕さんのマンションポエム考察2021、まずは一気に紹介します。大山顕さんマンションポエム考察2021・その1、バブルの残り香。その2、目指すは電車住宅。その3、TOP OF TYO。以上の3つです。ひとつ目はバブルの残り香。これはどういうことでしょうか?

(大山顕)時々、そのラグジュアリーな言い回しが「バブルっぽいね」って言われることがあるんですけど。よく見ていくと、バブルの雰囲気とはちょっとみんな違うんですよね。言葉、音声ではなかなか伝えづらいんですけど。平仮名を多用したり、漢字が多かったりっていうのがマンションポエムのここ10年ぐらい、少なくとも多いんですけど。でも、中にはもうバブルとしか言いようがないっていうものがありまして。

これがね、すごいんですよ。たとえば、ちょっと読んでみましょうか。「寂しい男の一人暮らしなんだろうって、まわりの変な期待を、そろそろ気持ちよく裏切るときが来たようだ。一度ぐらいは同僚を招いてもいい。いや、むしろカクテルパーティーでも開くべきかな? なんと言ってもお気に入りのバーがあるんだからね」っていうポエムがありまして。

マンションポエムのバブルの残り香

(安住紳一郎)ええっ? これがマンションの広告なんですか?

(大山顕)そうです。これ、皆さん何の広告がわからなかったかもしれないですけど、マンションの広告です。札幌の物件ですね。やっぱり先ほども今の御時世、いろいろと難しいことがあるっていうことで言うと、これが問題になるとしたらやっぱり「男の」を強調しているっていう点だと思って。最近、やっぱりここ10年、「男、男……」っていうマンションポエムってほとんどなくて。

それで言うと非常に珍しいっていう。時代を感じさせるものですね。あとはビジュアルで言うとこれ、登場する人物がこの「男の……」と言っておるであろう主人公が白人男性でして。その交際相手か妻か、みたいなのも白人女性。それで他の場面で登場する子供も白人の子供っていう。ちょっとアナクロな感じのビジュアルと表現で。これはちょっと僕は……なんて言うんだろう? 「あっ、まだそこにいたか、バブル……」っていう。懐かしい気分になりましたね。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)ちょっと「エモい」感じっていうか……(笑)。

安住紳一郎「エモい」の使い方を考える
安住紳一郎さんが2021年1月10日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中で「エモい」という言葉の使い方を考えていました。

(大山顕)ああ、「エモい」。便利……エモいはいいですね! バブルの時代に「エモい」っていう表現はなかったですけども。たぶんあれ、バブルは今思えばエモかったんですね!

(安住紳一郎)ちょっとヤンエグの感じですよね?

(中澤有美子)ヤンエグ!

(大山顕)ヤンエグの感じですね。青年実業家なんていう感じですね!

(安住紳一郎)これがマンションポエム、マンション広告に残っているんですね!

(大山顕)残っているというのを久しぶりに見たっていう感じですね。

(安住紳一郎)ちょっと今だとドキっとするような感じの……。ポリティカル・コレクトネス的なことでね。「えっ? 男の人、しかも白人をフィーチャーして……」みたいなことですよね。うん。

(大山顕)それで一方さすがに……いまのは結構特殊な事例でして。逆にすごく今時だなと感じるものが最近見つけたもので。これ、聖蹟桜が丘のタワーマンションなんですけど。全面的に「優しさ」を売りにしていて。ちょっと詳しく言うと長くなるであれですけど。言っているポエムの趣旨が「自分の町にタワマンができたらどう思いますか? このタワーマンションは優しいんです。安心してください」みたいな、そういうボエムがありまして。あと、これと近いので一昨年ぐらいにあったのは「日本一優しいタワマン」っていうポエムがあって。

(中澤有美子)ああ、タワマンに対する反発を意識して?

(大山顕)恐らく、そういうことだと思います。その「自分の町にタワマンができたらどう思いますか?」って考えてみたら不思議な広告で。マンションを買って他の町から来る人向けではなく、地元向けじゃないですか。まあ、恐らく「地元の方に買ってほしい」みたいなこともきっとあるんだろうなとは思うんですけど。やっぱり「炎上しない。みんなの気分を損ねない」みたいな方向にタワマンも売る方向性を見出しているんだろうなっていう。

やさしいタワマン

(安住紳一郎)なるほど。「ここに住んだとしても、高誇り感が出ちゃって周りの顰蹙を買うようなことはありません」みたいな。

(大山顕)「そんなことはありません。優しいんです」っていう。

(中澤有美子)「配慮しています」っていう。

(安住紳一郎)「配慮していますよ」という。いやいや、難しい社会になってきましたね(笑)。

(大山顕)本当ですよ(笑)。

(中澤有美子)さっきの札幌の無邪気さとは対極ですよね。

(大山顕)いや、貴重ですね。

(安住紳一郎)タワーマンションを作らなければいいじゃないかっていう話ですよね。

(大山顕)まあ最終的にはそうですね。まあ、そうですね。ジレンマですよね。

(安住紳一郎)そうですよね。「タワマン作るの、やめました。更地分譲中」みたいなチラシに変えちゃえばいいんじゃないですかね(笑)。

(大山顕)「何を売っているんだ?」っていうね(笑)。

(安住紳一郎)大山顕さんにお話を聞いています。マンションポエム考察2021、2つ目は目指すは電車住宅。「電車住宅」って何ですか?

(大山顕)電車住宅っていうのが実は戦後、実在しまして。これ、マンションと関係ないです。住宅不足……要するに、戦災によって住宅を失った方のためとかっていうので。バスとか電車の車両をそのまま地面に並べて。そこにとりあえず仮住まいとして住んでくれっていうのを市とかそういうところが公式に分譲というか。置いて。「そこに住んでほしい」っていうのがあって。

それに電車住宅っていう名前が付いているんですが。まあ相当……断熱材があるわけではないので。冬は寒くて夏は暑い。相当大変なものだったとは思うんですが。それを彷彿とさせると言っては問題なんですけど。すごいマンションポエムを見つけまして。これ、読みますね。短いですよ。上野の物件です。「JR山手線に暮らしたい」っていう。

(安住紳一郎)フフフ(笑)。

(大山顕)これ、こういう広告です。

「JR山手線に暮らしたい」

(安住紳一郎)ですね(笑)。でも、マンションと広告だとなぜか不思議に感じないですね。

(大山顕)感じないですね。これがマンションポエムのすごいところだと思うんですけど。

(安住紳一郎)ただ、日本語としてよくよく聞いて……ってなると、「おかしいよね?」っていう。

(大山顕)そうですね。「山手線に暮らしたい」っていう。

(中澤有美子)「すごい! 便利そう!」って思っちゃう。

(大山顕)思っちゃいますね。

(安住紳一郎)「車両の中で寝起きするの?」みたいなことになりますよね。

(大山顕)実はそのまま受け取るとそうなんですけども、マンションポエムだと思うと「ああ、駅近物件なんだね」って受け取るぐらいの我々のリテラシーが高まっちゃってるっていうところなんですね。

(安住紳一郎)本当ですね。「山手線に暮らしたい」って、すごいですよね。私の友人で「キャバクラで暮らしたい」って言った人、いますけども。

(大山顕)それはだから、「キャバクラに近い」とかではなく、まさに「キャバクラ住宅」っていうことですよね?

(安住紳一郎)そう(笑)。「好きすぎるから、ここで寝起きしたい」っていう(笑)。これ、でもちょっと、うん。伝えたいことはよく伝わってますよね。

(大山顕)以前もお話ししたと思うんですけど。マンションポエムの大きな特徴はマンションについては何ひとつ言っていなくて。全部、その立地についてしか言ってないんですよ。面白いですね。他の、たとえばスマホの広告がスマホに関して何も言っていなかったら、それは広告としてはちょっと奇妙だと思うと思うんですけども。マンションポエムはマンションの広告なのにマンションについて何も言わないのが普通なんですね。そのかわり、「ここに立っています。この街に」っていうことばかりを言っている。それがまあ、ひとつ行きついたのが今の「山手線に暮らしたい」っていうことだと思うんですね。「立地の良さ」っていうことを売りにしている。

(安住紳一郎)立地のことしか言わないんですね。普通だとね、「こういう工法で建てました」とか「こういう設計の工夫があります」とか。「デザイナーが○○さんです」みたいなことを本当は語るべきなんでしょうけど。

(大山顕)そうですね。ページをめくっていって、そういうところを見るとそれについてももちろん書いてあるんですけど。まずバーンと出てくるのはすべて立地ですね。そこが面白いところですね。

(安住紳一郎)そうですね。

(大山顕)あと、今申し上げたみたいに立地イコール少なくとも首都圏や大阪、近畿圏で言うと、それは鉄道の利便性の良さっていう。ほぼ、それを表わすと言ってもよくて。これはおそらく安住さん、大好きなのではないかなと思うんですが。読みますね。ちょっと長いんですけど。「AGE OF DISCOVERY-大航海時代」っていう。これ、マンションの広告ですからね。「大航海時代。かつて既存の価値を超え、大いなる可能性を秘めた新天地を求めて、大洋へと航海に乗り出す人々がいた。東京メトロ丸ノ内線始発駅。そしてそのポテンシャルを余すところなく掌中にできる駅徒歩1分の地-」っていうポエムがありまして。

(安住紳一郎)ええ。

(大山顕)これ、方南町の物件なんですよ。今、安住さんがピンと来た顔をされていてさすがだなと思ったんですけども。これ、一昨年、丸の内線が直接乗り入れるというか……。

(安住紳一郎)中野坂上での乗り換えが……。

(大山顕)そう。これまで中野坂上で乗り換えなきゃいけなかったんですよね。丸ノ内線って2つにわかれていたんです。で、方南町に行くためにはあの短い区間のために中野坂上で乗り換えなきゃいけなかったのが一昨年、直接乗り換えなしで行くようになったんですよね。それを……その、方南町の駅前に建った新しい物件。直接乗り入れて便利になった方南町の方々の喜びが勢い余って「大航海時代」という……。

方南町で「大航海時代」

(安住紳一郎)はー! 「中野坂上の乗り換えなくなりましたよ!」っていう。

(大山顕)「AGE OF DISCOVERY」だと。

(中澤有美子)「乗り出せ!」と。

(安住紳一郎)「スエズ運河が開通したぞ!」みたいな。

(大山顕)ああ、さすがですね。たぶんそういうことなんだと思います。「喜望峰を回らなくてもスエズ運河でシュッと行けるようになったよ!」っていうことなのでは? アフリカ大陸の南端まで行って回らなくてもインド洋までシュッと地中海から行けるようになったっていう。

(安住紳一郎)新時代だと。

(大山顕)新時代。それが、方南町っていう。

(安住紳一郎)はー! でもこれを見てよく……ねえ。よくよく読解しないとなかなか「ああ、これは丸ノ内線の中野坂上の乗り換えの方南町行きのあれが直通になったな」って気づきませんよね?(笑)。

(中澤有美子)すごいな! 壮大だな!

(安住紳一郎)そうか……。

(大山顕)僕もいろいろとマンションポエムを10年以上見てきましたけど。近世ヨーロッパをモチーフにしたっていうのは初めてでしたね。

(安住紳一郎)そうですよね。

(大山顕)びっくりしました! しかもそれが方南町っていうところが最高ですね。

(中澤有美子)前に「応仁の乱」ですごく私は驚きましたけども。

(大山顕)はい! 京都の物件もテンションが高くて。「京都。この地で数々の英雄たちが歴史に名を残してきた。応仁の乱。遷都。そして、このマンション!」みたいなやつですよね?

(中澤有美子)ですね(笑)。それをまた、時代と背景を変えて。うん。あれ、すごかった!

(安住紳一郎)そうですよね。「かつて秀吉もこの地に……」みたいなことですよね(笑)。

(大山顕)そうですね。あれもたしか交通利便性も応仁の乱あたりにたとえているのがありましたね。「英雄たちは皆、京都を目指してきた。なぜなら……」っていうようなノリで。まあ、日本の中心地であり、ここを押さえれば、交通の要所を押さえれば、日本を治められるっていう。まあ、応仁の乱の図版と共にやっていて。「なんでだ? なんでだ?」って読んでいったら、駅チカ物件であるというものでしたね。だから東京の場合、それは大航海時代に行くしかないっていうことなんでしょうね。

(安住紳一郎)いろいろ歴史のことにも思いを馳せたり。交通事情やら、最近の鉄道網の変遷やら。いろいろ様々なことを織り込んで。しかもポエムにしてくれているということですね。

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