(父)小学校の4年ぐらいの時に……その時まだ巣鴨にいたんだけど。君がまだ声変わりしてない声でビーチボーイズの『God Only Knows』っていう曲。それを歌ってた時に……。
(PUNPEE)フフフ、そんなの、あった?
(父)うん。「録音しておけばよかったな」っていうくらい、「ああ、いいな」って思ったという記憶があるのね。
(PUNPEE)そんな記憶、俺はないし。ビーチボーイズの『God Only Knows』がどれかもわからない。でもそれを歌っていたの?
(父)そう。家でしょっちゅうかかっていたからね。言葉は分からないけど、メロディーだけは覚えてて。それをこう口ずさむというか。
(PUNPEE)だってビートルズとかも街でかかってるのを聞くと、だいたい知ってるのは、たぶんそうだよね。ずっとかけていたわけだから、それで知ってたと思うし。たぶんクリス・クロスを初めて聞いたのも親父じがアルバムを買ってきたからだと思う。子供の2人、服を逆に着ているやつ、あったでしょう? ヒップホップの。
(父)うん。あのね、ヒップホップを自分の中へ取り込もうというか、咀嚼しようというか楽しもうと思うと、結構大変だったんですよ。僕たちの世代……まあ、僕に限って言うと。
(PUNPEE)ああ、出てきた時に? へー。
ヒップホップを咀嚼するのは結構大変だった
(父)「これをどうやって楽しめばいいんだろう? ここの楽しみ方はどこにあるんだろう?」っていうようなことを考えて。でもサンプリングされているものは昔、自分たちが聞いてきたレコードのループだったりするわけだから、どこかに接点があるんじゃないかな?っていう風にしていろいろ聞いてなのね。
(PUNPEE)父さんの中で最初のヒップホップって何が出てきたの? 一番最初。
(父)ええとね、パブリック・エナミーとか、あとノーティ・バイ・ネイチャー。あのへんが出てきた時に「ああ、ちょっと楽しめるかも?」って思って片っ端から、ほら。タワレコとかさ、ああいうところで試聴しまくって。だんだん楽しめるようになったかなっていうかね。今はもっとほら、ヒップホップでもいろんなタイプのものがあるでしょう? だから良かったんだけど、最初はちょっとやっぱりトゥーマッチっていうか。
とても……だからラン・DMCなんかはあれはもう、そういうフレーズがエアロスミスの曲の中にあったから、とっつきやすかったけども。それ以外のものっていうとやっぱり結構時間がかかるよね。これは、そう。それで僕たち年代……僕は今、63だけど。ラップ自体はほら、若い頃からあったからさ。自分たちがそれこそ中学生前後の時から、そういう「ラップ」っていう言葉はあったんだよね。音楽的に。
(PUNPEE)ああ、もうそんな時からあった?
(父)あった、あった。ビートルズの『Rocky Raccoon』なんて……「あんな感じのことをラップって言うんだな」って。他にもいっぱいありましたよ。海外で。
(PUNPEE)えっ、その時からもう……ヒップホップが出てくる前に「ラップ」って言っていたの?
ヒップホップ以前から「ラップ」という言葉はあった
(父)「ラップ」っていう言葉はあった。それをね、先輩に教えてもらった時に「へー、そうなんだ」って。「これ、ラップって言うんだよ」って。
(PUNPEE)ああ、ヒップホップっていうカルチャーはなくても、そういう手法的なのでラップっていう?
(父)そう。「しゃべるように歌う」っていう。
(PUNPEE)それは知らなかった。
(父)本当かどうか、分からないよ。でもまあそんなもんだと思って聞いて。僕の話の中で。
(PUNPEE)うん。で、いろいろギターを親父にもらって、音楽っていうかバンドを始めて。その後でヒップホップというかラップのグループを始めたわけじゃん。自分は。それで、その時って今ほどさ、何をやってるか?ってわかんなかったでしょう。クラブでなんかライブしてるけど、遊びに行ってるみたいな感じがしたと思うんだけど。何か「こいつら、ちゃんとやってるな」って最初に思った瞬間って何だった?
(父)そりゃあなんて言ったって加山雄三さんでしょう?
(PUNPEE)フフフ、やっぱりそうなんだ。
(父)まあ、言ってみれば一番最初のアイドルだったからね。僕にとっては。
(PUNPEE)えっ? 父さんが小学校ぐらいの時は雄三さんはもう……?
(父)『君といつまでも』でした。
(PUNPEE)ああ、じゃあ今で言うもうスーパースターというか?
(父)加山さんの歌をいちはやく覚えることが流行りの……。
(PUNPEE)イケてるあれだったんだ。
(父)そうそうそう。
(PUNPEE)あと、あれだ。古館伊知郎氏が番組の企画で家に来た時。その時に野次馬的に親父と母親が来てて。それでその時に写真を撮ったんだけど、そこから古舘さんのラジオにメールを送り始めたんだよね。で、普通だったらそこを……まあ読んでるかもしれないけど、話さないとか思ってたら、毎回話してくれてたんでしょう?
古舘伊知郎のラジオに何度もメールを送る
(父)そうなの。月に1回の番組で、すごく楽しみな番組。今でもそうなんだけど。毎回かならず読んでくれてたの。それで文章力がこっちはないからさ。何しろ素人なわけだから。でも、つまらない文章であっても、いろんな角度から掘り下げてくれて面白くしてくれるんだよね。優しい人だなと思うのと、やっぱり才能っていうのは違うんだなっていうのと……。
(母)ありがたい話だよね。
(父)隣りの人の話までしてくれて。
(PUNPEE)フハハハハハハハハッ! ああ、隣の?
(父)そうそう。
(母)番組が始まる前にもう正座をしちゃってパソコンの前にこうやって文章を決めて……もう、すごい集中して作ってたんだよね。
(父)不思議な気分だよね。だからそのその当時の自分が「君の息子は将来、この人と一緒にやるんだよ」なんていうことは……。
(母)みんなびっくりしちゃうね。おじいちゃんとかね、おばあちゃんとか。
(父)それは想像つかないよ。
(PUNPEE)いや、俺の世代からするともう上の人じゃん。ああ、あと、そうだ。聞きたいことがあって。自分が小さい時に、たとえばいろんな育て方とかあると思うんだけど。どうやってバランス取ってたかを聞きたかった。怒りたくはないけど、怒る時は怒らないといけないとか、そういうのってあった? バランスとか。言ったら、本当は怒りたくないじゃん? だけど、「これは怒んないといけないな」とか、教育的な部分でさ、決めてたこととかってあったのかな?って思って。将来、自分がそうなった時に……たぶん俺、ずっと甘やかしちゃいそうな気がしてて。自分の子供に。何かあった? その、自分の中の決まり的なものは?
(父)決まりはないけど、お互い……母さんに任せてたからね。
(PUNPEE)フハハハハハハハハッ! ああ、そういうことか?
(父)そこが一番……。
(PUNPEE)「子供に関しては」って。なんかあった?
PUNPEE・5lackへの教育方針
(母)やっぱりね、人としてちっちゃくても、意地悪する……弟くんに。それはちょっと私は「いけないんだよ」っていうのは……。
(PUNPEE)そんなに意地悪、していた?
(母)意地悪っていうか、まあちっちゃい時だからしょうがないけど。
(父)まあ、その後に5lackがやり返してたけどな。
(PUNPEE)フフフ、まあいろんな意味でね。先にCDを出したり、先にお金を持っちゃったりとか。いや、わかんないけどもし自分が、何でも与えられる状態で。なんか、何でも毎回買ってあげちゃいそうな気とかさ、そういうことを思想なの。なんて言うの? ほら……。
(母)わかる。私もそうだから(笑)。
(PUNPEE)だからそういうのってどうやって……なんか決め事とかってあったのかな?って気になって。
(母)でもまあ「人として」っていうところがポイントであって。ものはどうこうっていうのはあんまりなかったかな? 一番、テーマとして子育てしてきたのは、自分を大切にするとやっぱり自分の行動のことも含めて……悪いことをすれば自分が傷つくでしょう?
(PUNPEE)ああ、逆にね。
(母)お友達に対しても。だから自分を大切に思うということは全てに大切に思えることなのかなって思ってきたから。ちょっとほら、思春期で難しい時も、「自分を大事にするのよ」っていうのは君に5lackにも伝えてきたかなと思うんだけども。
(PUNPEE)はい。ちょっとじゃあ、参考にします。
(母)どうかな? ちょっとかっこつけすぎなのかな?
(PUNPEE)いやいや。
(父)後で編集してくれる?
(PUNPEE)あとで編集(笑)。じゃあ、最後に1曲、また親父が持ってきたんですけど。それをかけて終わりにしよう。家族の曲を家族が持ってくるっていうのも面白いんですが。最後はじゃあ……?
(父)5lackの3月20日発売のアルバムの中から仙人掌を……。
(PUNPEE)曲名は?
(父)『仙人掌』。
(PUNPEE)違うよ。フィーチャリングが仙人掌でしょう?
(父)『仙人掌』だよ?
(PUNPEE)曲名が『Who Said it』だよ。
(父)ああ、そうだった?
(PUNPEE)そうだよ。仙人掌っていうラッパーがいるんだよ。
(父)それは知っているよ。家にも来てるんだから。ヒデオくんでしょう? いや、最初に渡された時には『仙人掌』っていうタイトルだったの。
(PUNPEE)ああ、デモでもらったのね。
(父)じゃあ、みなさんお聞きください。5lackで『Who Said it』。
(PUNPEE)アルバム『この景色も越へて』からです。今週は家族に来てもらいました。ありがとうございました。
(父)お疲れさまでした。
(母)お疲れさまでした。
(PUNPEE)さよなら、さよなら、さよなら……。
5lack『Who Said it feat.仙人掌』
SOFA KING FRIDAY | J-WAVE | 2020/03/13/金 25:00-25:30 https://t.co/BnQTUYEmLn #radiko
5lack『Who Said it feat.仙人掌』— みやーんZZ (@miyearnzz) March 16, 2020
<書き起こしおわり>