武田砂鉄と荻上チキ 2021年東京五輪開催の可能性を語る

武田砂鉄と荻上チキ 2021年東京五輪開催の可能性を語る 荻上チキSession22

武田砂鉄さん、安田菜津紀さんが2020年5月29日放送のTBSラジオ『荻上チキSession-22』TBSラジオ『荻上チキSession-22』に出演。荻上チキさんと2021年に延期された東京オリンピックについて、開催の可能性や問題点などを話していました。

(南部広美)そしてメールです。「私の気になるニュースは東京オリンピックです。さしあたり7月の東京都知事選に大きな関わりがあるし、来年9月までの安倍総理の任期にも関わりがあります。来年、本当にオリンピックができるんでしょうか?」。

(荻上チキ)武田さん、オリンピック関連の話題ですけども。

(武田砂鉄)いやいやいや、「できる」と思ってる人、なかなかいないと思うんですけれども。この間、安倍さんの会見を聞いてるとオリンピックについて「人類が打ち勝った証として」っていう非常にもうアニメみたいなスケール感で言うんだけれども。でも、冷静に考えてみるとこれ、2月とか3月の時にオリンピックについてどういう風に言っていたかというと、「復興五輪」という言い方をしてたわけですよね。今、安倍さんの会見でその復興五輪という言葉は一切、聞こえてこないわけですよね。

「人類が打ち勝った証の五輪」と「復興五輪」

もちろん、そもそも当時の「復興五輪」というものからして、いろいろ現地の人たちがそれを歓迎してるのか?って言ったら、なかなかそんなに「万歳」と歓迎している人たちはほとんどいないわけで。それで今はこの「人類が打ち勝った証」という言い方を連呼している。で、このワクチンがね、来年……1年後に全世界で相当な量が広まって、完全にこのコロナウイルスを収めるような形になる可能性っていうのは極めて薄くて。それはまあ、山中教授と安倍さんが対談をしていた時に山中さんがちょっと言葉を選びながら「いや、ちょっと1年先までは難しいと思いますよ」っていうような言い方をされてましたけれども。

でも、安倍さんは「できる」と。で、その「できる」というのはなんでできるかっていうと、別に根拠があるとかではなくて。「なんでできるんですか?」「できます!」っていうことでしかないわけですよね。これだけ今、未知のウイルスと戦っている中で、「何でできるんですか?」「できます!」っていうこの何もなさに、なぜ僕たちがまだ付き合わなきゃいけないんだろうか?

(荻上チキ)森喜朗会長とかはね、なんか「人類の英知を信じている」みたいなことを言っていて。「いや、僕はあなたの英知を疑っているんですが?」とか思ったんですけれども。

(武田砂鉄)そうですよね。森さんは「神はなぜ私にこんな試練を与えるんだ?」ってことで、神との対話もされていましたけれども。まあ、対話をされるのは別にいいんだけれど、なぜそれに僕たちが付き合わなきゃいけないのか?っていう。

(荻上チキ)「神」という点で言うと、尾身座長もね、国会で野党の質問に対して「ワクチンはどうなるのか?」という。それで質問の中で「神のみぞ知る」という言葉を使ったんですよね。で、それは結構政治的な言葉選びで、要は「わからないです。見通しとして、ワクチンができる可能性は極めて低いんじゃないか?」っていうような趣旨のことを言っていたわけです。ということは、今のオリンピックができるかどうかっていうのはそもそも「神だのみ」なんですよね。だけど、「開催するかも、するかも……」って引き延ばすと、その分様々な準備金などのお金がかかったりする。

あるいは世界のさまざまなアスリートなど含めて、期待はしてるだろうけれども、いろんな準備などもあったりするから。そこに対してもやるならやる、やらないならやらないで、いろいろと対応しておかないと、その後の対応もまた難しくなってきますよね。

(武田砂鉄)「神だのみ」というもうひとつ、小ネタとして「アサリだのみ」っていうのがありまして。覚えていますか?

(荻上チキ)ああ、アサリ! 覚えていますよ!

(武田砂鉄)東京湾の水質を改善するっていうので、お台場海浜公園のトライアスロン会場に砂をまいて、アサリを繁殖させて、水をきれいにさせるという。

(荻上チキ)「トライアスロン会場の海水がトイレの臭いがする」というクレームが出たからという。

お台場のアサリ

(武田砂鉄)で、僕はそれで2月ぐらいにある新聞社から取材を受けて。結局、中止になったんで記事化されなかったんですけど。僕、取材を受ける側だったんですけど、その記者の人がすごいアサリを調べてて。アサリの研究家みたいになっていてですね。「そもそもアサリというのは繁殖時期がこうなので、7月には絶対繁殖しません」みたいなことをおっしゃっていて。もしこれ、7月とかに予定通りちゃんと開催されていたら、かなりアサリの責任が重かったんじゃないかっていう……すごくないですか? アサリに委ねてたんですよ?

(荻上チキ)うーん(笑)。

(武田砂鉄)でも、それがだから1年延びたから、今、アサリたちは頑張ってると思うんですよね。そろそろ。「きれいにするぞ!」っていうので。でも、「そもそもそこに砂を入れるっていう行為自体がどうなんだ?」っていう風にその新聞記者は熱弁されていて。やっぱりそれって生態系を乱すことにもなるじゃないですか。外から砂を入れるわけですから。

(安田菜津紀)たしかに。人為的に……。

(武田砂鉄)で、その砂の投入費用とかもかなりかかるんですって。

(荻上チキ)なんかオリンピックというイベントがとにかく後からドンブリで「はい、おかわり! おかわり!」っていう風に予算が膨らんでしまう。で、費用対効果がとてもよろしくない。スポーツイベントとか、いろいろな象徴機能はあったりするので、そのスポーツイベントとメディアイベントって機能だけは残して。ただし、その国民的行事とか世界的行事っていうような、いわゆる政治ファクターというものを減らしていくっていうことが必要だと思うんですね。

だから僕は分散開催とメディアイベント化っていうのがよりベターなんじゃないかなと思っているんですけど。でも他方でオリンピックがそれなりの象徴機能を持つというのも認める。その時、たとえばどの国が出場するのか? これはたとえば難民団とか、いろいろな出場選手たちのプロフィールを知ることで、その背景を知れるということもあるだろう。でも、それはメディアイベントで可能だったりもするわけですよね。安田さん、このオリンピック関連はどうですか?

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