星野源「Black Lives Matter」を語る

星野源「Black Lives Matter」を語る 星野源のオールナイトニッポン

星野源さんが2020年6月9日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で全世界的に広がる「Black Lives Matter」ムーブメントについてトーク。さらに自身の『うちで踊ろう』についても話していました。

(星野源)さあ、ええとですね、このお話をちょっとしていきたいなと思うんですけれども。先日、僕のInstagramの方でもポストをしましたけれども。今、「Black Lives Matter」という動きがとても活発化していてですね。もう世界中で起こっている運動ですけれども。日本でもそのことを発言したりとか訴える人っていうのがどんどんどんどん増えてきました。で、すごくいいことだなと思うし、自分ももちろん昔から、いわゆるブラックミュージックとかブラックカルチャーっていうものが大好きで。

もう本当に幼少の頃からずーっと触れてきた文化。いわゆる親がずっとジャズが好きだっていうのもあって。そういう文化を目にすることが本当に多い中で、いろんな歴史を……もちろん、概要は知っていたけど。今回の運動を機にですね、改めて知ることとか。「そうか、自分は全然分かっていなかったな」っていう風に思うことがすごく多くて。

で、今までそういうことを僕はこういうラジオとか……もちろんそもそも自分でSNSをやっていなかったっていうのがあるんですけど。なのであまり発言をすることはなかったんですけども。なんか今回、ちょっとこの番組でお話させてもらえたら嬉しいなということで。ちょっとだけお話しようかなと思います。今回の放送もプリンスの『Baltimore』という曲から始めましたけども。

ちょっと、いわゆる「Black Lives Matter」のことを、僕のInstagramとかをチェックしてくれる方もラジオを聞いてくれてくれているファンの方にはすごく多いと思うので。もちろん知っている方もいらっしゃると思います。で、今回のきっかけとしてはジョージ・フロイドさんという方がですね、白人警官に殺されてしまったという……まあ本当にかなり概要ですけども。その事件をきっかけに抗議運動だったり、デモというものがものすごく活発化しました。で、もちろんその運動っていうものとか、あとは差別っていう問題とかっていうものは本当に長い歴史があって。400年以上の歴史がある中で、さまざまな改革だったり、運動が起きて。改善したと思っても全然改善してないっていうことが何度も何度も何度も何度も何度もあって今、今までで一番大きいんじゃないかっていう動きになっているんですね。

で、日本でやっぱりこういう問題っていうものがこれだけ多くの人が語るようになるっていうのは日本でももちろんなかったと思いますし。海外でも、いわゆる当事者の方々も「今までで一番大きい動きだ」という風に言っています。なので今回の皆さんの思いとしては今、本当に終わらせなきゃいけない問題だし。もしかしたら今回、本当に何かが変わるかもしれないっていう動き、思い。あとはもう絶対にこれで終わらせなきゃいけない問題。変えなければならない問題だという、そういう問題なんですよね。

いわゆる「差別」というものはもちろんみんな、良くないということは頭では分かっているけれども、社会の構造の中にそういう構造がアメリカの中にはあって。もちろん、日本の中にも差別というものとかいろんなものがもちろん、あるんですね。それは黒人差別というものだけではなくて……いわゆるその「黒人」という風に言うのもどうなの?っていう話はそもそもあるんですけども。「アフリカ系アメリカ人」の皆さんっていうね。で、その方々への差別っていうものだけではなくて、それ以外の差別ってのはもちろんあるんだけれども。

ただ、今の皆さんの思いとしては、これだけ長く続いてきた本当に大きな問題でさえ、まだ解決できてなくて。一番大きいムーブメントに今回、はじめてなって。この400年の中で。で、それでもしかしたら今回、解決できるかもしれない。だから、たとえば日本の中で今、こういう問題の問題提起があって。今まででたぶん一番、こういう風に表明する人っていうのが多かったとは思うんですけれども。その中で「他の差別問題もあるじゃないか?」っていう意見ももちろんあると思うんですけれども。

その中で、「まずはもし、ここを解決することができるんだったらば、他のことも解決できるかもしれない」という……その全部を同時にやっていったら難しいっていうものをまず、この本当に今、やっと巡ってきたチャンスとみんなの勢いと、ここまで波及してきた一番大きなもの。それをもって解決しなければならないという問題なのだと思います。自分も本当に勉強不足な部分がすごくあるので。これで伝わらない部分ももしかしたらあるかもしれません。

自分も自分の知識がもしかしたら間違っている部分があるかもしれないので、ぜひ「Black Lives Matter」で皆さん、調べていただいて。自分の目で知るということが大事だと思いますので。皆さん、ぜひこれをきっかけに知ってもらえたらありがたいなと。それで何かを考えるきっかけにしてもらえたらいいなと思います。

僕もInstagramのストーリーズでポストしたんですけど。『13TH』っていう映画がありまして。ネットフリックスで公開されているんですけど。映画というか、まあドキュメンタリーですね。で、そのドキュメンタリーが今、YouTubeでも日本語字幕付きで全部、ネットフリックスが公式で公開していて。それを見ると今回の問題がいかに差別を自分の感覚、人の感覚で差別をしているっていうことじゃなくて、本当にもう、あまりにも根深い問題で、なかなかそこから離れられない理由だったり。そういうものがなぜ生まれてしまうのか?っていうところをすごく冷静に、かつすごく胸に来る映像と共につづっているドキュメンタリーがあるので。それを見ていただくとすごくいろんなことが知れると思いますので。ぜひそこで見ていただきたいっていうのと。

その中で「ワンさん」という方が仰っていたことなんですけど。今回の「Black Lives Matter」っていうのは指導者がいないんですよね。いわゆる、今までの黒人差別のデモだったり運動っていうのはその(キング牧師、マルコムXをはじめとする)指導者がいて。その人がみんなを率いたりとかしていたんだけど、今回は指導者がいるんではなくて、その言葉と共に全員が今、個人個人が自分たちで立ち上がっているっていう。今までは指導者を殺されたり、暗殺されてしまったりすることで運動が抑え込まれてしまったようなことも、今回だったら抑え込まれずに、本当に何かが変わるんじゃないか?っていう思いを語っている部分があって。それですごく胸にくるものがありました。

Netflix『13TH』

なので、もちろんね、日本でたとえばこういう問題を口にする時って、うーん。日本ってなんとなく部外者感があるというか。なんか音楽にしても何にしても、僕もその去年1年、ずっとワールドツアーだったり何だりっていう動きをさせていただきましたけれども。見えない壁みたいなものが日本と海外の間に、音楽で言うとあって。たとえばこういうことを言う時に自分は部外者だから言っても何かちょっとね、イキっているように見られてしまうとか。そうじゃなくて今、これをみんなで解決しないと、その他の問題も解決できないというか。ここを皮切りに本当に変わるかもしれないっていう節目になるべきタイミングなだなということで。それで僕もはじめて……まあSNSを持ってからね、そういうことをはじめて、僕は改めてそのことをちゃんと口にしたいなという風に思いました。

で、今までなんでこのラジオでこういう話をしてなかったかと言いますと、僕はコサキンが大好きで……っていう話を前もしてましたけども。こ『コサキンDEワァオ!』という番組を僕、中学の時に毎日ね、テープに録音して聞いてて。

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で、何が好きだったかって言ったら、本当にただ楽しい空間なんですよね。バカバカしい、くだらない、面白い。で、思春期の頃は非常にしんどい毎日を送っていたというのもありつつ、このラジオを聞いてる時はバカバカしい気持ちになったりとか、くだらないとか、何も考えないで聞けるよっていう時間になったらいいなと思って。あまり、そういうことを口にせずに選曲をすることでなにかを汲み取ってもらえたら嬉しいなっていう、その選曲ので何の曲を選んだか。僕はあの番組中で全部、もちろん曲を選んでいるんですけども。そこで何か伝わったらいいなっていう風にしてきました。

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で、これからも基本的にはそうするつもりです。なんでそうしてたかと言うと、たとえばタイムラインとかもそうですけど。このラジオを聞いていて、たとえばそのハッシュタグの「#星野源ann」が議論の場になってしまうっていうのが……もちろん議論をすることはめちゃくちゃ大事なんだけど。議論をする場所と、あとは何も考えないで楽しめる場所って僕は両方あった方が絶対いいと思っていて。僕のラジオに関しては何も考えないで楽しめる場所になったらいいなと。でも、その中で気づく人は気づいて。それでその心の中で何か考えるきっかけになったりとか、あまり押しつけたくないなっていう思いがちょっとあったので、そうしてきました。

で、今回「Black Lives Matter」の件に関しては、いわゆるSNSではじめてそういうことを発信したっていうのもありますし。どう思ってるのか?っていうのを自分が一応言った方がいいかなっていうことで今回は言わせていただきました。だからこういう運動……自分もそのみんなに「これを知らなきゃいけないんだ!」って言うつもりは全くありません。でも今、僕はこれを知っておいた方が……知っていって、その上でいろんなことを考えたりしていった方が未来のためになるんじゃないかなと思ったので。これを皮切りにというか。

しかも自分がずっと触れてきて、その件についてずっと考えてきたけど、そのことについて全く言っていなかった。かつ、まだまだ考えることが本当にあって。それは彼らだけの問題じゃなくて、遠い場所のアメリカの問題だけじゃなくて、それは自分たちのいる場所について。そして自分と他人だったり、自分と誰かっていうところが問題にも繋がってくることだと思うんですよね。なのでこのお話をさせていただきました。

で、この話をすると「何であの話しないんだろう?」っていうことにもなるかなと思うので。『うちで踊ろう』という楽曲を僕、出させていただきまして。コロナ禍になって自粛期間というものになる本当に数日前ぐらいかな? 僕が4月2日の深夜にInstagramで発表した楽曲で。この曲をもって、いろんな人が楽器とかダンスとか、そういうものを重ねてもらって。それで重なり合おうという。

『うちで踊ろう』に託した想い

たとえば会っていろんなセッションすることはできないけど、この動画をもって離れた場所でもセッションしたりとか音楽を一緒に奏でたりとか、音楽に合わせダンスを踊ったりとか、そういうことはできるんじゃないかな?っていう。そういう発想のもとに1曲、『うちで踊ろう』という。「うち」っていうのは「家」っていう意味ももちろんあるはあるんですけど、「おうち」……その頃、「おうちで過ごそう」とか「おうちで○○」っていう言葉がどんどん増えてきたっていうのもあって。でも「おうち」だとどうしても「家」限定という風になってしまうので。

だから、この期間中、家にいられる人たちだけじゃなくて、どうしても働かなきゃいけない。外に出なきゃいけない人たちっていうのも絶対にいて。その人たちも楽しめるように「おうち」から「お」を取って「うちで」……「心の内で」、もしくは「職場の内側で」、もしくは「電車の内側で」。いろいろな場所で楽しめるような。いろんな人があげてる動画を見て、そのハッシュタグを見て楽しい気持ちになる。

本当に日常が厳しい状態だし、毎日苦しいけれども、そのハッシュタグを追いかけている間はなんか面白かったりとか、ほっとしたりとか。「うわっ、こんなアイデアがあるんだ!」って楽しんだりとか。なんかそういう場所にしたい。そういう思いで僕は『うちで踊ろう』。そして「#うちで踊ろう」っていうハッシュタグ。「#DancingOnTheInside」っていうハッシュタグを作って公開しました。

で、なんか「ムーブメントにしたい」っていうよりかはこれを使って楽しい時間を作ろうと……それで今、もしかしたら皆さんちょっと忘れかけているかもしれない。もちろん忘れていない人も多いと思いますけども。忘れているかもしれない。思い出しにくくなってるかもしれないんですけど。4月1日、2日、3日。もしくは4月全体のあのなんか苦しさっていうか。出口のない感じ。

まあ、もちろん自粛期間がどれぐらい長くなるのかも分かってなかったし。どんどんどんどん感染者の人数が増えていく中で、自分たちの生活がどうなっちゃうのか。どういう風に世の中が進んでいくのかが本当にわからない中で、やっぱり苦しい空気っていうのが本当にあったと思うんですよね。で、その中で本当にちょっとでもいいから、何も考えなくて楽しい時間。あとはまあ「うちにいなきゃ」と思っている人は「うちにいよう」っていう風にまた改めて思えたりとか。外に出なきゃいけない人はこの「うち」っていうもので心の中を少し楽しくしていただいたりとか。安心できる場所っていうものを持ってもらえたら……と思って、この苦しい状態の中で、なんかそういう場所にしたいなと思っていました。

それで、安倍晋三さん……安倍総理がですね、『うちで踊ろう』の動画を上げた時に本当にさまざまなメッセージが来ました。「政治利用されてるから否定しろ」っていうのもあったし、「喜ばしいことだから喜べ」とかも来たし。あとは『うちで踊ろう』と関係のない個人への攻撃的な言葉……かなりきつい言葉とか、全然関係のない言葉とかも来たし。僕は普通に動画を上げただけで、もちろん事前に連絡をもらったわけではなくて。皆さんと同じように、『うちで踊ろう』をたくさんやってくれたみんなと同じような条件で、いつの間にあの動画が上がっていたということなので。もちろん自分がそれを言われる筋合いはないと思いつつも、やっぱりさまざまなメッセージが来るので、本当にいろんなことを考えました。

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