(みうらじゅん)これは来ると思うんですけども。「拓ろう(たくろう)」。
(高田文夫)「たくろう」?
(松本明子)吉田……?
(みうらじゅん)吉田さんじゃなくて。拓本。
(高田文夫)ということは、魚拓の「拓」?
第2位:拓ろう(たくろう)
(みうらじゅん)そうです。拓本っつってね、うちのもう亡くなったんですが爺さんがね、昔よく石碑なんかに和紙をつけて。
(高田文夫)それでバレンでもってね。
(みうらじゅん)そう。スプレーで貼り付けて上から炭でバレンで叩くんですよ。そしたら魚拓みたいに文字が浮き出るっていう。
(高田文夫)あ、出ましたね。Sinceが出ましたね。
(みうらじゅん)うちの爺さんは句碑とか専門だったんで。これはほら、踏襲してはいけない。かぶるといけないんで。やっぱり街のSinceとかを見つけるとね。
(高田文夫)ああ、これはSinceを取ったんですか? 「Since1856」って書いてある。あ、いろんなものを取っているんですね。
(みうらじゅん)そうです。「拓りてえな」っていう気持ちが。それで「拓ろう」です。
(高田文夫)ああ、あんるほど。我々は「パクる」とか言うけども。この場合は「拓る」。
(みうらじゅん)それで和紙をかならずこれに……科捜研の女のこのファイルに入れてね。それで「あ、拓りてえな!」っていうところが出てきたら。「拓りてえ」っていうことは凸凹していないと拓れないんですよ。で、街でね、僕は手をかざしながら歩いているんですよ。最近。凸凹をしていると「拓れる!」って。
(高田文夫)ああ、もう街を歩く時に触りながら。壁とか看板とかいろんなところを。
(みうらじゅん)そう。だからこれも原宿で拓ったんですけども。今までSinceを集めていましたけども、写真で集めるよりも拓った方がなにかありがたみが。
(高田文夫)重みが違いますよね。
(みうらじゅん)これ、どうですか? 「屈曲部」っていう。
(松本明子)これ、どこで拓ったんですか?
(みうらじゅん)これはどこかの団地のところにあったんですね。
(高田文夫)「屈曲部」って……これは何の部なんですかね?
(みうらじゅん)あとこれは大阪で。「包丁一本」っていう。
(高田文夫)いいね! 藤島桓夫だっけ? 「包丁一本、さらしに巻いて♪」って。
(みうらじゅん)その歌詞の句碑があったんですよ。やっぱりそこの一部、ほしいじゃないですか。
(高田文夫)『月の法善寺横丁』でしょう?
『月の法善寺横丁』
(みうらじゅん)そうです。法善寺横丁。「包丁一本」ってなかなかこれは拓れないんで。
(高田文夫)そうだね。刺されるよ、そんなの拓ると(笑)。
(みうらじゅん)そうですね。勝手に拓るといけないっていう。
(高田文夫)ブスリと刺されるよ。包丁で(笑)。柳刃包丁だからね。
月の法善寺横丁歌碑 pic.twitter.com/jL289X314p
— にゃる氏 (@nyaru1022) February 22, 2015
(みうらじゅん)これは今まで拓本界ではなかったもので。あとね、「わたしのみうらじゅん みすず」。これはいいでしょう?
(松本明子)なんですか、これは? どこで拓られたんですか?
(みうらじゅん)これ、詩人の方でみすずさんっていう方がいらっしゃって。そのみすずさんの句碑、全部ひらがななんですよ。で、いっぱい句碑があった中でとりわけ「みうらじゅん」と「わたしの」を選んで拓ったんですよ。
(高田文夫)これはなんでこういう言葉を選んだんでしょうかね? みすずさんが。
(みうらじゅん)いや、選んだんじゃなくて、みすずさんが書いた歌詞の中の一部を拝借して。組み合わせたんです。組み合わせ拓ろうです。
(高田文夫)ああ、組み合わせた。創意工夫したわけですね。
(松本明子)それもOKなんですね。組み拓。
(みうらじゅん)組み拓が面白い。
(高田文夫)キムタクじゃなくて組み拓(笑)。
(みうらじゅん)これは来る! これは面白い。
文字を組み合わせて拓る
(高田文夫)それは作る楽しみがあるね。拓を取っていく楽しみが。
(みうらじゅん)「高田文夫」さんなんていう名前もね、一文字ずつ拓っていけますよ。拓れますから。
(高田文夫)だけど、街で怪しまれません?
(みうらじゅん)怪しまれます。
(松本明子)アハハハハハハハハッ!
(高田文夫)街でかがんで拓っていたら……バレンでこうやっていたら「ちょっと……何やっているんですか?」って。
(みうらじゅん)バレンっていうかね、時間がかかりますんで。これね、釣り鐘を模した墨なんですけども。ちっちゃい墨。これね、一発で拓れるんですよ。一発。スピーディー拓り。これ、ものすごいいいんですよ。
(高田文夫)スピーディー拓り(笑)。
スピーディーに拓る
(みうらじゅん)これがね……だからほら、怪しまれる前に拓っちゃう。相手は汚しませんから。言っておきますけども。ここだけは……。
(高田文夫)それは、どうやってやるの?
(みうらじゅん)これは和紙をある程度のところに……もう見つけたところにパチンと置いて。で、歩くようにスーッとこうやって転写していくんですよ。
(高田文夫)すごい……なんか上達したスリみたいな感じの。スッと……。
(みうらじゅん)そうです。確実にそうですね。
(松本明子)スピード感が大事ですね。怪しまれる前に。
(みうらじゅん)それも何回も現場を
ときますけどここではどういうですねその俺チェックしてから行きますんで。
(高田文夫)それ、カメラで撮られていたら絶対挙動不審でアウトですね。捕まりますね。
(みうらじゅん)もうアウトですけど。それほどまでしてもほしかった。
(高田文夫)その労力、いままでで一番すごいんじゃない?
(みうらじゅん)もうちょっとしたら捕まると思いますんで。今日、最後の話になると思います。今日、この話を言っちゃいましたんで。
(高田文夫)拓り犯が多いと。拓り犯が現れたと(笑)。
(みうらじゅん)拓り犯が出ますからね。これは多いかもしれないですね。
(松本明子)ふふふ、これは来ますね!
(高田文夫)よくこういうものも見つけましたね。素晴らしい。才能ですね、これは。
(みうらじゅん)これが来るんじゃないかなと。
(高田文夫)これ、来ると思いますね。
(みうらじゅん)来ると思いますよね。
(高田文夫)みんながちょっと和紙を持ちながら街の中を歩くっていう。
(みうらじゅん)和紙と墨を持って歩く。粋じゃないですか。
(高田文夫)ちょっと小粋なもんですよね。「あ、拓るの?」なんてね。お互いにスッとね。
(みうらじゅん)話も合いますよね。
(高田文夫)「今日、拓るの? 2拓り?」みたいなね。いいですね(笑)。
(みうらじゅん)ええ。
(高田文夫)じゃあ1位はCM明けでうかがいます。これ、素晴らしいですね。
(中略)