武田砂鉄さんが2020年6月5日放送のTBSラジオ『ACTION』TBSラジオ『ACTION』の中で2020年6月初週のさまざまなニュースを振り返りながら話していました。
(武田砂鉄)毎回、このオープニングでいろいろ何を話そうかな?ってその日の朝に考えるですけど。この1週間に起きたニュースっていうのを頭でおさらいするんですけど、そうするとなんかね、今週なんかもとにかくたくさんのニュースがありすぎてね。これ、箇条書きで並べてみるだけでも本当いろんなことがあって。この国内のコロナ関連の「お金の動き」っていうのが軒並み怪しいっていうのがありまして。この持続化給付金の受託企業のサービスデザイン推進協議会……なんか名前からしてそんなにすんなり、ストレートに聞きませんけれども。
まあこれが「不透明だ」と言われていて。国からの769億円の委託費を97パーセント、電通に再委託して。その差額の20億円を懐に入れているという。まあ、「いろんな事業をやっている」という風に言い訳してるんですけれども、どんな組織かは見えない。そしてその代表にインタビューしたら「自分は飾りなんで」っていう風に『ニュース23』で答えてましたけれども。
サービスデザイン推進協議会の代表理事が「私は飾りです」と言い切っっちゃたのすごい。 pic.twitter.com/AkzkpxNA2d
— れもんた (@montagekijyo) June 3, 2020
あとは「Go Toキャンペーン」というのがですね、事業者への委託費を最大3095億円見積もっているというのが問題視されていて。赤羽国土交通大臣は異例の金額であることを認めて「縮小する」という。そして第2次補正予算に計上された、事前に国会の議決を必要としない10兆円の予備費。これは国会承認なしで使えるもので「コロナ関連の緊急を要する経費に限る」っていう風に安倍首相は言うんですけど。まあ今、言ったように持続化給付金で早速、なんか利権が匂っている中で「使うのは感染症に関わる緊急の経費だけです」っていう風に言われても、なかなかどうでしょう? 信じられる人はいないなと思うんですけれども。
あとはコロナの専門家会議で速記者が2回、不在だったっていうことも明らかになって。これ、今回の新型コロナウイルス、公文書管理を徹底する「歴史的緊急事態」というものに指定されたわけですけども。この新型コロナ対策っていうのも検証が困難になったという。それで先週、青木理さんにいらしていただきましたけど。東京高検の黒川検事長問題。
懲戒処分にしたかったのに訓告にしたという、そのプロセスが明らかになってない。それで昨日、テレビを見てたら麻生太郎大臣が例の口調で「今回の新型コロナウイルス、日本で死者が少ないのは日本の民度のレベルが違うんだよ」っていうような言い方をしたという。今、世の中が「差別とか分断とかを避けなきゃいけない。連携しなきゃいけない」っていう時に、副総理大臣がこんなことを言っているという。
「いかにも麻生さんらしい発言だよ」で許しすぎ。https://t.co/0MfKfHajqJ pic.twitter.com/2zArFcvJxX
— 武田砂鉄 (@takedasatetsu) June 4, 2020
で、東京オリンピックは簡素化が検討されるという。安倍さんはずっと「完全な形でやる」っていう風に言っていたんだけども、その強気で言ってきたこととの整合性も取れなくなってきた。で、東京アラート。謎のアラート、出てますよね? それで今、小池さんは口を開けばですね、「いわゆる、夜の街関連」って言うんですよね。「いわゆる」「夜の街」「関連」。3つとも、すごいぼやけてますよね?
(幸坂理加)ぼやっとしていますよね。
(武田砂鉄)ぼやけているんだけど、こういう風に曖昧な言葉の掛け算をすることによって、なんか漠然と僕らは不安をあおられながら。かといって、別に新たな補償を提示してるわけではなくて。なんとなく「あの人たちのせいよ」というか。「自分たちの対応はちゃんとしてるのに」みたいな感じが強まってくるという。こんな風に箇条書きにしただけで8個、あるんですよ? これ、なんかすごい時代を生きてるなっていう感じがするんですけど。これらすべてが「国民」じゃなくて「国家を運営する人たち」の問題ばかりなわけですね。
「国家を運営する人たち」の問題ばかり
(武田砂鉄)今週、いろいろちょこちょこ街に出ると、ようやく人が出始めて。マスクをしてるもんだから人の表情っていうのはなかなか分かりませんけども。なんか「これだけ国が癒着とか嘘とか隠ぺいばっかりやってるのに、僕たちはよくけなげに頑張ってますよね!」っていうんで声をかけたくなっちゃうような、そんな状況でしたけれども。
まあ海外に目を向けると、連日アメリカでのデモの様子っていうのが報じられてまして。ミネソタ州で白人警官による暴行によって黒人男性のジョージ・フロイドさんがお亡くなりになったっていうことで、各地でデモが広がってまして。水曜日の『ACTION』のDJ松永さんの時にも、「黒人差別とヒップホップ」というお題でいろいろと歴史を紐解いていて。僕も聞いていて非常に勉強になったんですけど。
(幸坂理加)はい。
(武田砂鉄)まあ報道だとね、一部暴徒化した映像が結構繰り返し流されていて。でも実際には静かに訴えるデモっていうのが多い。ただまあどうしても全体像をね、僕らが掴みとることが難しいというところがあるんですけれども。まあ最近、注目されるようになった言葉のひとつに「トーンポリシング」という言葉があって。ちょこちょこ聞くことがあると思うんですけれども。
このトーンポリシングっていうのは社会問題に対する主張について、その「内容」ではなくて「話し方」とか「態度」を批判する行為のことを言うんですけど。つまり「お前にそんなこと言う資格があるのかよ?」とか「その言い方、そのテンションはよくないと思うよ」みたいなことで、そもそもその内容に行きつかせないようにするっていう。まあの検察庁法改正案の時にも割と芸能人の方が言及した時にそういう反応が多かったですけれども。
まあこのトーンポリシングのサンプルのようなツイートがありまして。ある投稿で「声高に平和を訴えるほど攻撃的。声高に差別を訴える人ほど差別的。声高に誹謗中傷を責める人ほど言葉は汚い。普通の声で言おうよ。正しいことなら」というツイートがあって。それにタレントのつるの剛士さんが「普通の声で、ほんまこれ。」っていうツイートをしたんですね。まあ「これぞトーンポリシング!」っていう感じのツイートだったんですけども。「普通の声ってなんだよ?」って僕なんかは思っちゃうんですけども。なんかこの「まあまあまあ、落ち着いて、落ち着いて」っていうようなことを言われるようなことがあると思うんですけども。とにかくこれがすごい好きで。
今、ビリー・アイリッシュっていうアーティストがいますけども。彼女があるインタビューで「友人俳優に言われた言葉を大切にしている」っていうことを言っていて。それはですね、「君が口にできる最も強力な武器はNOだ。NOにはYESの100万倍の力がある」という風に言われた。それについてビリーは「私はNOという言葉を随分と使ってきた。YESと答えた方がずっと多くのお金を手にできたとしても」っていう、ちょっと皮肉交じりに語っているんですけども。まあ、NOって僕は大事だなといつも思うんですけども。
これ、ヒップホップの世界だけじゃなくて、僕の好きなヘヴィメタルの世界もですね、非常に差別の問題っていうのは横たわってまして。数年前にパンテラっていうバンドにいたフィル・アンセルモっていうばボーカリストがステージ上で「ホワイトパワー」って叫んだんですね。つまり「白人の力」っていう風に叫んで非常に問題視されたんですけども。彼は結構最初は「これは白ワインのことだ」とかとんでもない言い訳をしてたんだけれども。まあその後、謝罪をしたんですけど。でもその時にね、後輩のバンドがものすごくブチ切れたんですよ。
(幸坂理加)ええっ?
(武田砂鉄)スリップノットっていうね、覆面をしたバンドがいるんですけど。その人たちが「別に先輩だろうが何だろうが、こんなことは絶対に許さないし、そういう肌の色で人を差別するような人に割く時間はないぞ!」っていうようなことを言ったんですけど。こういう大先輩だろうがNOと言うとかね、ブチ切れるっていうのは僕はすごく大事なことだなって思うんですけど。今日の東京新聞にですね、ジャーナリストの北丸雄二さん。この番組にも『いだてん』の回でお越しになったジャーナリストの方ですけれども。コラムを書かれていて。アメリカ社会に非常にお詳しい方ですけど。タイトルが「言葉で再生する国」っていうタイトルで。
まあ「アメリカという国は『自分たちのことは自分たちがやらねば』という人たちが多い。正義と公正を堂々と口にする人が多いんだ。芸能人だろうが何だろうがそう言う。ただ、この国の大統領は言葉を持っていない。こういう団結しなければいけない時に、大統領は言葉を持っていないんだ」というようなことで、ある種告発するような文を書かれていたんですけども。今、日本で起きていることというのもこれは同じ共通項があって。やっぱり総理大臣とかも言葉を持っていない。のらりくらりと逃げる。「麻生さんはそういう人だから、しょうがないよ」とか「しょうがないよ、この緊急事態だから」とか「しょうがないよ。差別だってあらゆるところにあるでしょう」みたいな感じで続く。
北丸雄二「言葉で再生する国」
東京新聞6/5本音のコラム
言葉で再生する国 北丸雄二さん
「われわれは今、成熟した指導力を欠いた三年間の結末を目撃している」とマティス前国防長官が発言しました。「この悲劇と困難と恐怖は人々の目覚めの重要な機会なのだ」とオバマ前大統領も声を出しました。 pic.twitter.com/KSj4rPEs2X
— ?さとしん?Shin Sato☀️佐藤伸? (@shinsato0130) June 4, 2020
こういう風になると、僕たちの生活が力を持つ人たちにまさしく「ジャッカル」されるんですよ。ジャッカルされちゃう。勝手に入り込まれて制限されたりすることがあって。ここ数週間だけでも我々、ジャッカルを連発されているんですよ。こうやって近場にお金を循環させる様子とかね、マイナンバーを全ての口座に紐付けさせようとか、誹謗中傷に関するSNSの議論とか、スーパーシティ法とかいろいろとありましたけども。なんかね、1週間に起きたことをいろいろと並べたらぐったりしちゃったんだけども。でもこの北丸さんの書かれていた「言葉で再生する」っていう、これしかないと思うんですよね。やっぱり権力者のジャッカルには、言葉のジャッカルですよ。
(幸坂理加)私の得意分野?(笑)。
(武田砂鉄)得意分野。もうね、ただ「ジャッカル」って思い出して、「ジャッカル」って言いたいだけの内容になりましたけども(笑)。まあ、ただ奪われているだけじゃいかんぞっていうことをこの1週間、思いましたね。
<書き起こしおわり>