武田砂鉄さんが2020年4月3日放送のTBSラジオ『ACTION』の中で政府が発表した「布マスク2枚を全世帯配布する」という件について話していました。
(武田砂鉄)今週はですね、宮藤官九郎さんがですね『いだてん』の脚本で伊丹十三賞を受賞されて、非常におめでたいですね。このラジオは月曜から金曜にかけて徐々に正体不明になっていくというラインナップになってますんで。最も名の知れた月曜日のお兄さんがこういう賞を受賞されるのは非常にとてもめでたいことだと思っております。本当におめでとうございますよ。
で、皆さんご存知のようにその宮藤官九郎さんが新型コロナウイルスの陽性が発覚をしまして。今週の月曜日は腎盂炎ということで休まれていましたので、前回宮藤さんがこの番組に出演されたのは3月23日だったんですけれども。それは新型コロナウイルスの発症前でしたので、保健所の判断で幸坂理加さんも番組スタッフも濃厚接触には当たらないという判断は出ております。ただ、大事を取って幸坂さんは今週いっぱいお休みをしているということですね。水曜日にDJ松永さが宮藤さんのコメントを発表されてましたけれども。
僕は別にその陽性になった方がですね、謝る必要っていうのはやっぱりないと思うんですね。今、見えないものをどうやって避けるのか?っていう段階ですので。完璧な対応っていうのはなかなかないだろうと。それで今、こういう風に陽性になった個人の行動を責めるっていうことではなくて、こういう緊急事態に世の中の仕組みであるとかシステムをを作り上げる人たちがどういうことをしようとしてるのか?っていうことに目を向けていくべきだと思っていますま。
今、いろんな声が出てきて、ようやく遅ればせながら現金給付の話なんていうのも出てきておりますけれども。この番組でも何度も話してきた通りですね、自粛は要請するけれどもお金は払わないという風になれば、自分たちの生活を守る為にま外に出て仕事をするという風な判断をすることにも、どうしてもなってしまいます。今日、この後に劇作家の平田オリザさんがいらっしゃって、そこで「文化も社会インフラである」という話を聞こうと思っていますけれども。
まあ「家にいてください。ただ、お金は払えません。何とかしてください」っていうことで何ともならない部分も出てくると思うんですよね。1日、2日前に政府はですね、「国民全員に布マスク2枚を配る」という風に言い始めまして。多くの人がそういう風に思ったと思いますけども、僕も「これはエイプリルフールだ」と思ったんですね。「こんな時にエイプリルフールのネタを披露しなくても」っていう風に思いましたけども。そしたらなんと、本気だったんですよね。
安倍晋三首相は全国5000万あまりの世帯に対し、再利用可能な布マスクを配布すると表明しました。1住所あたりに2枚ずつ配る方針で「再来週以降、感染者数が多い都道府県から順次配布を開始する」と語りました。https://t.co/l6uTJVAO6q
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) April 1, 2020
どうやら1枚200円程度の布マスク2枚ずつを5000万世帯に。単純計算で200億円。これにプラス、送料がかかってくるっていうことでですね。
単純計算で200億円+送料
菅官房長官は「このシステムは北海道で既に実施した。その経験を生かして速やかに配布する」っていう風におっしゃったんですけれども。まあたしかに3月に、北海道の北見と中富良野町というところで配布をしてまして。まあただこれ、全世帯に漏れなく配布できたわけではなくて。2世帯住宅に1世帯分とかですね。あるいは郵便受けがひとつしかない高齢者施設に1袋しか配られなかったっていうこともあったみたいで。それで今回は2世帯住宅に関しては後でもう1回、マスクを送るなんてことも考えてるらしいんですけれども。
まあこういうことに対して「布マスクなんていらない」という意見を言うとですね、「いや、布マスク助かるよ」っていう意見も出てくるんですけれども。まあ、ないよりもある方がたしかにいいんですけれども。僕なんかが「おかしいな、恐ろしいな」って思うのは、「この布のマスクを配れば、国民が納得してくれるだろう」と思ってる人たちが国を動かしてるっていう。この事実がちょっと不安になってくるんですけれども。
つまり、「布マスク2枚で納得をしてくれるだろう」と思っている人がハンドリングをしてるっていう事実があるわけですね。だから「えっ、国民は布マスク2枚で納得してくれないの?」っていう風に動揺をしてるみたいなんですけど。もうその動揺にこっちが動揺してるっていうようなところがありまして。なかなかこういう人たちは国民の生活っていうものがあまり見えてないんだなという風に思ってしまうんですけれども。
まあ僕の頭の中にはですね、経済産業省が2月12日にしたツイートっていうのがありまして。このツイート、どういうツイートだったかっていうと……「マスクを慌てて買い置きしなくても大丈夫です。厚労省や企業の皆様と連携し、毎週1億枚以上、お届けできるようになりました。」っていうものなんですね。
「マスクを慌てて買い置きしなくても大丈夫です。」(経済産業省)
マスクを慌てて買い置きしなくても大丈夫です。厚労省や企業の皆様と連携し、毎週1億枚以上、お届けできるようになりました。花粉症などマスクの必要な時期が続きますが、風邪や感染症の疑いのある人にマスクを届けるため、ご協力をお願いします。#マスクの使い方を考えよう #新型コロナウイルス対策 pic.twitter.com/LikIwPqi5r
— 経済産業省 (@meti_NIPPON) February 12, 2020
で、このツイートからもう2ヶ月近く経っていて。そのツイートした日には菅官房長官なんかは「早ければ来週から」っていう風におっしゃっていたんですけども。
マスクの品薄、来週以降に解消したい=官房長官 https://t.co/LsDLC61z6G
— 鍵穴 (@kagiana0desu) February 12, 2020
あれからずっと先延ばしにされているところがあるんですね。まあ、次なる数値目標っていうものは示させるんだけども、その当初の読みが甘かったことに対する言及があまりないので。そうすると、当然不安とか恐怖というものは少しずつ堆積していく。そこにあまり答えようとしてくれないっていうところがありますね。「いや、政府も頑張ってるんだから」っていう風におっしゃる方もいるんですけれど。それはもちろん、頑張っていらっしゃるんだろとは思うんですけれども……でもやっぱり僕はこういう時には、その想像力を上に働かせるじゃなくて、想像力を横に働かせてですね、「今、こういう風に困ってる人がいるんだ」ということを想像して。それをまた上に物申していくっていうことが必要なのかなという風に思っています。
本当に彼らは国民の声っていうのをとても気にしてると思いますし、こういう風に不安を表明したりとか、「こういう風にしてください」っていうことを声を上げればですね、変わる部分も出てくるのかな?っていう風に思っています。